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【討論】いい加減にしろ!隠れ移民政策[桜H30/1/13] [政治]

【討論】いい加減にしろ!隠れ移民政策[桜H30/1/13]

パネリスト:
 河添恵子(ノンフィクション作家)
 田村秀男(産経新聞社特別記者・編集委員兼論説委員)
 坂東忠信(元警視庁通訳捜査官・外国人犯罪防犯講師)
 ペマ・ギャルポ(拓殖大学国際日本文化研究所教授・チベット文化研究所名誉所長)
 馬渕睦夫(元駐ウクライナ兼モルドバ大使)
 渡邉哲也(経済評論家)
 長尾たかし(衆議院議員)※スカイプ出演
司会:水島総
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MIZUNAの部屋 気色悪い像の撤去に期限を設けるべき [政治]

MIZUNAの部屋 気色悪い像の撤去に期限を設けるべき
http://mizunamayuneko.blog.fc2.com/blog-entry-2533.html より

http://blog-imgs-118.fc2.com/m/i/z/mizunamayuneko/201801120032183bc.jpg
ん〜
慰安婦合意の件ですが、
韓国は「いつもの手」がまだ日本に使えると思っているんだ。
ある意味、韓国は日本に甘えています。
過去数十年間、日本は韓国の無理な要求を全て受け入れてきましたので、
日本に対して何をしても許されると考えています。
最初は意外な収穫で、驚き喜んだでしょうが、
それが徐々にエスカレート・・・。
科学技術力でも工業力でも遥か先を走っている日本からあらゆる手段を駆使して、特許レベルのテクノロジーやトップシークレットの科学技術を盗み出せば、
自ら、苦手で苦しい基礎研究もする必要も無く、簡単に世界トップレベルの製品を作り出す事が出来る。
韓国から見れば日本は魔法の国のようだったのでしょう。
成功体験が大きければ大きいほど、なかなか止めることは出来ません。
まあ、例えるなら、カジノでビギナーズラッキーなのか、数千万円をゲットすれば、柳の下に何とやらで、負け続けても、「いつかは当てる」と、
賭け事を止めることは出来ません。
自分自身に、特別な才能があったり、資格を所有していたりと、ある程度苦労せずに稼げる人間なら、賭け事で身を滅ぼすことはありませんが、
無能な人間に限って、一攫千金を狙う傾向にあります。
この傾向はそのまま「韓国」という国や「韓国人」という民族に当てはまります。

それから、
例えば、子育て・・・
子供の頃から甘やかして、
何でも子どもの要求通りに物や金を与えて育ったら、将来どうなるでしょう?
何の努力もせず、泣いたり喚いたりするだけで、欲しいものが手に入り、美味しい物が食べられる。
そんな生活が当たり前になると、人間「努力」や「考えること」をしなくなり、
自分の欲求を満たすため、泣いたり喚いたり、脅したり、暴力を加えたりするようになります。

韓国という国は、甘やかして育てた結果、とんでもないモンスターとなった国家だと言えます。

韓国を甘やかし続けた国がもう一つあります。
アメリカです。
アジアでの覇権を維持するためには、半島に「自由主義陣営」の拠点が必要だった。
同時に、再度大国化しアメリカの脅威となる恐れのある日本を牽制する必要もあった。
アメリカは、この2つの役割を韓国に与えました。

韓国は日本より優秀な国であると「勘違い」をし始めた理由がここにあります。
まあ、世界広しといえども、韓国が日本より優秀であるなんて思っている国は、「韓国以外」ひとつもありません。
でも、韓国人は、今もそう信じ込んでいます。

多分韓国人は、自分達の妄想が作り上げた、仮想空間にある「韓国」という国家に住んでいるのだと思います。

ですので、韓国人や韓国政府と話し合いや交渉、協議をしても「噛み合わない」のが当たり前!

10年以上経過しても未だ完成しないk2戦車
浮上しない潜水艦
雨漏りのする戦闘ヘリ
数発撃てば熱くて持てなくなる自動小銃

何をさせてもダメな韓国ですが、
連中の頭の中では、勇ましい音楽と
美しい軍隊の映像が渦巻き、
近い将来全てのトラブルを克服し、
世界最強の兵器が完成すると信じています。

そんな韓国ですが、
あと何年?あと何ヶ月?妄想を抱いて気楽に生活できるでしょうか?

先日2年ぶりに持たれた北との閣僚級会議・・・。
制裁の一部解除を含む案件が協議されたようで、
南北間の緊張緩和が進むのは歓迎!と
米国もコメントしているようですが、
米国のコメントを真に受けてはダメですね。
米国はコメントとは裏腹の評価をしていると思われます。
多分韓国政府はその事に気が付くことは無いでしょう。

北朝鮮はしたたかな国
米国は恐ろしい国
日本は怒らせると怖い国

韓国はすっかり平和ボケしたのか
この3つの事を忘れています。

あるいは
国外に目を向けずに、政権闘争に明け暮れている・・・。

ん?何だか、歴史は繰り返しているような・・・。

日経より
・・・転載開始・・・
慰安婦問題「日本は真実認識し、謝罪を」 韓国大統領
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25494820Q8A110C1MM0000/?nf=1
「南北首脳会談、応じる用意」明言

北朝鮮 朝鮮半島
2018/1/10 11:05 (2018/1/10 13:12更新)
 【ソウル=鈴木壮太郎】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日、新年を迎えて記者会見した。従軍慰安婦問題の解決を確認した2015年12月の日韓合意に関する韓国政府の新方針を9日発表したことを受け、慰安婦問題の解決には「日本が真実を認識し、被害者に心から謝罪」することが必要と指摘した。南北会談については「これが始まり」と強調。「南北首脳会談に応じる用意がある」と明言した。

 文氏は日韓合意によって「国家が被害者女性に再び深い傷を負わせた」とも語った。日韓合意を「韓日両国間の公式的な合意」と認めつつも、「間違った結び目はほどかなければならない。政府は被害者の名誉と尊厳を回復する」と述べた。

 一方で「歴史問題と両国間の未来志向的な協力は分離して努力する」とも発言。韓日関係の改善を進める考えを示した。

 合意に基づいて日本政府が拠出した10億円については「慰安婦問題を解決できる良い目的に使えればいい。日本政府と被害者女性、市民団体と協議する」と語った。

 9日の南北閣僚級会談について文氏は「南北関係改善と朝鮮半島平和の転機にしなければならない」と、これを機に半島情勢の緊張緩和につなげる考えを表明した。

 その上で「ある程度の成果が担保されるなら、いつでも首脳会談に応じる用意がある」と述べ、条件や環境が整えば、金正恩(キム・ジョンウン)委員長と直接会談するとの意欲を改めて示した。稼働が中断している開城工業団地の再開は「北朝鮮の核問題の進展が必要だ」と、すぐには難しいとの見方を示した。

 南北会談実現は「トランプ米大統領の役割が非常に大きい。感謝したい」と米国による制裁・圧力の効果を評価した。「この対話を契機に、北朝鮮の核問題を対話で解決させていきたい」とし、「この点について米国とは意見が一致している」と米国との緊密な連携をアピールした。

 南北会談では北朝鮮の平昌五輪参加で合意した一方、核放棄を巡る対話再開は拒絶されたが、文氏は「南北関係改善は北朝鮮の核問題の解決にも役立つ」と断言。「平昌五輪・パラリンピックを成功裏に終え、平和オリンピックになるよう、最後まで努力する」と力を込めた。
・・・転載終了・・・
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大和心への回帰 243.反日野党の闇を糾弾せよ!足立康史議員の枝野、革マル癒着追求予告に思うこと。 [政治]

大和心への回帰 243.反日野党の闇を糾弾せよ!足立康史議員の枝野、革マル癒着追求予告に思うこと。
http://www.yamatogocoro.com/article/456168846.html より

維新の足立康史衆院議員が、今回の通常国会で、立憲民主党代表・枝野幸男と革マル派との関係について追求する、とTwitter上で発信し、話題になっている。

@adachiyasushi
立憲民主の枝野代表と革マル派との関係。 通常国会で改めて取り上げねば。 twitter.com/adachiyasushi/…pic.twitter.com/ulckRADTLo

https://pbs.twimg.com/media/DTTPAuFV4AAuytH.jpg:small

による: 足立康史 @adachiyasushi

そもそも公安調査庁監視団体・革マル派と枝野幸男の癒着(関連団体JR総連からの献金)を最初に暴露したのは安倍総理であったが、この時のことは鮮明に記憶している。

なぜならば、安倍総理が本件を指摘したのは、´14年秋の臨時国会であり、あのテロ三法成立の決め手になった国会答弁だったからである。

忘れもしないあの年の八月は、第二次安倍政権発足以来、一年八ヶ月の長期にわたって、一人の閣僚の更迭もない戦後最優とも言われた鉄壁の内閣を改造した直後に招集された臨時国会だった。

だが改造内閣は、あの小渕経産大臣の政治資金問題やうちわ問題など(全閣僚の半数に近い)実に8名に及ぶ閣僚スキャンダル禍に見舞われ、一時は内閣総辞職に追い込まれるほどの危機を迎えていた。

しかも前年暮れに、元在日議員で当時民主党の陳や白が議長席に詰めよって物議を醸した末に成立した特定秘密保護法からおよそ一年後である。

彼らにとってテロ三法の成立は、死活問題ともなりかねないので徹底抗戦の構えを見せていた矢先に、この政権ドミノである。

安倍総理は、会期半分の10月一ヶ月、閣僚スキャンダルの激しい野党の追求に追われていた矢先、当時民主党の枝野幸男に政治資金問題が浮上したのである。

よりによって枝野はこのタイミングで衆院予算案の質問に立つことになり、安倍改造内閣を叩き潰す絶好のチャンスとばかり意気込んでいたものと思われるが、スッカリ意気消沈し迫力を欠いていた。

安倍総理は、天から守られていると思わざるを得ないほどの強運ぶりをここでも発揮する。

枝野の答弁に立った安倍総理はここぞとばかり勝負に出たのである。

国会中継のライブ放映のなかで、枝野と革マルの献金絡みの癒着を暴露し、これによって戦況は起死回生の一発逆転。

この日から僅か数日後、テロ三法は何事もなかったかのようにすんなりと成立した。

政権崩壊のピンチから危機一髪逆転したこの時のことは、やがて安倍総理の功績として3本の指に数えられる快挙だと個人的には思っている。

冒頭の足立康史議員のTwitterに付記されている安倍総理秘書のブログは、安倍総理のこの時の答弁…枝野と革マル派の癒着問題に対する糾弾…が、当時大きな反響を呼んでいたことを物語っていると共に、詳細に発信されている。

それにしても日本のメディアは、売国議員と
売国政党と同類であるためか、彼らには極めて優しい。

野党第一党党首である枝野幸男が、公安調査庁監視団体の暴力集団・革マル派から800万円もの献金を授受していることや、辻元の砂利利権疑惑、蓮舫の多国籍問題等々は現役の国会議員による国家反逆行為といわれても仕方がない実に由々しき問題である。

これが白日の下に晒された時は、モリカケ問題の比ではない。

彼らを援護する反日メディアは、これだけの国家存立に関わると言っても過言ではない野党の闇について、全て曖昧にしたまま葬り去ろうとしているが、今回の通常国会では、これら野党の闇を徹底的に追求することを強く望みたい。

国益を阻害している者達の正体を明らかにすることは、国会議員の使命である。
なお、安倍総理の枝野と革マルの癒着に対する糾弾は、以下の通り。
https://m.youtube.com/watch?v=eTNxvCLXkeo
YouTube
安倍総理VS枝野幸男『枝野は殺人を犯す革マル派から800万献金されてたじゃないか!?』 平成26年10月30日
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♯78 報道特注【富士山を世界遺産にしたカリスマ小田全宏登場!③】 [政治]

♯78 報道特注【富士山を世界遺産にしたカリスマ小田全宏登場!③】

【レギュラー出演者】
生田よしかつ(築地まぐろ仲卸三代目)
足立康史(日本維新の会)
和田政宗(自由民主党)
上念司(経済評論家)
【ゲスト】
小田全宏(社会教育者)
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【日本の病巣を斬る!】♯21 プロパガンダ漫画家はすみとしこ見参 [政治]

【日本の病巣を斬る!】♯21 プロパガンダ漫画家はすみとしこ見参

2018年より、文化人放送局にて配信スタート!
是非ご覧ください!2月末を持ちまして文化人TVサポーターズから完全移行いたします。
12月19日収録
☆出演者☆
杉田水脈(衆議院議員)
千葉麗子(元アイドル・執筆家)
☆ゲスト☆
Marre (HEAVENESE)
はすみとしこ(プロパガンダ漫画家)
孫向文(中国人漫画家)
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【1月13日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線「ルトワック「北を空爆せよ」米の先制攻撃はあるか?・朝日新聞は自衛隊員に特攻隊をやらせるつもり?」織田邦男元空将【チャンネルくらら】 [政治]

【1月13日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線「ルトワック「北を空爆せよ」米の先制攻撃はあるか?・朝日新聞は自衛隊員に特攻隊をやらせるつもり?」織田邦男元空将【チャンネルくらら】

●「北を空爆せよ」エドワード・ルトワックの論考について
●米国も一枚岩ではない
●「核」についての冷静な議論を
●長射程ミサイル導入で専守防衛ゆらぐ?
●朝日新聞は自衛隊員を特攻隊にするつもりか?
●米の北攻撃についてシュミレーション
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我那覇真子 今年は1月から沖縄県民覚醒縦断キャラバン開始です!スタートは15日南城市から。チラシが出来上がり今日からポスティングです。こんなに寒い日にもお手伝いしてくださるボランティアの皆様に本当に感謝ですm(_ _)mもう世の中を変えるには庶民が立ち上がるしかありません。沖縄を守ろう! [政治]

我那覇真子 今年は1月から沖縄県民覚醒縦断キャラバン開始です!スタートは15日南城市から。チラシが出来上がり今日からポスティングです。こんなに寒い日にもお手伝いしてくださるボランティアの皆様に本当に感謝ですm(_ _)mもう世の中を変えるには庶民が立ち上がるしかありません。沖縄を守ろう!

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和田 政宗 広辞苑改訂版が発売されましたが、事実に基づかない記述がいくつも見られ、買う価値がありませんので私は買いません。 [政治]

和田 政宗 広辞苑改訂版が発売されましたが、事実に基づかない記述がいくつも見られ、買う価値がありませんので私は買いません。

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余命三年時事日記 2275 ら特集10仙台弁護士会⑤25 [余命三年]

余命三年時事日記 2275 ら特集10仙台弁護士会⑤25
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2275-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a425/ より

仙台弁護士会
ttp://senben.org/archives/category/statement2015
平成17年12月14日 宮城県国民保護計画(原案)作成に対する意見書
ttp://senben.org/archives/511

はじめに
当会は、平成14年4月、いわゆる有事法制3法案が国会に提出された後、同法案が憲法の根本規範である人権保障規定や民主的な統治構造を大きく変質させる危険があること等を指摘し、その廃案を求めるとともに、会内に有事法制問題対策本部を設置し必要な調査研究活動や市民集会の開催などを系統的に行ってきた。また、当会は昨年3月に国会に上程された上記有事法制関連7法案に対しても、「国民保護法案」は、国民保護措置の実効性に問題があるとともに平時から国民を統制する危険が高く、また、国民の戦時ムードをかりたて紛争の平和的解決の可能性を自ら塞いでしまうおそれがあること、「米軍支援法案」等は憲法が禁止する集団的自衛権の行使や交戦権の行使をも可能とする措置を内容とし、市民の生活や権利に対する重大な影響があること等を指摘し、これらの法案を廃案にするよう強く求めてきた。それは、特定の思想信条や政治的立場からではなく、法律家としての良心に基づき、基本的人権を擁護する立場からである。昨年、国民保護法が成立し、国が作成した「国民の保護に関する基本指針」及び「都道府県国民保護モデル計画」に基づいて、今年度中に都道府県において、国民保護計画の作成が行われる予定となっている。宮城県においても、既に国民保護協議会が開催され、宮城県国民保護計画(原案)(以下、「宮城県原案」という)が策定され、これに対する意見が募集されている。国民保護法に対する評価は別として、現実に法に則り国民保護計画が具体的に策定される以上は、それが万が一にも基本的人権を侵すことのないよう、充分な配慮の上で策定されなければならないことは当然である。本意見書は、現在、宮城県原案の策定に当たって、人権保障上留意すべき点を中心として、既に公表されており今回の策定に当たっても重要な参考とされるであろう「都道府県国民保護モデル計画」(以下「モデル計画」という)との関係も含めて、できる限り具体的に指摘し、意見を述べるものである。
第1  本意見書の要旨
本意見書では、宮城県原案を検討対象としつつ、国民保護計画に関し、その策定時期、人権保障上特に規定すべき内容及び留意点、策定に際しての意見聴取等について指摘し、意見を述べるが、その要旨は次のとおりである。
1  第2「各地方公共団体が独自に基本的人権を尊重した国民保護計画を作成することが可能であること」では、
(1) 2005(平成17)年度中に国民保護計画を完成するという政府の方針に固執するのではなく、また、モデル計画を単に引き写しただけの国民保護計画を作成するのではなく、各地方公共団体独自に広く県民や国民保護計画に関係する者の意見を聞いて、軍事作戦優先ではなく、住民の生命身体財産の安全を優先し、かつ住民の基本的人権を侵害するおそれのない国民保護計画を作成すべきであること、国民保護協議会委員に弁護士委員を加えるべきこと、
(2) 各地方公共団体独自に、武力攻撃事態に至らないためにいかなる役割を果たせるかを積極的に検討する必要があることを述べている。
2  第3「基本的人権及び平和主義を尊重した国民保護計画の作成」では、
(1) 各国民保護措置のうちで特に人権保障上問題となりうる措置に関して、宮城県原案では、人権保障のための手続保障や具体的な定めを欠いているので、これらの措置を取り上げて、人権保障のために具体的に盛り込むべき事項を指摘している。
(2) 日本国籍以外の住民の人権保障を図るために国民保護計画で具体的な定めを置くべきこと、
3  第4「国民保護法が定める強制措置の内容とその問題点について」では、
(1) 国民保護法が定めている強制措置については、その実施のための手続や関係者が拒否できる「正当な理由」を具体化しないと人権侵害のおそれが強い、という観点から、国民保護計画に具体的に定めるべき事項や検討すべき事項を指摘し、
(2) 更に強制措置の対象となる運送事業者や医療関係者など関係者について、実際に国民保護措置に従事することとなる現場担当者の意見も聞きながら国民保護計画を作成すべきであることを指摘している。
4 第5「『平素からの準備』について」では、宮城県原案のうちで特に「第2編平素からの準備」の項目を取り上げて検討を行った。
まず、武力攻撃事態等によって発生した国民保護法でいうところの「武力攻撃災害」と自然災害とは本質的に違うという観点から、
(1) 国民保護計画の定める訓練や啓発活動では、この違いを充分に意識した活動を行う必要があること、
(2) 自然災害への対策と武力攻撃災害への対策とを誤解させて住民の協力を求め、更に住民の協力を事実上強制することのないように、国民保護計画で具体的な定めを置く必要があること、 などを指摘し、そして、
(3) 国民保護法が単にいわゆる「有事」が発生した場合だけではなく、それ以前の「平時」からの備えを求める点において、有事の脅威のみを強調して平素からの対策を行った場合、憲法で定める平和主義や人権保障との抵触の危険があるという観点から、宮城県原案の問題点を指摘し、平和主義や人権保障を侵害することのない国民保護計画とするために具体的に配慮すべき点を指摘している。
5  第6「安全配慮義務について」では、
(1) 実際に国民保護措置に従事する地方公共団体の職員や指定地方公共機関など関係者の生命身体の安全を確保するために、国民保護法に定められた抽象的な安全配慮義務に関する規定を具体化する規定を国民保護計画に盛り込むとともに、
(2) 国民保護計画を作成するに当たり、国民保護措置に実際に従事することとなる職員や労働者の意見を聞き、その意向を反映させる必要があることを指摘している。
6 第7「報道の自由、知る権利への配慮をした国民保護計画」では、いわゆる「有事」において、知る権利や報道の自由が最大限に保障されなければならないという観点から、宮城県原案に盛り込まれた規定では、知る権利や報道の自由、更に国民の表現の自由への保障としては不充分であること、また、指定公共機関、指定地方公共機関に指定された放送事業者の自律性を保障するためにも不充分である点を指摘した。そして、これらの人権や放送事業者の自律性を保障するために国民保護計画に具体的に定められるべき事項を指摘している。
第2  各地方公共団体が独自に基本的人権を尊重した国民保護計画を作成することが可能であること
1 国民保護計画作成を拙速に行うべきではない。
自治体が足並みを揃えるよう、政府は国民保護計画の策定スケジュールを定め、「モデル条例」、「モデル計画」等を示して自治体を誘導しようとしている。このような政府の方針を受けて、宮城県においては、宮城県国民保護協議会で配布された資料や既に公表されている資料によれば、国民保護計画の作成のスケジュールとして、平成17年度内における国民保護計画の作成を目指すとしており、具体的に宮城県国民保護協議会本会の開催は、今後1回しか予定されていない。政府の方針としては、平成17年度中に各都道府県における国民保護計画の作成を目指しているが、国民保護法など法律の規定上、国民保護計画作成の期限が定められているわけではない。国民保護計画が住民の生命、身体、財産の安全にとって重要な意義を有するのみならず、人権保障上もその内容には慎重な検討が必要なことを考えれば、充分な検討をすることなく、単にモデル計画を1つしたような国民保護計画の作成を行うことは避けるべきである。特に国民保護計画の作成について、県議会へは報告で足り、県議会の承認が不要であることを考えても、住民の意見を充分に反映した国民保護計画を作成するには、国民保護協議会本会における審議の際に、多くの参考人から充分に意見を聞き、更に県民からの意見を聴取する機会を設けるなどして、国民保護計画が実施された場合に影響を受ける関係者や住民の意見を反映した国民保護計画を作成する必要がある。宮城県国民保護協議会の回数も今後1回と限定するのではなく、必要な回数と時間を確保すべきである。また、国民保護協議会の審議に基本的人権の擁護の観点からの意見が出ることを担保するためにも、国民保護協議会の委員に当会推薦の弁護士を加えるべきである。
2 地方自治体の使命は「住民保護」であり、作戦の支援ではない。
国民保護法は、それ自体、単独の法律として存在するのではなく、米軍支援法、特定公共施設利用法等とともに、武力攻撃事態対処法(以下、「事態対処法」ともいう)を母法とする実施法の1つであり、地方自治体は、武力攻撃事態対処法の対処措置を実施する主体とされている(事態対処法3条、5条)。「対処措置」には侵害排除と国民保護の2つの分野があるが、地方自治体の主要な役割はあくまで国民保護にあり、事態対処法の下でも、地方自治体は「当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施その他適切な役割を担うことを基本とする」(同法7条)とされており、事態対処法、国民保護法の下でも、地方自治体の役割は、国の役割とは重点の置き方が異なっており、国家が「侵害排除」を行う際、地方自治体は、いわば安全装置として住民の人権保護の砦となることが求められているといっても過言ではない。国民保護計画を策定するに当たっては、あらゆる場面でこの点が確認されなければならない。なお、事態対処法7条の「その他適切な役割」とは、立法作業に携わった礒崎陽輔氏によれば、「国の方針に基づかない措置で、当該地方公共団体の独自の判断で実施するもの」をいい、「地方公共団体が独自の判断で実施する措置がありうるのではないかと考えて」このような規定を挿入したとしている(礒崎陽輔「武力攻撃事態法の読み方」ぎょうせい、p37)。 地方自治体が行う住民保護の措置や国民保護計画に、自治体独自の判断で行うものがありうることは、国民保護法の母法である武力攻撃事態法自体が認めているのである。 この条項を活用した自律的な措置にどのようなものがありうるのか、積極的に検討すべきである。
3 「住民の生命、身体及び財産の保護」を実現する手段は多様であり、憲法が、地方自治体を三権と並ぶ統治機構の構成要素として位置づけを与えていることに鑑みても、地方自治体は、住民の生命、身体及び財産を保護するために独自に積極的な活動を行う責務がある。そして、国家間の関係は、いまや政府レベルの関係にとどまらないのであって、市民、NGO、自治体などによる、文化、学術、スポーツ等多面的な交流が緊密になされることは、市民間の相互理解を深めることに役立つ。市民レベルでの友好と相互理解が確固としている場合に、意見や利害の相違があってもそれが「有事」に至る可能性は小さいはずである。地方自治体は、事態対処法7条の「その他適切な役割」として、このような市民間、自治体間の友好と相互理解を積極的に行い、これを国民保護計画においても具体化すべきである。
第3  基本的人権及び平和主義を尊重した国民保護計画の作成
国民保護法第5条第1項は「国民の保護のための措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない」ことを謳い、第2項は「国民の保護のための措置を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該国民の保護のための措置を実施するため必要最小限のものに限られ、かつ公正かつ適正な手続の下に行われるものとし、いやしくも国民を差別的に取り扱い、並びに思想及び信条並びに表現の自由を侵すものであってはならない」と規定している。国民保護措置のうちで特に人権侵害が危惧される措置について、かかる視点から、宮城県原案の問題点と盛り込むべき具体的規定について指摘する。
1  国民保護措置の実施に伴う人権侵害を回避するために国民保護計画中に具体的な定めを置く必要性 宮城県原案は、国民保護法第5条の観点に照らし、人権保障に充分配慮した規定を置いているとはいえない。
(1) 国民の責務との関係(法4条)
国民保護法は、国民の協力についても規定しているが、この規定によって国民の協力を事実上強制するようなことにならないよう国民保護計画を作成するべきである。特に、国民の協力はあくまで自発的な意思に基づくのであって、強制にわたることがあってはならない、と国民保護法4条2項で規定しているが、事実上の強制を防ぐためには、単にこのような規定を置くだけでは不充分である。
①宮城県原案第1編第2章(5)「国民の協力」(宮城県原案3頁)では、「国民は、その自発的な意思により、必要な協力をするよう努める」とあるが、これでは、事実上の強制にわたらないような配慮をするというのではなく、むしろ、自ら進んで「協力に努める」ことが強調されていると考えられる。
②宮城県原案第2編第8章2(3)「訓練に当たっての留意事項」(宮城県原案38頁)でも、住民に対して広く訓練への参加を呼びかけるという指摘はあるが、訓練への参加が事実上強制されないよう配慮すべきという指摘はない。
③宮城県原案第3編第3章9「住民への協力要請」(宮城県原案50頁)においても、住民に対し、「必要な援助について協力を要請する」とあるが、事実上の強制とならないように配慮した記載が存在しない。このように、宮城県原案では、事実上の強制とならないように配慮した定めをおいているとは理解できないのであって、国民保護計画の中で、国民の協力に関する事項を記載する場合には、あくまで住民の協力が任意であり、強制にわたってはならないということを各項目において明示して記載する必要がある。また、協力要請に際しては、要請が繰り返されたり、協力要請に応じないことが不利益に結びつくことがないよう留意すべきことを明記することも必要である(「『強制』とは相手の意に反して行わせることをいい、単純に勧誘や説得を行うことは強制には含まれないと考えるべきである。しかし、執拗に説得を繰り返したり、相手が不利益を被るような条件を出して協力を求めたりすれば、強制に当たることもありうる」(「国民保護法の読み方」礒崎p19))。また、住民に対して事実上の強制措置が行われないようにするためには、国民保護法に関する正確な情報を住民に広報するよう努めるとともに、特に本意見書で人権保障との関係で問題となりうると指摘した規定については、人権保障のために具体的にどのような配慮を国民保護計画の中でしているのかを住民に具体的に説明することも啓発の内容として定めるべきである。
(2) 避難における立入禁止等の措置の問題(法66条)
避難住民を誘導する警察官又は海上保安官(これらの者がその場にいない場合、消防吏員又は自衛官)は、危険な場所への立ち入りを禁止し、若しくはその場所から退去させる措置を講ずることができるとされている(同条第2及び3項)。しかし、この措置は、住民の行動の自由を侵害し、また事態の状況によっては報道機関の取材活動の自由を侵害する危険がある。ところが、宮城県原案第3編第4章第2の4「避難実施要領」(宮城県原案60頁)以下において、避難実施要領の策定についての記載があるが、避難における立入禁止等の措置に関する具体的な定めがない。また、政府解釈でも、法66条の規定は、避難しない者に避難を強制する権限を与えたものではないとされているが(礒崎陽輔「国民保護法の読み方」172頁参照)、宮城県原案60頁に、要避難地域における残留者の確認に関する条項があり、そこでは、避難が本来任意であることについての明示的な指摘がない。そこで、国民保護計画を作成する際には、立入禁止等の措置の実施が恣意的に行われることがないように、立入禁止等の措置が、住民の行動の自由や報道機関の取材活動の自由と抵触する可能性があることを国民保護計画の中で指摘し、同措置を実施するに当たっては、住民の行動の自由や取材活動の自由を侵害しないように慎重にすべきであることを明示的に指摘しておく必要がある。そして、国民保護計画において、「特に必要があること」、「危険な場所」の要件についてできるだけ具体的な基準、想定される事態毎に具体例を明らかにすることが必要である。更に立入禁止や「当該危険を生ずるおそれのある道路上の車両その他の物件の除去」以外の「その他の必要な措置」の具体的な内容、措置をとるための適正な手続などを明記することが必要である。
(3)緊急通報の発令(法99条)
知事は、緊急の必要性があると自ら判断した場合に、武力攻撃災害緊急通報を発令しなければならないとされているが、当該目的は、「住民の生命、身体又は財産に対する危険を防止」することにあるので、有事における情報統制にならないよう広く住民に情報を伝える必要がある。宮城県原案第3編第4章第1の3「緊急通報の発令」(宮城県原案53頁)では、緊急通報の内容として、危急の被害を避ける観点から必要最小限のもの、としている。この規定は情報の正確性、住民の混乱の防止という観点からどのような情報を、この段階で開示するのかということを考えての指摘だと思われるが、「必要最小限」に限定するのは、住民への必要な情報の提供を考えると問題であり、正確な情報をできるだけ住民に提供するという趣旨で、国民保護計画では規定をする必要がある。
(4)武力攻撃災害における立入禁止措置の問題点(法102条)国民保護法102条第5項は「都道府県公安委員会又は海上保安部長等は、武力攻撃事態等において、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため、知事から要請があったとき、又は事態に照らして特に必要があると認めるときは、生活関連等施設の敷地及びその周辺区域のうち、当該生活関連等施設の安全を確保するために立入を制限する必要があるものを、立入制限区域として指定することができる」と定め、同条7項は「警察官又は海上保安官は、第5項の立入制限区域が指定されたときは、特に生活関連等施設の管理者の許可を得た者以外の者に対し、当該立入制限区域への立入を制限し、若しくは禁止し、又は当該立入制限区域からの退去を命ずることができる」と定めている(緊急対処事態にも準用されている、183条)。武力攻撃災害における立入禁止措置については、個人の行動の自由を侵害し、また報道機関の取材活動の自由を侵害する危険性もあるから、国民保護計画において当該措置をとりうる基準を明記するとともに、措置をとる際の適正手続を具体的に定める必要がある。宮城県原案第2編第6章「生活関連等施設の把握等」(宮城県原案33頁以下)、宮城県原案第3編第7章第1の3「生活関連等施設の安全確保」(宮城県原案72頁以下)の各項において、「生活関連施設」やその安全確保についての記述があるが、そこでは、法102条5項に基づく立入禁止区域の指定の要件や手続、立入禁止区域に指定するための知事からの要請を行うための要件が具体的には定められていない。また、生活関連施設の敷地からどの程度の範囲までを立入制限区域と指定できるのか、その範囲は、明示されておらず、武力攻撃事態等の態様や武力攻撃災害の内容に応じてその時々で判断することを宮城県原案では想定していると思われる。しかし、立入禁止区域の指定がされれば、警察官と海上保安官は、管理者の許可を得たもの以外の者に対しては、立入の制限、禁止、退去を命ずることができ、立入制限違反に対しては刑罰が科されるのであるから(法193条)、立入制限区域の指定は、住民の行動の自由や報道機関の取材活動の自由に対する罰則付きの制限となる。そこで、国民保護計画においては、立入禁止区域の指定に当たって考慮すべき事項を具体的に定める必要がある。すなわち、住民の生活への支障、住民の行動の自由制限ができるだけ出ない方法で指定すべきことや、報道機関の取材活動の自由が尊重される形で行われるべきことなどを明示的に定めておく必要がある。また、国民保護計画において、各生活関連施設について、どの範囲を立入制限区域として指定するのか、想定される事態に応じて、ある程度基準を明確にして定める必要があり、この基準を定めるに当たっては、当該生活関連施設の周辺住民の意見や報道機関を含めた関係諸機関の意見などを聴取して行うべきである。
(5)知事の応急措置(法111条、112条)
知事は、武力攻撃災害が発生するおそれがあり、武力攻撃災害拡大を防止するため緊急の必要があると認めるときは、武力攻撃災害を拡大させるおそれがある設備等の除去等必要な措置(事前措置)を講ずべきことを指示することができ(111条2項)、武力攻撃災害から住民の生命、身体若しくは財産を保護し、又は当該武力攻撃災害の拡大を防止するため緊急の必要があると認められるときは、住民に対して退避すべきことを指示することができるとされている(112条5項)。これらの指示は、住民の生命、身体、財産を保護すること等が目的であるから、軍事目的に協力する趣旨で発動してはならない。また、住民に対して退避の指示をする場合でも、個人の意思に反して退避を強制することができない。宮城県原案第3編第7章第3「応急措置等」(宮城県原案80頁)では、これらの点について触れられていないので、前記の点を明示的に国民保護計画に定める必要がある。
(6)応急公用負担等(法113条)
知事は、武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずるため緊急の必要があると認められるときは、武力攻撃災害を受けた現場の工作物又は物件で武力攻撃災害への対処に関する措置の実施の支障となるものの除去その他必要な措置を講ずることができる(113条3項)。この応急公用負担の要件として、住民の生命、身体に対する危険を防止するために行うということが条文には明記されていないが、次条の警戒区域設定の要件と同様に、国民保護法の目的からして、このことが要件となっていると解されることから、当該公用負担を軍事目的に協力する趣旨で発動してはならない。宮城県原案第3編第7章第3の3「応急公用負担等」(宮城県原案81頁)では、上記指摘がされていないので、国民保護計画において、上記の点を明示的に定める必要がある。
(7)警戒区域設定の問題点(法114条)
知事は、武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、当該武力攻撃災害による住民の生命又は身体に対する危険を防止するため緊急の必要があると認めるときは、警戒区域を設定し、武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずる者以外の者に対し、当該警戒区域への立入を制限し、若しくは禁止し、又は当該警戒区域からの退去を命ずることができる(114条2項)。警戒区域設定についても、個人の行動の自由を侵害し、また事態の状況によっては報道機関の取材活動の自由を侵害する危険があるから、警戒区域の設定と当該区域への立入禁止などの措置を行うためには、国民保護計画において、具体的で明確な基準を定めるとともに、人権を侵害することのないような適正な手続の保障について定めておくべきである。宮城県原案第3編第7章第3の2「警戒区域の設定」(宮城県原案80頁)で警戒区域の設定について定めているが、警戒区域設定及び当該区域への立入制限等の措置の実施に当たって、人権に対する配慮を求める規定を全く置いていない。警戒区域の設定によって、行動の自由や取材活動の自由に対して制限が加えられることになること、要件が限定されているとはい、警察官や海上保安官更に自衛官にも警戒区域の設定の権限が認められていること、同区域への立入制限等の措置への違反には罰則が科されること等からして、警戒区域が恣意的に設定されたり、軍事行動目的で警戒区域の設定が行われた場合には、重大な人権侵害のおそれがあるといわなければならない。警戒区域設定は周辺住民の行動の自由や取材活動の自由の制限にかかわる措置であるから、国民保護計画には、これらの人権を侵害しないように留意すべきであることを明示的に記載すべきである。また、想定される事態に応じて警戒区域設定の要件を例示を含めて具体的に定めるなど恣意的な設定を防止するための規定を置くこと、警察官、海上保安官、自衛官が警戒区域を設定できる場合を具体的に例示すること、などによって、人権侵害を惹起しないようにする必要がある。また、生活関連施設とその周囲への立入制限などの措置と同様に、警戒区域設定に関して国民保護計画に定めをするに当たっては報道機関などの意見を聴取する必要がある。
(8)避難施設の指定(法148条)
知事は、住民を避難させ、又は避難住民等の救援を行うため、あらかじめ、政令で定める基準を満たす施設を避難施設として指定しなければならない(148条1項)。避難施設に指定しようとする対象が民間施設である場合、あらかじめ管理者の同意を得て避難施設の指定をしなければならないが、避難施設に指定された場合、当然、本来の目的に利用することが制限されること、その場合強制収用でない以上損失補償がなされないことなどを、充分に説明した上で管理者の了解を得る必要があるとともに、同意を事実上強制することのないよう慎重な配慮が必要である。宮城県原案第2編第5章の5「避難施設の指定・周知」(宮城県原案30頁以下)において、避難施設の指定手続が定められているが、そこでは、施設管理者の同意を文書等で確認すると指摘しているだけである。国民保護計画において、管理者の了解を得るに当たって説明すべき内容として、損失補償が行われないこと、本来の目的での利用が制限されても同様であること、了解するか否かは任意であることなど、説明すべき内容を具体的に定めて、管理者の充分な納得の上で了解を得るための説明の内容、方法(口頭ではなく説明内容を書面で交付するなど)などを具体的に記載しておく必要がある。また、管理者が同意を撤回するのは自由だと考えるが、この点が宮城県原案では不明確であるから、国民保護計画では、同意の撤回の手続なども規定し、かつ管理者に撤回が可能であることも説明すべき内容として定めておく必要がある。
(9)交通の規制等(法155条)
都道府県公安委員会は、住民の避難、緊急物資の運送その他の国民の保護のための措置が的確かつ迅速に実施されるようにするため緊急の必要があると認めるときは、交通規制等ができるとされている(法155条1項)。広範囲な要件のもとで交通規制等を認めている点で、人権保障上の問題を含んでいるとともに、場合によっては出動した自衛官が交通規制等を行うことができるとされており、軍事目的を優先した交通規制等がなされないか非常に危惧される。宮城県原案第3編第11章「交通規制」(宮城県原案92頁以下)では、「住民の避難、緊急物資の運送その他の措置が的確かつ迅速に実施されるよう」にと規定しているが、明示的に軍事目的を優先した交通規制をすることを禁止する定めをしていない。住民の避難と自衛隊や米軍の軍事行動が錯綜した状態で住民の避難が阻害されることがないよう、国民保護計画では、軍事目的ではなくあくまで住民の避難や緊急物資の輸送のための交通規制であるということを明示した定めを置く必要がある。
2  日本国籍を有しない住民の人権保障への配慮の必要性
外国籍住民を含めて、個人の基本的人権を保障した国民保護計画を作成することが必要である。
(1) この点、日本国籍を有しない者の人権保障としては、①国民保護措置を日本国籍を有する者と同様に適用して保護すべきであるという面とともに、②排外主義的な風潮による特定の国籍を有する住民への人権侵害が事実上発生しないように国民保護計画において配慮した定めを置くべきという面がある。
(2) 宮城県原案37頁以下では、「国民保護に関する研修・訓練・啓発の実施」に関する記述があり、そこでは訓練について避難誘導や救援等に当たり高齢者や障害者その他特に配慮する者への的確な対応が図られるよう留意するべきことが指摘されているが、日本国籍を有しない住民について、上記①及び②の観点からの指摘がないので、その点を明記すべきである。
第4  国民保護法が定める強制措置の内容とその問題点について
1  国民保護法における強制措置の内容
国民保護法は、国民保護措置の実効性を確保するために、以下のとおり、知事及び市町村長に対し、強制権限を付与している。
(1)  運送の強制 知事、市町村長は、運送事業者である指定公共機関又は指定地方公共機関に対し、避難住民の運送、緊急物資などの運送を求めることができる。この場合、運送事業者は正当な理由がない限り拒否できない(法71、79条)
(2) 物資の保管命令・売渡要請・収用
知事は、「救援を行うため必要があると認めるときは」、物資の生産、販売等を業とする者に対し、医薬品、食品等の救援の実施に必要な物資として政令で定める物資(特定物資)について保管を命令し、売渡を要請し、正当な理由なく拒否したときは、これを収用することができる(法81条)。物資の保管命令に従わず、特定物資を隠匿・損壊・廃棄・搬出したものについては、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられる(法189条1号)。同収用手続については、公用令書の交付により行うとされる(法83条)。指定行政機関又は指定地方行政機関も、「救援を支援する緊急の必要があると認めるとき、又は都道府県知事から要請があったとき」同様の措置をとることができる(法81条4項)。法が定めるこれらの権限は、「武力攻撃事態等」又は「緊急対処事態」の閣議決定がなされた事態の下で、対策本部から「救援の指示」を受け、知事が「救援を行う必要性を認めた」、又は指定行政機関又は指定地方行政機関が「緊急の必要性があると認めた」という要件だけで所有者の同意がない場合でも「政令が定める物資」を公用令書1つで収用するというものである。
(3)  土地・家屋・物資の強制使用
知事は、収容施設又は臨時の医療施設を開設するため、所有者及び占有者の同意を得て、土地、家屋又は物資を使用することができ、正当な理由なく拒否したときは、「特に必要がある」と認めれば、強制使用できる(法82条)。この強制使用は、公用令書を交付して行うものとされるが、交付すべき相手が不明である場合等には、事後の交付で足りるものとされている(法83条)。なお、前記(2)における売渡要請等の対象となる物資は、特定物資であっていわゆる商品として業者が所有するものであるが、本項で使用の対象となる物資は、商品には限定されていない。また、上記特定物資及び土地・家屋・物資について所定の措置をとる必要がある場合に、知事などは、職員による立ち入り、検査を行わせることができ、(2)の特定物資の保管については必要な報告を求め、保管状況を検査させることができる(法84条)。この立入検査を拒み・妨げ・忌避し、特定物資の保管に関する報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、30万円以下の罰金を科せられる(法192条1号)。
(4)  医療の実施指示
知事は、大規模な武力攻撃災害が発生した場合、「医療の提供を行うため必要があると認めるとき」、医療関係者に医療の実施を要請し、正当な理由なく拒否したときには、医療の実施を指示できる(法85条)。
2  人権侵害の危険性と措置の実施に当たって考慮すべき事項
国民保護法が定める上記強制措置は、営業の自由や財産権を制約し、更に、個人の思想良心に抵触する行動を強制するおそれがあり、以下に述べるとおり、その実施に当たっては、慎重な配慮が必要である。
(1) 武力攻撃事態等及び緊急対処事態の認定について
「武力攻撃事態等」又は「緊急対処事態」については、その定義が曖昧であることは、法案段階から日弁連や当会において指摘してきたところである。しかも、我が国に対する武力攻撃のおそれがあるのか、武力攻撃が予測される事態であるのか、緊急対処事態であるのかの認定については、認定そのものや認定の時期について政治的な判断が含まれるだけに、国民の間で評価、判断が分かれる可能性が高い。この点で、価値的な評価に差が生ずることが通常では考えにくい自然災害とは大きく異なるのである。
したがって、知事等が前記強制措置をとるには極めて慎重であることが必要である。
(2) 正当な理由の判断
前記の各措置については、「正当な理由」があれば、拒否することが可能である。そして、この「正当な理由」の内容については、例えば自己が使用する必要性があるなど具体的にその内容が明らかにされるべきである。また、この正当な理由の解釈について、思想、信条を理由とするものは認められないというのが政府の解釈のようである。しかし、前述のとおり、前記各措置をとる際の前提となる武力攻撃事態等や緊急対処事態の認定については、議論の分かれるところであり、思想、信条に基づく拒否について、一律に「正当な理由」から排除すべきではない。
(3) 適正手続の保障
前記1(2)(3)の各措置は、「武力攻撃事態等」又は「緊急対処事態」の閣議決定がなされた事態の下で、対策本部から「救援の指示」を受け、知事が「救援を行うために特に必要があると認めた」というだけで、「政令が定める物資」等を公用令書1つで収用や使用ができるというものである。この規定については、余りにも包括的な収用権限、使用権限を知事に付与するものであり憲法が保障する財産権保障を損なうおそれが強い。都道府県知事は、前記各措置の実施に当たっては、適正手続を保障するべく、国民保護計画に具体的な定めを置くべきであり、基本的人権の保障の観点からは、この点について、関係者からも充分な意見を聞いて、慎重な運用のための規定を置くことが必要である。
3  宮城県原案の内容と国民保護計画の策定に当たって留意すべき事項
(1) 宮城県原案の内容
宮城県原案は、第3編第4章第2の3「県による避難住民の誘導の支援等」(宮城県原案58頁)において、指定地方公共機関による運送の実施についてわずかに規定をおいているものの、「正当な理由がない限り、その求めに応じるものとする」とのみ規定している。また、宮城県原案は、第3編第5章の5「救援の際の物資の売渡要請等」(宮城県原案66頁)において、救援の際の特定物資の売渡等の要請、収容施設や臨時医療施設の開設のための土地使用、更に医療の要請について定めているものの、「正当な理由」についての具体的な説明がされていない。更に、売渡要請などについても、権利者の権利を侵害しないような手続についての定めを具体的に置いていない。
(2) 国民保護計画の策定に当たって留意すべき事項
そこで、具体的に国民保護計画を策定するに当たっては、以下の諸点に留意すべきである。
①  国民保護計画において強制措置について定める項では、国民保護措置の実施の前提となる武力攻撃事態等の認定について、自然災害と異なり、様々な評価がありうるので、知事又は市町村長が強制措置を実施することについては、慎重な配慮が必要である旨を明記することが必要である。
② 上記「正当な理由」については、例えば自己使用の必要性がある場合などを例示すべきであり、また、知事、市町村長の強制措置の対象となった住民が思想、信条に基づきこれを拒否した場合、一律に認めないとすべきではない。どのような場合が「正当な理由」に該当するかについては、関係者の意見を広く聴取し、国民保護計画の中で具体的に定めることも検討する必要がある。
③ 上記1(2)(3)の各措置を実施する場合の必要性の要件や手続について、具体的に明記すべきである。
④ 更に、国民保護計画を作成するに当たって、強制措置の対象となりうる運送業への従事者(単に事業者だけではなく、実際に運送に従事することになる労働者やその意向を代表する労働組合)、医療関係者、売渡要請や土地などの使用の要請を受ける可能性がある一定の土地所有者などの権利者等からできる限り広く意見を聴取した上で、その意見を反映した国民保護計画を作成するようにすべきである。
第5  「平素からの準備」について
1 自然災害のための制度を武力攻撃災害に対する準備へ転用する考え方は危険であることについて
(1) 国民保護法は、地方自治体は、「国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要な組織を整備するとともに、国民の保護のための措置に関する事務又は業務に従事する職員の配置及び服務の基準を定めなければならない」(法41条)と義務づけている。そして、法41条は、いつ、どのように発生するかわからない「事態」のために専任の組織を創設することはできないので、「有事のための専属組織を平時において設置しておかなければならないわけではなく、既存の組織を活用して、有事に転用できるよう有事における役割分担をあらかじめ定めておくことを意味している」と解されている(前掲「国民保護法の読み方」114頁)。
(2)  宮城県原案は、このような法の解釈を前提として、武力攻撃災害を自然災害と同様に扱い、自然災害への準備手段を武力攻撃災害に転用しているが、そのような考え方は危険である。
国民保護法は、「武力攻撃災害」という概念を用いているが、武力攻撃災害と自然災害は全く異なるのであって、これを「災害」として同一視した対策をとることは、両者の違いを無視した安易な人権制限につながる危険性がある。同法によれば、「武力攻撃災害」とは、「武力攻撃により直接又は間接に生じる人の生死又は負傷、火災、爆発、放射性物質の放出その他の人的物的災害」(法2条4項)をいうとされる。同法は、本来人為的に引き起こされる武力攻撃による被害を、不可避的に発生する自然災害と同種であるかのようにいうことにより、有事の場合に、自然災害を対象とする既存の災害対策法制によって構築された組織やネットワークを転用しようとしている。我が国の災害対策法制は、伊勢湾台風を契機として制定された、災害対策基本法を中心として法制化され、同法は、国、地方公共団体、及びその他の公共機関によるネットワークを構築し、総合的、計画的な防災行政を整備、推進することを目的としている。そして、同法の基本は、国民の生命、身体、財産を災害から保護すること(同法1条)、すなわち、憲法の基本原理である基本的人権の保障にある。しかるに、国民保護法は、前記のとおり、平和主義、基本的人権の保護という憲法の基本原理を損なうおそれがあるから、国民保護計画に、災害対策法制に基づく諸制度を転用するのは、これらの制度の趣旨に反するおそれがあり、慎重でなければならない。 国民保護法が、「武力攻撃災害」という概念を用いて、武力攻撃による被害を一種の自然災害であるかのように位置づけることは、国民の協力や強制措置について了解が得られやすいという狙いもあるのではないかと考えられる。国民保護法は、政府に対して国民に対する啓発に努めることを求めているが(法43条)、政府あるいは地方公共団体は、国民の自然災害に対する意識を利用し、武力攻撃の事態と自然災害とを同種のものと誤解させるような啓発活動を行うことにより、国民の協力や強制措置への受忍を事実上強制し、国民の権利を安易に制限するようなことがあってはならない。したがって、宮城県が国民保護計画を作成し、また国民保護法に定める国民保護措置を実施するに当たっては、安易に災害対策法制に基づく諸制度を転用すべきではなく、自然災害と武力攻撃事態(緊急対処事態を含む)による被害の性格の違いや、そもそも武力攻撃事態等の発生やその認定自体が、自然災害と異なって、政治性を有するものであって、自然災害と同視できないことを充分に念頭に置く必要がある。
(3) そもそも、武力攻撃災害に対して、有効な準備がありうるのか大いに疑問である。平成17年3月に国が作成した「国民の保護に関する基本指針」は、武力攻撃事態として、着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃の4つの類型を想定しており、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃に対しては、まず屋内へ避難することとされている。基本指針のこの考え方は、最初の攻撃は避けようがないので、その後の被害の拡大を抑えることを想定しており、最初の攻撃に対しては有効な準備があり得ないことを前提としている。また、その後の被害の拡大を防止するといっても、宮城県の広い地域が攻撃され、あるいは広い地域に被害が広がるおそれのある場合に、多くの宮城県民が他府県に避難することなど、現実的には不可能である。また、原子力爆弾など、核兵器を用いた攻撃がなされた場合には、どんな準備があっても甚大な被害が生じることになる。このように、武力攻撃災害に対して有効な準備は実際には不可能であるにもかかわらず、国民に対してその準備を強調すると、武力攻撃災害に対する不安や危機意識だけを煽ることになり、仮想敵国を作り出して仮想敵国の国民を差別扱いしたり、我が国の軍事大国化を進めることにもなりかねない。 よって、宮城県が国民保護計画を策定するに当たっては、これまでに述べた問題点を踏まえ、平時からの準備を強調することのないように留意すべきである。
2  個別の問題点について
特に以下の点を指摘する。
(1)  「第2章 関係機関との連携体制の整備」について
① 宮城県原案では、国、特に防衛庁・自衛隊との連携を図る(宮城県原案19頁)、とされている。
しかしながら、自衛隊との過度の連携は、国民保護計画を通して、国、自衛隊が宮城県政全般に干渉することにつながりかねず、憲法が保障する地方自治の原則を危うくすることになる。よって、宮城県の策定する国民保護計画においては、防衛庁や自衛隊との連携が過度に強調されることがないようにしなければならない。
② 宮城県原案は、市町村との連携の項で、消防団の充実・活性化を図るという(宮城県原案20頁)が、消防団に国民保護計画の中で重要な役割を担わせるのであれば、消防団員に対して、国民保護措置を実施するに当たっては、国民の基本的人権を尊重し、国民の権利利益の迅速な救済が必要であること(基本指針3頁「第1章国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針」)をよく理解させる必要があり、国民保護計画において、そのための具体的な手だてを明記すべきである。また、宮城県原案は、ボランティア団体等に対する支援の項で、特に自主防衛組織に対する支援を述べる(宮城県原案21頁)が、自主防災組織を一般のボランティア団体と区別する必要はない。かえって自主防災組織を特別扱いすることは、住民間に無用の摩擦や人権侵害をもたらすおそれがある。よって国民保護計画においては、自主防災組織を特別扱いする規定を削除すべきである。
(2) 「第4章 情報収集提供等の体制整備」について(宮城県原案24頁)
宮城県原案は、地方公共団体は、国民保護措置の実施のために必要な情報の収集、蓄積及び更新に努めると定める。しかし、この情報収集活動が過度に強調されると、平時から個人情報が際限なく行政によって収集、蓄積、利用されるおそれがある。また、国民が平時から、他人の行動を監視し、行政にその情報を伝えることになれば、戦前の国民相互監視社会の再現となりかねない。国民保護計画において、その点に留意し、宮城県の情報の管理の点を含めて、宮城県の情報収集活動を監視する第三者機関の設置を明記すべきである。
(3) 「第8章 国民保護に関する研修・訓練・啓発の実施」について(宮城県原案37頁)宮城県原案は、特に訓練について、防災訓練における既存のノウハウを活用する、防災訓練における実施項目を参考にして訓練を実施する、可能な項目について国民保護措置についての訓練と、防災訓練とを有機的に連携させるとして、自然災害のための制度の転用を図っている。しかし、自然災害のための制度を国民保護措置に転用することについては前述のように大きな問題点があり安易な転用は慎むべきである。また、宮城県原案は、訓練に当たっては、住民に対し広く訓練への参加を呼びかけるとされているが、訓練に参加するか否かは住民の自由意思に基づくべきであり、訓練に参加しなかった者が他の住民から差別扱いされるようなことがあってはならず、事実上の強制をすることのないよう、国民保護計画においてその旨を明記し、担当職員に周知徹底を図るべきである。宮城県原案では、「県は、住民に対し、各種広報媒体等を活用して、国民保護措置の重要性について継続的に啓発を行う」(宮城県原案38頁)とされているが、有効な準備が難しいにもかかわらず、過度の啓発活動を行うと、前述のように、国民に対して武力攻撃災害に対する不安や危機意識を煽ることになる。また、宮城県原案では、啓発の実施に当たっては、防災に関する啓発と連携するとされているが、自然災害のための制度を国民保護措置に転用することの問題点については既に述べたところである。国民保護計画において、「啓発」に名を借りた言論弾圧や思想統制とならないための方策、措置を明記することが必要である。
第6  安全配慮義務について
1 事態対処法及び国民保護法上の安全配慮に関する規定
事態対処法及び国民保護法には、措置の実施に当たって、安全の確保につき多くの規定を置いているが、これは、対処措置に携わる者あるいは協力する者について、自己の生命身体を危険にさらしてまで対処措置を実施する必要がないという基本的な考え方に基づいている。地方公共団体は、いわゆる非常事態警報が出され、措置が指示されるという場合に、地方公共団体や指定公共機関、指定地方公共機関に所属する職員等を国民保護措置に従事させるよう派遣や指示を出し、職員らは危険に接近し、危険な状態にさらされることになるから、これらの者の生命身体への安全配慮は充分なされなければならない。事態対処法第17条は、「政府は、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない」と定め、国民保護法第22条では、国、都道府県、市町村が国民保護措置について、「その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない」と定めている。いずれも規定が抽象的であるため、実際には国民保護措置の実施にあって危険な行為を事実上強制される可能性があり、これを防止するには、国民保護計画内に具体的な定めをする必要がある。ところが、以下で述べるとおり、政府が作成した基本指針や宮城県原案において、上記の点について、充分具体的な定めがされているとはいい難い。
2  国民の保護に関する基本指針について
同指針には、第1章8「安全の確保」という項が設けられている。その内容としては、「情報の提供」、「連絡応援体制の確立」、機関同士の「連携」と記載されている。これらは、「情報の提供」により、無用な混乱が回避され、混乱や危険な状態にさらされないという効果があることは否定できないが、むしろ「対処措置」(事態対処法第2条7号)や「国民の保護のための措置」(国民保護法第10条)を円滑に行うために必要な行為という意味合いが強く、法律が特別に安全配慮義務を規定した趣旨をより具体化し内容を豊かにするものとはいい難く、極めて不充分である。また、「対処措置」や「国民の保護のための措置」を円滑に行うために必要な行為と、国民保護措置に従事する者に危険が及ばないために必要な措置とは、ある意味では逆のことを意味する。そして、危険が及ばないようにするために必要な措置としては、様々な積極的行為や物的人的な具体的措置が想定されるところだが、基本指針はそれらについては全く触れられていない。
3  宮城県原案について
宮城県原案では、第1編第2章「国民保護措置に関する基本方針」(8)「国民保護措置に従事する者等の安全の確保」に「県は、国民保護措置に従事する者の安全の確保に充分に配慮するもの」とし、「要請に応じて国民保護措置に協力する者に対しては、その内容に応じて安全の確保に充分に配慮する。」とされている(宮城県原案4頁)。ところが、その後の安全配慮についての宮城県原案は、第3編第3章の9「住民への協力要請」の項に「要請を受けて協力する者の安全の確保に充分に配慮する。」(宮城県原案50頁)と記載され、同編第4章第2の3「県による避難住民の誘導の支援等」の項に「(8)避難住民の運送の求めに係る調整」として、運送業者に対する運送の「指示に当たっては、警報の内容等に照らし、当該機関の安全が確保されていることを確認するとともに、安全確保のため、当該機関に対し、武力攻撃の状況について必要な情報の提供を行う。」(宮城県原案59頁)と記載され、同編第5章5「救援の際の物資の売渡要請等」の項に「(2)医療の要請等に従事する者の安全確保」として「県は、医師、看護師その他医療関係者に対し、医療を行うよう要請し、又は医療を行うべきことを指示する場合には、当該医療関係者に当該医療を的確かつ安全に実施するために必要な情報を随時充分に提供すること等により、医療関係者の安全の確保に充分に配慮する。」(宮城県原案67頁)と記載され、同編第7章第1の1「武力攻撃災害への対処の基本的考え方」の項に「(3)対処に当たる職員の安全の確保」として「県は、武力攻撃災害への対処措置に従事する職員について、必要な情報の提供や防護服の着用等の安全の確保のための措置を講ずる。」(宮城県原案71頁)と記載され、更に同章第2の1「武力攻撃原子力災害への対処」の項に「(9)要員の安全確保」として「県は、武力攻撃原子力災害に係る情報について、武力攻撃原子力災害合同対策協議会等において積極的な収集に努め、当該情報の速やかな提供や被ばくの管理などにより、応急対策を講ずる要員の安全の確保に配慮する。」(宮城県原案77頁)と記載されている。この中で「1武力攻撃災害への対処の基本的考え方、(3)対処に当たる職員の安全の確保の項」の「県は・・・防護服の着用等」というのが僅かに具体的といるが、その余は、どのようにして安全を確保するのかが記載されていない。とりわけ、危険が及ばないようにするために必要な措置が求められるところでは、安全配慮義務の履行としては、様々な積極的行為や物的人的な具体的措置が想定されるところであるが(例えば、情報の伝達の具体的方法、連絡方法の整備、安全配慮のための組織作り等)、それらについては全く触れられていない。いずれにしても法律が条文に安全配慮義務を明示した趣旨を受け、その内容を豊かなものにしてゆく必要があり、宮城県原案は不充分なものであるといわざるを得ない。
4  国民保護計画について
国民保護計画においては、一般的な方針として、国民保護措置に従事する職員らは、自らの生命、身体を危険にさらしてまで措置を実施する必要がないこと、危険があると判断して各自が行うべき措置を実施しなかった場合にも、服務違反として懲戒処分などの不利益を受けないことを明示的に規定する必要がある。また、危険か否かを一義的に事前に規定することが困難なため、例えば武力攻撃が予測される地域と指定された場合には、当該地域以外の地域から当該地域に入って国民保護措置を実施することを指示することはできない(礒崎陽輔「武力攻撃事態法の読み方」78頁、同著者「国民保護法の読み方」62頁)というように、危険な地域となることが想定される地域における措置の実施についての一般的な基準を国民保護計画にあらかじめ規定しておくことが必要である。更に、武力攻撃事態が予測される地域での運送について指定公共機関、指定地方公共機関の事業者には応諾義務はないと思料されるので、このことも明示する必要がある。このように、国民保護措置の実施に当たっては、これに実際に従事する地方公共団体の職員や運送事業者などの指定公共機関、指定地方公共機関の労働者の安全が重要な問題となっているのであるから、国民保護計画を作成するに当たっても、職員団体や労働組合など職員の利益を代表するものからの意見聴取を充分に行うことが必要不可欠であると考える。この点で、国民保護協議会の構成員には、指定地方公共機関の事業者側の代表者は含まれているが、労働者側、職員側の代表者が含まれていないことは問題であり、国民保護計画作成に当たっては、これら労働者の意見を聞くために特別の機会を充分に設けることが必要である。
第7  報道の自由、知る権利への配慮をした国民保護計画
1 知る権利は、民主主義社会を維持発展させるために極めて重要かつ基本的な権利である。放送事業者等の報道機関による報道の自由、その不可欠の前提である取材の自由は、知る権利を実質化するものの1つであって、これに対する制限は知る権利の否定につながる。また、報道機関による公権力に対する監視や世論喚起の機能も重視されるべきものである。このような「知る権利・報道の自由」は、まさに武力攻撃事態等の「有事」においてこそ、最大限に保障されなくてはならない。これは、指定公共機関や指定地方公共機関としての放送事業者に対してはもとより、それ以外のマスコミやミニコミ、更に個人に至るまで、同様である。
 かかる観点に鑑みて、宮城県原案第1編第2章(3)「国民に対する情報提供」(宮城県原案3頁)の項中の規定だけでは不充分であり、国民保護計画において、引き続いて「その意味からも、『報道の自由、知る権利、取材活動の自由』は、有事にあっても、最大限に尊重されなければならないのであって、国民保護措置の実施を理由として、これらが制限されることがあってはならない。」と明記されるべきである。2  宮城県原案第2編第2章4「指定公共機関等との連携」(宮城県原案21頁)では、(2)で「指定地方公共機関から報告を受けた国民保護業務計画について、必要な助言を行う」とされている。自主的に策定されるはずの「業務計画」について、「助言」の名の下に、事実上の変更あるいは修正を求めたり、更に報道体制等について「助言」することによって事実上の「報道の自由」の制約となる危険性も考えられる。そこで、国民保護計画においては、そのような危険性を取り除くために、「但し、助言に当たっては、それが法令上のものであると事実上のものであるとを問わず、いかなる形においても強制となったり、あるいは強制ととられるなどして、指定地方公共機関の自主性を損なうことがあってはならない。」ことを付け加えるべきである。
3  宮城県原案第2編第8章3「啓発」(宮城県原案38頁)は、国民保護に関する啓発について定める。
「啓発」が行政機関から一方的に行われたり、それに対する批判を許さないような環境下で行われてはならないことは当然である。また、啓発の内容が常に正しいものとは限らない。それを防ぐためにも、「表現の自由及びその前提としての『知る権利・報道の自由』」の重要性は、ここでも強調されなければならない。「啓発」の対象である住民を含め、多方面からの様々な批判を受けてこそ、保護計画や業務計画は改良されていくのであって、啓発に当たってもその点は充分に留意されるべきである。よって、「啓発」に対する批判ないし自由な討論の重要性が、国民保護計画に明記されるべきである。
4 宮城県原案第3編第2章1「県国民保護対策本部の設置等」の(4)(宮城県原案43頁)は、県対策本部長の権限を規定し、①においては指定地方公共機関が実施する国民保護措置に関する総合調整が、③においては指定公共機関に対し指名する職員の派遣を求めることが、⑤においては指定地方公共機関等に対し報告又は資料の提出要求が、それぞれできることとされている。これらは上からの強制あるいは強権発動となる危険性を含んでいる。①においては、「自主性及び自立性に配慮する」と記載されてはいるが、①以外にはこの点の記載はない。国民保護計画においては、全体について、「自主性と自立性」を明記するとともに、「配慮」ではなく、自主性と自立性の「尊重」とすべきである。⑤の報告又は資料の提出要求は、運用によっては報道の自由を正面から侵害しかねない危険性を含んでおり、慎重な対処が必要である。国や地方公共団体が提供する情報が適切妥当な内容のものか否かは、放送事業者等のメディアによる複合的・多角的な取材や報道によって検証されうるのであって、かかる、検証にさらされない情報は市民の適正な判断をゆがめ誤った選択を強いる危険性がある。特に、国の意思が強く出ることになる有事における情報についてはこの観点からの検証が不可欠である。以上から、国民保護計画においては、(4)の冒頭文の末尾に、「県国民保護対策本部長は、以下の権限の行使に当たっては、関係機関の自主性を損なうことがなく、また万が一にも表現の自由又は報道の自由を損なうこと、あるいは、損なうおそれあるとうけとめられることがあってはならない。」ことを明記すべきである。
5 指定公共機関ないし指定地方公共機関としての放送事業者は、政府や知事に対して、取材過程で知り得た情報等を、取材源を含めて、提供することを事実上強いられる危険性がある(法34条7項)。また、放送事業者は報道の根幹にかかわる体制や報道姿勢について「業務計画」として作成し、これを内閣総理大臣や知事等に報告する義務を負い、かつ助言を受けることがある(法36条)。これは報道の自由の根本をなす取材活動を含む報道体制・姿勢を定めるについて公権力の関与を認めることに他ならない。更に、対策本部長(知事)が、いかなる情報・経緯に基づき武力攻撃事態等の現状を認識したかに関しての検証を前提とせず、放送事業者は、速やかに警報の放送、避難指示等の放送、緊急通報の放送などをすることが義務づけられている(法50条、57条、101条)。報道機関としての自主的な体制の構成及び維持がなければ、報道の自由はあり得ない。特に、武力攻撃事態等の現状については、その多くが防衛秘密とされ、放送事業者等の取材が著しく制限される。  国民保護計画の作成に当たっては、これらの問題点を回避できるような具体的な定めを明記すべきである。2005年(平成17年)12月14日

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高橋洋一 【日本の解き方】誤解だらけの「水道民営化」 外資乗っ取り懸念は杞憂だ、競争力はあり選択肢も広い [政治]

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慰安婦合意「蒸し返し」社説比較!だがちょっと待ってほしい!子供扱いしてるのは「二人でモリカケKAZUYA [政治]

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【沖縄の声】中国海軍が潜水艦が尖閣諸島接続水域を航行、相次ぐ米軍ヘリの不時着、県民は騒ぎ過ぎでは?[H30/1/13] [政治]

【沖縄の声】中国海軍が潜水艦が尖閣諸島接続水域を航行、相次ぐ米軍ヘリの不時着、県民は騒ぎ過ぎでは?[H30/1/13]

平成30年1月12日金曜日に放送された『沖縄の声』。本日は、ジャーナリストの恵 隆之介氏が「10日より11日かけて、中国海軍が潜水艦同フリゲート艦が尖閣諸島接続水域を航行」、「相次ぐ米軍海兵隊ヘリの不時着、県民は騒ぎ過ぎでは?」、「与党日中協議会出発直前に試された日本側のやる気」、「インドネシア・ジャカルタで頑張る沖縄青年『日本人というだけで大変な敬意を表される』」の4つヘッドラインについて解説いたします。
※ネット生放送配信:平成30年月1月12日、19:00~
出演:
   恵 隆之介(ジャーナリスト・沖縄支局担当キャスター)
   島 あずさ(沖縄県在住ラジオパーソナリティー)
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余命三年時事日記 2274 ら特集10仙台弁護士会⑤24 [余命三年]

余命三年時事日記 2274 ら特集10仙台弁護士会⑤24
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2274-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a424/ より

平成19年06月29日 犯罪被害者等参加制度関連法成立に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/466

去る6月20日、犯罪被害者および遺族(以下「犯罪被害者等」という。)の刑事手続参加制度の新設と損害賠償命令制度を含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立した。犯罪被害者等が刑事裁判手続に当事者として直接参加する制度は、現行の刑事訴訟の本質的な構造である検察官と被告人・弁護人との二当事者の構造を根底から変容させ、法廷を復讐の場に逆行させる大きな危険を孕むものである。また、損害賠償命令制度には、刑事事件と民事事件には、立証責任の所在などの点で重要な相違点があるにもかかわらず、刑事裁判と同一の裁判官が基本的には刑事訴訟記録に基づいて民事損害賠償の判断を行なうという重大な問題点がある。それゆえ、当会は、これまで両制度に強く反対してきたものであり、にもかかわらずこの法律が成立したことは、極めて遺憾である。この法律に重大な問題点があることは、参議院法務委員会での附帯決議が、①当事者主義の理念を前提とすること、②過度の報復感情や重罰化を招かないこと、③被告人の権利の適切な保障などに配意した公正かつ適正な運営、④実施時期が近接する裁判員制度において特に被害者参加人による量刑に係る意見については裁判員が被害者参加制度の趣旨を十分に理解することができるよう配意することを、政府及び最高裁判所に対して求めていることからも明らかである。当会は、本年2月の定期総会で反対の決議を行い、また、衆議院通過の際にも反対の声明を発表したところであるが、あらためて、今回の犯罪被害者等参加制度関連法の成立を受け、被告人に憲法上保障された権利の実現のために、上記附帯決議が指摘する運用の徹底と制度の問題点の不断の見直しを求めていく決意である。
2007(平成19)年6月29日仙台弁護士会 会長 角山正

平成19年06月13日 犯罪被害者の刑事参加手続に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/468
犯罪被害者の刑事参加手続に反対する会長声明

当会は,本年2月24日の定期総会において,被害者参加人制度及び付帯私訴制度は現行刑事裁判制度の根幹を揺るがすものであり,その導入は断じて容認することができないので,政府に対し,このような制度を含む刑事訴訟法の改正案を国会に提出しないように求めるとともに,国会にも上記改正案を成立させないよう強く求めることを決議した。しかし,衆議院は,本年6月1日,被害者の刑事手続参加制度の新設を含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」を可決し,参議院に送付した。衆議院での可決に先立ち,本年5月29日の衆議院法務委員会における参考人質疑においても,被害者の遺族の立場にある二人の参考人が,この法案に対して賛成と反対という異なる意見を陳述し,研究者である二人の参考人も大きく異なる見解を述べている。このように,国民の中で意見が分かれているにもかかわらず,衆議院法務委員会においては,このように,十分な審議が尽くされず,法案が採決されるに至ったものである。本法案の参加制度においては,犯罪被害者等は,検察官とは別個の当事者の立場で,証人や被告人に尋問したり,求刑意見を述べたりすることができ,そこに報復感情が影響してくることは否定できない。また,被告人・弁護人は検察官だけでなく,犯罪被害者等とも対峙しなければならず,被告人の防御権の行使にとって負担が加重となることは避け難い。以上のように,本法案は刑事裁判の現場に多大な悪影響を及ぼすことが明らかであることから,参議院に対し,上記改正案を成立させないよう,改めて強く求める次第である。
2007(平成19)年6月13日仙台弁護士会会長角山 正

平成19年05月16日 憲法改正手続法の抜本的見直しを求める会長声明
ttp://senben.org/archives/470

本年5月14日、憲法改正手続法が、参議院本会議において可決成立した。当会は、国民主権主義などの憲法の基本原理を尊重する見地から、また硬性憲法の趣旨からも、憲法改正手続法案に対し、最低投票率の定めがないことをはじめ、公務員及び教員の投票運動を禁止していること、憲法改正の発議後投票日14日前までの有料意見広告を可能にしていること、発議後投票日までの期間が短すぎること等、多くの重大な問題点があることを指摘してきた。また、当会は、参議院での慎重審議を尽くすよう強く要請してきた。にもかかわらず、法案は、上記の問題点が何ら解消されないままに、極めて短い期間で、広く国民的論議が尽くされることなく可決成立してしまった。同法が可決される際、最低投票率制度の意義・是非について検討することを含む18項目にも亘る附帯決議がなされたことは、同法が多くの重大な問題点を残し、かつ、十分な審議を経ていないことを如実に示すものである。国民主権にかかわる最重要の法案が、国民の意思を十分に汲み取ったとは言えない拙速な審議によって成立してしまったことは誠に遺憾である。憲法改正手続法の国民投票に関する規定の施行は公布から3年後とされた。当会としては、国会に対し、この3年の間に、附帯決議がなされた事項にとどまらず、憲法改正権者は国民であるという視点にたち、あらためて国民投票に真に国民の意思を反映することができるような法律にするべく、同法の抜本的な見直しがなされることを強く要請する。
2007(平成19)年5月16日仙台弁護士会 会長 角山 正

平成19年04月27日 イラク特措法の2年間延長法案に反対し、自衛隊の即時撤退及びイラク特措法の廃止を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/472

政府は、2007(平成19)年3月30日、時限立法として制定され本年8月1日で失効する「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(以下「イラク特措法」という。)を2年間延長する同法改正案を国会に上程した。当会は、自衛隊のイラク派遣に関して、これまで「イラク特別措置法案に対する会長声明」(2003年7月16日付け)、「自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明」(同年12月18日付け)、「自衛隊のイラク即時撤退を求める会長声明」(2004年4月12日付け)、「自衛隊のイラク派遣延長反対・即時撤退並びにイラク特別措置法の廃止を求める会長声明」(2004年11月17日付け)及び「自衛隊のイラク派遣再延長に反対し、即時撤退及び『イラク特措法』の廃止を求める会長声明」(2005年11月17日付け)をそれぞれ発表し、自衛隊イラク派遣が自衛隊の武力行使を事実上容認し、また米英軍を中心とする占領軍及び主権移譲後の多国籍軍の武力行使と一体化するものであって、憲法前文及び9条に違反するおそれが極めて高いこと、自衛隊が駐留していたサマワも迫撃砲が撃ち込まれるなど「非戦闘地域」とは言えずイラク特措法にも違反していることを指摘してきた。そもそも、自衛隊のイラク派遣は米英によるイラク侵攻に端を発するものであるが、そのイラク侵攻は国連安保理決議もなく、自衛行為でもないので、国連憲章に違反していることは明らかである。しかもこの間、イラク侵攻の大義名分とされてきた大量破壊兵器の存在及び旧フセイン政権と国際テロ組織アルカイダとの結びつきまでもが、いずれも虚偽情報であったことが明らかとなった。このような状況の中、当初占領軍や多国籍軍に加わっていたスペイン、オランダ、及びイタリア等18カ国が既にイラクから撤退し、デンマークやリトアニアも撤退を表明し、さらにはイギリスも派兵規模を半減すると表明している。アメリカにおいても、イラク駐留米軍の撤退期限を上院では2008(平成20)年3月末まで、下院では同年8月末までとする法案を可決している。しかるに、政府は、2006(平成18)年7月17日に陸上自衛隊をサマワから撤退させたものの、航空自衛隊及び海上自衛隊の派遣を継続し、航空自衛隊についてはその活動地域をバグダッド等に拡大させている。既にイラク全土が内戦状態にあると言われている中で、航空自衛隊機が離発着するバグダッド及びその近郊は、とりわけテロや戦闘が続く激戦地であり、「非戦闘地域」であるとはおよそ認められない。従って航空自衛隊の活動拡大は、イラク特措法違反と言わざるを得ない。また、航空自衛隊の活動内容も、政府はその全容を明らかにしていないものの「武器を携行している米兵」(2004年4月8日津曲義満航空幕僚長記者会見)や「多国籍軍の軍人、兵士等」(2005年3月14日参議院予算委員会大野防衛庁長官答弁)を輸送しており、多国籍軍のための輸送支援であることは否定できない。これらの輸送支援は、「人道復興支援活動」ないし「安全確保支援活動」とは言えず多国籍軍の武力行使と一体化するものであって憲法前文及び9条に違反する疑いが極めて濃厚である。加えて、多国籍軍の中心をなす米軍は、これまで対テロ作戦と称してイラク各地で幾度となく掃討作戦を繰り返してきたが、その戦闘に巻き込まれて多くのイラク一般市民が死傷している。このような状況下で、イラク特措法を延長し、自衛隊のイラク派遣を継続することは、武力によらない平和を希求し、全世界の人々の平和的生存権を確認する日本国憲法の恒久平和主義に反するとともに、現地で活動する自衛隊員の安全を著しく脅かすものである。にもかかわらず、政府は国民に対して、イラクに派遣されている自衛隊の活動実態を十分説明することもないままに、時限立法たるイラク特措法の延長法案を成立させようとしている。よって、当会は、日本国憲法の恒久平和主義に背く政府の姿勢に対して抗議するとともに、イラク特措法の延長に反対し、自衛隊の即時撤退及びイラク特措法の廃止を強く求める。
2007年(平成19年)4月27日仙台弁護士会  会長 角山 正

平成19年04月25日 憲法改正手続法案(国民投票法案)に反対し参議院での慎重審議を求める緊急会長声明
ttp://senben.org/archives/476

与党は、2007年(平成19年)4月13日、衆議院本会議において日本国憲法の改正手続に関する法案(いわゆる国民投票法案)を強行採決した。与党は参議院においても5月3日までに本会議採決を目指しているとされる。しかし、同法案には、国民に対する中立公正な情報提供、自由かつ十分な投票運動の保障、投票結果への国民意思の正確な反映等の観点から重大な疑義が存在する。これらの問題点については既に2006年(平成18年)7月7日の東北弁護士会連合会大会決議、同年8月22日付け日本弁護士連合会意見書、当会の2007年(平成19年)2月24日の総会決議において指摘されているところである。憲法96条1項の「国民の承認にはその過半数の賛成を必要とする」の意味については諸説があるが、憲法が、憲法改正について国民の承認という特別の手続を定めたのは、憲法改正は主権者である国民自らの意思によらなければならないという国民主権原理に基づく。そして国民自らの意思による改正と言えるためには、少なくとも改正に賛成する票が白票や無効票を含む全投票総数の過半数を超えたときに国民の承認があったものとされるべきである。しかしこのように解したとしても最低投票率の制度を設けなければ、投票率が低い場合、投票権者の少数の賛成で憲法改正が可能となってしまうが、それでは国民自らの意思による憲法改正とは到底評価できない。従って国民自らの意思による憲法改正と言えるためには一定の最低投票率の定めが不可欠である。もっとも最低投票率の定めについては、憲法がそれに言及していない以上そのような制度を設けることは憲法に違反するとの見解もある。しかし、最低投票率の制度は、最低投票率にも達しないような投票結果では真に国民自らの意思とは評価できないので「国民の承認あり」とすべきでないとの考えに基づくものである。従って最低投票率の定めはむしろ憲法96条1項の要求するところであって、条文が最低投票率に言及していないとの一事で憲法に違反すると考えることは妥当でない。そして最近の世論調査によれば、最低投票率の定めが必要とする意見は79%にも達している。また昨日仙台市で開催された参議院地方公聴会においても、公述人は最低投票率の定めは絶対に必要との考えを述べている。しかるに与党案は最低投票率の定めを欠いている。与党案については、それ以外にも、公務員及び教員の投票運動を禁止していること、憲法改正の発議後投票日14日前までの有料意見広告を可能にしていること、発議後投票日までの期間が短すぎること等重大な問題点が指摘されている。ところが与党は衆議院において、拙速審議との強い批判にもかかわらず与党単独での強行採決を行った。そして今また参議院送付後僅か2週間程度で再び強行採決を目指している。主権者たる国民の意思が正確に反映されるよう万全を期すべき国民投票法案についてかかる拙速な審議がなされることは誠に由々しき事態と言わねばならない。当会は、我が国の在り方の根幹に関わる国民投票法案が、上記の重大な問題を残したままで制定されることに断固反対である。参議院においては、さらに全国各地で公聴会を開催するなど国民の意思を十分に汲み取り、良識の府にふさわしい慎重な審議を尽くすよう強く求めるものである。
2007年(平成19年)4月25日仙台弁護士会 会長 角山 正

平成19年02月24日 国選弁護報酬・費用の大幅増額と予算措置を求める決議
ttp://senben.org/archives/480

1 憲法37条3項は,被告人に国選弁護人を付する義務を国に課している。また,被疑者の弁護人依頼権は憲法上保障されているが,貧困等のため弁護人を依頼できない被疑者に対しては,憲法と国際人権法の諸規定に鑑み,国が弁護人を付す責務を負っているというべきであり,平成18年10月から実施された被疑者国選弁護制度も,こうした憲法上の要請を受けて定められたものである。このような憲法上の要請を受けて活動する国選弁護人の職責は極めて重いものであり,国は国選弁護人に対してその職責に応じた適切な報酬と実費を支払うべきである。しかるに,国は,これまで国選弁護人報酬額を極めて低額な報酬にとどめ置いてきたばかりか,記録謄写料,交通費等の実費を原則として支給しなかった。これは,国選弁護人制度の実施にあたり,被告人の権利擁護のために努力する弁護士の犠牲的活動に依存し,国の経済的負担を不当に回避してきたものと言わざるを得ない。このような視点から,当会はこれまで,二度にわたる会長声明において国選弁護報酬の引き下げに厳重に抗議するとともに,適正な報酬額にするよう求めてきた。
2 このような経過の下において,平成18年5月に定められた日本司法支援センターの「国選弁護人の事務に関する契約約款」に基づく国選弁護報酬及び費用(以下「新算定基準」という。)は,以下のとおり,極めて低額に据え置かれてきた報酬額をさらに減額したばかりでなく,加算基準の内容において極めて不合理な点があり到底容認できない。まず,被告人国選弁護の基礎報酬は,これまでの報酬額を更に下回るもので低廉に過ぎる。次に,被疑者国選弁護の報酬は,接見回数に2万円を乗じた金額(但し初回接見2万4000円)となっている。そもそも,被疑者弁護活動は接見に尽きるものではなく,事実調査を行なったり,自白強要等不当な取調べを阻止したり,家族との意思疎通を図ることで社会復帰に向けての環境を整備したり,示談を進めたり,また被疑事実及び情状について検察官に意見を述べるなどの様々な活動を含む。従って,接見回数のみによって報酬額を決定することに合理性がないことは明らかであり,別途基礎報酬を設定する必要がある。また,新算定基準によれば,報酬の特別成果加算として,示談成立が挙げられているものの,犯罪事実すべてについて示談が成立しなければ全く加算されないこととなっている。しかし,一部についての示談であったとしても,その成立のため弁護人が一定の活動をした結果,執行猶予や減刑の可能性が高まるのが通常であることからすると,このような成果を特別加算の対象とすべきは当然である。更に,被疑者弁護における起訴猶予,嫌疑不十分・嫌疑なしによる不起訴処分,被告人弁護における執行猶予や無罪及び保釈等の獲得に対する特別成果加算が認められていない。しかし,これらの結果は,弁護人が被疑者等に有利な情状,被疑者等と犯罪事実とのつながりを否定する事情や当該行為が犯罪を構成しない理由,また保釈を認めるべき相当な事情等を検察官や裁判所に対して主張した結果であることが通常であり,類型的に見れば,まさに弁護人の諸活動の成果であることは明らかであって,このような成果を特別成果加算の対象とすべきは当然である。実費についても,新算定基準によれば往復100キロメートル未満では弁護活動のための交通費の支払はなされず,200枚以内の謄写枚数に対して記録謄写料の支払さえなされないこととなっている。しかし,弁護活動に必要な実費さえ支給しないことは,低額な国選弁護報酬をさらに実質的に削減することを意味し,到底容認できない。
1 平成21年には,被疑者国選弁護の対象が必要的弁護事件に拡大し,国選弁護制度を支えるために弁護士はさらなる経済的犠牲を求められ,前述した問題点が一層その深刻さを増すことは明らかである。そこで,当会は,持続可能性のある国選弁護制度の確立のためには制度を支える弁護士に対して適切な報酬及び費用が支払われるべきであるという視点から,日本司法支援センターに対しては,国選弁護報酬・費用の大幅増額及び合理的な加算基準を求めるとともに,国に対しては上記増額のために必要な予算措置を求める次第である。以上のとおり,決議する。
平成19年(2007年)2月24日仙台弁護士会会長  氏  家  和  男

平成19年02月24日 犯罪被害者参加人制度及び付帯私訴制度導入に強く反対する決議
ttp://senben.org/archives/478
犯罪被害者参加人制度及び付帯私訴制度導入に強く反対する決議

1 法制審議会は,平成19年2月7日,被害者参加人制度及び付帯私訴制度を柱とする要綱を決定した。これを受けて政府は,今国会に法案を提出する構えである。しかし,上記両制度は,現行刑事裁判制度の根幹を揺るがすものであり,その導入は断じて容認することができない。
2 被害者参加人制度は,故意に人を死傷させた事件等について,犯罪被害者や遺族(以下,「被害者等」という。)に,在廷することを認めた上で被告人に質問し,証人に対しては情状に関する内容について質問し,そして検察官の論告求刑後,独自に論告求刑をするなどの権限を付与するものであり,「参加人」と称しつつも,まぎれもなく訴訟当事者としての地位を認めるものである。しかし,近代刑事司法制度においては,私的復讐が公的刑罰に昇華された結果,国家と被告人が対立当事者として予定されることとなり,ここに私人としての被害者等が当事者として加わることは,法廷を復讐の場に逆行させる大きな危険を孕むものである。いうまでもなく,被告人は,有罪判決が確定するまでは無罪と推定されなければならない。被害者等が刑事裁判に当事者として参加することは,当該被告人が犯人であることが前提となっており,無罪推定の原則が侵害される結果となる。本制度が導入されるときには,被告人が,被害者等から怒りや悲しみなどを前面に出した質問を直接に受けることになり,時には供述したいことを控えざるを得なくなるなど防御活動を萎縮させる可能性が極めて高い。また,被害者が在廷すること,及び直接に質問又は論告求刑を行うことは,特に平成21年に実施される予定の裁判員裁判においては,裁判員の情緒に強く働きかける結果,証拠に基づいて冷静になされるべき事実認定について不当な影響を与える危険性も強い。更に,被害者等の直接関与により,検察官の訴追活動と異なる被害者等の訴訟活動が行われれば,検察官の訴追方針との不整合が生じ得ることは容易に予想されるところであり,被告人は,それら全てに対して防御することを余儀なくされ,防御すべき対象が拡大することとなり,被告人の防御を著しく困難にする。
3 付帯私訴制度は,有罪判決言渡直後に,刑事事件と同一の裁判官が引き続き刑事裁判で認定した事実や,刑事記録を証拠として,被告人に対する損害賠償額を決定するというものである。しかし,そもそも,同制度は起訴後何時でも付帯私訴申立書を提出することが許されているため,同申立書記載内容が証拠法則の吟味を受けずに裁判所が目にすることを意味し,まさに証拠裁判主義に反し,ひいては予断排除,無罪推定原則にも抵触する。特にこの弊害は,刑事裁判についての経験に乏しい裁判員による裁判において顕著であるといわざるをえない。また,そもそも刑事事件と民事事件には,立証責任の所在や自白法則等,重要な相違点がある。刑事裁判に引き続き損害賠償命令を出せるとすることは,刑事裁判と民事裁判との相違点を無視することを意味する。更に,この制度においては,被告人及び弁護人としては,過失相殺など損害賠償請求についての審理で争点となると予測される事項を強く意識して審理に対応せざるを得なくなり,刑事訴訟が遅延するとともに,争うこと自体が量刑上不利な情状として考慮されるおそれを感じることで,十分な防御権の行使ができなくなる恐れもある。
2 以上述べてきたとおり,両制度には大きな問題点があり,これを導入することは到底容認できないので,当会は,政府に対し,このような制度を含む刑事訴訟法の改正案を国会に提出しないように求めるとともに,国会にも上記改正案を成立させないよう強く求める次第である。以上のとおり,決議する。
平成19年(2007年)2月24日仙台弁護士会 会長 氏家 和男

平成19年02月24日 憲法改正国民投票法制定に反対する決議 〜特に最低投票率の定めのない法案に反対する〜
ttp://senben.org/archives/484

平成18年5月26日,自民・公明の与党及び民主党は,それぞれ憲法改正に必要な手続を定める国民投票法案を衆議院に提出し,平成19年1月25日に始まった通常国会における重要法案として審議がなされている。いうまでもなく,憲法改正国民投票は,主権者である国民が国の最高法規である憲法のあり方について意思を表明するという国政上の重大問題であり,中立公正な情報提供,自由かつ十分な投票運動の保障,投票結果への国民の意思の正確な反映等が不可欠である。しかし,上記両法案には,中立公平が期待できない広報,国民投票運動の広範な制限,少数の賛成で承認とされる恐れ等の重要な問題点が多々含まれている。それらの問題点については,東北弁護士会連合会の平成18年7月7日の大会決議や日本弁護士連合会の同年8月22日付け意見書などで指摘されており,その後の国会での審議などで改善が検討されているものもある。しかるに,国民投票を有効とする条件としての最低投票率の定めについては,与党及び民主党は導入しないという考えであり,議論すらほとんどなされていない。現行憲法は,人権尊重主義,国民主権及び平和主義を掲げ,広く国民に浸透・支持されてきた国の最高法規である。憲法改正とは,このような現行憲法を積極的に変更しようとする行為であり,国民と国家に多大な影響を与えるものである。それゆえ憲法自身改正が容易になされないよう厳格な改正手続を定めている。よって,憲法改正には国民の多数がこれを是として現状を変更する旨の意思を明白かつ積極的に表明することが必要と考えるべきである。ところが,最低投票率の定めが導入されなければ,例えば投票率40%の場合には投票権者の20%超程度の賛成で足りることになり,投票権者のほんの少数の賛成により憲法が改正される恐れがある。このように投票権者の3分の1にも満たない少数の賛成で憲法改正が承認されるのは,改正憲法の正当性・信頼性に疑義が生じ極めて不当と言わざるを得ない。そのため,日本弁護士連合会も前記の意見書で憲法改正の重要性や硬性憲法とされている趣旨からして少なくとも3分の2以上の最低投票率を定めるべきであるとの意見を発表している。当会も少なくとも3分の2以上の最低投票率を定めることを強く求めるものである 憲法改正を目的とした国民投票法を制定すること自体の是非をめぐっては議論が存するところであるが,昨今の国会情勢からして,東北弁護士会連合会の前記決議で指摘した問題点が解消されないまま,また,最低投票率の定めについては議論もないまま,国民投票法が近日中に成立してしまう恐れが強くなっている。そこで,当会は,前記決議で指摘した問題点が解消されないまま国民投票法を制定することに反対するとともに,とりわけ最低投票率の定めのない国民投票法案に強く反対するものである。以上決議する。

平成19年(2007年)2月24日仙台弁護士会 会長 氏家 和男

平成18年11月16日 教育基本法改正に反対する緊急声明
ttp://senben.org/archives/487

これまで当会は2回にわたり、教育基本法改正反対の会長声明を発表し、本年5月18日には、改正法案についてほとんど非公開のうちに議論が進められたこと、改正の必要性について全く検証もなされていないこと、また、内容的にも、憲法に則り「個人の価値」を最大限尊重することを目的とした現行法に比べ「公共の精神」を養う目的を加えることで、その理念を後退させたばかりか、愛国心教育を目標と定めて内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがあることなどをその重大な問題点として強く反対した。 しかるに、今国会に提出された改正法案においては、上記問題点が全く解消されていないばかりか、近時のマスコミ報道により、教育基本法改正にあたっての民意の反映の過程自体にも重大な問題点を孕むことが明らかとなっている。すなわち、政府は市民と政府の相互対話の場としてタウンミーティングを開催し、教育基本法改正問題についてもタウンミーティングを通じて民意を反映したかのごとき体裁を整えてきた。しかし、政府は、タウンミーティング実施に際して、質問事項を地元教育委員会に送るなどして教育基本法改正に賛成する「やらせ」発言をさせたことなどが明らかになった。更に、近時は政府が、賛成意見を述べる者に対して謝礼を渡していたという事実も判明し、加えて主催者において政府側の意を受け、改正に反対する参加者を意図的に排除したという疑惑も生じている。いうまでもなく、教育基本法は、憲法と同様に、その基本において名宛人は国家であり、教育の根本規範として、子どもが自由かつ独立の人格として成長するために必要な理念と基本原則を明らかにしたものであって、準憲法的・立憲主義的な性格を有するものである。教育基本法の改正は、このような教育基本法の性格に鑑み、通常の法律以上に慎重でなければならないし、その内容について十分な国民的合意が必要なものと言わなければならない。にもかかわらず、上記の通り、民意を聞く場におけるやらせ発言によりいわば世論を偽装し、政府の求める方向に世論を恣意的に誘導しようとする姿勢は、民主主義の根幹を揺るがすものとして厳しく断罪されなければならない。NHKの最新のアンケートでは、改正に賛成する者は全体の4割に過ぎず、しかも、賛成するものの中でも、その7割は拙速な改正には反対しているという。また、東京大学による全国の小中学校校長に対するアンケートによれば約7割近くが改正に反対しており、宮城県でも元公立小中学校校長19名が連名で改正に反対を表明している。更に、仙台市において11月8日に開催された地方公聴会においても、国民的議論と合意が必要であると慎重審議を求める声が多かった。一方、現在、教育にまつわる重大な問題が噴出している。いうまでもなく、一つには陰湿なイジメの問題や虐められた子どもの自殺の問題、そしてその連鎖の問題であり、もう一つには学習指導要領により必修とされた科目を意図的且つ組織的に履修させないということが広く行われていたという問題である。今、社会が緊急に求められていることはまさにこれらの諸問題の原因の探求と対策であり、これらの検証作業が行われること抜きに、不適切な方法による世論の誘導の中で教育基本法の改正が行われることは断じて容認できない。しかし、与党は、去る11月15日、衆議院の教育基本法特別委員会において野党欠席のまま単独採決を行い、更に11月16日、衆議院本会議においても野党欠席のまま単独採決を強行した。ここに当会は、あまりにも民意を無視したかかる衆議院の審議のあり方に断固抗議するとともに、参議院においては衆議院における実質的な審理がなされなかった法案として速やかに廃案とすることを強く求めるものである。
18年(2006年)11月16日仙台弁護士会会長氏家 和男

平成18年10月03日 平成18年10月3日会長声明
ttp://senben.org/archives/489

平成18年8月15日、山形県鶴岡市にある加藤紘一衆議院議員の実家と地元事務所が放火されるという事件が発生し、9月19日、右翼団体の構成員であったとされるこの事件の被疑者が現住建造物放火罪と住居侵入罪で山形地方裁判所に起訴された。報道によれば、被告人は、加藤紘一議員が小泉前総理大臣の靖国神社参拝への積極的な姿勢について批判する意見を表明していたことについて強い不満を抱き、放火に及んだとのことである。靖国神社への首相参拝を巡っては、これまでも昨年1月、参拝に反対する発言をした財界関係者の自宅に火炎瓶が置かれ、実弾が郵送されるという事件が発生し、また、本年7月にも昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀に不快感を示す発言をしていたとされるメモをスク?プした新聞社に対して火炎瓶が投げられるなどの事件が発生しており、今般の放火事件も、これらの事件と同様、自己と政治的意見が異なる者への言論封殺のための暴力行為であることは明らかである。いうまでもなく民主主義は、広く国民に多様な価値観、意見の違いがあることを前提に、自由な言論を通じて民意を形成していく過程にその本質があり、その意味で言論の自由の保障はまさに民主主義の根幹をなすものである。異なる政治的意見を持つ者に対して、放火という生命、身体、財産に対するいわば極限的な侵害行為をなすことによりその言論を封殺しようとすることは、ひとり当該政治家の言論の自由の侵害にとどまるものではなく、これにより他の政治家や他団体、更には国民一般の言論の自由に対する著しい萎縮的効果を与えるものであり、まさに民主主義社会を根底から否定しようとする蛮行と言わざるを得ない。当会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする法律家の団体として、言論の自由が保障され、いかなる意見や価値観も自由に表明しうる民主主義社会の重要性を改めて広く市民に訴えるとともに、自由な言論を萎縮させるあらゆる暴力行為を許さない社会を創るため全力を尽くす決意であることをここに表明するものである。
平成18年(2006年)10月3日仙台弁護士会 会長 氏 家 和 男

平成18年05月18日 共謀罪の新設に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/501

2006(平成18)年5月現在、衆議院において、共謀罪新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」の審議がなされている。
当会は、昨年度までに2度にわたり、この共謀罪の新設に反対する会長声明を出した。与党は法案審議の過程で、当初の政府法案を修正する法案を提出した。しかし、この与党修正案をもってしても、当会が上記の会長声明で指摘した問題点は解決されていない。このまま立法がなされるときには市民の思想・信条の自由が侵害され、ひいては情報伝達や情報発信という自由な活動に対する萎縮効果が見込まれ、これを看過することは到底できない。まず、上記政府法案及び与党修正案の最大の問題点は、犯罪の共謀があっただけで犯罪が成立することである。現行刑法では、共謀段階で犯罪が成立するのは、内乱罪・外患罪のみであり、きわめて重大な犯罪に限定されているが、政府法案及び与党修正案では615もの犯罪について、共謀を行っただけで犯罪が成立することとになる。しかも、共謀のみによって共謀罪の成立を認めるということは、犯罪の抽象的な危険の存否すら不明な段階であっても、犯罪に関する会話や通信をしたことだけで犯罪が成立するとされる虞がある。例えば、マンション建設反対運動の話し合いをしただけで、威力業務妨害共謀罪に当たるとして逮捕される可能性があるのである。また、政府法案及び与党修正案では、共謀とは犯罪実現の意思を通じることとされており、構成要件として抽象的であり明確性を欠いている。かかる抽象的、不明確な構成要件の共謀罪の捜査においては、特定の行為だけで構成要件該当性を認定することができないため、市民の思想、信条まで捜査対象となり国民の思想信条を侵害する虞がある。さらに、共謀の事実の捜査の名のもとに捜査機関が市民の一般的な会話を傍受したり、電話や電子メールのやり取りを監視する事態も予想される。このような捜査方法が認められるならば、市民の情報伝達や情報発信という自由な活動が萎縮することは避けられない。結局、共謀罪を新設し、615もの犯罪について、その共謀のみをもって犯罪の成立を認めるということは、思想信条の自由を侵害し、民主主義を支える市民間の自由な情報の流通、とりわけ表現の自由に対する重大な脅威となるものであり、到底容認することはできない。よって、当会は、あらためて、上記政府法案及び与党修正案に対し、強く反対することを表明するものである。
2006(平成18)年5月18日仙台弁護士会会長 氏 家 和 男

平成18年05月18日 教育基本法の「改正」に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/496

1 去る4月28日、教育基本法の全部を改正する法案(以下「本法案」という)が国会に提出された。
2 本法案については、法案化に至る過程において、十分な議論が行われたとは言い難く、法改正の手続に重大な問題がある。本法案の元になった「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」は、2003年6月に設置された「与党教育基本法改正に関する協議会」及びその下の「検討会」において、通算70回にわたる精力的な議論を積み重ねたうえで取りまとめられたものとされるが、この間、2004年6月に中間報告が公表されたことを除いては、全て非公開にて議論が進められており、国民に向けて開かれた議論が行われたとは言い難い。「教育の憲法」とも言われる教育基本法の改正の在り方としては極めて不適切である。
3 今回の改正については、その立法事実についても重大な疑問がある。「与党教育基本法改正に関する協議会」の設置に先立つ2003年3月、中央教育審議会が作成した答申においては、「教育の現状と課題」として、「いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊などの深刻な問題が依然として存在」することが指摘され、そのような「危機的状況を打破し、新しい時代にふさわしい教育を実現するために」改正が必要であるとされている。本法案は上記答申を受けたものであるが、上記答申後本法案提出までの間、上記答申が指摘するような教育現場の問題が教育基本法の欠陥によるものであることの検証は全くなされていない。
4 本法案は、現行教育基本法が第1条において教育の目的として掲げていた「個人の価値をたっとび」の文言を削除し、かえってその前文において、「公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を承継し、新しい文化の創造を目指す教育を推進すること」を謳い、教育の目標として、「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」を明記している。これは、個人の尊厳を重んじる憲法の精神に則り、「個人の価値」を最大限尊重することを教育の目的に据えた現行教育基本法の理念を、「公共の精神」を養う目的のもとで後退させるものであり、極めて問題というほかない。子どもの権利条約29条第1項aは、教育が子どもの成長発達権を支援するために行われるべきであるという理念を普遍的な教育目的として掲げているが、本法案が規定する上記の教育目標はこのような教育についての世界の到達点にも反するものである。
5 また、本法案は、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(中略)態度を養うこと」を教育の目標として据えている。上記答申においては、「国を愛する心をはぐくむ」と表現されており、表現内容に若干の変容が見られるが、その実質において変わりはなく、公教育の場における愛国心教育を推進する内容となっている。しかし、国を愛するか否かを含め、国を愛する心情の内容は、個人の内心の自由に属する問題であり、国が介入し管理・支配してはならない領域である。公教育の場で「国を愛する」ことが当然であると教えることは、内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがある。さらに、現行教育基本法は、明治憲法下の「愛国心」教育が軍国主義という国策のための教育となりこのことが戦争の惨禍の一因となったことを反省し、平和国家建設の決意により誕生したものであるが、「国を愛する態度」を養う教育が行われるとすれば、正に時代の流れに逆行するものである。
3 以上のとおり、本法案は、法案化の手続において著しく拙速であるとともに、その内容においても重大な問題をはらんでいると言わざるを得ない。当会は、「愛国心」教育の名の下に本来の教育が歪められ、国家に有為で従順な人間作りの目的で営まれることに強い危惧を表明し、本法案に基づく教育基本法の「改正」に反対する。
2006年5月18日仙台弁護士会会長 氏家 和男

平成18年05月18日 未決拘禁法案の修正等を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/499

本年4月14日,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(いわゆる未決拘禁法案。以下、「本法案」という。)が衆議院法務委員会の附帯決議をつけ衆議院を可決成立し,参議院に送付された。しかし,本法案には次のような問題点があり,参議院においては修正等がなされることを求める。
* 1 法制審議会は1980年に,「関係当局は,将来,できる限り被勾留者の必要に応じることができるよう,刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて,被勾留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること」(漸減条項)という答申を全会一致で採択した。しかしながら,本法案は,上記答申と異なり、「都道府県警察に留置施設を設置する」(14条)として,法律で初めて警察留置場の設置根拠を認め,さらに,この警察留置場に本来刑事施設に収容すべき被勾留者を「刑事施設に収容することに代えて,留置施設に留置することができる」(15条1項)ことを認めるに至っている。この点に関し,衆議院は上記附帯決議において,「昭和五十五年に法制審議会から『関係当局は、将来、できる限り被勾留者の収容の必要に応じることができるよう、刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて、被拘留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること。』との答申がなされたが、現在、刑事収容施設の過剰拘禁問題の解決が、当時に比しても、喫緊の議題となっており、その実現に向けて、関係当局は更なる努力を怠らないこと。」とし,警察留置場漸減の点に触れてはいるが,代用監獄の弊害に言及せずに過剰拘禁問題との関連で述べるにとどまっていて,不十分のそしりを免れない。以上のとおり,本法案は,代用監獄廃止,漸減の方向性すら明示しておらず極めて遺憾である。
* 2 捜査と拘禁の分離は国際人権(自由権)規約(9条)の求めるところであり,国際人権(自由権)規約委員会も,警察内部での分離では不十分とし,代用監獄の廃止を勧告している(1993年,1998年)。
*  この点に関し,警察庁は1980年,捜査部門と留置部門を分離したと弁明しているが,それ以降でも代用監獄での自白強要,人権侵害事例は後を絶たず,代用監獄の弊害は現在でも解消されていない。これは宮城県内においても例外ではない。例えば,仙台地方裁判所平成13年4月24日判決は、酒に酔っていて事実経過を覚えていない被告人について、誘導のもと自白調書が作成された事案であるが,捜査関係者は被告人が犯行に関与しているとの嫌疑を有しており,自白供述を内容とする上申書が作成されていたが,これは,警部補が鉛筆で下書きしたものについて被告人にボールペンでなぞらせて作成したものであった。判決は,自白を裏付ける客観証拠の欠如,供述の変遷,説明の不自然さ,動機や犯行自体についての迫真性の欠如などを丁寧に認定した上で,自白の信用性を否定したものである。この事件は佐沼警察署での取調中のものであり,全国的にも今なお,代用監獄での人権侵害事例が数多く報告されている。
*  このような代用監獄の弊害からして,参議院は,1980年に法制審議会において採択された前記答申の歴史的事実をふまえ,「拘置所の収容能力の増強に努めて,代用監獄に収容される例を漸次少なくする」との漸減条項を法案の附則として盛り込むか,または,代用監獄の規定を廃止すべきである。
* 3 本法案は,「留置施設の規律及び秩序を害する行為」をするときは,面会の相手方が弁護人等の場合であっても職員による面会の一時停止を認めている(219条1項)。しかし、このような規定は刑事施設法案にもなかった規定であり,しかも、弁護人との秘密交通権に対する干渉に当たるものであるから、このような抽象的理由で弁護人との面会が停止されるようなことはあってはならないのである。したがって、当会は弁護人との面会の停止を定める当該条項が修正されることを求める。*  以上のとおり,本法案には代用監獄の漸減条項が盛り込まれていないなど,種々問題を有するものであるから,当会は今後とも,代用監獄の漸減,廃止と未決拘禁制度の抜本的改革を求めて引き続き粘り強く運動を続ける決意である。
2006(平成18)年5月18日仙台弁護士会会長氏家和男

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余命三年時事日記 2273 ら特集10仙台弁護士会⑤23 [余命三年]

余命三年時事日記 2273 ら特集10仙台弁護士会⑤23
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2273-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a423/ より

平成16年10月21日 教育基本法改正に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/536

1 中央教育審議会は、2003年3月20日、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」と題する答申(以下「本答申」という)を文部科学大臣に対して行った。本答申は、「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、今日極めて重要と考えられる教育の理念や原則を明確にするため、教育基本法を改正することが必要である」と結論づけたうえで、教育基本法の前文及び各条文について、「引き続き規定することが適当」なものと「新しく規定することが適当」なものとを挙げ、具体的な改正の方向を示した。本答申を受けて、政府は与党内協議を重ねており、本年12月からの通常国会に上程すべく改正法案の作成作業を行っているとのことである。
2 現行の教育基本法1条は、個人の尊厳を重んじる憲法の精神に則り、教育の目的を「人格の完成」と明記している。これは、教育が子どもの成長発達権を支援するために行われるべきであるという理念に基づくもので、世界人権宣言や子どもの権利条約にもこれと同様の規定が置かれており、普遍的な教育目的を示すものである。さらに、我が国においては特別な歴史的意義を有している。即ち、明治憲法下の教育は、天皇の言葉である教育勅語によって教育の根本的なあり方が定められ、「滅私奉公」、「忠君愛国」の理念が掲げられた。そして、「愛国心」の名の下、国家に役立ち従順に従う人間を育てるための教育が行われた。敗戦後の日本国憲法下の教育基本法は、明治憲法下の教育が戦争の惨禍の一因となったことを反省し、国家の役にたつ人間づくりの教育を排した。しかるに、本答申は、「これからの知識社会における国境を越えた大競争の時代に、我が国が世界に伍して競争力を発揮する」ために、「知の世紀をリードする創造性に富んだ多様な人材の育成が不可欠である。」とし、教育の基本目標として「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」を掲げて、教育基本法の「改正」を提言している。これは、「人格の完成」という教育の本来の目的を、国家の役にたつ人間づくりの教育へと変質させるものである。
3 さらに、本答申は、「日本人であることの自覚や、郷土や国を愛する心の涵養」を教育の目的として据え、公教育の場において「愛国心」教育が実施されるべきであるとする。しかし、国を愛するか否かを含め、国を愛する心情の内容は、個人の内心の自由に属する問題であり、国が介入し管理・支配してはならない領域である。とりわけ、批判精神が十分に育っていない義務教育段階の子どもに対し、公教育の場で、教師から他の教科課目と並んで、「愛国心」を持つことが日本人として当然であると教えることは、「愛国心」の押し付けとなるおそれが強く、内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがある。また、公教育における日本人としての「愛国心」の押し付けは、我が国の少数民族や在留外国人の子どもたちに対する精神的な圧迫ともなる。近時、広島県、東京都等では、君が代斉唱時に起立しなかった教師が教育委員会によって処分されるという事態が生じており、教師の統制を通じて子どもや保護者に対する君が代斉唱を強制しようとする動きがある。また、2002年には、全国1100万人の小中学生に『心のノート』が配付され、その中には「愛国心」を持つことは日本人として「自然」であるという内容が記載されている。このように、本答申が提起する「愛国心」教育は既に先取りで実施されており、仮に教育基本法に「愛国心」教育が盛り込まれるならば、このような動きは一層強まることが懸念される。
1 以上のとおり、本答申の内容は、教育の目的を国に役立つ人材作りに変容させるとともに、内心の自由を侵害するおそれがあり、憲法、子どもの権利条約及び現行教育基本法の根本理念に反する。当会は、教育が「愛国心」の名の下に国家に役立つ従順な人間作りの目的で営まれることに強い危惧を表明し、本答申に基づく教育基本法の「改正」に反対する。
2004年10月21日 仙台弁護士会会長 鹿野 哲義

平成16年08月26日 弱者の裁判を受ける権利を侵害する「合意による弁護士報酬敗訴者負担」法案に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/538

当事者の合意によって弁護士報酬を敗訴者負担とする制度を創設することを内容とする「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下、本法案という)が、本年3月2日に国会に上程され、現在継続審議となっている。本法案は、訴訟提起後に双方に訴訟代理人がついている場合に当事者の共同申立により弁護士報酬の一部を敗訴者負担とすることを内容とするものである。本法案は、訴訟手続上の制度を定めるものであるが、訴訟外の契約・約款などで敗訴者負担の合意をすること(実体法上の合意)を禁じていない。このため、本法案が成立すれば、訴訟外での私的契約や約款などに「敗訴者負担条項」が盛り込まれ、これが広がっていくことが懸念される。このような合意が、事業者と消費者間の契約、使用者と労働者間の契約、大企業と中小零細企業間の契約など、力の格差のある当事者間の契約や約款に盛り込まれた場合、社会的弱者が、敗訴したときの費用負担を恐れて訴訟を提起することや訴訟を受けて立つことを躊躇し、結果として市民の司法へのアクセスに重大な萎縮効果を及ぼすことになる。本法案は、社会的弱者の裁判を受ける権利を侵害し、司法により権利救済の途を狭めるものである。司法改革推進本部司法アクセス検討会においては、合意による弁護士報酬敗訴者負担について十分な議論はなされておらず、本法案の国会上程に至る手続きも極めて問題のあるものであった。日本弁護士連合会も、上記訴訟外の合意による弊害を防止するため、私的契約による敗訴者負担条項の効力を否定する立法上の措置など抜本的対策を求めてきたが、本法案はその対策さえとられていない。よって、当会は、本法案に反対し、これを廃案することを求める。
2004年8月26日仙台弁護士会 会長鹿野 哲義

平成16年08月26日 国選弁護人報酬の減額に抗議し、増額を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/541

国選弁護人の報酬額は、2000年度から地方裁判所における標準的事件(3開廷)について、8万6400円とされ、その後2年間据え置かれてきていた。ところが、2003年度にはこの国選弁護人の報酬額が、8万5600円に引き下げられ、本年度は、さらに8万5200円に引き下げられるに至った。いうまでもなく国選弁護制度は、刑事被告人の憲法上の権利である弁護人依頼権を実質的に保障しようとする制度である。そして、現在の刑事弁護の実情は、刑事事件数の増大傾向とともに、国選弁護人が選任される比率も増大しており、実に75パーセントにも及んでいる。わが国の刑事事件は、国選弁護人によって支えられているといっても過言ではない。国選弁護人の職務内容は、私選弁護人のそれと同じである。しかるに政府は、弁護士会からの度重なる国選弁護人報酬増額の求めにも応じず、極めて低額な報酬にとどめ置いてきた。しかも、記録謄写料、交通費、通信費等の実費については、原則として支給されず、国選弁護人の個人的負担となっている。このような現在の状況は、弁護士の経済的犠牲の下に刑事弁護制度を維持しようとしているものといって過言ではない。しかも今般の刑事訴訟法の改正により、平成18年12月までには、被疑者段階における国選弁護制度が実施されることになっており、今後も国選弁護制度の適用範囲は増大し、その重要性は増していくことになる。それにもかかわらず、仮に現行の国選弁護人報酬額を基礎に被疑者段階の国選弁護報酬が算定されることになれば、国選弁護人の犠牲と負担はいっそう増大することになる。被疑者・被告人の弁護人依頼権を実質的に保障するためには、多くの弁護士が国選弁護を担当することが必要である。しかし、適正な報酬の支払いがなされず、これまでどおり経済的犠牲と負担を弁護人に押し付け続けるならば、適正な弁護活動を保障する国選弁護の担い手を確保することが困難となっていくことは必定である。適正な国選弁護人報酬の支払いがなされることは、国選弁護制度が十分に機能するための前提である。政府は、これまで極めて低額な国選弁護報酬を抜本的に改めようとせず、逆に昨年度に国選弁護報酬の減額を行い、本年度もさらに減額を行おうとしている。よって、当会は、適正な刑事弁護制度を確立していくためにも、国に対し、国選弁護人報酬の増額等を求め、以下の要望をする。

1.国選弁護人報酬の支給基準を、第一審標準基準事件1件あたり金20万円以上とし、そのために必要な予算措置を講ずること。
2.事件の難度(罪質、罪数)、法廷外の準備活動、法廷内の具体的訴訟活動、出廷回数、審理期間など、弁護活動の総体に応じた報酬および日当を支給すること。
3.弁護活動のための記録謄写料、交通費、通信費、通訳料、翻訳料等の実費全額を、本来の報酬に加算して支給すること。
2004年8月26日仙台弁護士会会長 鹿 野 哲 義

平成18年05月18日 教育基本法の「改正」に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/496

1 去る4月28日、教育基本法の全部を改正する法案(以下「本法案」という)が国会に提出された。
2 本法案については、法案化に至る過程において、十分な議論が行われたとは言い難く、法改正の手続に重大な問題がある。本法案の元になった「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」は、2003年6月に設置された「与党教育基本法改正に関する協議会」及びその下の「検討会」において、通算70回にわたる精力的な議論を積み重ねたうえで取りまとめられたものとされるが、この間、2004年6月に中間報告が公表されたことを除いては、全て非公開にて議論が進められており、国民に向けて開かれた議論が行われたとは言い難い。「教育の憲法」とも言われる教育基本法の改正の在り方としては極めて不適切である。
3 今回の改正については、その立法事実についても重大な疑問がある。「与党教育基本法改正に関する協議会」の設置に先立つ2003年3月、中央教育審議会が作成した答申においては、「教育の現状と課題」として、「いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊などの深刻な問題が依然として存在」することが指摘され、そのような「危機的状況を打破し、新しい時代にふさわしい教育を実現するために」改正が必要であるとされている。本法案は上記答申を受けたものであるが、上記答申後本法案提出までの間、上記答申が指摘するような教育現場の問題が教育基本法の欠陥によるものであることの検証は全くなされていない。
4 本法案は、現行教育基本法が第1条において教育の目的として掲げていた「個人の価値をたっとび」の文言を削除し、かえってその前文において、「公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を承継し、新しい文化の創造を目指す教育を推進すること」を謳い、教育の目標として、「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」を明記している。これは、個人の尊厳を重んじる憲法の精神に則り、「個人の価値」を最大限尊重することを教育の目的に据えた現行教育基本法の理念を、「公共の精神」を養う目的のもとで後退させるものであり、極めて問題というほかない。子どもの権利条約29条第1項aは、教育が子どもの成長発達権を支援するために行われるべきであるという理念を普遍的な教育目的として掲げているが、本法案が規定する上記の教育目標はこのような教育についての世界の到達点にも反するものである。
2 また、本法案は、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(中略)態度を養うこと」を教育の目標として据えている。上記答申においては、「国を愛する心をはぐくむ」と表現されており、表現内容に若干の変容が見られるが、その実質において変わりはなく、公教育の場における愛国心教育を推進する内容となっている。しかし、国を愛するか否かを含め、国を愛する心情の内容は、個人の内心の自由に属する問題であり、国が介入し管理・支配してはならない領域である。公教育の場で「国を愛する」ことが当然であると教えることは、内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがある。さらに、現行教育基本法は、明治憲法下の「愛国心」教育が軍国主義という国策のための教育となりこのことが戦争の惨禍の一因となったことを反省し、平和国家建設の決意により誕生したものであるが、「国を愛する態度」を養う教育が行われるとすれば、正に時代の流れに逆行するものである。6 以上のとおり、本法案は、法案化の手続において著しく拙速であるとともに、その内容においても重大な問題をはらんでいると言わざるを得ない。当会は、「愛国心」教育の名の下に本来の教育が歪められ、国家に有為で従順な人間作りの目的で営まれることに強い危惧を表明し、本法案に基づく教育基本法の「改正」に反対する。
2006年5月18日仙台弁護士会 会長 氏家 和男

平成18年05月18日 共謀罪の新設に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/501

2006(平成18)年5月現在、衆議院において、共謀罪新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」の審議がなされている。当会は、昨年度までに2度にわたり、この共謀罪の新設に反対する会長声明を出した。与党は法案審議の過程で、当初の政府法案を修正する法案を提出した。しかし、この与党修正案をもってしても、当会が上記の会長声明で指摘した問題点は解決されていない。このまま立法がなされるときには市民の思想・信条の自由が侵害され、ひいては情報伝達や情報発信という自由な活動に対する萎縮効果が見込まれ、これを看過することは到底できない。まず、上記政府法案及び与党修正案の最大の問題点は、犯罪の共謀があっただけで犯罪が成立することである。現行刑法では、共謀段階で犯罪が成立するのは、内乱罪・外患罪のみであり、きわめて重大な犯罪に限定されているが、政府法案及び与党修正案では615もの犯罪について、共謀を行っただけで犯罪が成立することとになる。しかも、共謀のみによって共謀罪の成立を認めるということは、犯罪の抽象的な危険の存否すら不明な段階であっても、犯罪に関する会話や通信をしたことだけで犯罪が成立するとされる虞がある。例えば、マンション建設反対運動の話し合いをしただけで、威力業務妨害共謀罪に当たるとして逮捕される可能性があるのである。また、政府法案及び与党修正案では、共謀とは犯罪実現の意思を通じることとされており、構成要件として抽象的であり明確性を欠いている。かかる抽象的、不明確な構成要件の共謀罪の捜査においては、特定の行為だけで構成要件該当性を認定することができないため、市民の思想、信条まで捜査対象となり国民の思想信条を侵害する虞がある。さらに、共謀の事実の捜査の名のもとに捜査機関が市民の一般的な会話を傍受したり、電話や電子メールのやり取りを監視する事態も予想される。このような捜査方法が認められるならば、市民の情報伝達や情報発信という自由な活動が萎縮することは避けられない。結局、共謀罪を新設し、615もの犯罪について、その共謀のみをもって犯罪の成立を認めるということは、思想信条の自由を侵害し、民主主義を支える市民間の自由な情報の流通、とりわけ表現の自由に対する重大な脅威となるものであり、到底容認することはできない。よって、当会は、あらためて、上記政府法案及び与党修正案に対し、強く反対することを表明するものである。
2006(平成18)年5月18日仙台弁護士会 会長   氏 家 和 男

平成18年03月22日 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案」に対する意見書
ttp://senben.org/archives/503
仙台弁護士会
会長 松  坂  英  明

はじめに
厚生労働省は平成18年3月7日,「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案」(以下,「法律案」という。)を第164回国会(常会)に提出した。雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下,「均等法」という。)の施行後20年を経ているが,今日のわが国の現状は,男女平等の実現にはほど遠く,パート・派遣など非正規女性労働者の増加やコース別雇用管理などにより,逆に性差別の拡大現象すらみられる。また,妊娠・出産を理由にした不利益取扱いも多発しており,このような性差別は重大な人権侵害といわなければならない。今回の均等法改正作業は,「男女雇用機会均等の確保を徹底するため必要な法的整備を行うべき時期にきている」との認識(中間とりまとめ)に立っており,今後の公平かつ平等な社会を築く上で大きな役割を担っているものである。そこで当会は,以下のとおり,実効性ある均等法の改正が行われることを求め,法律案に対して意見を表明するものである。
第1 意見の趣旨
1 均等法の理念に「仕事と生活の調和」を規定すべきである。
2 差別的取扱いを賃金についても禁止すべきである。
3 実効的な間接差別禁止規定を導入すべきである。
4 指針の「雇用管理区分」を廃止すべきである。
5 募集・採用時における妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いを禁止すべきである。
6 ポジティブ・アクションを義務化すべきである。
7 包括的差別禁止規定を新設すべきである。
第2 意見の理由
1 「均等法の理念に『仕事と生活の調和』を規定すべきこと」について均等法において求められる平等は,男女とも「仕事と生活の調和」の上での平等であるから,その旨を基本理念(2条)に規定し,均等法解釈の基本とすべきである。即ち「仕事と生活の調和」を規定することにより,均等法において求められる平等が,今日わが国において無限定な労働を強いられている男性を基準とすべきではなく,男女とも生活との調和のとれた働き方を基準とすべきことが明確となり,同理念が均等法の具体的解釈基準としての意味を有することになるのである。また「仕事と生活の調和」については,すでに育児介護休業法において「職業生活と家庭生活との両立」(1条)として規定されているところであり,均等法の理念としても合わせてこれを規定することは自然かつ必要なことである。
2 「差別的取扱いを賃金についても禁止すべきこと」について
現行均等法は,募集・採用(第5条),配置・昇進・教育訓練(第6条),福利厚生(第7条),定年・退職・解雇(第8条)の各ステージについて差別的取扱いを禁止し,法律案は第6条で,上記の各ステージにつき,業務の配分及び権限の付与を含む労働者の配置,降格(第1号),労働者の職種及び雇用形態の変更(第3号),退職の勧奨及び労働契約の更新(第4号)についての差別的取扱いの禁止を追加しているが,賃金も差別的取扱いの禁止項目に入れるべきである。前記のとおり,現行均等法は,賃金についての差別を禁止していないため,後記3のとおり,法律案第7条により,間接差別が禁止されたとしても,賃金に関する間接差別が規制対象から除外されることになる。しかし,賃金差別は差別の最も重要かつ切実な領域であり,これを除外することは差別是正の主要部分を除外するものと言わざるを得ないことになるので,賃金についても差別的取扱いを禁止すべきである。
3 「実効的な間接差別禁止規定を導入すべきこと」について法律案は,第7条で間接差別を禁止するともに,間接差別となるものを厚生労働省令(以下,「省令」という。)で定めることとしているが,厚生労働大臣が労働政策審議会に対して平成18年1月27日付で諮問した法律案要綱によれば,省令で定める間接差別として,①募集又は採用における身長,体重又は体力要件,②コース別雇用管理制度における総合職の募集又は採用における全国転勤要件,③昇進における転勤経験要件の3つが挙げられている。しかし,このような間接差別となるものを限定列挙する規定は,常に現実の後追いに過ぎない実効性を欠くものとなり,また,間接差別の対象外とされた差別を法的に許容する有害な規定となる可能性を有するものである。したがって,間接差別となるものを限定すべきではない。そもそも,国際的に形成されてきた間接差別禁止法理は,一方の性に対する差別的影響が存在するときに,平等実現への障害となっている差別を恒常的に抽出し,これを除去する取組みを重要な要素として形成されてきたものである。今日,差別は「明かな」男女差別ではない形態としてあらわれるものが主流になり,また,社会的状況により差別は常に形を変える。それゆえに,男女平等を実現するため,使用者に対し,制度等の導入・遂行過程で,それが性差別的効果を生じていないか・正当事由があるかの恒常的検討義務を課し,説明責任を求めるものが間接差別禁止法理である。ところが,前記法律案要綱どおりに,間接差別となるものが3つに限定されるときは,使用者は,これらについて間接差別を禁止されるにすぎず,差別的効果を生じ平等実現への障害となっているものは何かを恒常的に抽出し,これを除去していく義務を課せられない。これは間接差別禁止法理の本質の理解を欠くものであり,間接差別禁止法理の導入は名ばかりのものと言わざるを得ないことになる。間接差別となるものが法律案要綱どおりに限定列挙されるときは,日本における間接差別禁止制度が諸外国の間接差別禁止法理と異なった不十分な制度となってしまうことになり,今後に大きな禍根を残すことになる。また,間接差別となるものが上記3つに限定されると,「男女雇用機会均等政策研究会報告」の例に挙げられている「世帯主手当」差別,パートと正社員の賃金差別も対象から除外されてしまうことになる。以上のとおり,法律案は,国際的非難を免れるためだけに形のみの間接差別禁止規定を導入するものであり,逆に間接差別を拡大する可能性をもつものであるから,間接差別となるものを限定列挙する間接差別禁止規定には反対する。
4 「指針の『雇用管理区分』を廃止すべきこと」について法律案では現行指針(平10労告19号)が定める「雇用管理区分」を廃止せず維持するものとされている(第10条第1項)が,雇用管理区分は,差別の温床として国際的にも問題とされてきたものであり,「雇用管理区分」に法的正当性は無いので,直ちに廃止措置を講ずるべきである。
5 「募集・採用時における妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いを禁止すべきこと」について法律案では,募集・採用における妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いは対象とされていない(第9条)。しかし,募集・採用差別についても不利益取扱いの禁止を規定すべきである。使用者の採用・契約の自由は無制限ではなく労働者の人権保障のために規制されるものであり,既に均等法において募集・採用差別は禁止されている(第5条)。本来,妊娠・出産差別は女性差別であり,その意味からも,募集・採用においても妊娠・出産差別禁止規定をおくべきである。
6 「ポジティブ・アクションを義務化すべきこと」について法律案は,第14条でいわゆるポジティブ・アクションにつき企業が自発的に開示を講じる場合に国が援助できると規定するに止まっている。しかし,今日企業のコスト削減競争が激化する下で,企業における平等施策は一向に進んでいない。企業へのポジティブ・アクションの義務づけが必要であり,少なくとも行動計画の作成義務づけ等,既に少子化対策等で導入している手法については男女平等に関しても義務づけるべきである。差別を是正するためには,「差別を禁止する」だけでなく,「積極的な」平等実現策(教育研修や透明公正な処遇制度の構築,育児・介護支援,過去に差別を受けてきた人へのサポート等)を講じ,差別を生み出す土壌を改善し,また,女性が能力を生かせる環境づくりをすることが重要なのである。
3 「包括的差別禁止規定を新設すべきこと」について現行均等法は,雇用の各ステージについての差別を禁止するに止まり,包括的な差別禁止法とはなっていない。法律案は,雇用の各ステージに,前記2で述べたとおり,配置における業務の配分等を追加しているが,「仕事の与え方」や「雇止め」等の差別的取扱いは追加しなかった。本来,不合理な性差別が禁止されることは判例で確立しているのであるから,包括的な差別禁止規定を設けるべきである。以上

平成18年02月17日 「拡声機の使用による暴騒音の規制に関する条例」の一部を改正する条例案に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/507
平成18年2月17日会長声明2006年02月17日
拡声機の使用による暴騒音の規制に関する条例」の一部を改正する条例案に対する会長声明

1 新聞報道によれば、宮城県は、「拡声機の使用による暴騒音の規制に関する条例」(以下、単に「条例」という)の一部を改正する条例案を県議会2月定例会に提出するとのことである。
2 当会は、条例の制定に先立ち、1991年(平成3年)11月20日の会長声明において、拡声機使用について規制の必要性があることは認めつつも、その規制は、憲法上保障され民主主義政治にとって不可欠な基本的人権である市民の表現活動の自由を損なうものであってはならないとの見地から、条例の問題を4点にわたって具体的に指摘した。
3 今回の改正案は、 ①暴騒音の測定方法の変更、 ②拡声機の使用を要求する者等に対する義務・勧告規定の新設、③暴騒音の再発防止命令の新設及び④虚偽答弁者への罰則の適用の4点とされており、いずれも現行の規制を強化する内容となっている。
①「暴騒音の測定方法の変更」は、10メートル未満の地点においても音量測定可能とするものである。現行の測定方法では、測定場所が地形地物に左右されたり、測定場所が確保できなかったりする場合があるから見直しを行うとするが、改正条例の文言はそのような場合に限定する文言になっていない。これでは、測定者である警察官等が、その判断において、拡声機を使用する者の身近まで接近して音量測定をすることが可能であり、市民の街頭活動への威圧や萎縮効果をもたらすことが懸念される。
②「拡声機の使用を要求する者等に対する義務・勧告規定の新設」は、規制の対象を、拡声機使用者にとどまらずその上位の者や団体(市民団体・労働組合・政党など)さらには拡声機の所有者(管理者)に過ぎない者にまで拡大させうるものであり、規制の対象があまりに広範かつ漠然としている点で、表現活動の自由や結社の自由に対する脅威となる。
③「暴騒音の再発防止命令の新設」は、85デシベルを越える音を発している者が停止命令に従わなかった場合、警察署長が24時間以内なら拡声機使用停止等の措置をとることができるとするものであるが、事前抑制は本来仮処分等の司法的措置に拠るべきであり、法律より下位の条例で、しかも、「警察署長」だけでの判断でこのような表現の自由の事前抑止を可能とすることは立法上も重大な問題がある。
④「虚偽答弁者への罰則の適用」は、現行条例の立入調査の際の立入・調査の拒否・妨害・忌避に加えて、「虚偽答弁」に対して10万円以下の罰金を科すものであるが、立入調査の際の「虚偽答弁」とは具体的にどのような場面を想定しているのか曖昧であり処罰の範囲を不当に拡大するおそれがある。また、質問事項が広範ななかで、「虚偽答弁」を刑罰で処罰することは、結果的には、拡声機使用者の活動や背景の詳細についての情報提供を強要することになりかねず、これまた表現活動の自由や結社の自由に対する脅威となる。 4 このように今回の改正案は、その内容においても、表現の自由や結社の自由など憲法上保障される人権について多くの重大な問題を包含しているといわざるをえず、しかも、改正を必要とする立法事実の存在も不明確であるので、当会は、今回の改正案に対しても反対せざるを得ない。より慎重かつ十分な検討を望む次第である。
2006年(平成18年)2月17日仙台弁護士会 会長 松坂英明

平成19年07月27日 光市母子殺人事件弁護人への脅迫行為に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/462
>山口県光市で発生したいわゆる「光市母子殺人事件」は、現在広島高等裁判所で審理が行われています。この事件に関し、本年5月29日、日本弁護士連合会に、「その元少年を死刑に出来ぬのなら、まずは、元少年を助けようとする弁護士たちから処刑する!」「裁判で裁けないなら、武力で裁く!」などとかかれた脅迫文が、模造銃弾様のものとともに届けられました。更に新聞報道によれば、その後の7月7日に、朝日新聞社及び読売新聞社に同事件弁護団の弁護士を「抹殺する」などと書かれた脅迫文が届けられたとのことです。これは「光市母子殺人事件」の弁護団に対する明らかな脅迫行為であり、当会はこのような脅迫行為を断じて見過ごすことは出来ず、ここに強く抗議するために本声明を発表するものです。本事件は母親と幼い子の命が失われたという大変痛ましい事件であり、当会は亡くなられたお二人に心よりの哀悼の意を表するとともに、ご遺族の方の心情も察するにあまりあるものです。しかしながら、どのようにこの事件が痛ましい事件であっても被告人の弁護人依頼権は十分に保障されなければならず、その権利実現のための弁護人の弁護活動に対し、脅迫による妨害行為がなされることは決して許されるべきではありません。歴史を遡れば、刑事手続過程で不当な身柄拘束、自白の強要など、さまざまな人権侵害が行われてきました。このような歴史的事実を踏まえ、憲法は、その31条でいわゆる適正手続の保障を定め、その具体化として、37条3項において「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することが出来る」として弁護人依頼権を保障しています。憲法が弁護人依頼権を保障しているということは、単に被告人が弁護人を依頼することに止まるものではなく、弁護人が被告人のための弁護活動を実質的に行えるということまでも保障するものです。弁護人が被告人の主張を踏まえた弁論・立証活動をすることで、被告人は初めて十分な防御の機会を与えられ、十分な主張が出来るからです。弁護人は、被告人のための実質的弁護活動を行ってこそその職責を全うすることが出来るのです。また、弁護人はそのような弁護活動をすることで憲法が保障した適正手続の保障、弁護人依頼権の保障等諸権利を実現する責務を負っているのです。もとより弁護人の弁論に対して批判等が行われること自体は、言論・表現の自由として十分に尊重されなければならないことは言うまでもありませんが、しかし、今回のような脅迫行為による弁護活動の妨害が許されないことは論を待ちません。今回の脅迫行為は弁護人の弁護活動を暴力によって封じ込め,その結果,被告人の弁護人依頼権および適正手続を保障した憲法の理念をも踏みにじろうとする卑劣な行為であり,断じて許すことができません。当会は今回の脅迫行為に厳重に抗議するとともに、今後も刑事手続にたずさわるすべての弁護士がこのような卑劣な行為に屈することなくその職責を全うできるように最大限支援していくことをここに表明するものです。
2007(平成19)年7月27日仙台弁護士会 会長 角山 正

平成19年07月18日 陸上自衛隊情報保全隊による国民監視活動に抗議しその中止を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/464

1 本年6月6日、陸上自衛隊情報保全隊(以下情報保全隊という)が、個人・団体の動向を監視し、その情報を系統的に収集・分析していた資料の存在が明らかとなった。自衛隊が作成したとして公開された内部文書には、自衛隊イラク派兵反対運動を始め消費税値上げや医療費問題に関する運動など、個人・団体の幅広い行動の情報が詳細に記載されている。そして政府も情報保全隊がかかる情報収集活動を行っていたことを認めている。上記内部文書には、東北方面情報保全隊による宮城県を含む東北地方の個人・団体の集会、街頭宣伝、ビラ配布等の諸活動に関する情報資料が数多く含まれている。そこでは東北地方の市町村議会やマスコミの取材活動までもが監視対象とされ、情報保全隊は、これらの表現行為を「反自衛隊活動」などと位置づけている。
2 そもそも、情報保全隊の任務は、自衛隊の保有する内部情報の流出や漏洩の防止にあり、情報収集活動はその任務に必要な範囲内でしか許されない。今般の個人・団体に対する監視・情報収集活動は、自衛隊の内部情報の流出や漏洩防止とは無関係であって、その範囲を逸脱していることは明らかであり、法的根拠を有しない違法な活動である。このように情報保全隊が組織的・系統的・日常的に個人・団体を監視してその情報を収集・分析・管理保管することは、国民の集会その他の表現活動に対し強い萎縮効果をもたらすものであるから、日本国憲法21条で保障された表現の自由を侵害するものである。また同時に憲法13条で保障されたプライバシーの権利をも侵害するものである。ことに情報保全隊は集会・デモ等に参加した個人の写真撮影も行っているが、個人の容ぼう等を公権力がみだりに撮影することは憲法13条に違反するものである(最高裁判決昭和44年12月24日)。
3 日本国憲法は、先の大戦下において国家機関によって国民の権利自由が著しく抑圧されたという苦い歴史の教訓をふまえ、国家権力の濫用を抑制し国民の権利自由を保障するという立憲主義に立脚している。国家機関である情報保全隊が、法的根拠もなく、しかも国民の憲法上の権利を侵害するような監視活動を行うことは、正に立憲主義に違背する行為であって許されない。
5 よって、当会は、政府及び防衛省に対して、陸上自衛隊情報保全隊が個人・団体等に対して違憲・違法な監視活動を行ったことに厳重に抗議するとともに、かかる監視活動を直ちに中止することを強く求めるものである。
2007(平成19)年7月18日仙台弁護士会 会長 角山 正

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余命三年時事日記 2272 ら特集10仙台弁護士会⑤22 [余命三年]

余命三年時事日記 2272 ら特集10仙台弁護士会⑤22
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2272-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a422/ より

平成17年08月24日 金融庁事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の改正に対する意見書
ttp://senben.org/archives/519
金融庁事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の改正に対する意見書
仙台弁護士会会長  松 坂 英 明

意見の趣旨
今般予定されている金融庁事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正にあたっては、現在公表されている改正案について、「貸金業者に取引履歴の開示義務があり、正当な理由に基づく開示請求を拒否した場合には行政処分の対象になり得ることを明確化する」との改正の趣旨には賛成であるが、以下の点の修正を求める。
(1)貸金業規制法第13条第2項の規定に該当する恐れが大きい行為の例示(3?2?2(6))の中に、「顧客等から貸金業者に対する過払金返還請求を目的とする取引履歴の開示請求に対し、開示を拒否しまたは虚偽の開示を行うこと」を明示すること。
(2)本人等の「十分かつ適切」な確認方法として、本人確認法に依拠した確認方法を例示した部分を削除し、
① 本人による開示請求の場合は、氏名及び顧客会員番号又は生年月日、住所を記載した取引履歴開示請求書で本人確認は足りることを例示し、さらに、本人確認の手続きが、開示請求者の負担とならないよう貸金業者に注意を喚起すること。
② 弁護士、司法書士という資格者による開示請求の場合は、これまでの実務どおり、所属会を明記し、依頼者の氏名及び顧客会員番号又は生年月日、住所を記載した受任通知で足りるとすること。
(3)貸金業者が開示にあたって手数料を徴収することが債務者に過重な負担を課すものであって許されないことを明確にすること。意見の理由
1 金融庁は、本年8月12日、金融庁事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正について、別紙のとおりの改正案をまとめ、9月2日まで意見照会している。
2 取引履歴開示義務の明示には賛成である。
本年7月19日、最高裁判所は、貸金業者が「貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として、信義則上、保存している業務帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負う」、との判断を示した(最高裁判所第三小法廷平成17年7月19日判決)。このたび、速やかにガイドラインを改正して貸金業者の取引履歴開示義務を明確化することは、まことに時宜に適った措置である。
3 取引履歴開示請求の「正当事由」に「過払金の返還請求」も加えるべきである。上記の最高裁判決は、債務者が債務内容を正確に把握出来ない場合には、「弁済計画を立てることが困難になったり、過払金があるのにその返還を請求できないばかりか、更に弁済を求められてこれに応ずることを余儀なくされるなど、大きな不利益を被る」ことなどに鑑みて、取引履歴開示義務が存在するとの結論を導いている。そうである以上、一部改正(案)のうち、事務ガイドライン3?2?2にいう取引履歴開示請求の「正当な理由」として「弁済計画の策定、債務整理」だけを例示し、「過払金の返還請求」について殊更に言及を避けているのは、不適切である。「過払金の返還請求」も、取引履歴開示請求の正当理由のうちに含まれることを明記すべきである。
4 本人確認法上の本人確認手続を取引履歴開示に持ち込むことは、債務者に過度の負担を課す重大な誤りである。今回の貸金業ガイドライン改正案は、取引履歴開示請求に際しての本人確認について、いわゆる本人確認法(金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律)所定の本人確認方法を「十分かつ適切」な本人確認方法として例示していることには、以下に述べるとおり重大な問題がある。
(1)そもそも、本人確認法は、テロ及び組織犯罪等の悪質な犯罪行為に対する資金提供のために金融機関の預金口座が不正利用されることを防止するために(同法1条)、極めて厳格な本人確認の手続を定めた法律であって、上記犯罪行為とは全く無関係の取引履歴開示請求について、かような厳格な本人確認を求めることには、何らの法的根拠もない。
(2)加えて、本人確認法に基づく厳格な本人確認を要求することは、従来の取引履歴開示の実務では用いられてこなかった厳格な手続を要求するものであって、債務者に過度の負担を課すことになる。すなわち、従来の取引履歴開示の実務において、特に弁護士が代理人として関与する場合については、貸金業規制法21条1項6号所定の「債務者が債務の処理を弁護士に委託した旨の弁護士からの書面による通知」(いわゆる受任通知書)が、債務者の代理人であることの十分かつ適切な確認資料であるとされてきた。実際、多くの貸金業者は、個人情報保護法が施行された現在においても、受任通知書の送付をもって代理権確認の方法とすることを、従前通り異議なく認めているのである。こうした現状に鑑みるなら、本人確認のために免許証等本人確認書類の原本または実印を押印した委任状と印鑑証明書の「提示」を要求する今回の貸金業ガイドライン改正案の内容が、債務者に対して従来より著しく煩瑣な手続を要求するものであって、これが債務者にとって過度の負担であることは明らかである。
(3)したがって、今回の貸金業ガイドライン改正案において、本人等の「十分かつ適切」な確認方法として、本人確認法に依拠した確認方法を例示した部分については、全面的に削除されるべきである。その上で、取引履歴の開示を求めることは顧客の権利であることをふまえ、①本人よる開示請求の場合は、現在の実務を前提に、氏名及び顧客会員番号又は生年月日、住所を記載した取引履歴開示請求書で本人確認は十分であることを例示し、かえって、本人確認手続きに伴う負担が顧客等(弁済済みの者も含む)による、開示請求権の行使を妨げることがないよう貸金業者に注意喚起すべきである。②弁護士、司法書士による場合は、現行実務で、確立している、受任通知(依頼者の氏名及び顧客会員番号又は生年月日、住所で依頼者を特定すること)で足るものとすべきである(代理人資格の確認のため、所属会の明記は必要である)。最高裁判決が出され、実体的に取引履歴の開示義務を貸金業者が負うことになった時期に、実務で形成された取引履歴開示の慣行を特段のトラブルのないのに、手続き規定を加重して最高裁で認められた開示請求権を制限することを認めることは出来ない。
5 手数料の徴収は許されないこと
また、一部の貸金業者の中には、取引履歴の開示にあたって、個人情報保護法を根拠に、手数料を要求するものがある。しかしながら、既に述べたとおり、信義則に基づく取引履歴開示請求は個人情報保護法25条1項に基づく開示請求とは関係ないのであるから、個人情報保護法30条1項を根拠に手数料を請求する貸金業者の主張は誤りである。上記最高裁判決も認定するとおり、「貸金業者が保存している業務帳簿に基づいて債務内容を開示することは容易であり、貸金業者に特段の負担は生じない」にもかかわらず、貸金業者が手数料を要求することは、個人情報保護法を口実として取引履歴開示請求に不当な制限を加えようとするものであって、到底許される行為ではない。
本ガイドライン改正に当たっては、このような不当な要求を拒否する条項を盛り込むべきである。
6 まとめ
よって、当会は、金融庁の事務ガイドライン改正案が、貸金業者に取引履歴の開示義務を認めたことは十分評価するとしても、過大な本人確認書面の要求など、多重債務者救済の実務に大きな混乱を生じさせ、その救済を大きく損なうことから、適正かつ迅速な取引履歴開示が促進され、債務者の権利が確保されるよう本意見書を提出するものである。 以 上

平成17年07月20日 宮城県貸金業協会による「ヤミ金融回避特区」提案に反対する意見書
ttp://senben.org/archives/525
仙 台 弁 護 士 会
会 長  松  坂  英  明

意見の趣意
当会は、宮城県貸金業協会による「ヤミ金融回避特区」提案に反対すると共に、政府に対し特区提案を採用しないことを求める。
意見の理由
1 宮城県貸金業協会(以下、「協会」という)は、平成17年6月23日、内閣官房構造改革特区推進室に対し、政府が地域の特性に応じた規制緩和の特例措置を設けて経済活性化を目指す構造改革特別区域制度に基づき、「ヤミ金融回避特区」の提案(以下、「本件提案」という)を行った。
本件提案は、上限金利規制を緩和し、資金需要者に対し健全な貸金業者による資金供給を可能とさせることでヤミ金融による被害を抑制できるとの考えに基づき、特区内においては、貸付金額と貸付期間の上限その他の制限を定めることを条件として、出資法の上限金利を緩和して年40.004%まで認めるようにする、というものである。しかしながら、本件提案は、極めて問題が多く、当会はこれに対して強く反対するものである。
2 協会による本件提案は、①平成12年の出資法改正により上限金利が引き下げられたことにより、貸金業者が貸付を抑制するようになり、資金需要者が貸金業者から貸付を受けることができなくなった結果、ヤミ金融を利用するようになった、②従って、上限金利を緩和し貸金業者が資金需要者に対して貸付を行いやすくすることがヤミ金融被害の防止につながる、との考えを根拠とするものである。しかしながら、以下のとおり、協会のこのような考えが誤りであることは明白である。
(1)①について
出資法の上限金利の引下げがヤミ金融被害の増加を招いたなどという社会的事実は存在しない。ヤミ金融は平成6年ごろにはすでに発生しており、出資法の改正がなされた平成12年に先立つ平成10年ころには、ヤミ金融の跋扈がすでに大きな社会問題となっていた。例えば、東京の有しの弁護士等のグループは、平成11年7月には、ヤミ金融245業者について警視庁に対し事実上の刑事告発を行うに至っている。また、平成12年以前にも数次にわたり出資法が改正され、上限金利の引き下げが順次行われてきているが、上限金利引き下げのたびにヤミ金融の被害が増大してきたという事実もない。さらに、平成12年の出資法改正以降も、消費者金融業者の貸付残高は年1兆円規模で増加を続けているのであり、上限金利の引き下げが貸付を抑制的にさせているという事実もない。そもそも、ヤミ金融が跋扈した大きな要因は、ヤミ金が狙う多重債務者が近年急増したことと、出資法違反に対する取り締まりが不十分なことにある。
上限金利引き下げがヤミ金融被害の増加を招いたなどという社会的事実はなく、本件提案は、そもそもその前提に大きな誤りがある。(2)②について
ヤミ金融がターゲットとする顧客層は、多数の貸金業者に対して多額の負債を抱え、中小の貸金業者からも貸付を拒絶されるような多重債務者である。本件提案のようにこのような多重さ武者に対して高利で新たな貸付を行うことは、多重債務者の債務をさらに増大さえることにほかならず、ひいてはその経済生活の破綻を促進させる結果につながることは明らかである。同時にそれは、ヤミ金融のターゲット層をさらに拡大させることをも意味する。このように、
上限金利を緩和することは、ヤミ金融被害の防止策になりうるどころか、むしろ多重債務者のさらなる増加を促すものであり、ひいてはヤミ金融被害者を増加させる恐れが極めて大きいのである。 そもそも、近年における多重債務者の急増は、金利規制の甘さによる高利貸付の横行、債務者の経済力に見合わない過剰融資の横行に主要な原因が存するところであるが、本件提案は、まさにこの「高利貸付」「過剰融資」の正当化をはかろうとするものにほかならない。貸金業者のそのような姿勢こそが多重債務問題を深刻化させていることを指摘しないわけにはいかない。ヤミ金融被害の防止のために必要とされているのは、新たな高利貸付ではなく、金利規制の強化、過剰融資の抑制をはじめ、社会保障の充実や政府・自治体等による低利融資制度の充実、相談窓口の拡充等といった、多重債務者の予防・救済策なのである。
3 協会は、上限金利の緩和が正しく運用されるように、①貸付期間の制限(貸付期間を原則3ヶ月以内として最大でも6ヶ月を越えないこととする)、②貸付金額制限(貸付金額を個人50万円以内、事業者150万円以内とする)、③担保・連帯保証人の不徴求、④協会に対する届出等、の仕組みを確保することを掲げている。しかしながら、まず①については、債務の書き換えを繰り返すことなどにより、貸付期間の制限は容易に潜脱することができるのであり、到底その実効性は期待できない。また、②についても、現在一般的に行われている無担保貸付における貸付金額とほとんど変わりはなく、何らの抑止効果も持たない。さらに③についても、債務者本人に対する過酷な取立てが行われる可能性は否定できないし、何よりも債務者本人の経済生活の破綻を招くことに対しては何らの予防措置にもなりえない。加えて、④についても、協会が実効性ある監督機能を営むことは期待しがたい。このように、①?④の措置を講じたところで、到底、本件提案が正当化されるものではない。
4 当会は、多重債務問題解決のため、これまでも何度も出資法の上限金利の引き下げを求めてきたところ、上限金利については、2007年1月までに必要な見直しが行われる予定となっている(出資法改正附則12条2項)。
そのような状況の下において、出資法の見直し作業を待たずして上限金利の引き上げを実現しようという本件提案は、十分な検討の上で出資法改正という形で上限金利規制のあり方を見直そうという上記出資法改正附則の趣旨を没却せしめるものであることは明らかである。
5 出資法では、上限金利に違反する利息の受領等を刑罰の対象としているが、この罰則は、いわば金融秩序に関する基本的な刑罰法規である。従って、その適用は全国的に平等になされるべきであるのが大原則であるところ、何らの合理的理由もなく特定の地域に限定して刑罰法規の適用に差異を設けることは、地域間において極めて不平等な結果をもたらすことは明白であり、ひいては憲法の定める法の下の平等にも反することになる。
6 本件提案は、構造改革特別区域の制度趣旨にも反するものである。
構造改革特別区域制度は、各地域の特性に応じて規制の特例措置を定め、教育、農業、社会福祉などの分野における構造改革を推進し、地域の活性化を図り、国民経済を発展させることを目的とするものである。
しかるに、本件提案は、なにゆえ特定の地域だけに高金利を認める必要があるのか、全く明らかにされておらず、単に高利貸金業者の保護を目的としていることが明らかな提案であって、構造改革特別区域を設けた趣旨に反するものであることは明白である。
7 よって、当会は、本件提案に対して強く反対するとともに、政府に対し、本特区提案を採用しないことを求める。 以 上

平成17年07月20日 共謀罪の新設に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/523

「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下「法案」という。)が、第156通常国会に提出され、一度廃案になったものの、現在、第162通常国会において審議されている。そして、その中に、共謀罪(または謀議罪、以下「共謀罪」という。)と呼ばれる新たな犯罪類方の新設が盛り込まれている。 共謀罪とは、団体の活動として、組織により行われるものの遂行を共謀したことだけで処罰するものである。死刑又は無期若しくは長期10年を越える懲役若しくは禁錮の刑が定められている犯罪について共謀した場合には5年以下の懲役又は禁錮の刑に処するものとし、長期4年以上10年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている犯罪について共謀した場合には2年以下の懲役又は禁錮の刑に処するものとされている。しかし、共謀罪、犯罪の実行行為の着手がないばかりでなく、予備行為さえも行っていない段階で、共謀をしたというだけで処罰するものとなっており、処罰時期を著しく前倒しにするものである。したがって、抽象的危険の存否すら不明な段階であろうとも、会話ないし通信をしたことだけで刑罰を科されることになりうる危険がある。しかも、現行刑法では、予備行為が処罰されているのは殺人ないし放火などの重大犯罪に限られているところ、この共謀罪では、長期4年以上の刑罰が科せられる犯罪について成立が認められていることから、500以上にものぼる非常に広範囲な犯罪が実行前において処罰の対象とされてしまう。また、「共謀」という不明確な概念を構成要件としているため、刑罰法規の明確性原則に反する。共謀は抽象的概念であるため、特定の行為からその認定は困難であり、行為者の会話のみならず内心にまで踏み込まなければ判断できない以上、行為者の思想、信条、主義にまで捜査機関が調査権限を及ぼすことを招き、その結果、国民の思想、信条の自由を侵害してしまうことになりかねない。そして、思想、信条を表現するための通信、出版などの情報伝達及び外部公表行為に対する萎縮的効果を極めて甚大となる。また、共謀の事実を捜査するためとして、捜査機関が、市民の一般的な会話や電話、そして電子メールのやりとりなどに対する監視ないし管理を強化していくという事態をももたらしかねない。このように、共謀罪の新設は、民主主義を支える表現の自由、そして個人として最も尊重されるべき思想信条の自由を侵害するおそれがあり、到底受け入れることができないのである。そもそもこの法案は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条例」(以下「犯罪防止条約」という。)の批准のための国内法を整備するため上程された。それであれば、法規制は犯罪防止条約が求める範囲においてなされれば足りる。ところが、犯罪防止条約においては、その適用範囲は「性質上越境的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するもの」に限定されているにもかかわらず、共謀罪ではこの「越境性」「組織的な犯罪集団の関与」を要件としていない。もって、条約批准に伴う国内法整備という範囲を超えて、過度にその適用範囲を拡大しているものである。このように、共謀罪の新設は、構成要件の明確性を欠き、更に処罰時期を著しく早め、処罰範囲を一気に拡大して、事実上刑法を全面改悪するに等しい。これは刑法の原則である罪刑法定主義に反し、憲法上の言論の自由、結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威である。よって、当会は、共謀罪の新設に反対するものである。以 上
2005年(平成17年)7月20日仙台弁護士会会長松坂英明

平成17年06月22日 少年法等「改正」法案に対する反対声明
2005年(平成17年)6月22日仙台弁護士会会長松坂英明
ttp://senben.org/archives/527

少年法等の一部改正に関する法律案(以下,「改正案」という。)が平成17年3月1日に閣議決定を経て国会に提出され,同年6月14日から衆議院において改正案の審議が開始された。この改正案は,①少年院送致年齢の下限(14歳)を撤廃すること,②保護観察中の遵守事項違反を理由として少年院等への収容を可能とすること,③触法少年及びぐ犯少年に対する警察官の調査権限を法律上明記すること,④国選付添人制度を検察官関与事件等以外にも拡充することを骨子とするものである。このうち,④については,家庭裁判所の職権で新たに国選付添人が選任されうる場合を一定の重大事件に限定している点で,未だ十分なものとは言えないが,国選付添人制度を拡充すること自体は積極的に評価できる。しかし,当会は,多くの会員が付添人活動を通じて非行少年に対する福祉的教育的対応を実践してきた実績に照らして,上記①ないし③については,以下のとおり反対の意思を強く表明するものである。
①について
現行法上,小学生など14歳未満の非行少年を少年院に送致することは認められていない。低年齢の非行少年であるほど,幼少期からの被虐待体験を含む複雑な生育歴を有していることから,家庭的雰囲気の中で子どもとしての「育ちなおし」の場を保障する必要が高く,そのような役割を担う児童福祉施設として児童自立支援施設が設けられているのである。家庭内で安定した人間関係を築く体験に欠ける小学生や低学年の中学生を「育てなおす」こと抜きに閉鎖的矯正施設たる少年院に収容しても,他者を受け容れて規範を内面化することを期待できず,再非行の防止策としては全く不適当である。今回の改正案の背景には,触法少年であっても閉鎖的施設で処遇すべき場合を認めるべきだとの考えがあると思われるが,強制的措置を付した児童自立支援施設送致によっても処遇が困難であるとの立法事実は何ら示されてはいない。ましてや,触法少年への児童福祉的対応という大原則を,報道等で煽られた社会的不安の沈静化策として短絡的に変更することは,決して許されるべきではない。従って,少年院送致年齢の下限を撤廃することには反対である。
②について
少年法の定める保護観察は,少年が自ら立ち直る力を育てるために保護司らが少年に対して粘り強く働きかけながら試行錯誤を見守ることを内容とする終局的保護処分である。しかし,改正案は,新たな非行事実もないのに遵守事項違反を理由にして,現に保護観察処分を受けている少年を新たに少年院に送致できるとするものであって,実質的に一事不再理効に抵触し,憲法39条の趣旨に反するものとして許されない。また,改正案は,保護観察の指導をいっそう効果的にするための措置であると説明されているが,実質的には少年院送致を威嚇手段として遵守事項を守らせようとするものに過ぎず,少年自らの立ち直りを見守るという保護観察制度本来の趣旨を没却する措置である。保護司が対応に苦慮するような少年に対しては保護観察官による専門的な指導援助によって対処すべきである。従って,保護観察中の遵守事項違反を理由とする施設収容を認めることには反対である。
③について
現行法上,触法少年や14歳未満のぐ犯少年に関しては,警察官には捜査権はもちろん,調査権限も認められていない。これは,低年齢の少年については,①で述べた特性に加えて,被暗示性・迎合性がとりわけ強いことから,子どもの特性に関する専門的知識と経験をもつ児童相談所が主導権をもって調査を行うことが,事実解明及び処遇選択に資するという考えに基づく。改正案のとおりに警察官が中心となって触法少年等の取調べを行えば,誤った供述が引き出されて冤罪を生む危険性が高く,専門性の不足から当該少年を心理的に傷付けるおそれもある。この点,触法事件における児童相談所の調査能力が不十分ではないかとの指摘もあるが,実際には,児童相談所による調査及び家庭裁判所の補充調査によっても事実解明に支障をきたした事例はまったく報告されていない。仮にこうした問題があるとすれば,児童相談所の人的物的資源を強化拡充することによって対処すべきであり,警察官の権限を強化することで解決しようとする改正案には賛成できない。また,改正案は,ぐ犯少年である「疑いのある者」をも調査の対象としているが,そもそもぐ犯自体が将来罪を犯すおそれのあることを要件とする非行類型であることに照らせば,かかる調査対象の設定は事実上限定を欠き,警察による過度の干渉によってぐ犯少年に対する児童福祉的対応が後退させられる危険がある。従って,警察官に触法事件等の調査権限を付与することにも反対である。 以 上2005年(平成17年)6月22日仙台弁護士会会長松坂英明

平成17年02月26日 債権管理回収業に関する特別措置法の改正に反対する決議
ttp://senben.org/archives/532

2004年(平成16年)8月、全国サービサー協会(以下「協会」という。)から、「債権管理回収業に関する特別措置法改正に関する要望書」(以下「要望書」という。)が法務大臣宛に提出され、この度の通常国会において、この要望書の内容を盛り込んだ同法(以下「サービサー法」という。)の改正法案が、議員立法として上程されることが予定されている。協会からこのような要望書が出されたのは、同法の施行から5年(同法付則で定められた見直し検討のための経過期間)以上が経過した今日、協会が、債権管理回収会社(以下「サービサー」という。)の取り扱い業務の拡大やその業務遂行の利便性実現を目指して行動を起こしたことによるものである。そのため、要望書の内容は、(1)サービサーが取り扱い可能とされる特定金銭債権の範囲の拡大、(2)兼業の承認制の緩和(承認制からから届出制へ)、(3)「債権回収」の商号強制の廃止、(4)利息制限法超過利息の請求の認容、(5)身分証明書携帯と債権譲渡要件の緩和、(6)戸籍、住民票、外国人登録原簿に対する調査権限の付与、(7)競売での現況調査及び評価の特例のように、サービサーに対する規制を大幅に緩和することを求めるものとなっている。しかし、もともと債権回収を業とすることは、弁護士以外には禁じられており(弁護士法72条)、債権回収のために他人の権利を譲り受けることは許されないのが原則である(同法73条)。このような規定は、債権回収等の法律問題に適正に対処するためには、専門知識と経験、さらには厳格な倫理規制に服している弁護士でなくてはならないという趣旨に基づいている。これに対し、サービサー法は、「(不良債権と化した)特定金銭債権の処理が喫緊の課題となっている状況に鑑み」「弁護士法の特例」(サービサー法第1条)として成立したものである。このように、その立法目的は、特定金銭債権の処理に限定されるべきものであり、取り扱い可能な債権の範囲を広げることは、当初の立法目的を大きく逸脱するとともに、上記のような弁護士法の趣旨に反することは明らかである。実際上も、金銭債権の中には、債務者からその不存在が主張されたり相殺や時効の抗弁が主張されるなど紛争性を帯びるものも数多く存在するところ、こうした紛争性のある権利を、法的な専門知識及び倫理規制が必ずしも担保されていないサービサーの業務の対象と認めるときは、紛争の適正な解決がないがしろにされるおそれは否定できない。さらに、それ以外のサービサーの業務遂行の規制緩和に関する改正条項についても、これらが可決されるときは、利息制限法を超過する利息の支払を求めることによる債務者の経済的更生の阻害や、債務者とされる市民の個人情報(本籍・住所地など)を収集することによるプライバシーの侵害など、サービサーの業務が、市民の生活に対し深刻な脅威を及ぼす結果となることは明らかである。このように、今国会に上程される予定のサービサー法改正法案は、サービサー及びその業界に利便性をもたらすことを重視する反面、その相手方である債務者に及ぶ不利益や様々な社会的弊害を全く顧みないものであって、このような法案が国会において可決されることは決して許されるべきではない。以上の理由により、当会は、このようなサービサー法改正法案に強く反対し、今国会において同法案が上程された場合、この法案が廃案となるよう強く求めるものである。以上、決議する。
2005年(平成17年)2月26日仙台弁護士会会長 鹿 野 哲 義

平成16年11月17日 自衛隊のイラク派遣延長反対・即時撤退並びに「イラク特別措置法」の廃止を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/534

小泉首相は、人道復興支援という名目のもと、本年12月14日に期限を迎える自衛隊派遣期間を延長しようとしている。しかし、現在イラクでは、米軍が1万5000人もの兵力でファルージャに対する攻撃を行い、市内中心部の医療施設までが爆撃を受け、民間人を含む多数の死傷者が出ている。他方「武装勢力」側もこれに徹底的に交戦する意向を示し、日夜戦闘行為が続いている。また、11月7日には暫定政府のアラウイ首相が全土に非常事態宣言を発するなどイラク全土が戦闘状態にあり、既に自衛隊宿営地内にもロケット弾が打ち込まれる事件が発生していることもあわせると、自衛隊が派遣されているサマワも「非戦闘地域」でないことは一層明らかとなっている。そして、11月17日には、イラクの反米武装勢力の幹部が、「自衛隊は占領軍」と規定することと決めた、「われわれは占領者と戦っており、日本もその戦いの(相手の)一部になった」と言明した、と報道されるに至っている。このような状況下で自衛隊の派遣期間を延長すれば、自衛隊が攻撃を受けて武力行使に及び死傷者を発生させる危険性や隊員に被害が出る危険性は一層高くなっている。世論調査の結果をみても63%の国民が派遣延長に反対しており(賛成25%。朝日新聞10月26日付)、また、政権党である自民党の中からも派遣延長に反対の声があがっている。11月11日には野党3党が共同で「イラク特別措置法」廃止法案を衆議院に提出した。そして、今会期中の早急な審議入りを要望している。そもそも米英軍によるイラク攻撃は、国連憲章に反する違法行為であり、また、アメリカが戦争の大義とした大量破壊兵器が存在しないこと、フセイン政権とアルカイダとの関係についても何ら証明されていないことは、本年9月にパウエル国務長官自身が認めている。国連のアナン事務総長も、米英軍によるイラク攻撃は国連憲章に反することを名言しており、イラク戦争の正当性は全く否定されている。当会は、2003年3月24日付け「アメリカとイギリスによるイラクへの武力攻撃に反対する会長声明」で、大規模爆撃を含む武力攻撃は、多数の市民の声明を奪う最大の人権侵害であり真の平和と安全をもたらさないことを指摘した。更に、本年4月12日付け「自衛隊のイラク即時撤退を求める会長声明」で、自衛隊派遣の根拠となる「イラク特別措置法」は、イラクにおける自衛隊の武力行使を事実上容認するもので、国際紛争を解決する手段として武力による威嚇又は武力の行使を禁じた日本国憲法に違反するおそれが極めて高いものであること、イラクへの自衛隊派遣は、国連憲章に違反する米英軍の武力行使と一体化するものと評価されることが明らかであって憲法に反すること、自衛隊の派遣されているサマワも迫撃砲が撃ち込まれるなど「非戦闘地域」とはいえないことが明らかになってきたこと、従って「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施」するとのイラク特別措置法の規程自体にも違反することなどを指摘した。前述したイラクの悲惨かつ憂うべき現状等は、これまで当会が指摘してきた憲法上、法律上の問題点や危惧を裏付けるものとなっている。よって、当会は、以上に述べたイラクの実情に鑑み、改めて日本政府に対し、自衛隊の派遣期間を延長することなく即時撤退させること、国会に対し、憲法に違反する恐れの極めて高い「イラク特別措置法」を廃止することを求めるものである。
2004年11月17日仙台弁護士会会長鹿野哲義

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余命三年時事日記 2271 ら特集10仙台弁護士会⑤21 [余命三年]

余命三年時事日記 2271 ら特集10仙台弁護士会⑤21
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2271-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a421/ より

平成15年03月24日 アメリカとイギリスによるイラクへの武力攻撃に反対する会長声明
2003年3月24日仙台弁護士会長 犬飼健郎
ttp://senben.org/archives/573
平成15年02月22日 有事法制3法案の廃案を求める決議
ttp://senben.org/archives/575

政府・与党が、第154回国会に上程し、第156回通常国会において成立を図ろうとしている有事法制3法案には、憲法原理に照らし、少なくとも以下に指摘する重大な問題点と危険性が存在する。第1に、「武力攻撃事態」法案では「武力攻撃のおそれのある事態」や「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」までが「武力攻撃事態」とされており、その範囲・概念は極めて曖昧である。政府の判断によりどのようにも「武力攻撃事態」を認定することが可能であり、しかも、国会の承認は「対処措置」実行後になされることから、政府の認定を追認するものとなるおそれが大きい。第2に、いったん内閣により「武力攻撃事態」の認定がなされると、陣地構築・軍事施設・軍事物資確保等のための私有財産の収用・使用、軍隊・軍事物資の輸送、軍事施設の建設、戦傷者の治療等のための市民に対する役務の強制、交通・通信・経済等の市民生活・経済活動の規制がなされることになる。これは憲法規範の中核をなす基本的人権保障原理を変質させる重大な危険性を有する。
第3に、曖昧な概念の下で拡張された「武力攻撃事態」における自衛隊の行動は、憲法の定める平和主義の原理、憲法九条の戦争放棄、軍備及び交戦権の否認に抵触するのではないかとの重大な疑念が存在する。またいわゆる「周辺事態法」と連動して、米軍が主体的に関与する戦争あるいは紛争に我が国を参加させることにより、日米の共同行動すなわち個別的自衛権の枠を超えた「集団的自衛権の行使」となって、周辺諸国から我が国が対外的脅威とみなされるおそれがある。このことは、我が国に対する攻撃を招く危険を生じさせることにさえなる。
第4に、武力の行使、情報・経済の統制等を含む幅広い事態対処権限を内閣総理大臣に集中し、その事務を閣内の「対策本部」に所掌させることは、行政権は内閣に属するという憲法規定と抵触する。更に、内閣総理大臣の地方公共団体に対する指示権及び地方公共団体が行う措置の直接執行権は、地方自治の本旨に反する。この法案は、内閣総理大臣に強大な権限を付与するものであり、憲法が定める民主的・権力分立的な統治構造・地方自治制度を変質させるものである。
第5に、日本放送協会(NHK)などの放送機関を指定公共機関とし、これらに対し、「必要な措置を実施する責務」を負わせ、内閣総理大臣が、対処措置を実施すべきことを指示し、実施されないときは自ら直接対処措置を実施することができる。これは、政府が放送メディアの権力監視機能、報道の自由を侵害し、国民主権と民主主義の基盤を崩壊させる危険を有するものである。仙台弁護士会は、法案の持つ重大性、危険性に鑑み、法案の問題点を国民・県民に明らかにし、上記理由に基づき、有事法制3法案に反対し、廃案にすることを改めて強く求めるものである。以上のとおり決議する。
2003年(平成15年)2月22日仙台弁護士会会長 犬飼健郎

平成15年02月22日 簡易裁判所判事及び副検事経験者に対して「準弁護士」資格を付与することに反対する決議
ttp://senben.org/archives/577

最高裁判所と法務省は,簡易裁判所判事(以下「簡裁判事」という)及び副検事経験者に対し,次のとおり簡易裁判所(以下「簡裁という」)管轄の事件を中心に弁護士業務を行うことが出来るいわゆる「準弁護士」資格を付与することを提案している。すなわち,刑事に関しては簡裁判事及び副検事経験者とも,①簡裁における被告人の弁護,②法定刑に死刑または無期懲役がある罪以外の被疑者(少年を含む)の弁護,③上記①及び② に関わる示談,④刑事事件に関する法律相談が出来るものとされ,民事に関しては,簡裁判事経験者には,①簡裁における民事訴訟等の代理,②法律相談(訴額による制限なし),③裁判外の和解代理(訴額による制限なし)が出来るものとされている。今次の司法改革は,法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度のもとで,高い資質,能力を確保しつつ,法曹人口を大幅に増員し,法曹が社会生活上の医師として社会の多様なニーズに対応することをめざしている。法曹資格を取得するには,これまで以上にプロセスを重視した養成課程を経ることが強く要求され,司法試験合格者数も平成22年以降は毎年3000人となり,法曹人口が急速かつ大幅に増加していくことが見込まれている。このようなときに,官公庁内部の登用試験で採用された簡裁判事や副検事に,本来の法曹養成課程を経ない「準弁護士」なる資格を創設,付与することは,上記改革の理念に反し,改革の流れに逆行するものである。しかも官公庁の内部試験を経た特定の公務員のみに,「準弁護士」の資格まで与えることは,司法制度改革審議会の意見書がいう「簡裁判事,副検事の専門性の活用」の範囲を明らかに逸脱するものであり,むしろ官の優遇策,退職者の天下り先確保策との批判を免れない。「準弁護士」のように,取扱い業務が極めて限定され,本来の弁護士とは異質な資格者が存在することは,利用者である国民からみても極めてわかりにくく,混乱を生ぜしめ,ひいては司法への不信を招く恐れすらある。また,法曹養成課程を経ない簡裁判事や副検事経験者が被告人や被疑者の弁護人となることは,憲法上保障された弁護人依頼権の保障の観点からも,到底容認し難いものである。なお,これら準弁護士資格の付与は,地方における弁護士不足解消のために必要であるとの意見もあるが,そもそも司法試験合格者は平成22年度までに飛躍的に増大することが確実となっており,弁護士不足の問題が日弁連・弁護士会が取り組んでいる全国の法律相談センター活動,公設事務所の推進,地域司法計画の展開,事務所法人化,法律扶助制度の拡充等により解決することのできる問題であることからすれば,準弁護士資格を付与する制度を新設する必要性はこの点においても全くないものといわざるを得ない。以上の理由により,当会は準弁護士制度を新設し,簡裁判事及び副検事に準弁護士資格を付与することに強く反対する。以 上 以上のとおり決議する。
2003年(平成15年)2月22日仙台弁護士会会長 犬飼健郎

平成15年02月22日 弁護士報酬の敗訴者負担制度導入に反対する決議
ttp://senben.org/archives/579
弁護士報酬の一般的な敗訴者負担制度は、市民の司法へのアクセスを抑制するおそれがあり、また裁判の人権保障機能及び法創造機能を損なうものであるから、当会はその導入に強く反対する。以上のとおり決議する。2003年(平成15年)2月22日仙台弁護士会会 長  犬飼健郎

平成14年06月20日 個人情報保護各法案に反対し、住民基本台帳ネットワークシステム施行の延期を求める仙台弁護士会会長声明
ttp://senben.org/archives/583

6月19日までの今国会の会期が延長された中、政府は、個人情報保護法案及び行政機関個人情報保護法案が成立しない場合であっても、住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネットシステム」という)の8月施行を実施したいとしている。個人情報保護法案は、メディアの活動を不当に規制するのみならず、弁護士、弁護士会を含む民間事業者一般に対し具体的義務を課した上、個人情報保護のための独立した機関をおかずに主務大臣が助言、勧告、命令等の権限を持ち、命令違反には罰則を設けているなど、事業者に対する広範な介入を招くおそれが高い。また、行政機関個人情報保護法案も、利用目的の変更、目的外利用や行政機関同士の情報提供を広く認める反面、その必要性・相当性についてチェックできる手続的配慮がなく、罰則も一般の守秘義務違反等しかない。 このように、個人情報保護法各法案には、重大な欠陥がある。昨今の、防衛庁における、職員が情報公開請求者のリストをデータ化して、他部局に流し、発覚するや削除した事件は、情報の収集、目的外利用及び内部の情報提供等について、まさに、上記必要性・相当性によるチェックが全く働かないことを、如実に示している。もとより高度情報化社会では、個人情報保護法制は必要である。OECD8原則を受けた、ネットワーク社会の個人情報保護を目的とするEUデータ保護指令は、その要求水準を満たす個人情報保護法制のない第三国へのデータの移転を禁止すらしている。情報化社会において取り残されないという面からも、上記水準を満たす個人情報保護法制の整備は不可欠であるが、前記個人情報保護各法案は、到底そうした水準を満たすものではない。翻って言えば、住基ネットシステムは、200を超える行政事務に使用できる共通番号を国民全員に付し、オンラインによりネットワーク化するというものである。技術的には、個人の付番号をいわばマスターキーにして、当該個人に関するあらゆる情報の集積が可能となるシステムである。法制の整備を含む十分なセキュリティ措置なしには、取り返しのつかないプライバシー侵害が起きるおそれが大きい。そこで、1999年の住民基本台帳法改正の際には、附則1条2項で「この法律の施行にあたっては、政府は、個人情報保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする」と定められた。しかるに、前記個人情報保護各法案は、上記附則にいう所要の措置を満たすものではない。 ましてや個人情報保護法制の整備を待たずに住基ネットシステムを稼働させるというのは、プライバシー保護の見地からは、暴挙とすら言いうるものである。以上、当会としては、個人情報保護各法案には前記重大な欠陥を払拭する抜本的修正が必要であり、また、そうした個人情報保護が十分になされるような法整備がなされない限り、住基ネットシステムの施行も延期されるべきである。
2002年(平成14年)6月20日仙台弁護士会会長 犬飼健郎

平成14年05月15日 「有事法制」法案に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/586

現在国会で「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」、「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」、「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」(以上を有事法制3法案という)が審議されている。 政府与党は、今国会でこれらの法案を成立させる構えを示している。しかし、有事法制3法案は、以下に述べるような極めて重大な問題点と危険性を有している。また、国民への事前の十分な説明と国民的議論がなされないままに審議がなされている。これらのことから仙台弁護士会は、この3法案に反対の意思を表明するものである。
第1に、「武力攻撃事態」法案では「武力攻撃のおそれのある事態」や「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」までが「武力攻撃事態」とされており、その範囲・概念は極めて曖昧である。 政府の判断によりどのようにも「武力攻撃事態」を認定することが可能であり、しかも、国会の承認は「対処措置」実行後になされることから、政府の認定を追認するものとなるおそれが大きい。
第2に、いったん内閣により「武力攻撃事態」の認定がなされると、陣地構築・軍事施設・軍事物資確保等のための私有財産の収用・使用、軍隊・軍事物資の輸送、軍事施設の建設、戦傷者の治療等のための市民に対する役務の強制、交通、通信、経済等の市民生活・経済活動の規制がなされることになる。これは憲法規範の中核をなす基本的人権保障原理を変質させる重大な危険性を有する。
第3に、曖昧な概念の下で拡張された「武力攻撃事態」における自衛隊の行動は、憲法の定める平和主義の原理、憲法9条の戦争放棄、軍備及び交戦権の否認に抵触するのではないかとの重大な疑念が存在する。またいわゆる「周辺事態法」と連動して、米軍が主体的に関与する戦争あるいは紛争に我が国を参加させることにより、日米の共同行動すなわち個別的自衛権の枠を超えた「集団的自衛権の行使」となって、周辺諸国から我が国が対外的脅威とみなされるおそれがある。 このことが、我が国に対する攻撃を招く危険性を生じさせることにさえなる。
第4に、武力の行使、情報・経済の統制等を含む幅広い事態対処権限を内閣総理大臣に集中し、その事務を閣内の「対策本部」に所掌させることは、行政権は内閣に属するという憲法規定と抵触する。更に、内閣総理大臣の地方公共団体に対する指示権及び地方公共団体が行う措置の直接執行権は、地方自治の本旨に反する。 この法案は、内閣総理大臣に強大な権限を付与するものであり、憲法が定める民主的・権力分立的な統治構造・地方自治制度を変質させるものである。
第5に、日本放送協会(NHK)などの放送機関を指定公共機関とし、これらに対し、「必要な措置を実施する責務」を負わせ、内閣総理大臣が、対処措置を実施すべきことを指示し、実施されないときは自ら直接対処措置を実施することができる。 これは、政府が放送メディアを統制下に置き、市民の知る権利、メディアの権力監視機能、報道の自由を侵害し、国民主権と民主主義の基盤を崩壊させる危険を有する。 最後に、この法案は、法律施行後2年以内に有事法制の整備を総合的かつ効果的に実施することを国会に義務付けており、戦前の国家総動員体制と類似する国家体制を生じさせるおそれがある。このような重大な問題点を含む有事法制3法案が、その具体的内容が事前に国民に知らされることなく、したがって国民的議論が尽くされることもなく今国会に上程され、審議されていることは、国民主権に基づく民主的手続の点からも重大な問題を含むものであり、性急・拙速といわざるを得ない。 また、この間の国会における審議においても、「武力攻撃事態」の概念についての政府の説明に不統一がある等、上記にあげた種々の問題点が解明されたとは言い難い状況にある。以上の危険性及び手続き的問題点に鑑み、仙台弁護士会としては、有事法制3法案に反対し、同法案を廃案にするように求めるものである。
2002年(平成14年)5月15日仙台弁護士会会長犬飼健郎

平成14年05月15日 民事法律扶助事業に対する抜本的財政措置を求める声明
ttp://senben.org/archives/588

民事法律扶助法は、民事法律扶助事業の統一的な運営体制の整備及び全国的に均質な遂行のために必要な措置を講ずることを国の責務とし、民事法律扶助事業の全国的に均質な遂行の実現に努めることを指定法人の義務としている。民事法律扶助事業の実施の指定を受けている財団法人法律扶助協会は、国に対し、平成13年度の民事法律扶助事業の補助金として、59億8000万円の要望をした。 これに対する国の決定額は25億7500万円弱であり、その後に認められた補正額2億8000万円を加えても約28億5500万円にとどまった。 一方、同年度に扱った財団法人法律扶助協会の事業のうち、代理援助の件数だけでも29,855件に及んでおり、財源不足のため、年度末には同協会の各支部において受付窓口を閉鎖したり、全国30以上の支部で自己破産の利用を制限したり、申込みは受け付けても扶助決定を4月以降とするなどの状況を呈するに至った。そこで、財団法人法律扶助協会は法務省に対し、平成14年度の民事法律扶助事業の補助金として66億円余の予算要望を行い、法務省は36億円の概算要求をまとめたものの、内閣府及び財務省の査定を受け、平成14年度の予算は要望額の半額以下である、約30億円しか認められなかった。しかしながら、30億円の国庫補助金では償還金等を加算しても平成13年度の事件数にしか対応できず、代理援助の件数が40,000件に近づくことが予測されている平成14年度は、前年度と同様、年度途中で財源不足のために、再び同協会の全国の各支部で援助申込受付を中止せざるをえない深刻な事態となることが予想され、このままでは民事法律扶助制度は破綻し、経済的弱者の司法へのアクセスが閉ざされることとなる。現に、同協会仙台支部においても、自己破産事件については平成13年度時点で既に希望者の半数程度しか援助決定ができておらず、更に本年度は一般民事事件についても件数制限を真剣に検討せざるを得ない状況にある。民事法律扶助制度は、憲法第32条の「裁判を受ける権利」を実質的に保障する制度であり、平成13年6月12日に発表された司法制度改革審議会の意見書では、「民事法律扶助制度については、対象事件・対象者の範囲、利用者負担の在り方、運営主体の在り方等について、更に総合的・体系的な検討を加えた上で、一層充実すべきである」とし、民事法律扶助の拡充を求めている。仙台弁護士会及び財団法人法律扶助協会仙台支部は、国に対し、国民の裁判を受ける権利を保障し、利用しやすい司法を実現するために、民事法律扶助事業に対する補正予算を計上するなど直ちに必要な財政措置を講ずることを強く求めるものである。
2002年(平成14年)5月15日
仙台弁護士会会長犬飼健郎
財団法人法律扶助協会仙台支部
支部長   渡 邊 克 彦

平成17年12月02日 平成17年12月2日会長声明
ttp://senben.org/archives/513

2005(平成17)年11月17日、政府(国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部)は、FATF(国際的なテロ資金対策にかかる取組みである「金融活動作業部会」の略称)勧告実施のための法律整備について、FIU(金融情報機関)を金融庁から警察庁に移管する等の決定を行った。 この決定について、当会は、下記の経緯に鑑みて、到底容認することができず、日弁連とともに、反対運動を展開していくことを決意する。2003年6月、FATFは、マネーロンダリング及びテロ資金対策のために、ひとつの勧告を行った。それは、規制対象を金融機関から弁護士当に拡大して、不動産売買等一定の取引について、FIUへの報告を義務付けるものであった。これを受け、政府(国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部)は、2004(平成16)年12月に、「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、上記勧告の完全実施を決定した。このFATF勧告は、弁護士に対し、依頼者の疑わしい取引の報告を義務付けるものであり、守秘義務に抵触するおそれがあり、ひいては依頼者の弁護士に対する信頼を崩壊させるものであって、弁護士制度の根幹を揺るがす内容であった。そこで、世界の弁護士は、この勧告の実施に反対し、日弁連も、勧告の完全実施のための国内法整備に反対を表明した。しかし、一方、テロ対策の必要性を否定することはできず、また、日本においては、金融庁にFIUが設置されており、日弁連が弁護士からの報告を審査して、金融庁に通知するという構造であれば、市民の弁護士に対する信頼や弁護士自治にとって、より侵害的でない制度の構築も可能ではないかとの判断から、日弁連も法務省との間で協議を続けてきた。そして、この協議は、FIU(金融情報機関)が金融庁に置かれる構造を当然の前提としてなされてきた。ところが、冒頭に述べたとおり、今般、FIU(金融情報機関)を金融庁から警察庁に移管する等の政府決定がなされた。弁護士会が警察庁に通知する制度構造は、弁護士・弁護士会が国家権力から独立したものであることの大きな障害になるものであって、市民の弁護士に対する信頼や弁護士自治を侵害するものと言わざるを得ない。したがって、今回の政府決定は、到底容認することができないものであり、当会は、市民の理解を得る努力を行いつつ、日弁連とともに、反対運動を展開していくことを決意する。
2005(平成17)年12月2日会長 松坂英明

平成17年10月21日 共謀罪の新設に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/category/statement2005

政府は、いわゆる共謀罪に関する法案を、今特別国会において審議する予定であったが,これを断念し,改めて次の国会における成立を目指すものと報じられている。この法案は、解散前の通常国会において提案され、廃案となったものとほぼ同じ内容であり、構成要件の明確性を欠き、更に処罰時期を著しく早め、処罰範囲を一気に拡大して、事実上刑法を全面改悪するに等しい。これは刑法の原則である罪刑法定主義に反し、憲法上の言論の自由、結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威である。当会は、本年7月、この共謀罪の新設の法案に反対する意思を表明した。共謀罪とは、団体の活動として、組織により行われるものの遂行を共謀したことだけで処罰するものである。死刑又は無期若しくは長期10年を越える懲役若しくは禁錮の刑が定められている犯罪について共謀した場合には5年以下の懲役又は禁錮の刑に処するものとし、長期4年以上10年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている犯罪について共謀した場合には2年以下の懲役又は禁錮の刑に処するものとされている。しかし、共謀罪、犯罪の実行行為の着手がないばかりでなく、予備行為さえも行っていない段階で、共謀をしたというだけで処罰するものとなっており、処罰時期を著しく前倒しにするものである。したがって、抽象的危険の存否すら不明な段階であろうとも、会話ないし通信をしたことだけで刑罰を科されることになりうる危険がある。しかも、現行刑法では、予備行為が処罰されているのは殺人ないし放火などの重大犯罪に限られているところ、この共謀罪では、長期4年以上の刑罰が科せられる犯罪について成立が認められていることから、500以上にものぼる非常に広範囲な犯罪が実行前において処罰の対象とされてしまう。また、「共謀」という不明確な概念を構成要件としているため、刑罰法規の明確性原則に反する。共謀は抽象的概念であるため、特定の行為からその認定は困難であり、行為者の会話のみならず内心にまで踏み込まなければ判断できない以上、行為者の思想、信条、主義にまで捜査機関が調査権限を及ぼすことを招き、その結果、国民の思想、信条の自由を侵害してしまうことになりかねない。そして、思想、信条を表現するための通信、出版などの情報伝達及び外部公表行為に対する萎縮的効果を極めて甚大となる。また、共謀の事実を捜査するためとして、捜査機関が、市民の一般的な会話や電話、そして電子メールのやりとりなどに対する監視ないし管理を強化していくという事態をももたらしかねない。このように、共謀罪の新設は、民主主義を支える表現の自由、そして個人として最も尊重されるべき思想信条の自由を侵害するおそれがあり、到底受け入れることができないのである。そもそもこの法案は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条例」(以下「犯罪防止条約」という。)の批准のための国内法を整備するため上程された。それであれば、法規制は犯罪防止条約が求める範囲においてなされれば足りる。ところが、犯罪防止条約においては、その適用範囲は「性質上越境的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するもの」に限定されているにもかかわらず、共謀罪ではこの「越境性」「組織的な犯罪集団の関与」を要件としていない。もって、条約批准に伴う国内法整備という範囲を超えて、過度にその適用範囲を拡大しているものである。よって、当会は、あらためて、この共謀罪の新設に強く反対するものである。以上
2005年(平成17年)10月21日仙台弁護士会会長松英明

平成17年09月21日 平成17年9月21日 憲法改正国民投票法案に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/517

仙台弁護士会は、日本国憲法の平和主義、国民主権、基本的人権保障などの原則を尊重する立場から、これらの諸原則に反する疑いのある法案や政府の行為に対し、批判や反対の意見を表明してきた。近時、政府与党は、国会での憲法改正国民投票法案成立を目指している。法案の内容は、2004年12月3日、国民投票法等に関する与党協議会の実務者会議において、2001年11月に発表された憲法調査推進議員連盟の日本国憲法改正国民投票法案に若干の修正を加えて日本国憲法国民投票法案骨子(案)(以下「法案骨子」という。)を策定し、この「法案骨子」を基に法案化するとのことである。しかしながら、この「法案骨子」には、国民主権、基本的人権の保障という憲法の基本原則からして、以下の重大な問題がある。
1 「法案骨子」は、憲法の複数の条項について改正案が発議された場合に、全部につき一括して投票しなければならないのか、あるいは条項ごとに個別に投票できるのかについて明らかにしていない。この点については、国民主権の原理に則り、条項ごと又は問題点ごとに個別の賛否の意思を問う発議方法及び投票方法がとられるべきである。
2 「法案骨子」は、国民投票運動について、広範な制限禁止規定を定め、不明確な構成要件により刑罰を科すものとなっている。その主なものを挙げると、① 公務員の運動の制限、②教育者の運動の制限、③外国人の運動の制限、④国民投票の予想結果の公表の禁止、⑤新聞・雑誌の虚偽報道の禁止、⑥新聞・雑誌の不法利用の禁止、⑦放送事業者の虚偽報道の禁止等である。しかし、国民投票にあたっては、表現の自由が最大限保障されるべきであり、国民投票運動は基本的に自由でなければならない。上記のような規制が広範かつ不明確な構成要件のまま設けられるならば、憲法改正国民投票という主権者が最も強く関与すべき事項について、主権者に十分な情報が伝わらず、また、国民の間で自由な意見交換がなされないまま国民投票が実施されることになるおそれがある。「法案骨子」の制限禁止規定は、表現の自由、報道の自由及び国民の知る権利を著しく制限するものであるといわなければならない。
3 「法案骨子」は、国民投票の期日については、国会の発議から30日以降90日以内の内閣が定める日としている。しかし、国民が的確な判断をするために必要かつ十分な期間が確保されなければならず、この期間はあまりにも短い。
4 「法案骨子」は、憲法改正に対する賛成投票の数が有効投票総数の2分の1を越えた場合に国民投票の承認があったものとする。また、国民投票が有効に成立するための投票率に関する規定を設けていない。しかし、少なくとも改正に賛成する者が、全投票総数の過半数を超えたときに、改正についての国民の同意があったとされるべきであり、国民投票が有効となる最低投票率に関する規定も設けるべきである。
5 「法案骨子」は、国民投票無効訴訟についてさだめているものの、提訴期間を投票結果の告示の日から起算して30日以内とし、一審の管轄裁判所を東京高等裁判所に限定している。しかし、この提訴期間は憲法改正という極めて重要な事項に関するものとしては短すぎるし、管轄の限定も国民の裁判を受ける権利を制限するものであって不倒である。
1 「法案骨子」は、軽微な選挙違反により公民権停止者の投票権を認めず、「衆議院及び参議院の選挙権を有する者は国民投票の投票権を有するものとする」としている。また、18歳以上の未成年者についても、これを認めないとしている。しかし、公民権停止中の者に対して憲法改正の投票権を否定する理由に乏しく、また、18歳以上の未成年者については十分な議論がなされるべきである。いうまでもなく、憲法改正国民投票は、主権者である国民が、国の最高法規である憲法のあり方について意思を表明するという国民の基本的な権利の行使にかかわる国政上の重大な問題である。よって、国政参加のどの機会に増して、国民には自由な議論の時間と方法が保障されることが必要であるし、投票結果には国民の意思が正確に十分に反映される手続が保障されるべきである。しかるに、「法案骨子」は、上記のとおり、民主的な手続的保障への配慮を欠いているといわざるを得ず、このまま拙速に進めば、国民の基本的人権を侵害したまま、国民の意思が正確に反映されないまま、国の最高法規たる憲法が改正されてしまう危険がある。このような「法案骨子」に基づく憲法改正国民投票法案が国会に提出されることは到底容認することができない。よって、仙台弁護士会は、国民主権、基本的人権尊重などの基本原則を尊重する立場から、「法案骨子」に基づく憲法改正国民投票法案が国会に提出されることに強く反対するとともに、広く国民の間で、真に国民主権に根ざした憲法改正国民投票法案のあり方について十分な議論がなされることを求めて、活動していくものである。以上 2005年(平成17年)9月21日 仙台弁護士会 会長松坂英明

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余命三年時事日記 2270 ら特集10仙台弁護士会⑤20 [余命三年]

余命三年時事日記 2270 ら特集10仙台弁護士会⑤20
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2270-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a420/ より

平成10年05月22日 平成10年5月会長声明
ttp://senben.org/archives/category/statement1998
平成10年5月会長声明1998年05月22日

1 政府は本年4月10日、「公務文書」の文書提出命令に関する「民事訴訟法の一部を改正する法律案」を国会に上程した。
2 平成8年、第136回国会に上程された民事訴訟法改正案の政府原案では、「公務秘密文書」について監督官庁が承認しなければ一律文書提出義務がなく、又裁判所に提出拒否事由の存否に関する判断権がない等、不合理な官民格差を生じ、各界から批判が集中した。その結果、上記政府原案は修正削除されたうえ、衆参各法務委員会の付帯決議及び新民事訴訟法付則27条によって、情報公開制度の検討と並行して総合的な検討を加え、新民事訴訟法公布後2年を目処として必要な措置を講ずるものとされた。
3 しかし、今回提出された改正案は上記付帯決議及び附則の要求を十分に満たしておらず不当なものである。即ち、
① 「公務秘密文書」の定義があまりにも広く概括的であり、その結果「公務文書」の提出範囲が狭められる恐れがある。
② 刑事事件記録及び少年保護事件記録を文書提出義務の対象から除外しており、これらの文書が例えば交通事故による損害賠償訴訟等の民事訴訟及び官官接待や贈収賄等に端を発する住民訴訟等の行政訴訟における立証資料として果たしている重要性を無視するものである。
③ 「公務秘密文書」のうち、特に「防衛・外交文書」及び「犯罪・捜査文書」に関し、監督官庁が提出義務がないとの意見を述べたときは、裁判所は提出義務の存否ではなく当該監督官庁の上記意見の相当性について審査するものと しており、インカメラ手続に基く裁判所の判断を経ずに提出義務の存否を判断する場合が多くなることが予想され、その実質的判断権が監督官庁に委ねられる危険性がある。
④ 本年3月27日に国会提出された情報公開法案との関係では、本改正案においては「公務文書」についても自己使用文書であることが提出義務の除外事由とされているので、情報公開法案における非公開事由よりも提出拒否事由の範囲が広くなっていること、又情報公開法案では非開示事由の立証責任が官庁にあるのに対し、本改正案では提出拒否事由がないことの立証責任を申立人に課したものと解釈される余地があることにおいて整合性を欠く。
4 当会は、上記のような問題を含む本改正案には反対であり、国会の審議において、上記附帯決議及び附則の趣旨に基づいた修正がなされるべきであり、その為に全力を尽くす決意である。以上、常議員会の決議に基き声明する。

平成10年04月20日 平成10年4月20日会長声明
ttp://senben.org/archives/628
平成10年4月20日会長声明1998年04月20日

平成10年3月13日、政府は、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案」、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」及び「犯罪捜査の為の通信傍受に関する法律案」の3法案を国会に提案した。同法案の主な内容は、組織的な犯罪への刑の加重、犯罪収益等による事業経営の支配を目的とする行為等の処罰及び犯罪捜査のための通信傍受の許容である。しかし、組織的な犯罪への刑の加重及び犯罪収益等による事業経営の支配を目的とする行為等の処罰は、現行法でもその犯罪態様に応じた処断が十分に可能であり、新たな立法を必要とするまでの事実が存在しない。加えて「組織」「不正権益」「支配」等の構成要件が不明確であり、犯罪収益とされる前提犯罪が広すぎる等全体として処罰範囲が広すぎること等の問題点を有している。特に、犯罪捜査のための通信傍受(いわゆる盗聴)については、対象犯罪が広すぎること、将来の犯罪も対象にしていること、別件盗聴も許容していること、盗聴許容期間につき再延長を認めるばかりでなく令状の再発布をも認めている等の問題点が多い。問題点のいくつかについては国会の審議の中での要件の厳格化等の修正も示唆されてはいるものの、その性質上いかに要件を厳格にしても憲法の定める令状主義、適正手続の保障の要請を満たすことが困難である。のみならず、警察が違法な盗聴を行った事件が存在したことを考えると、通信の秘密の侵害、プライバシ?の侵害等の深刻な人権侵害を大量に生じさせる危険があり、その立法には断固反対せざるを得ないものである。そこで、前記3法案に反対であることを広く訴えるため、本声明を発するものである。

平成16年06月22日 有事法制関連7法・3条約承認案件の成立に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/547

6月14日、別紙記載の国民保護法・米軍支援法などの有事法制関連7法及び改正ACSAなど3条約承認案件が、参議院本会議において可決承認され、成立した。当会は、一昨年4月、別紙記載の「武力攻撃事態対処法」など有事法制3法案が国会に提出された後、同法案が憲法の根本規範である人権保障規定や民主的な統治構造を大きく変質させる危険があること等を指摘し、その廃案を求めるとともに、会内に有事法制問題対策本部を設置し必要な調査研究活動や市民集会の開催などを系統的に行ってきた。また、当会は本年3月に国会に上程された上記有事法制関連7法案に対しても、「国民保護法案」は、国民保護措置の実効性に問題があるとともに平時から国民を統制する危険が高く、また、国民の戦時ムードをかりたて紛争の平和的解決の可能性を自ら塞いでしまうおそれがあること、「米軍支援法案」等は憲法が禁止する集団的自衛権の行使や交戦権の行使をも可能とする措置を内容とし、市民の生活や権利に対する重大な影響があること等を指摘し、これらの法案を廃案にするよう強く求めてきた。更に、改正ACSAも、米軍と自衛隊との物品役務の相互提供の適用範囲を武力攻撃事態等やイラク特措法などにも拡大し、しかも弾薬提供も可能にするなど、重大な憲法問題を有する重要案件であった。しかし、衆議院さらに参議院においても、当会が指摘した問題点などについて、十分な論点整理や徹底した審議が行われたとはいえず、国民にも法案の必要性や問題点が十分認識されず、国民的議論がなされることもなかった。このように手続的にも広く十分な議論を尽くさないまま、有事法制関連7法・3条約承認案件が成立したことは、誠に遺憾と言わざるを得ない。当会は、「有事」の名の下に、憲法が保障する人権が制約され、国民主権と平和主義がないがしろにされることのないように、今後も引き続き、有事法制のあり方や運用を厳しく検証してゆくとともに、政府等関係諸機関に対して、国際紛争の解決は、国際協調主義に則り非軍事的方法によることを真摯に模索探求し、今後、憲法違反の疑いが極めて強い有事法の発動を決して行わないよう強く求めるものである。
2004年6月22日仙台弁護士会会長鹿野 哲義

平成16年05月19日 有事7法案の廃案を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/549

1 政府は、本年3月9日、別紙記載の国民保護法案、米軍支援法案、特定公共施設等利用法案、外国軍用品海上輸送規制法案等のいわゆる有事7法案を国会に上程し、本年4月13日から審議が行われている。
2 当会の基本的見解
当会は、有事法の総則的規定である武力攻撃事態法案に対して、①武力攻撃事態や武力攻撃予測事態(併せて「武力攻撃事態等」と称する)の概念が曖昧であること、②「自衛」の範囲を大きく超え、憲法前文や9条の定める平和主義に抵触する重大な疑念があること、③市民の人権を大幅に制限し、憲法の保障する基本的人権を侵害する危険が高いこと、などを理由に廃案にするよう求めてきたが、武力攻撃事態法の各則ともいうべき今回の7法案についても、これらの批判があてはまる。
3 有事7法案の問題点
① 国民保護法案の問題点
国民保護法案は、武力攻撃事態等及び緊急対処事態という2つの事態における「国民保護のための措置」として、住民の避難・避難住民の救援・武力攻撃災害対処措置などを定めている。同法案によれば、放送事業者である指定公共機関等に対して、政府が資料や情報の提供を求めたり、対策本部長が発令した警報の内容を放送する責務が課される。報道機関は、実際に武力攻撃事態が発生した場合には、当然に政府の発令した警報の内容を報道するはずである。にもかかわらず敢えて政府に対する情報提供や政府の発令した警報報道を責務として規定することは、逆に、報道に対して規制を行い、報道の自由や市民の知る権利に対して不当な制約を課すことになる危険性が高い。また、同法案は、立ち入り制限区域を定めて市民の立ち入りを制限し、また市民に対して特定物資の売渡・保管、土地・家屋の使用、土地・建物・物資について立入・検査など大きな権利の制約を課すことを内容としている。他方で、知る権利、集会・表現の自由の保護についての具体的な措置が確保されておらず、「国民の権利」保護としては極めて不十分な内容といわねばならない。更に、同法案は、平素から、国民に対する訓練と啓発に努めなければならないと規定しているが、特定の軍事シナリオを前提にして計画が作成され、地域社会が軍事シナリオに沿って統合・訓練されることになれば、国民の戦時ムードをかりたて、紛争の平和的解決の可能性を自ら塞いでしまうおそれすらある。このような重大な人権問題が発生する可能性がありながら、他方で、避難等の実効性については、鳥取県のシュミレーションでも、同県東部の住民2万6000人が隣県の兵庫県にバスで避難するのに11日間も要するなど、非現実的との指摘がなされている。しかも、国民保護法案では、武力攻撃事態等と異なる「緊急対処事態」というさらにあいまいな事態を規定し、その対処方針に国会承認を不要としながら、武力攻撃事態等の場合と同様に市民の権利を制限できることとしており、その危険性は極めて大きいものである。
② 米軍支援法案及び特定公共施設等利用法案の問題点
米軍支援法案は、武力攻撃事態等と認定された場合において、日本による何らのコントロールもなされない米軍に対して、自衛隊等に属する物品や自衛隊等の役務の提供を認める。自衛隊が米軍に対して役務等を提供するということは、自衛隊が米軍の指揮下におかれることになるものである。また、特定公共施設等利用法案は、武力攻撃事態等と認定された場合において、日本国内の港湾施設・飛行場・道路・海空域及び無線通信を、自衛隊、米軍あるいはこれらから依頼を受けた業者などの優先的使用権下におくものである。そして、上記の武力攻撃事態等が、公海上で米軍に対する後方支援活動を行っている自衛隊への攻撃や攻撃が予測される場合も含むという政府見解からすれば、これらの法案は、日本の防衛とは直接関係のない場合にも、米国の軍事行動を支援協力する体制を日本国内に作り、また自衛隊をして協力させることになる。これは、従来の政府解釈によっても、憲法第9条によって禁止されている集団的自衛権の行使に該当するおそれが非常に強い。
③ 外国軍用品海上輸送規制法案の問題点
外国軍用品海上輸送規制法案は、軍用品等を輸送していると疑われる船舶を、日本領海のみならず周辺公海においても強制的に停船させ、積荷を調べ、武器使用も認めるものであり、憲法9条が禁じた武力行使・武力による威嚇、さらに交戦権の行使に該当するおそれがある。
④ 上記法案と市民生活との関係
国民保護法案は、最初に述べたように、市民の権利を制限し市民生活に重大な影響を及ぼすが、さらに、米軍支援法案は、適正手続の保障がないまま、米軍の緊急通行、通行妨害となっている物件の撤去を認め、さらに、米軍の土地家屋の使用のための立入検査の拒否に対する罰則をも規定している。米軍の軍事行動の支援のために市民の基本的人権の制約がなされるのであり、その問題は重大である。また同様に特定公共施設等利用法案は、米軍及び自衛隊に日本国内の港湾・飛行場・道路・海空域及び無線通信について優先利用を認めることによって、市民や業者の交通・輸送・通信を大きく制約し、日常生活に重大な影響をあたえるものである。
4 結論
以上のべてきたように、これらの7法案のうち国民保護法案、米軍支援法案、特定公共施設等利用法案、外国軍用品海上輸送規制法案は、平和主義・基本的人権の尊重という憲法の根幹を損なう重大な危険をはらんでおり、その他の3法案についても、憲法に反するおそれのある武力攻撃事態法を補完するもので問題である。当会は、これら法案のもつ重大性・危険性に鑑み、有事7法案に反対し、廃案にすることを強く求めるものである。
2004年5月19日 仙台弁護士会会長 鹿野 哲義


平成16年04月12日 自衛隊のイラク即時撤退を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/551
自衛隊のイラク即時撤退を求める会長声明

米国大統領による昨年5月1日の戦闘終結宣言の後も「イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域にある」状態が続いていたが、本年4月に入ると、従来協力的であったとされるシーア派と米軍など占領軍との間の激しい戦闘行為が発生し、現在も連日のように多数の死傷者が生じている。また4月8日には、自衛隊宿営地直近に向けて迫撃砲が撃ち込まれて着弾し、さらに同日、日本人民間人3名が誘拐され、自衛隊即時撤退の要求がなされるに至った。このような誘拐・脅迫行為は断じて許されるべきものではなく,誘拐された3名は速やかに解放されるべきものである。ところで,当会は、自衛隊派遣の根拠となるイラク特別措置法は、イラクにおける自衛隊の武力行使を事実上容認するもので、国際紛争を解決する手段として武力の威嚇又は武力行使を禁じた日本国憲法に違反する恐れが極めて大きいこと、イラク派兵は国連憲章に反する米英軍の武力行使と一体化したものと評価されることが明らかであることから、同法案の成立に反対した。さらに、法案成立後も、今回の自衛隊のイラク派遣は、憲法に反するだけでなく「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」とのイラク特別措置法の基本原則にも反することを指摘し、派遣に強く反対しその中止を求めてきた。これにもかかわらず、政府はサマワは戦闘地域ではないとして自衛隊を派遣したのであるが、派遣後、戦闘はさらに激しくなり、上記のとおり迫撃砲が撃ち込まれるなどサマワも非戦闘地域とはいえないことがいっそう明らかになった。自衛隊が攻撃を受けて武力行使に至る危険性がますます高まってきたといわざるを得ない。このように状況が悪化するなかで,上記の民間人が紛争にまきこまれ誘拐されたもので,誘拐という犯罪行為に対し強い怒りを覚えるものであるとともに,まさに今自衛隊を撤退させなければ,日本国民が武力紛争の泥沼に入り込み,再び戦争の惨禍に苦しむことになることを深く憂うるものである。よって,当会は,日本政府に対し(1) 誘拐された3名の日本人を解放させるためのあらゆる努力を尽くすこと (2) 自衛隊の派遣が日本国憲法及びイラク特別措置法の基本原則に反する派遣であることが歴然となった現実を冷徹に見据え、法の支配に則り、自衛隊を即時撤退させることを強く求めるものである。
2004年4月12日仙台弁護士会会長 鹿野 哲義

平成16年02月28日 宮城県災害対策支援機構(仮称)設立等に向けた決議
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2003(平成15)年5月、7月の宮城県北部連続地震は記憶に新しいところであるが、この地震においては、1978(昭和53)年の宮城県沖地震のような大規模な被害はもたらさなかったものの、被災地の高齢者・障害者等の社会的弱者に特に深刻な被害が見られた。また、宮城県付近を震源地とする大震災が近い将来発生するおそれもつとに指摘されている。1995(平成7)年1月17日の阪神淡路大震災においては被災住民からの法律相談が殺到し、復興活動においても弁護士・司法書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・建築士などの専門的知見の結集及び相互協力による横断的な対応が求められた。また、日本弁護士連合会は、2003(平成15)年5月23日開催の定期総会において、「全国弁護士会災害復興の支援に関する規程」を採択し、被災地域に居住又は勤務する市民の法的需要に応え、円滑な災害復興活動を被災地弁護士会が遂行するための支援体制の整備を打ち出している。当会は、阪神淡路大震災における被災地弁護士会等の諸活動の教訓に基づき、今後宮城県内において地震等の災害が発生した場合に、法律家として、災害後に起きる様々な法律問題に対し、関係諸団体と連携して、総合的に対処することを目的として、当会独自の災害対策に関する調査・研究を行なうとともに、県内の司法書士会等の関係諸団体との協議・意見交換を進め、横断的な災害復興支援機構を可及的速やかに設立する等して、災害復興対策のため、積極的な諸活動を企画・実行していくことをここに決意しここに決議する。
2004(平成16)年2月28日仙台弁護士会 会長松尾良風

平成15年12月18日 自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明
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自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明

政府は、12月9日、イラク特措法に基づく「基本計画」を閣議決定した。これに基づき、政府は年内にも無反動砲等の武器を携帯させて自衛隊をイラクへ派遣するとしている。しかし、今回の米英軍によるイラク侵攻は、国連安全保障理事会決議もなく、侵略行為に対する自衛行為でもなく、国連憲章に反する違法な行為と言わざるを得ない。そして現在、イラクにおいては、連日のように米英軍の占領に反対する抵抗が続いている。米英軍ばかりではなく、イタリア軍、スペイン軍等もその攻撃の対象となっている。軍隊の存在するところが、戦闘地域となると言っても過言ではない。しかも、国連事務所や国際赤十字委員会事務所も攻撃を受けており、国際機関職員や外交官の安全すら確保されていない。そして、ついに11月29日には日本人外交官2名が殺害されるといった事態も発生した。すなわち、イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域である。このような状況のなかイラクに自衛隊が派遣されれば、自衛隊そのものが占領軍としての米英軍の協力者として格好の攻撃目標となり、自衛隊員等が死傷したり、自衛隊員がその携帯する武器を用いてイラク国民に対して武力攻撃を行うという事態が発生する恐れが、極めて大きいといわざるを得ない。これは、憲法が否定した武力の行使を自衛隊が行うことにほかならない。日本国民は、過去の戦争に対する反省から「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」て、戦争と武力の行使の放棄を掲げる日本国憲法を制定した。憲法は、「国の最高法規」であり、これに反する国務に関する行為は無効である。しかも、イラク特措法は、「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇又は武力行使にあたるものであってはならない」と定めている。今回の自衛隊のイラク派遣は、憲法および非戦闘地域にしか自衛隊を派遣してはならないとするイラク特措法に明らかに反するものと言わざるを得ない。内閣総理大臣をはじめとする国務大臣等は、憲法を尊重擁護する義務を負っているにもかかわらず、憲法にも法律にも反する自衛隊のイラク派遣を決定したことは極めて遺憾である。当会は「基本計画」の撤回を求めるとともに、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、その中止を求めるものである。
2003年12月18日仙台弁護士会会長松尾良風

平成15年10月22日 司法修習生の給付制堅持を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/557

財務省の財政制度等審議会が司法修習の給費制の早期廃止を提言し,司法制度改革推進本部の法曹養成検討会でも,必ずしも十分な議論を尽くさないまま、「貸与制への移行という選択肢も含めて柔軟に検討する」との取りまとめをした。しかしながら,当会は,以下の理由により司法修習生の給費制を廃止することに強く反対する。現行司法修習制度における給費制は,司法修習生に修習専念義務を課していることの反面としてその生活を保障し、司法修習制度と不可分一体のものとして採用された制度である。すなわち、法曹養成制度は単なる職業人の養成ではなく、国民の権利義務、法の支配の実現にかかわるプロフェッションを養成するものであり、国及び社会にとって公共性・公益性の高い重要事項であるからこそ、司法修習生には修習専念義務を課す反面修習専念義務を尽くすための環境を確保するために給費制が取られているのである。したがって、修習専念義務と給費制を切り離すことは出来ない。また、修習専念義務が課される司法修習生の給費制が廃止されれば,経済的余裕のないものは法曹への道を断念せざるを得なくなる。高額な学費を要することが予想される法科大学院制度のもとではなおさらである。給費制の廃止により法曹への門戸が一般国民に閉ざされることは,社会の様々な分野において厚い層をなして活躍する法曹を獲得することを目指した司法制度改革の精神に反することは明らかである。給費制に代えて貸与制が採用された場合には、貸与の主体や条件等によって修習の独立性が脅かされるおそれもあること、また、法曹のスタート時点で多額の負債をかかえることは法曹としての質の高い活動を阻害する恐れもあることなどを考えると、貸与制では給費制廃止による弊害を取り除くことは出来ない。なお,給費制を廃止して貸与制に切り替えた上で任官者については当然に返済を免除するという議論が存在する。しかしこの議論は,実質的には任官者についてのみ給費制を維持することを意味するものであり,法曹三者の統一・公正・平等の理念に基づく司法修習を変容させ,法曹一元の理念を阻害するものであり到底容認することはできない。将来の法曹を担う人材の育成は国の責務と言うべきものであって,このため国は司法制度改革実現のため必要な財政上の措置を講ずる義務がある(司法制度改革推進法6条)。したがって、財政上の理由により給費制を廃止し貸与制を採用することは,本末転倒の議論である。よって,当会は,給費制廃止に強く反対し,給費制を堅持するよう求める。
平成15年10月22日仙台弁護士会会長松尾良風

平成15年07月16日 イラク特別措置法案に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/559

2003年7月4日、与党3党の賛成により、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(以下、「イラク特別措置法案」という)が衆議院を通過した。イラク特別措置法案は、「戦後はじめて、自衛隊が他国領土で米英軍を主力とする多国籍軍を支援する」ことをその目的とし、自衛隊をイラクに部隊として派遣しようとするものである。そもそも米英軍のイラク侵攻は、既に当会でも指摘しているとおり、国連憲章に反するものであり、大量破壊兵器の未発見という事態を前にして、米英が主張した正当性さえ大きく揺らいでいる。また、現在、イラクには、イラク人による統治機構は存在しておらず、米英軍が、侵攻の戦後処理としての占領行政を行っている状態である。そして、イラクにおいては、米英軍の占領に反対しての抵抗が続いており、ブッシュ大統領も認めたとおり、イラクは未だ戦闘状態にある。このような状態にあるイラクに自衛隊が武器を携えて派遣され、戦闘継続中の米英軍のために武器・弾薬・兵員を輸送することは、「非戦闘地域での後方支援」などということはできず、米英軍の武力行使と一体化したものと評価されることは明らかである。そして、米英軍の占領行為に反対するイラク人勢力から自衛隊が攻撃される可能性も大きく、その際には、自衛隊がイラク国民に対して武力を行使する事態も、自衛隊員が死傷する事態も、現実に予想されるところである。日本国憲法が他国領土での武力行使を禁じていることは言うまでもない。したがって、イラクにおける自衛隊の武力行使を事実上容認するイラク特別措置法案は、憲法に違反する恐れが極めて大きいものといわざるを得ない。しかるに、衆議院において、延長国会でのわずかな審議で、憲法との適合性に疑問があり、国民の意見も大きく分かれているこの法案を、与党3党が全野党の反対を押し切って採決したことは、到底容認することができない。当会は、イラク特別措置法案の衆議院における採決に強く抗議し、同法案に反対するものである。
2003年7月16日仙台弁護士会会長 松尾良風

平成15年06月18日 有事法制3法の成立に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/563

2003年6月6日、参議院本会議において、自民党・公明党・保守新党・民主党・自由党の賛成多数でいわゆる有事法制3法が可決され成立した。わが国は第二次世界大戦後58年を経て有事法制を有する国となった。当会は、本年5月21日付け会長声明などで、「対処措置」の発動要件である「武力攻撃事態」・「武力攻撃予測事態」の定義が曖昧であること、いわゆる周辺事態法でいう「周辺事態」との関係、武力攻撃事態法と周辺事態法がどう連動するかが不明確であること、有事認定の客観性も十分に担保されていないこと、国会による事前の民主的コントロールも確保されておらず、有事において民主的な統治機構や地方自治を維持することができるのか疑問であること、民放を含むメディアが有事に政府の統制下におかれる危険性も完全には排除されていないこと等の問題点を指摘し、参議院での慎重審議と十分な国民的議論を尽くすことを強く求めてきた。しかし、十分な国民的議論も尽くされず、上記のような重大な憲法上の問題点が何ら解消されないまま、有事法制3法が可決・成立されたことは、極めて遺憾なことといわざるを得ない。当会は、恒久平和と基本的人権の尊重、国民主権主義という日本国憲法の基本原理を擁護し、今後とも、有事法制の有する憲法上の問題点を広く明らかにし、平和が脅かされ基本的人権が侵害されることのないよう、法制の具体化や運用を、厳しく監視してゆく所存である。また、武力攻撃事態法を実施するため今後提出が予定されている「米軍支援法制」「国民保護法制」などの個別法案について、法律家団体として憲法の基本原理擁護の立場から、検討し提言していくものである。憲法は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」(前文)するとともに、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」(12条)ことを謳っている。憲法の理念や憲法が保障する基本的人権は、一人一人の市民が自らの自由と権利を保持するために努力することによってのみ守られるものである。当会は、引き続き市民とともに、最大の人権侵害である戦争に反対し、憲法で保障された自由と権利を守るため、引き続き最大限の努力をする決意である。 2003年(平成15年)6月18日仙台弁護士会会長 松尾良風
平成15年06月18日 国選弁護人の報酬引き下げに抗議し、増額を求める会長声明
2003年(平成15年)6月18日仙台弁護士会会長松尾良風
ttp://senben.org/archives/567
平成15年05月21日 有事法制修正法案につき、参議院の慎重審議と国民的議論を尽くすことを求める会長声明
ttp://senben.org/archives/569

与党と民主党の修正合意を踏まえて、2003年5月15日、衆議院本会議において、自民党、公明党、保守新党、民主党、自由党の賛成多数で、「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」、「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」、「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」が、一部修正(以下,これを「有事法制修正法案」という)の上採決された。採決された有事法制修正法案は、欠陥の大きかった政府案と比べれば、当会が指摘していた基本的人権の保障などの問題点に、ある程度応える内容となっている。しかし、「対処措置」の発動要件である「武力攻撃予測事態」の定義や範囲は曖昧なままであり、「予測事態」と周辺事態法でいう「周辺事態」の異同、武力攻撃事態対処法と周辺事態対処法がどう連動するかについても、依然として不明確なままである。また、「有事」認定の客観性も十分に担保されてはおらず、国会による事前の民主的コントロールも確保されていない。さらに、「有事」における内閣総理大臣の地方公共団体や指定公共機関に対する指示権・代執行権についても基本的な変更はなく、民主的な統治機構や地方自治を維持することができるのかという疑問は払拭されていない。民放を含むメディアが有事に政府の統制下におかれる危険性も残されたままである。このように修正法案にも、なお憲法上多くの重大な問題点が存在し、当会が指摘してきた憲法の定める平和主義・民主的統治機構・地方自治・基本的人権を侵害する危険性が解消されたとはいえない。
しかも、今回の修正法案については、衆議院での十分な審議はなされておらず、国民的な議論を尽くしたものとは到底言いがたい。言うまでもなく、有事法制法案は、わが国の進路を決定し、国民の生命と安全、そして基本的人権に大きくかかわる重要法案である。当会は、このような憲法原理にかかわる重要法案について、今後、参議院において徹底的な審議を行い、「有事」の定義や認定手続を含む修正法案の基本構造上の問題点を明らかにした上で、修正法案に対する国民的議論を尽くすことを、強く求めるものである。
2003年5月21日仙台弁護士会会長松尾良風


平成15年04月24日 個人情報保護各法案に反対し、実効的な個人情報保護法制の確立を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/571

去る4月8日から今国会では、個人情報保護関連5法案(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案、同法案要綱案)の審議がなされている。これらの法案は、個人情報の保護に関する法律案についてメディア規制にならないように若干の文言上の配慮をしたことと、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案について公務員に対する罰則規定を若干強めたこと以外は、昨年12月にいったん廃案になった従前の法案と変わっていない。すなわち、たとえば個人情報の保護に関する法律案については、一般の民間事業者一般に対し、具体的義務を課した上、主務大臣が助言、勧告、命令等の権限を持ち、命令違反には罰則を設けているなど、事業者に対する広範な介入を招くおそれは依然として高いといった問題を抱えたままである。また、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案についても、なんら第三者機関を置かずに、利用目的の変更、目的外利用や行政機関同士の情報提供を広く認める反面、その必要性・相当性についてチェックできる手続的配慮がないなど、国民の個人情報が不当に行政機関内部で流通する危険性が大であるといった問題を抱えたままである。さらに、上記両法案には、思想、信条、病歴、犯罪歴などのいわゆるセンシティヴ情報の収集制限をしていないといった問題もある。制度の根幹にかかわる基本的なこととして、個人情報の保護に関する法律案については、一般的規制を見直して、当面は、個人信用情報、医療情報、教育情報といった分野ごとの特性に応じた個人情報保護制度が整備されることをめざすべきである。他方、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案については、全個人情報のファイルの作成を義務づけ、利用目的の変更、目的外利用などの禁止又は本人への通知を必要とする規定を設ける、行政機関の個人情報の取り扱いの必要性・相当性をチェックする第三者機関を設置する、原告の住所地の地方裁判所に提訴できるといった管轄を認める、といった点が盛り込まれるべきである。当会は昨年6月20日にも同趣旨の会長声明を出しているが、こうした基本的なことについての修正がなされない限り、当会は、上記個人情報保護関連5法案に、あらためて強い反対の意思を表明せざるを得ない。
2003年(平成15年)4月24日仙台弁護士会会長松尾良風

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余命三年時事日記 2269 ら特集10仙台弁護士会⑤19 [余命三年]

余命三年時事日記 2269 ら特集10仙台弁護士会⑤19
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2269-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a419/ より

平成14年04月25日 平成14年4月25日会長声明
ttp://senben.org/archives/591

1,政府は、本年3月18日『心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案』(以下本法案という)を国会に上程した。
2,本法案は、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ及び傷害の行為(対象行為)を行い、心神喪失または心神耗弱を理由として、不起訴処分にされた者、あるいは無罪または刑を減軽する確定裁判を受けた者について、「継続的な医療を行わなくても再び対象行為を行うおそれが明らかにないと認める場合」を除き、検察官は原則として地方裁判所に審判を求め、裁判官と精神科医である精神保健審判員が「医療を行わなければ心神喪失又は心神耗弱の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合」には、決定により入院もしくは通院させて治療を受けさせるというものである。
3,しかし、「再び対象行為を行うおそれ」とは、精神保健福祉法での本人の治療目的の医学的判断である『自傷他害のおそれ』とは全く別種の判断で、いわば『再犯のおそれ』にほかならない。 再犯の危険性予測を客観的に行うことは医学的にも極めて困難とされているのに、本法案では、それを理由として無期限の強制入院等を可能とするもので、精神障害者の人権上看過できない危険性を有しているものである。 また、本法案は、事実の認定、責任能力の有無の認定に際し、憲法31条以下の適正手続の保障を認めていないなど、重大な問題をはらんでいる。
4,そもそも精神障害者による犯罪行為にあたる事件の発生率は高くはなく、再犯率は極めて低いといわれている。 時として起こる不幸な事件の多くは、治療が中断したり、適切な治療が受けれられなかったという事態の中で生じているものであり、地域における精神医療の改善・充実、福祉と連携して人権に配慮した地域精神医療体制の確立こそ必要とされているものである。
5,しかるに、本法案は、精神障害者に対する適切な医療を保障するというより、精神障害者を特別に危険視して、精神障害者を社会から隔離することにつながる危険があるもので、従前当会が強く反対してきた保安処分と実質的に同様、社会防衛のために精神障害者の人権を危険にさらすものといわざるをえない。よって、当会は、本法案に強く反対するものである。
2002年(平成14年)4月25日仙台弁護士会会長犬飼健郎

平成13年02月22日 仙台拘置所内接見室問題についての会長声明
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平成13年2月3日仙台拘置支所において、弁護人と被告人の接見状況を拘置所職員がビデオ撮影した可能性があるとして、当該弁護人が当局に抗議したことがマスコミにより報道された。仙台弁護士会は報道の内容を重視し、当該弁護人に事情を聴取するなど事実を調査したところ、次の事実が判明した。
①仙台拘置支所内接見室の被疑者・被告人席背後のドアには縦50センチメートル、横15センチメートルの長方形のマジックミラー様の物(以下「マジックミラー」という)がはめ込まれ、接見室内部からは鏡としか見えず、外からは接見室内部が透けて見えるという構造になっている。 すなわち接見室外部から内部を監視したりビデオ撮影しても、接見当事者はそれに気付かない。
②前記接見においては、接見途中で看守が接見室に入ってきた際、接見室外にビデオカメラを構えた拘置所職員を弁護人が現認し、しかもそのビデオカメラは撮影中であることを示すと思われる赤いランプが点灯していた。仙台拘置支所は、前記弁護人の抗議に対し、①の事実及び②の事実中ビデオカメラを持った職員が接見室外にいたことを認めた上、接見状況をビデオ撮影した事実はないと釈明しているのであるが、その釈明は到底納得しがたい。弁護人と被告人との接見交通権は、憲法第34条、刑事訴訟法第39条第1項によって保障される権利であり、かつそれは秘密交通権であることに重要な意義を有するものである。 この秘密交通権という性格からするならば、捜査機関及び拘置機関が接見内容を探知することが許されないのは当然である。 外からの監視・撮影を接見当事者に咎められることなくなし得るような接見室は、秘密交通権保障の見地からして断じてこれを放置することはできないし、そのような接見室でありながらそのドアのすぐ外で職員がビデオカメラを所持するなどという行為は、当該機会に秘密交通権の侵害が行われたことを強く推認させ、秘密交通権に対する配慮を全く欠くものであったと言わざるを得ない。当会は、仙台拘置支所に対し、同所内接見室のマジックミラーを直ちに撤去することを求め、且つ同支所が秘密交通権を侵害したとの疑念を生じさせたことに強く抗議する。

平成13年01月27日 判事補制度の廃止を求める決議
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平成13年1月27日総会決議2001年01月27日

1999年(平成11年)7月に設置された司法制度改革審議会(審議会)は、一通りの調査審議を行い、2000年(平成12年)11月20日その結果を中間報告として公表した。中間報告が取り上げている論点は司法に関わる全般に及んでいる。当会は、審議会に対し、諸論点のうち、裁判官制度の改革に関して次のとおり求める。審議会は、裁判官制度改革に関し、国民が求める裁判官像について、法律家としてふさわしい多様で豊かな知識、経験と人間性を備えている裁判官であるとし、そのような裁判官を得るため、
①裁判官の給源の多様化、多元化を図ること、
②裁判官の任命手続の国民の裁判官に対する信頼感を高める観点からの見直し(透明性、客観性、説明責任を確保する方策、指名過程に国民の意思を反映させるなど資格審査の充実を図る方策等の検討)、
③裁判官の人事制度の裁判官の独立性に対する国民の信頼感を高める観点からの見直し(透明性、客観性の確保)を行うべきであるとしている。
この中間報告中のあるべき裁判官像は妥当であるし、裁判官の選任手続と人事制度を透明性、客観性を確保する方向で見直すことを打ち出したことについては高く評価できる。今後、その方向性に合致した具体的な方策が打ち出されることを大いに期待したい。しかし、中間報告が、判事補制度の存廃に関し曖昧な態度を取っていることについては賛同しがたい。判事補制度は、中間報告がいう国民が求める裁判官像に合致した理想的な裁判官を育てる制度たり得ない(判事補から任用される裁判官がすべて理想から外れているという趣旨ではない)。 すなわち、判事補制度は、裁判所の組織の中で純粋培養的に裁判官を養成する制度であり、これによって生み出される裁判官は、概して生きた社会の真相に迫ったり生活者である当事者の痛みや感情を理解するバックグラウンドとなる社会的経験が乏しくなりがちである。又、現状の不透明な人事制度と相俟ってその独立性についての懸念をうち消せない。判事補制度は、官僚的裁判官を生む温床となっていると言わざるをえない。当会は、審議会に対し、21世紀を担うにふさわしい裁判官を生み出すために、判事補制度を廃止する方向を明らかにして、判事補以外の法律家から理想的な裁判官を選任するための具体的な諸方策及びその道筋(例えば、一定期間内に判事補制度を完全に廃止して弁護士やその資格を有する法律学者等から裁判官を確保することとし(法曹一元)、そうした裁判官の安定的確保のために弁護士や法律学者がその立場を残したまま裁判官の職務を行う非常勤裁判官制度を採用する、キャリア裁判官を前提とした累進的な給与体系を見直すなど)を調査審議し、最終報告においてはその結果を明らかにすることを求める。以上、決議する。

平成13年01月27日 弁護士報酬の敗訴者負担制度導入に反対する決議
ttp://senben.org/archives/598

司法制度改革審議会は、弁護士報酬の高さから訴訟に踏み切れなかった当事者に訴訟を利用しやすくするものであることなどから、弁護士報酬の敗訴者負担制度を基本的に導入する方向で考えるべきであるとする中間報告(2000年11月20日)をまとめた。しかし、弁護士報酬を原則的に敗訴者の負担とする制度を導入するならば、市民に訴訟による解決を躊躇させ、ルールに従って、紛争を解決するという司法の機能を阻害し、司法は国民にとって利用しにくいものとなりかねない。市民が訴訟を躊躇するのは、裁判の結果が予測し難い為であることが少なくない。訴訟となる事案は、双方に相応の言い分があり、訴訟以前の交渉でも解決に至らなかったことが少なくなく、更に、わが国では、証拠開示制度ないし証拠収集制度が不十分であることもあって、提訴段階では、訴訟の結果を予測し難い事件が多い。それにもかかわらず、弁護士報酬を原則として敗訴者が負担するという制度が導入されるならば、弁護士報酬を転嫁する手段も、負担する経済力もない市民や中小零細企業は、敗訴の場合の相手方の弁護士報酬を心配し、一層、訴訟をためらうこととなりかねない。また、敗訴の場合の負担を懸念して、不当な請求に応じたり、意に反する和解を甘受せざるを得ないという事態も生じかねず、訴訟は経済的な強者が弱者を威嚇する道具となりかねない。中間報告は、敗訴者に負担させるべき弁護士費用額の定め方、敗訴者負担の例外とすべき訴訟の範囲及び例外的取扱いの在り方等について検討すべきであるとし、政策形成訴訟、労働訴訟、少額訴訟などを敗訴者負担の例外とする考え方を示してはいるが、例外とすべき明確な基準を定めることはほとんど不可能であり、先に指摘した懸念を払拭できるものではない。これまで、消費者問題や公害問題、あるいは立法府や行政府が政策や制度の変更を求められる局面で、情報の格差(証拠の偏在)と経済力の格差等から、勝訴の確かな見込みがない中で、権利救済の為の裁判が提起され、幾多の敗訴判決を乗り越えて、市民の権利が確立し、政策や制度改正への途が拓かれてきたが、弁護士報酬の敗訴者負担制度が導入されるならば、そのような訴訟の提起は、極めて困難となってしまう。以上のとおり、弁護士報酬の一般的な敗訴者負担制度は、その意図するところとは異なり、市民の訴訟による解決を躊躇させ、国民の司法へのアクセスを現状よりも一層困難にする面を有しており、市民の為の司法改革の理念に逆行するものである。当会としては、その導入に強く反対する。

平成12年12月08日 少年法改正に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/600

平成12年11月28日、国会において、刑事処分対象年齢を現行の「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げ、16歳以上の重大事件については刑事手続に回す「原則逆送」という、少年事件の刑罰化・厳罰化への大転換を盛り込んだ少年法「改正」法が可決された。本「改正」法については、国会における審議のなかで、少年犯罪が決して凶悪化、低年齢化していないこと、「刑罰化」「厳罰化」が少年犯罪の抑止につながらないことなど様々な問題が指摘されたし、当会も、本「改正」法が、教育的対応を第一義とし少年の成長・発達を援助するため保護主義を原則としている少年法の基本理念を逸脱するものとして、慎重な審議を求めてきた。 それにもかかわらず拙速かつ不十分な審議により、かかる抜本的「改正」が行われたことは極めて遺憾である。 参議院段階で「改正」法の施行5年後に見直すとの付則条項を急遽加えたことからも、今回の「改正」法の内容における問題性及び法案審議の不十分さを窺わせるものである。当会は、本「改正」少年法施行後も、現場における運用の中で少年の保護育成という少年法の基本理念が堅持されるよう働きかけるとともに、少年審判の運営、処遇がどのように変化してゆくか、厳罰化が子どもにどのような影響をもたらすかを厳しく監視し、修正として付則に盛り込まれた5年後の見直し時期までに今回の改正の問題点を指摘し、あるべき少年法の実現に向けて努力する所存である。

平成12年10月02日 情報公開条例に関する会長声明
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今般、浅野宮城県知事は、宮城県議会9月定例会に「公安委員会」、「警察本部長」などを実施機関に加える旨の宮城県情報公開条例の改正案を提案した。 この改正案の中の、情報を公開しないことができる非開示規定に関し、「犯罪の予防、捜査等に支障が生ずるおそれがある情報」と定める現行規定によっても公開すべきでない捜査情報等は保護できるとする知事の主張に対し、県警側は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という)の規定と同様「犯罪の予防、捜査等に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めるにつき、相当の理由がある情報」としないと治安維持に支障が出ると主張し、この論議について社会的な関心が集まっている。しかしながら、捜査情報等の保護は知事提案にかかる規定でも十分であり、県警が危惧するような状況は考えられず、他方において県警側の主張を採用した場合、非公開処分の濫用のおそれが危惧されることに照らせば、知事提案の規定について敢えて県警が主張するような修正を行うべきではないと考える。情報公開法案の審議の際も、県警が主張する規定方法をとることについては異論が多く、とりわけ、ときに高度の政治判断が要求され、場面によっては司法判断になじみにくい面があるとされる外交、防衛情報と同じように捜査情報を扱うことには強い批判があった。捜査機関が逮捕状や捜索差押令状を求める際に裁判官の審査を経なければならないことからも明らかなように、本来、捜査活動は司法判断になじむものであるし、裁判所は捜査活動の適否を監督する機関でもある。判断の専門性・技術性・政治性いずれの点からも他の情報と異なる扱いをする合理的理由はないと言わなければならない。また、現行規定にあって、公開・非公開の適否が裁判上問題になったときには、真に非公開にすべき捜査情報等について、情報の内容そのものを明らかにすることなく、個々の非公開部分ごとにその種類、性質等及び非公開の理由を説明する文書を捜査機関が提出するといった主張・立証方法(いわゆる「ヴォーン・インデックス方式」と呼ばれる)をとることにより、「捜査等に支障を及ぼすおそれ」があるか否かについて適切な司法判断ができると考えられる。公開すべきでない捜査情報等を明らかにしないまま「捜査等に支障を及ぼすおそれ」の有無について主張・立証するのは極めて困難であるとの県警の主張は杞憂にすぎない。県警は現行規定では裁判の場で重要な捜査に関する情報が開示されるおそれがあるため、国や他県から捜査に関する情報が提供されなくなるという危惧を表明しているが、かかる状況は現実には考えにくく、またそのようなことはあってはならない。むしろ危惧すべきは県警の主張を採用した場合における情報秘匿のおそれである。警察にあっても度重なる不祥事が相次ぎ、しかも強い身内意識や組織防衛の立場から不祥事が露見してもなおそうした事実の情報公開に消極的であったことが他県等で報告されており、上記秘匿のおそれは決して杞憂ではない。当会は平成2年の宮城県情報公開条例制定の際にも、情報非公開の聖域を作るべきではなく、公安委員会をも実施機関に含めるべきであるとの意見を表明している。この表明の根拠である「より開かれた県政、民主的行政を築く」という観点は今回の改正においても最重要視されなければならない。以上述べてきたとおり捜査情報についても他の情報と異なる扱いをすることなく、真に実効的な情報公開条例とするための改正こそ県民の望んでいるものと言うべきである。

平成12年09月25日 少年法の改正に反対する会長声明
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自民、公明、保守の与党三党は、前国会で廃案となった政府案の主要な部分を取り入れた少年法改正案(以下「本法案」という)を本年9月下旬開催の臨時国会に議員立法として上程しようとしている。上記政府案は、現在の職権主義構造下において、検察官の立会いを認め、観護措置期間を延長することなどを内容とするものであり、少年審判の基本理念である保護育成に反することはもちろん、何ら事実認定の適正化に資することにもならないことは、当会が従来より再三指摘してきたところである。今回の与党案は、上記のような問題を含んだ政府案に加えて、刑事処分対象年齢を現行の「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げ、16歳以上の重大事件については刑事手続に回す「原則逆送」という、少年事件の刑罰化・厳罰化への大転換を盛り込んだものであり、少年法の抜本的改正と言わなければならない。少年法の理念は、教育的対応を第一義とするものであり、少年の成長・発達を援助するため保護主義を原則としている。この少年法の基本理念は、社会内での教育的処遇を目指すべきであるとする「子どもの権利条約」等の国際準則にも合致しており、制度的に高い評価を受けているものである。加えてわが国の統計によれば大半の非行少年が更生し、20代の犯罪率が他の国に例がないほど低下しており、これは現行少年法のもとで保護システムが基本的には有効に機能していることの証左である。加えてアメリカの例を見ても「刑罰化」「厳罰化」が少年犯罪の抑止につながっておらず、少年の立ち直りにとっても少年法の理念に基づく矯正教育こそが有効であるというべきである。本法案のような抜本的改正は、少年犯罪の実態と原因の調査や重大な少年事件のケース分析を丁寧に行った上で、少年犯罪の被害者も含めた幅広い人々から十分に意見を徴するなど広範な国民的議論を経て、慎重に行われるべきである。 しかるに今回、与党三党は、国民的議論が熟しているとは到底認められないにもかかわらず、法制審議会の議論すら経ないで拙速に本法案の成立を図っており、手続面においても重大な問題が存する。よって、当会は、本法案に反対の意思を表明する。

平成12年05月17日 少年法改正法案の審議入りに対する会長声明
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本年5月11日、『少年法を一部改正する法案』(以下「本法案」という)は、衆議院本会議において、趣旨説明と質疑が行われ、法務委員会において実質審議が開始されることとなった。今回の審議入りは「5千万円恐喝事件」や17歳の少年による「主婦刺殺事件」「バスジャック事件」等も契機としているが、これらの少年事件の示していることは、子供の最初のSOSや問題行動を正面から受け止めて対応しきれない家庭、学校、警察、地域社会のあり方の問題や、少年の心の生育の未熟さ・不安定さであって、この法案のような対症療法的な処罰手続の強化によっては同様な事件の防止を期待できるとは考えられない。いま求められていることは、これらの事件の真の原因を探求する中で子供の状況を正確に把握し、子供の成長を真に支援し援助する大人側の連携と協力の態勢づくりである。本法案により現在の職権主義構造下において、検察官が立会い、観護措置期間が延長され、あるいは多数の監察官に囲まれた中で審判が行われることは、少年審判の基本理念である保護育成に反することはもちろん、何ら事実認定の適正化に資することにもならないことは、当会が従来より再三指摘してきたところである。よって、当会は、改めて本法案に反対するとともに、国会においては少年非行の真の解決を目指した冷静かつ慎重な審議がなされるよう強く求めるものである。

平成12年03月27日 少年法改正法案に対する会長声明
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『少年法を一部改正する法律案』(以下「本法案」という)は昨年(1999年)3月10日に国会に上程されたものの、日弁連や国民の反対運動の中で、衆議院法務委員会で継続審議となってきた。しかし、今年2月のいわゆる草加事件の民事裁判に関する最高裁判所判決を契機として審議再開の動きがあり、同法務委員会でいつ審議が開始されるかわからない状況になっており、本法案が可決される危険性も出てきている。仙台弁護士会は、本法案については、そのもととなった法制審議会少年法部会での法務省からの要綱骨子試案や、同試案に添った法制審議会の答申の段落から、その内容となっていた検察官の審判への関与、観護措置期間の延長、裁定合議制の導入等について、少年の保護育成という少年法の理念を変容する恐れがあるとして、反対の意思を会長声明(1998年12月8日)や定期総合決議(1999年1月30日)において表明してきた。 また、その後も、日弁連少年司法改革対策本部の呼び掛けに応じて、市民集会を開催したり、反対の請願署名に取り組んだり、国会議員に対する要請行動を行なう等反対運動に取り組んできた。ところで、本年2月に最高裁判所はいわゆる草加事件の民事賠償裁判において、少年らを犯人とした東京高等裁判所の判決を破棄し、事実上少年達の無罪を全面的に認めた。草加事件の誤判の原因は、当初から無罪を示す物証があったのに虚偽自白を強要したこと、その物証を少年法の規定に反して家庭裁判所に送付しなかったこと、自白と物証の矛盾があった後も検察官が警察の捜査の誤りを糊塗しようとしたことなど、大人の冤罪事件と同様、捜査官の自白偏重の姿勢や証拠隠し等捜査のあり方にあったものである。本法案による少年法改正の目的として、「少年裁判における事実認定手続の一層の適正代を図る」ということがあげられているが、誤判を防止するためにまずなすべきことは捜査の適正化であり、また審判を少年法の理念にのっとって運用することというのが、草加事件の教訓のはずなのである。草加事件で、少年審判と民事裁判で結論を異にしたことを理由として、少年法改正案の成立を急ぐことは、問題の本質を見誤るものであり、本法案により現在の職権主義構造下において検察官が立会い、観護措置期間が延長され、あるいは多数の裁判官に囲まれたなかで審判が行われる事になれば、少年はますます口を閉ざし、少年の保護育成に反することはもちろん、何ら事実認定の適正化に資することにはならないものである。よって、当会としては、改めて本法案に反対の意思を表明する次第である。

平成11年7月21日会長声明1999年07月21日
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安田弁護士の保釈を求める声明

第二東京弁護士会所属の安田好弘弁護士が去る平成10年12月6日に強制執行妨害の容疑で逮捕され、その後同年同月25日東京地方裁判所に公訴が提起され、現在同裁判所で審理が係属中である。安田弁護士の弁護団は、公訴提起後これまでに7回にわたり保釈請求を行っている。これに対し、東京地方裁判所は6月11日保釈を許可する決定をしたが、東京高等裁判所は検察官の抗告を受け、即日保釈許可決定を取り消し、保釈請求を却下した。 次いで東京地裁は7月5日再度保釈を許可する決定をしたが、翌6日東京高裁はこれを取り消し、保釈請求を却下した。そもそも必要的保釈請求は除外事由に該当しない限り、被告人の権利として原則認められるべきものである(権利保釈)。そうであってこそ被告人に当事者としての地位を与え、防禦ないしその準備の機会を確保しようという、刑事訴訟における当事者主義構造に適うものと言いうる。しかしながら裁判実務においては、例えば公訴事実を否認したり、検察官申請の証拠に同意しない等の態度を被告人側がとると、抽象的に罪証隠滅のおそれがあるとして保釈請求が却下され、長期勾留が継続されるなど原則と例外が逆転した運用がなされてきており、弁護士及び弁護士会はこのような運用を強く批判してきたところである。今般の安田弁護士の例は、まさにわれわれが批判してきた実務運用上の問題点を如実に示しているものと思われるものであり、裁判所に対しては権利保釈制度の趣旨に則り真に具体的に罪証隠滅のおそれがあるのか適正な判断が求められるものである。しかるに、二度にわたる東京高裁の保釈却下決定は、関係者に働きかけるなどして罪証を隠滅すると疑うに足りる相当の理由が依然存在すると抽象的にのべるだけで格段の具体的理由も示さず、公判を現に審理している東京地裁の保釈許可決定を取り消したもので、極めて遺憾である。当会は、勾留・保釈の不当な運用は一人安田弁護士の場合にのみ現れているわけではないという現状に鑑み、刑事訴訟法の権利保釈制度の趣旨に則った適切な運用がなされるよう強く望むとともに、これを是正すべく全力を挙げることを決意する。

平成11年07月21日 国旗・国家法案に反対する声明
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平成11年7月21日会長声明
1999年07月21日

政府は、「国旗および国歌に関する法律案」を国会に提出し、今国会での成立を図ろうとしている。同法案は「日の丸」及び「君が代」をそれぞれ国旗、国歌として法制化しようとするものである。確かに「日の丸」「君が代」が国民の間にある程度浸透していることも事実であるが、一方で歴史的経緯や歌詞の内容から国旗、国歌とすることを疑問視する国民も少なくない。 のみならず、法案の上程にあたり、政府は「君が代」の「君」の解釈について「日本国憲法に規定された国民統合の象徴としての天皇」であるとの新しい見解を示したが、このような解釈をとるにしてもなお「君が代」の歌詞は国民主権という憲法の基本原則に抵触する疑いがある。法案には「日の丸」「君が代」に対する尊重規定や義務規定はなく、政府も法案は「日の丸」の掲揚や、「君が代」の斉唱を強制するものではないとする。しかしながら、法制化されてない現時点においても、公立の小中高等学校において、文部省通達や学習指導要領を根拠として、「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱が事実上義務付けられており、法制化により?層義務化や強制が強まる恐れがあり、憲法の保障する思想及び良心の自由に関わる問題となりかねない。今回の法案上程は、国民的合意の基になされたものとは言えず、あまりに拙速であり国民の間に無用の混乱を引き起こしかねない。よって、当会は、国旗、国歌について、法制化の必要性を含め、十分かつ慎重に議論されるべきであると考え、今国会における早急な法案成立に反対するものである。

平成11年07月21日 住民基本台帳法の一部改正法案に反対する声明
ttp://senben.org/archives/614
平成11年7月21日会長声明1999年07月21日
住民基本台帳法の一部改正法案に反対する声明
さる6月15日、衆議院において、住民基本台帳法の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)が可決され、現在参議院において審議中である。この改正法案は、すべての国民に「住民票コード」と呼ぱれる10桁の個人番号を付し、氏名、住所、性別、生年月日の4つの情報を全国の自治体のコンピューターに登録し、指定情報処理機関が統一的に管理することをその内容とする。しかし、この改正法案にはプライバシー保護等の点から重大な問題がある。改正法案は、収集される情報を上記の4情報としているが、一方で行政機関による他の情報との結合を特に禁止しておらず、政府がすでに保有する税金、医療、教育、年金、福祉、家族、犯罪等の多くの個人情報と、将来結合される恐れがあり、住民基本台帳法の本来の目的を逸脱し、国民総背番号制への道を開くものとなりかねない危険性を孕んでいる。また、個人情報が他に漏洩する危険性も否定できない。現行の個人情報保護法(行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律)は、民間情報を対象とせず、他方、行政機関の個人情報についての保護措置も不十分であり、個人情報の保護制度の整備がなされない現状のまま「住民票コード」が流出した場合、深刻な社会問題とならざるを得ない。改正法案が成立した場合、個人の知らないところでさまざまな個人情報が数多くの行政機関に保有され、かつ相互利用されることになりかねず、まさに国家による国民の集中管理という事態をまねきかねない。このような状態は憲法13条の保障するプライバシー保護の観点から看過できない。よって、当会は改正法案の制定に強く反対する。

平成11年05月20日 安藤・斎藤弁護士接見妨害 国賠訴訟最高裁判決に対する声明
ttp://senben.org/archives/618
平成11年5月20日会長声明1999年05月20日

平成11年3月24日、最高裁大法廷は、安藤・斎藤両弁護士の接見妨害国賠訴訟において、刑事訴訟法39条3項は、憲法34条、37条3項、38条1項のいずれにも違反しない旨の判決を言い渡した。しかしながら、本判決は、刑事訴訟法39条3項の規定がもたらした接見妨害の実情を直視せず、接見交通権の確立を阻害するものであって、著しく不当である。そもそも身体の拘束を受けている被告人・被疑者と弁護人または弁護人となろうとする者が自由に接見できる権利は前記憲法諸規定から導かれる刑事手続上最も重要な基本的人権のひとつであり、刑事訴訟法39条1項は、これらの権利を受けて弁護人と被疑者・被告人との接見交通権を規定しているものである。しかし、接見交通権は、その立法当初より刑事訴訟法39条3項を名目とする捜査当局の執拗な接見妨害により形骸化され、その結果、多くのえん罪事件や人権侵害事件等が生み出されてきた。これに対して、弁護士会は総力をあげて目由な接見交通権の確保のために闘い、いわゆる一般的指定制度の改廃を実現させるなど一定の成果を勝ち取ってきた。また、全国各地で起こされた接見妨害国賠訴訟において、検察官の行った接見指定を違法とする下級審判決が相次いで出され、最高裁も昭和53年7月10日の判決(いわゆる杉山事件判決)において、接見交通権が被疑者らの憲法上の権利に由来する重要な権利であり、原則としていつでも接見の機会を与えなければならない旨明言したうえ、刑事訴訟法39条3項に規定される「捜査のため必要があるとき」とは、現に被疑者を取調中であるなど捜査の中断による支障が顕著な場合をいうとして、捜査機関の指定による制限を必要止むを得ない例外的な措置である旨判示した。ところが、なおも各地で捜査機関による接見妨害が相次ぐ中で、最高裁は平成3年5月10日の判決(いわゆる浅井事件判決)において、接見指定要件を緩和させるかの如き判断を示し、その結果、その後になされた接見妨害国賠訴訟の下級審判決の後退がもたらされることとなり、本判決の原審である仙台高裁第3民事部も、平成5年4月14日の判決において、安藤・斎藤両弁護士に対してなされた捜査機関による接見制限を適法である旨不当な判断を示すにいたった。 このような司法判断の後退に対し、国賠訴訟弁護団は接見交通権の確立を期すためには刑事訴訟法39条3項の違憲性を真正面から指摘することが必要との認識に立ち、最高裁に対し同条項の違憲判断を強く求め、日弁連もこれを支援してきた。また、国際人権法においては、いついかなるときでも、被疑者は弁護人の援助を受ける権利があることを認めており、おりしも国際人権規約委員会は、平成10年11月、日本政府の報告書に対する最終見解を発表し、刑事訴訟法39条3項のもとで弁護人へのアクセスが厳しく制限されている点を指摘し、規約に適合するように日本の起訴前勾留制度を直ちに改革するよう日本政府に強く勧告している。最高裁は、このような情勢の中で刑事訴訟法39条3項の違憲性を明確にすることを強く求められていたものであるが、本判決は、浅井事件判決の接見指定要件の解釈を維持したうえで、同条項は憲法に違反しない旨の判断を示したものである。これは接見交通権の確立を求める理論と運動に逆行するものであり、極めて問題である。当会としては、本判決を厳しく批判するとともに、今後とも接見交通権の確立のため粘り強い運動を続けていく決意を表明する。
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【夜桜亭日記 #64】遠峰あこさん(唄うアコーディオン弾き)をお招きしました[桜H30/1/13] [政治]

【夜桜亭日記 #64】遠峰あこさん(唄うアコーディオン弾き)をお招きしました[桜H30/1/13]

浅野久美&sayaが、毎回、様々な分野で活躍する女性ゲストをお招きして、その女性の魅力を引き出すトークや、浅野久美&sayaの歌などをお送りする、女子会風のおしゃべりバラエティ。
※ 1月10日放送分のアーカイブになります。
出演:浅野久美、saya
ゲスト:遠峰あこ(唄うアコーディオン弾き)
【夜桜亭日記 #64after】水島総が視聴者の質問に答えます![桜H30/1/13]

「夜桜亭日記」第二部は、ニコ生と YouTube Live を介しての視聴者からの質問に、水島総も参加して答えていきます!
※ 1月10日放送分のアーカイブになります。
出演: 浅野久美、saya、水島総
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桂 春蝶 謝罪が必要なのは韓国側だ。 約束を反故し、嘘をついて我が国を貶める。これは韓国国家元首自らが下したテロ行為で、日本国民は日韓はいま「準戦争状態」と思っていいと思う。 [政治]

桂 春蝶 謝罪が必要なのは韓国側だ。 約束を反故し、嘘をついて我が国を貶める。これは韓国国家元首自らが下したテロ行為で、日本国民は日韓はいま「準戦争状態」と思っていいと思う。

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上念 司さんがリツイート  【活動家と化した翁長君へ】仲井眞弘多・前知事「一体、沖縄をどうしようとするのか、この人物は意味不明。私の承認手続に瑕疵がなかったことは最高裁が認めた通り。辺野古のテントで反対と叫んでいる活動家と変わりがない。基地問題に労力の8~9割を費やしているそうだが県知事の責任を放棄してる」 [政治]

上念 司さんがリツイート  【活動家と化した翁長君へ】仲井眞弘多・前知事「一体、沖縄をどうしようとするのか、この人物は意味不明。私の承認手続に瑕疵がなかったことは最高裁が認めた通り。辺野古のテントで反対と叫んでいる活動家と変わりがない。基地問題に労力の8~9割を費やしているそうだが県知事の責任を放棄してる」

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上念 司 実績ある四万十ドラマ社で何が問題なのか?成功すとズルいと言われて足引っ張る典型。自滅する地方。 [政治]

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渡邉哲也 なんか間違っている気がする■ロブスターを生きたまま茹でるのは禁止に 事前の絶命を義務づけ [政治]

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小坪慎也 雪上運転を行う上での注意点【安全運転のためにシェア】 [政治]

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高橋洋一 【日本の解き方】誤解だらけの「水道民営化」 外資乗っ取り懸念は杞憂だ、競争力はあり選択肢も広い [政治]

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高橋洋一 賃金未払い。一定回数以上、従業員の一定比以上の同意などを条件として、公表してもいいかもね。銀行取引停止と同じで、公表は「倒産」になるかもしれないが、ダメなものをそのままにしておいて雇用者や取引先にさらなる迷惑をかけるよりはいいだろう [政治]

高橋洋一 賃金未払い。一定回数以上、従業員の一定比以上の同意などを条件として、公表してもいいかもね。銀行取引停止と同じで、公表は「倒産」になるかもしれないが、ダメなものをそのままにしておいて雇用者や取引先にさらなる迷惑をかけるよりはいいだろう

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高橋洋一 後からわかってもなあ→「はれのひ」1年前から賃金未払い 5回の是正勧告 [政治]

高橋洋一 後からわかってもなあ→「はれのひ」1年前から賃金未払い 5回の是正勧告

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余命三年時事日記 2268 ら特集10仙台弁護士会⑤1 [余命三年]

余命三年時事日記 2268 ら特集10仙台弁護士会⑤1
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2268-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a4%ef%bc%91/ より

仙台はここまでである。ここまでまとめるとその正体が見えてくるだろう。
本来なら国だけではなく、国民に向けてのメッセージでもあろうから、拡散は望むところだろうと考えるが、どうも違うようだ。全体を通してなにか違和感がある。
 法律に素人の国民目線であっても、弁護士会会長幹部レベルがあきらかな憲法違反をしていながら、スルーして対応していない一方で、二言目には「憲法違反」を連呼する弁護士会の姿勢は異様に思える。とりあえずは全国ツアーを完了させよう。

平成20年09月26日 死刑執行に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/424

平成20年(2008年)9月11日、東京拘置所において1名、大阪拘置所において2名の各死刑確定者に対し、死刑が執行された。今年に入って、既に13名(2月1日3名、4月10日4名、6月17日3名、9月11日3名)の死刑が執行されたことになり、高いペースでの死刑執行がなされていると言わざるを得ない。死刑については、1989年12月の国連総会で死刑廃止条約が採択され、当時の国連人権委員会は、1997年4月以降毎年、日本などの死刑存置国に対し、死刑廃止に向けて死刑の執行を停止することを求めている。また、2007年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告では、死刑の執行を速やかに停止すべきことなどが勧告され、同年12月18日には、国連総会において、日本を含む死刑存置国に対し、死刑制度の廃止を視野に入れた死刑執行停止などを求める決議が採択された。その決議に先立つ2007年12月7日のわが国における死刑執行に対して、国連人権高等弁務官から強い遺憾の意が表明された。国際的にみても死刑廃止国は着実に増加し、2008年2月現在、死刑存置国62か国、死刑廃止国135か国である。アジアにおいても、カンボジア、ネパール、東チモール等が全面的に死刑を廃止したほか、韓国や台湾でも、事実上死刑の執行が停止されており、死刑廃止ないし停止が国際的な潮流となっていることは明らかである。いうまでもないが、わが国では、4つの死刑確定事件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)の再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっているが、このような誤判が生じるに至った制度上、運用上の問題点について、抜本的な改善が図られていない。このような状況の中、近時重罰化の傾向が進み、2007年の1年間で47人もの被告人に死刑判決が言い渡されており、2年連続で年間の死刑判決言渡数が増加し、死刑確定者の人数も100名を超えている。このようなペースでの死刑執行は、国際社会における死刑を抑制しようとする潮流に逆行するものといわざるを得ない。しかも、我が国では、死刑執行を決定するにあたり、誰がいつどのような基準でいかなる記録・資料をもとに判断するのか、執行方法は具体的にどのようなものか、また、死刑判決確定から執行までどのような処遇がなされ、死刑確定者においてどのような心情が形成されるのかなど、重要な情報はほとんど明らかにされていない。わずかに2007年12月の死刑執行から、死刑囚の氏名等が公表されているにすぎず、死刑に関する本質的情報を前提とした国民的議論はほとんどなされていない。当会は、これまで、1997年9月25日、1998年7月31日、2002年10月16日の会長声明において、死刑制度に関する情報が明らかにされず死刑問題に関する議論がないままでの死刑執行が極めて遺憾であるとの意を表明し、法務大臣に対して、今後死刑の執行を差し控えるべきとの強い要請を重ねてきたが、今回の死刑執行は、そのような議論を一切行うことなくなされたものであり、誠に遺憾である。当会は、改めて法務大臣に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう重ねて強く要請するものである。
2008(平成20)年9月26日仙台弁護士会会長 荒 中

平成20年06月18日 検察審査会の統廃合に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/435
検察審査会の統廃合に反対する会長声明

1 最高裁判所は、本年1月、全国に201か所ある検察審査 会のうち申立件数が少ない50か所(過去20年の年間平均 事件数が1件未満だった56か 所のうち離島部を除く。)を統廃合し、大規模管内に新たに14か所を増設する再編案を発表した。この案によると、仙台地方裁判所管内でも、石巻、気仙 沼の各裁判所支部に設置されている検察審査会が廃止されることになる。
2 統廃合の理由について、最高裁は、検察審査会の権限強化の一環として、検 察審査会を事件数に応じて再配置することで審査員に選ばれる市民の負担を減 らし、審理を充実強化するためであると説明している。
3 しかしながら、検察審査会が民意の反映による公訴権行使の適正確保の手段として健全に機能するためには、その前提として、民意の主体である申立人や 審査員が地域の検察審査会に身近に且つ容易にアクセスできる体制が確保されていなければならない。最高裁の再配置案は検察審査会を地域から遠ざけ、司 法過疎を助長するものであって問題である。しかも、国民の司法参加を目指す司法改革の流れの中、既に検察審査会法が 改正され、遅くとも平成21年5月までには、起訴議決への法的拘束力の付与 や審査補助員制度などの新制度の施行が予定されているなど、今まさに、検察 審査会の民意反映手段としての意義が強化されようとしている。このような時 期においては、検察審査会へのアクセスが困難とならないよう現在各地に存在 する検察審査会を維持しつつ、国民への広報等の充実により検察審査会の活性 化を図ることこそ必要であるというべきである。また、犯罪被害者等の申立人は、事件による衝撃で精神的に極度に混乱した り、手続がよく分からないなどの理由からただでさえ検察審査会へのアクセス が困難な状況にある。犯罪被害者等の申立人にとっては、書面作成などの手続 の煩わしさと相まって審査の申立てを躊躇することがないよう、検察審査会と その窓口が、地域に身近に存在することが一層重要である。なお、最高裁は統廃合の理由として審査員の負担軽減を挙げているが、統廃 合により管轄地域が広範囲にわたり審査員が遠方から出向くなど地方の審査員の負担が増大するとも考えられ、最高裁のいう上記の理由は検察審査会の存在 意義に優先してまで考慮されるべき事情ではない。
1 よって、当会は、石巻検察審査会及び気仙沼検察審査会の統廃合に反対する とともに、全国201か所にある検察審査会のうち申立件数が少ない50か所 を統廃合するとの方針にも反対するものである。
2008(平成20)年6月18日仙台弁護士会長 荒中

平成20年04月23日 名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する会長声明
名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/441

本年4月17日、名古屋高等裁判所は、いわゆる自衛隊イラク派遣差止訴訟の判決理由において、現在イラクで行われている航空自衛隊の空輸活動について、「政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」との違憲判断を示すとともに、平和的生存権の具体的権利性を認めるという、歴史的・画期的な判断を示した。名古屋高裁判決は、当会がこれまで指摘してきた航空自衛隊の空輸活動の違憲性・違法性について、緻密な事実認定をもとに、現在のイラクは「泥沼化した戦争の状態」であり、とりわけ首都バグダッドは多数回の戦闘が展開され、多数の犠牲者を続出させている地域であってイラク特措法にいう「戦闘地域」に該当するとし、また、航空自衛隊による多国籍軍武装兵員のバグダッドへの空輸活動についても、「現代戦において輸送等の補給活動もまた戦闘行為の重要な要素」であり、「多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援」であるとした上で、「他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない行動である」として、上記違憲・違法の結論を導いており、高く評価できる。また、同判決は、憲法前文に規定されている平和的生存権について、「現代において憲法の保障する基本的人権が平和の基盤なしには存立し得ないことからして、全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利」であるとしたうえで、憲法前文、9条、13条及び第3章の人権規定を根拠に法的権利性を認め、さらに、「この平和的生存権は、局面に応じて自由権的、社会権的又は参政権的な態様をもって表れる複合的な権利ということができ、裁判所に対してその保護・救済を求め法的強制措置の発動を請求し得るという意味における具体的権利性が肯定される場合がある」として具体的権利性を認め、憲法9条に違反する戦争の遂行等への加担・協力を強制されるような場合に、平和的生存権を根拠に司法救済を求めることができる場合があると判示した。これは、これまで多くの裁判所が平和概念の抽象性を理由に法的権利性・具体的権利性を否定してきた平和的生存権について、憲法の全体構造から論理的に具体的権利性を導いている点、及び戦争への加担を強制されない権利という側面からも構成している点において画期的である。以上の名古屋高裁判決に対し、総理、一部閣僚、及び航空自衛隊の幕僚長は、この判決を軽んずる発言を重ねたうえで、本件判決の意義を検討することなく、自衛隊のイラク派遣を継続しようとしている。しかし、このような態度は、司法権による行政のコントロールを内容とする「法の支配」の理念を無視するものである。本件判決は、航空自衛隊の空輸活動の違憲性が看過できないことから憲法判断に踏み切ったのであり、政府及び国会はこの違憲判断の重みを直視するべきである。当会は、自衛隊イラク派遣に関し、これまで7回に及ぶ会長声明において、イラク特措法が憲法に違反するおそれが極めて大きいものであると指摘してきたところであるが、改めて、裁判所が示した違憲判断を尊重し、政府に対しては、直ちに航空自衛隊の空輸活動を中止し自衛隊を撤退させること、国会に対しては、イラク特措法を廃止することを強く求めるものである。
2008(平成20)年4月23日仙台弁護士会会長 荒 中

平成20年04月11日 映画「靖国 YASUKUNI」上映中止に関する会長声明
2008(平成20)年4月11日仙台弁護士会 会 長  荒 中
ttp://senben.org/archives/443

平成20年02月23日 日本国籍を有しない者の調停委員任命を求める決議
平成20年2月23日総会決議
ttp://senben.org/archives/450
日本国籍を有しない者の調停委員任命を求める決議

1 当会は,2007(平成19)年11月,仙台家庭裁判所からの家事調停委員の推薦依頼を受け,韓国籍の会員弁護士を候補者として推薦した。ところが,仙台家庭裁判所からは,「日本国籍を有しない者の調停委員就任の当否を検討したが,韓国籍の会員弁護士については,家庭裁判所として最高裁判所に任命の上申をしない扱いとする。」旨の回答がなされた。仙台家庭裁判所の上記回答は,「調停委員は,公権力の行使または国家意思の形成への参画に携わる公務員にあたるから,調停委員には日本国籍を必要とする。」という最高裁判所の従来からの解釈・運用に基づくものと考えられる。
2 しかしながら,「公権力の行使または国家意思の形成への参画に携わる公務員」という抽象的な基準により,当該公務員の具体的な職務内容を問題とすることなく,日本国籍者と日本国籍を有しない者について差別的取扱いをすることは,国籍を理由とする不合理な差別であり,憲法14条に反し許されないというべきである。
3 そもそも,法律にも最高裁判所規則にも,民事調停委員及び家事調停委員について,日本国籍を要求する条項は存在しない。調停委員の役割は,専門的知識もしくは社会生活の上での豊富な知識経験を活かして,当事者の互譲による紛争解決を支援することにあるが,日本の社会制度や文化,そこに住む市民の考え方に精通し,高い人格識見のある者であれば,日本国籍の有無にかかわらず,そのような役割を果たすことができることは明らかであり,日本国籍を有しない者を調停委員から排除する合理的理由はない。 4 そして,多民族・多文化共生社会の実現の観点に照らしても,国籍の有無にかかわらず,調停委員への就任を認めることは当然の要請である。とりわけ,1952(昭和27)年4月19日の法務府(現法務省)民事局長通達により,日本国籍を失ったまま日本での生活を余儀なくされ,日本社会の構成員となっている特別永住者については,日本国籍を有する者と可能な限り同様の取扱いをすべきである。
2 よって,当会は,最高裁判所に対し,「弁護士となる資格を有する者,民事若しくは家事の紛争の解決に有用な専門知識を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で,人格識見の高い満40歳以上70歳未満の者」(民事調停委員及び家事調停委員規則1条)であれば,日本国籍を有しない者でも民事調停委員及び家事調停委員に任命するよう求める。また,仙台家庭裁判所に対し,民事調停委員及び家事調停委員規則1条の要件を充足する者であれば,日本国籍の有無にかかわらず最高裁判所に任命の上申をするよう求める。以上のとおり,決議する。
2008(平成20)年2月23日仙台弁護士会会長角山 正

平成20年02月13日 法制審議会答申にかかる少年法「改正」要綱を法案化することに反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/454

法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会は、2008(平成20)年1月25日、少年法「改正」要綱(骨子)を採択した。報道によれば、今後、2月中にも法制審議会総会で同要綱が採択され、法務大臣に答申される見込みである。この「改正」要綱(骨子)のうち、①犯罪被害者等による少年審判の傍聴を可能とすること、②犯罪被害者等による記録の閲覧・謄写を認める要件を緩和すること、記録の閲覧・謄写の対象範囲を拡大することについては、少年事件手続が少年の更生と再非行防止に果たす教育的・福祉的機能を損なうおそれが強い点で、当会としては、以下のとおり、その法案化に強く反対の意思を表明するものである。
①について、要綱(骨子)は、被害者等による傍聴を許す家庭裁判所の判断基準を「少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を考慮して相当と認めるとき」としている。これでは、少年の健全育成という少年法第1条の理念が後退し、少年の更生の観点から相当とは言えない場合でも、被害者等の申出により、裁判長が審判傍聴を許すという運用になりかねず、その結果、傍聴している被害者等に影響されて審判が刑事裁判的な運用になり、少年審判の教育的・福祉的機能が損なわれるおそれが強い。犯罪被害者等による少年審判の傍聴については、現行制度のもとでも、少年審判規則第29条に基づき、裁判所が認める範囲で審判への在席が認められる場合があり、それ以上の規定を設けるべきではない。
①についても、記録の閲覧・謄写を認める要件を緩和すること、さらに、閲覧・謄写の対象範囲を、法律記録の少年の身上経歴などプライバシーに関する部分についてまで拡大することに反対である。かかる取扱の変更は、少年の更生に対する影響からみて容認し難い。今なすべきことは、各関係機関が被害者等に対し、2000(平成12)年少年法「改正」で導入された、被害者等による記録の閲覧・謄写(少年法第5条の2)、被害者等の意見聴取(少年法第9条の2)、審判の結果通知(少年法第31条の2)の各規定の存在をさらに丁寧に知らせ、これを被害者等が活用する支援体制を整備すること及び犯罪被害者に対する早期の経済的、精神的支援の制度を拡充することである。以上のとおり、要綱(骨子)の内容のうち、上記①②の点を法案化することは、少年法の理念と目的に重大な変質をもたらすおそれがあるから、当会はこれに強く反対するものである。
2008(平成20)年2月13日仙台弁護士会 会長  角山 正

平成19年12月12日 新テロ特措法案の制定に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/456
新テロ特措法案の制定に反対する会長声明

1 2007(平成19)年11月1日、「平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」(以下、「旧テロ特措法」という)が失効し、同法に基づきインド洋で活動していた海上自衛隊は撤収した。しかし、政府は、10月17日、自衛隊によるインド洋での給油活動を継続するため、「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案」(以下、「新テロ特措法案」という)を国会に提出した。同法案は、11月13日に衆議院本会議で可決され、現在、参議院で審議中である。
2 新テロ特措法案は、旧法で認められていた武器弾薬の輸送を含む協力支援活動、戦闘参加者の捜索救助活動、野戦病院の設置警護等を活動内容から除外し、その目的を「テロ対策海上阻止活動を行う諸外国の軍隊等に対し補給支援活動を実施すること」(1条)に限定している。しかし、テロ対策海上阻止活動とは、テロリスト、武器・弾薬、資金源となる麻薬などのテロ関連物資の海上移動の阻止を目的として行われる洋上立入り検査や臨検のことである。そして現に補給支援活動として想定されているのは、米軍主導のアフガニスタンにおけるOEF(不朽の自由作戦)の一環として海上阻止活動を行っているOEF参加各国艦船や艦船に搭載する回転翼航空機への給油等の補給活動である。従って給油を受けた艦船や回転翼航空機が、海上阻止活動の過程で、武力の行使または武力による威嚇を行うことは当然に予想される。またOEFは海上阻止活動のみを目的とするものではないから、OEFに参加する各国艦船や回転翼航空機はアフガニスタンにおける戦闘活動や後方支援活動にも従事する。さらに米国の艦船や回転翼航空機はイラクにおける戦闘活動や後方支援活動にも従事する可能性がある。従って、自衛隊が補給した燃料等が、海上阻止活動以外のアフガニスタンやイラクにおける軍事活動に使用されない保証はどこにもない。このようなテロ対策海上阻止活動に対する自衛隊の補給支援活動は、「戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定めた日本国憲法9条の精神に反するというべきである。
3 さらに、旧テロ特措法ですら事後的にではあるが国会の承認を要するとしていたのに対し、新テロ特措法案は、自衛隊の実施する活動に対する国会の承認は不要であり報告のみで足りるとしている。しかしこれでは政府による不当な補給支援活動の実施がなされた場合に、国会が直ちに是正する手段を持たないこととなり、濫用に対する歯止めとして不十分である。
3 このように、新テロ特措法案には重大な問題点があるので、当会は、その制定に反対である。よって参議院に対し本法案を可決しないよう求めると共に、衆議院に対しては仮に参議院が本法案を否決した場合には再議決を行わないよう求めるものである。
2007(平成19)年12月12日仙台弁護士会会長角山 正

平成19年12月12日 イラク特措法廃止法案を支持する会長声明
ttp://senben.org/archives/375

「イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案」(以下「イラク特措法廃止法案」という。)は、2007(平成19)年11月28日、参議院本会議において可決され、現在衆議院で審議されている。当会は、これまで6回に及ぶ会長声明において、イラク特措法及びそれに基づく自衛隊イラク派遣が日本国憲法前文の恒久平和主義及び憲法9条に反するものであることを指摘し、同法の廃止及びイラクに派遣されている自衛隊の即時撤退を強く求めてきた。
 イラク特措法については、そもそもイラクに対する米英による武力行使には国連安全保障理事会の決議もなく自衛のためでもないから正当性が認められないこと、いわゆる「非戦闘地域」概念が漠然不明確であって自衛隊の派遣対象可能地域の歯止めになっていないこと、自衛隊の活動が多国籍軍の武力行使と一体化したものと評価されること、イラクにおける自衛隊の活動についての情報開示が極めて不十分であることなどの重大な問題が存している。参議院による同法廃止法案の可決はこれらの問題を受け止めてなされたものであり、良識の府に相応しい正当な判断である。当会は、今回の参議院の判断に敬意を表するとともに、衆議院に対しイラク特措法の問題点、イラクにおける戦闘の現状、イラク国民が真に望んでいる支援の内容、派遣されている自衛隊の活動の実態等について十分な審議を行い、イラク特措法廃止法案を可決成立させることを強く求める。
2007(平成19)年12月12日仙台弁護士会  会長  角 山 正

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余命三年時事日記 2267 ら特集10仙台弁護士会⑤18 [余命三年]

余命三年時事日記 2267 ら特集10仙台弁護士会⑤18
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2267-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a418/ より

平成22年01月29日 調停委員推薦に対する仙台家庭裁判所の対応に抗議する会長声明
ttp://senben.org/archives/category/statement2010
調停委員推薦に対する仙台家庭裁判所の対応に抗議する会長声明

当会は、2009年12月、仙台家庭裁判所からの家事調停委員推薦依頼を受け、韓国籍の会員弁護士を候補者に推薦した。ところが、仙台家庭裁判所は、日本国籍を有しないということを唯一の理由として、同候補者については、最高裁判所に任命の上申をしない旨決定した。仙台家庭裁判所は、2007年11月に当会が韓国籍の会員弁護士を候補者に推薦した際にも、最高裁判所に任命の上申をしなかった。これに対して当会は、概ね以下の理由により、2008年2月23日の定期総会において、最高裁判所及び仙台家庭裁判所に対して、日本国籍を有しない者の調停委員への任命、及び任命の上申を求める決議を採択した。即ち、仙台家庭裁判所が任命の上申を拒否した理由は、「公権力の行使または国家意思の形成の参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とする」という最高裁判所の解釈・運用に基づくものと考えられる。しかしながら、民事調停委員及び家事調停委員への任命につき、日本国籍を有することを要件とする法律の定めはない。そもそも、調停制度の目的、調停委員の役割・職務権限に照らせば、日本国籍を当然に要件とするような公権力の行使の場面ではなく、日本の社会制度や文化、そこに住む市民の考え方に精通し、高い人格識見のある人であれば、日本国籍の有無にかかわらず、役割を充分に果たすことができる。特に、1952年4月の法務府(現法務省)民事局長通達により、日本国籍を奪われたまま日本での生活を余儀なくされ、日本社会の構成員となっている旧植民地出身者等の特別永住者については、日本国籍を有する者と可能な限り同様の取扱いをすべきであり、国籍がないことだけで調停委員の職責を果たせない理由は無い。最高裁判所の解釈・運用は、当該公務員の具体的な職務内容を考慮することなく、法律に基づかない抽象的な基準により、国籍を理由として不合理な差別的取扱いをなすものであり、憲法14条に反し許されない。また、日本弁護士連合会においても、2009年3月18日、「外国籍調停委員・司法委員の採用を求める意見書」を取りまとめ、外国籍調停委員・司法委員の任命を強く求めている。それにもかかわらず、再び、当会の推薦した韓国籍会員弁護士の調停委員任命を一方的に拒否したことは、極めて遺憾である。当会は、今後とも日本国籍の有無にかかわらず日本の社会制度や文化、そこに住む市民の考え方に精通し、高い人格識見のある人物を推薦していくことを確認する。よって、当会は、改めて、2008年2月23日の総会決議をふまえ、今回の仙台家庭裁判所の上申拒否に強く抗議し、最高裁に対しても法律の定めのない国籍要件を撤廃するよう強く求める。
2010(平成22)年1月28日仙台弁護士会 会長 我妻 崇

平成21年08月25日 死刑執行に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/1283
死刑執行に関する会長声明

2009年7月28日、大阪拘置所において2名、東京拘置所において1名、計3名の死刑確定者に対し、死刑が執行された。今年だけで7名についての死刑が執行されたこととなる。当会は、政府に対して、昨年9月26日、11月20日、本年2月10日と、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑執行を停止するよう強く要請したばかりであった。それにもかかわらず、政府が、一方で国民的議論を起こすことを怠り続けながら、他方で今回3名の死刑執行を行ったことに対し、強く抗議するものである。死刑については、1989年12月の国連総会で死刑廃止条約が採択されて以来、国連の各種委員会から、国際社会に対して、死刑廃止に向けた働きかけがなされてきた。これらの動きの中で、アジアでは、カンボジア、ネパール、東チモール等が全面的に死刑を廃止したほか、韓国や台湾でも、事実上死刑の執行が停止されている。現在、死刑存置国58か国、死刑廃止国139か国となり、死刑廃止が国際的な潮流となっている。国内において見ると、今年5月に裁判員制度が実施され、今後、一般市民が死刑判決の言い渡しに関与する可能性が生じるようになった。また、足利事件においては、無実の人が無期懲役の確定判決を受け、17年以上にも及ぶ理不尽な身柄拘束を受けていたことが判明するなど、裁判において誤判の可能性が常に存在することを国民は目の当たりにした。死刑判決の裁判においても例外ではなく、4つの死刑確定事件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)の再審無罪判決が確定したことも、改めて想起されるべきである。このように、死刑制度に関しての、国民的議論を起こす機は熟している。当会は、政府に対して、死刑廃止の国際的潮流を真摯に受けとめ、死刑制度の運用と実態について国民に十分な情報提供を行った上で、死刑制度の存廃につき国民的な議論を尽くし、広く国民の合意が形成されるまで、死刑の執行を停止するよう重ねて強く要請する。
2009(平成21)年8月19日仙台弁護士会 会長 我妻 崇

平成21年12月22日 葛飾ビラ配布事件に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/1403

最高裁第二小法廷(今井功裁判長、中川了滋裁判官、古田佑紀裁判官、竹内行夫裁判官)は、2009年11月30日、政党のビラを配布するために分譲マンションの共用部分に立入った者が住居侵入罪に問われた事件の上告審で、罰金5万円の刑を言い渡した原審判決を支持し、上告を棄却した。
最高裁第二小法廷は、政治ビラの戸別配布を刑法で処罰することについて、2008年4月11日にも、表現の自由を保障する憲法21条1項に違反しないとの判断を示しており、本判決は、その判断を再度確認する形になった。最高裁が、政治ビラの戸別配布に対する刑事処罰を二度までも合憲としたことで、今後、捜査機関がビラ配布に対する規制を一層強化していくことが懸念される。最高裁は、1960年の東京都公安条例事件判決以降、表現の自由を民主的政治過程の維持のために必要欠くべからざる基本的人権と位置づけ、その重要性を一貫して承認している。本判決もその重要性を明言していながら、他人の権利を不当に害することは許されないとした上で、本件行為は、本件マンション管理組合の意思に反して立ち入ったことをもって、管理権を侵害し、私生活の平穏を侵害したと断じて、住居侵入罪で処罰することが憲法21条1項に違反するものではないと判示する。しかしながら、ビラの配布は、財力のない者やマス・メディアによって報道されない者にとって効果的な表現手段であることに加え、戸別の配布は、送り手が伝えたいと望む特定の受け手に対し確実に情報を伝達することが出来る点で、路上等での配布に比べ格段に効果的な表現手段である。したがって、ビラの戸別配布は、市民が表現の自由を行使するにあたり貴重な手段であり、代替する手段を容易には見いだせないという意味でも厳格に尊重されなければならない表現活動である。また、ビラの戸別配布は、民主的政治過程において、国民が主義主張を受領するところの問題である。そこでは、受け手が、まずはどのような内容のビラかを見たうえで、さらに内容を読むのか廃棄するのかを判断を行っている。もとより私生活の平穏は重要な保護法益であるが、本判決のようにマンション管理組合の意思を抽象的にとらえてビラ配布のためのマンション共用部分への立ち入りを管理権の侵害や私生活の平穏の侵害と直ちに結論付けて刑罰をもってのぞむことは、受け手が表現内容を見て判断する機会を不当に奪う危険が高まることになり、情報を享受する権利が民主的政治過程に位置づけられる重大な権利であるという性質を軽視しているのではないかという懸念が払拭できない。日本における政治ビラの戸別配布に対する規制の強化は、国際社会から厳しい目が向けられている。国際人権(自由権)規約委員会は、2008年10月、「政府に対する批判的な内容のビラを私人の郵便受けに配布したことに対して、住居侵入罪もしくは国家公務員法に基づいて、政治活動家や公務員が逮捕され、起訴されたという報告に懸念を有する」旨を表明し、日本政府に対して、「表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである」と勧告を行った。さらに、国内においても、日本弁護士連合会は、2009年11月6日、人権擁護大会において、民主主義社会における市民の表現行為の重要性に鑑み、市民の表現の自由及び知る権利を最大限に保障するため、関係各機関に対し、市民の政治的表現行為に対する不合理な規制を行わないことを求める提言を行った。また、当会も、人権擁護大会に先立ち、2009年10月3日、憲法学者や立川反戦ビラ事件の当事者らを招いて人権擁護大会プレシンポジウムを開催し、政治ビラの戸別配布に対する規制について批判的な検討を行った。そこでは、表現の自由の優越的地位の意義が確認され、当事者の生の声により刑罰による表現活動に対する規制の危険性が指摘された。当会は、最高裁に対し、表現の自由が民主的政治過程の維持のために必要欠くべからざる基本的人権であることをふまえ、表現の自由の重要性を貫徹し、憲法の番人としての責務を全うすることを強く求める。
2009(平成21)年12月16日仙台弁護士会会長我妻 崇

平成21年05月15日 海賊行為対処法案に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/1151
海賊行為対処法案に反対する会長声明

衆議院は,本年4月23日,海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(海賊行為対処法案)を可決した。しかし,同法案には,少なくとも以下に述べる憲法上の問題があるため,当会はその制定に反対である。
第一に,法案は,「海上における公共の安全と秩序の維持を図ることを目的」とし(第1条),海賊行為の対処の名目であれば世界のあらゆる海上に自衛隊を派遣できることを可能としている。これは,我が国の防衛を主たる任務とし、必要に応じ領海における公共の秩序を維持する(自衛隊法第3条1項)という自衛隊の活動範囲を逸脱するものであって、憲法第9条に抵触するおそれがある。
第二に,法案は,対象行為を日本船舶だけでなく外国船舶を含む全ての船舶に対する海賊行為にまで拡大し,しかも,特別措置法という時限立法ではないため,恒久的に自衛隊海外派遣を容認するものであり,自衛隊の海外派遣の途を拡大し,海外活動における制約をなし崩しにしていくもので憲法第9条に抵触するおそれがある。
第三に,自衛隊法第82条による海上警備行動に認められている武器使用が,犯人逮捕や正当防衛・緊急避難のために限定されているところ(警職法第7条の準用),法案は,この範囲を超えて,「海賊」が警告射撃などの制止に従わず,「船舶に著しく接近」するなどの行為を継続する場合,「海賊」からの発砲がなくても,先行的に船体射撃を行うことをも許容する規定になっている(第6条,第8条2項)。これは従来堅持されてきた自衛のための武器使用要件を著しく緩和するものであり,かつ国連安保理決議(第1851号)では加盟国は武力行使を含む「あらゆる必要な措置をとることができる」とされている事も考えれば,状況によっては、他国軍隊と一体となった自衛隊の武力行使に至る危険があり,武力行使を禁止した憲法第9条に抵触するおそれがある。
第四に,法案は,自衛隊の海賊対処行動は,防衛大臣と内閣総理大臣の判断のみでなされ,国会には事後報告で足りるとされており(第7条),国会を通じた民主的コントロール上も大きな問題がある。 確かに,ソマリア沖の海賊行為の頻発は,国連安保理決議がなされているなど,深刻な国際問題となっている。この問題解決のために国際協力が重要であることは明らかである。しかし,わが国が今,国際社会の中でソマリア沖海賊対策としてなすべきことは,日本国憲法が宣言する恒久平和主義の精神にのっとり,問題の根源的な解決に寄与すべく,関係国が日本に求める要望等に配慮しながら,非軍事的な人道・経済支援や沿岸諸国の警備力向上のための援助などを行うことである。よって,当会は,海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律の制定に反対する。
2009年(平成21年)5月13日 仙台弁護士会会長我妻 崇

平成21年03月31日 自衛隊のソマリア沖への派遣に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/1008

自衛隊のソマリア沖への派遣に反対する会長声明
政府は、本年1月28日、ソマリア沖海賊対策のために自衛隊法82条に基づく海上警備行動として、海上自衛隊をソマリア沖に派遣する方針を決定し、これを受けて、3月13日、浜田防衛大臣は海上警備行動を発令し、翌14日、護衛艦2隻がソマリア沖に向けて出航した。また、これに加え、今国会に海上自衛隊を派遣するための新法を上程することも報じられている。しかしながら、自衛隊法82条による海上警備行動は、日本領海の公共秩序を維持する目的の範囲内に止まるべきものであるところ(自衛隊法3条1項)、今回の海上警備活動の発令は、わが国の領海を遙かに超えてソマリア沖まで海上自衛隊を派遣するものであって、憲法9条の趣旨に反するものである。また、海賊行為等は犯罪行為であるから、本来警察権により対処されるべきものであり、自衛隊による対処にはそもそも疑問がある。さらに、国連安全保障理事会は、海賊対策に協力する国家に武力行使を含む「必要なあらゆる措置を講じること」(同理事会1851号決議)を認めているから、この海域に自衛隊が派遣されれば、自衛隊が武力による威嚇、さらには武力行使に至る危険性があり、武力行使を禁止した憲法9条に反するおそれがある。確かに、ソマリア沖の海賊行為の頻発は、国連安保理決議がなされているなど、深刻な国際問題となっている。この問題解決のために国際協力が重要であることは明らかである。しかし、わが国が今、国際社会の中でソマリア沖海賊対策としてなすべきことは、日本国憲法が宣言する恒久平和主義の精神にのっとり、問題の根源的な解決に寄与すべく、関係国が日本に求める要望等に配慮しながら、非軍事的な人道・経済支援や沿岸諸国の警備力向上のための援助などを行うことである。よって、当会は、ソマリア沖に自衛隊を派遣する海上警備行動の発令に反対するとともに自衛隊をソマリア沖に派遣するための新法の制定にも反対するものである。
2009(平成21)年3月17日仙台弁護士会会長荒 中

平成21年03月13日 死刑執行に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/979

2009(平成21)年1月29日、東京拘置所において1名、名古屋拘置所において2名、福岡拘置所において1名、計4名の死刑確定者に対して死刑が執行された。当会は、昨年9月26日と11月20日、法務大臣に対して死刑制度の存廃につき国民的議論をつくし、死刑制度の改善が行われるまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう強く要請したばかりであった。しかるに、今回の死刑執行は、森英介法務大臣が就任してから2度目、昨年10月28日の執行からわずか3ヶ月という短期間に、4名という多数の死刑執行を行ったものである。このように死刑の大量執行の流れが定着しかねない事態が生じていることは、極めて遺憾であって容認できない。当会は、かような事態に対して、改めて深い憂慮の念を示すとともに、重ねて強く抗議する。我が国をはじめ死刑存置国に対しては、国際社会からかつてないほど非常に厳しい目が向けられており、昨年12月18日、国連総会本会議においては、死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数の賛成で採択されたところである。また、上記本会議に先立つ昨年10月30日、国際人権(自由権)規約委員会は、我が国に対し、世論調査の結果にかかわらず、死刑廃止を前向きに検討すること、必要的上訴制度を導入し、再審請求等による執行停止効を確実にすることなど抜本的な死刑制度の見直しを行うことを求めた。こうした一連の決議や勧告は、国際社会から我が国に突きつけられた共通の意思の表明にほかならない。国連による勧告は、死刑制度が最も基本的な人権にかかわる重大な問題であり、世論や多数決に依拠した死刑適用の拡大や死刑執行の促進が根本的に誤りであるとの認識のもとになされている。裁判員制度の実施を控え、死刑制度の運用に対する国民の関心が高まっている今こそ、こうした国際社会の要請や死刑制度の運用と実態を国民に十分知らしめ、開かれた議論を直ちに行うべきである。今回の死刑執行は、こうした議論を一切行うことなく、国際社会の要請を再度無視して、短期間の間に大量の死刑執行に踏み切ったものであり、甚だ遺憾である。当会は、政府に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要請するものである。2009(平成21)年2月10日 仙台弁護士会会長 荒 中

平成20年11月20日 死刑執行に関する会長声明
2008年(平成20年)11月20日仙台弁護士会会 長荒 中
ttp://senben.org/archives/413

平成20年10月23日 新テロ特措法延長法案に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/356
政府は、2008(平成20)年9月29日に「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法」(以下「新テロ特措法」という。)を一年間延長する法案を国会に提出し、同法案は同年10月21日衆議院で可決され、現在参議院で審議されている。
当会は、2007年12月12日の会長声明において、①新テロ特措法に基づく補給支援活動として、アフガニスタンにおける米軍主導のOEF(不朽の自由作戦)の一環として海上阻止活動を行っている各国艦船や艦載の回転翼航空機への給油等が想定されているが、補給支援を受ける艦船等は、海上阻止活動の過程で武力行使又は武力による威嚇を行うことが予想されるだけではなく、アフガニスタンやイラクにおける戦闘活動や後方支援活動を行う可能性もあり、憲法9条の精神に反する、②新テロ特措法が自衛隊の実施する活動について国会の承認を不要とし、報告のみで足りるとする点は、自衛隊の活動に対する民主的コントロールとして不十分であると指摘した。本延長法案は、これらの問題点を何ら解消していないものであり、是認できない。また、新テロ特措法に基づく補給支援活動の実効性・必要性は認められない。すなわち、これまでの補給支援活動によって、テロリズムの防止及び根絶という立法目的に応じた効果をあげていることは何ら実証されていない。逆に、アフガニスタンではOEFを実行する米軍による無差別的な空爆により民間人の死者が2006年の116人から2007年には約3倍の321人に急増し、2008年も7月までに119人に上っているなど被害は増大している。米軍がこのような空爆を繰り返している最中、米軍と一体化しかねない補給支援活動を継続する必要性は認められない。最近では、アフガニスタン政府がタリバンとの和解交渉を開始し、エイデ国連事務総長アフガニスタン特別代表も話し合いによる政治的手段の必要性を説くなど、アフガニスタンを取り巻く世界の流れは戦争や武力によらない平和的解決に向かいつつある。平和的生存権および日本国憲法9条を持つ日本はこのような平和的解決にこそ尽力すべきである。このように、新テロ特措法延長法案及びそれに基づく補給支援活動には憲法上の重大な問題点が存し、またそれを継続する必要性も首肯できないので、当会は同法案に反対である。よって、参議院に対し、新テロ特措法延長法案の審議においては、海上自衛隊の補給支援活動及び補給支援を受けている外国艦船等の行動の実態を明らかにするとともに同法案を可決しないよう求め、衆議院に対しては仮に参議院が本法案を否決した場合には再議決を行わないよう求める。
2008(平成20)年10月23日仙台弁護士会  会長 荒 中

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余命三年時事日記 2266 ら特集10仙台弁護士会⑤17 [余命三年]

余命三年時事日記 2266 ら特集10仙台弁護士会⑤17
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2266-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a417/ より

平成20年10月07日 平成20年10月7日 意見書 裁判員制度の課題に関する意見書~裁判員制度の実施を迎えるにあたって
ttp://senben.org/archives/364
平成20年10月7日 意見書
裁判員制度の課題に関する意見書~裁判員制度の実施を迎えるにあたって~
仙 台 弁 護 士 会
会長 荒   中

第1 意見の趣旨
裁判員制度は2009(平成21)年5月21日から実施される。当会は、裁判員法の制定と関連法規の改正が行われた後の公判前整理手続の運用や裁判員裁判の模擬裁判の実践を踏まえて、裁判員制度が実施後当面するであろう課題を指摘し、その克服を志向しながら、裁判員制度の運用にあたることが、制度の趣旨に則し、また冤罪防止のための刑事手続全体の改革のために必要であると考え、以下の諸点について意見を述べる。
1 公判前整理手続および公判手続は、弁護権・被告人の防御権が十分に保障されたものでなければならず,拙速な審理は許されない。
2 評議においては、裁判員が十分に主体性を確保して意見交換をなし得るために、裁判官から適切な手続の説明、的確に証拠の説示がなされる必要があると同時に、その整理進行の枠組みも、密室化を避けるために、一部準則化することが検討されるべきである。
3 量刑については、裁判員が量刑の本質を踏まえた適切な量刑判断をなしうるために、量刑資料の提供、評議のあり方などが工夫されるべきである。
4 いわゆる部分判決制度については、限定的に運用すべきである。
5 裁判員裁判・公判前整理手続と事後審である控訴審との関係は未だ検討されてはいないところであり、速やかに検討すべきである。
6 少年逆送事件における裁判員裁判のあり方についての検討が必要である。
7 国選弁護人の複数選任、取調べの全面可視化、保釈の積極的運用など、裁判員裁判に密接に関連する分野の刑事訴訟法の運用が適正になされるべきである。
第2 意見の理由
1 はじめに
2009年5月21日から実施予定の裁判員制度は、さまざまな社会的経験を積んだ市民の健全な社会常識を刑事裁判の内容に反映させることによって、司法に対する国民の理解の増進と信頼の向上に資することをその目的とする。そのような制度理念は、従来、官僚制の下で硬直化してきた職業裁判官の判断を是正し、手続的にも、実体的にも適正な刑事裁判手続の実現を志向するものというべきであり、ひいて、被疑者・被告人の権利の適正な保障をも、その内実とするものと理解されるべきである。裁判員裁判の実施が近付くにつれ、直接主義・口頭主義に基づく審理方針が定着することによる調書裁判からの脱却、事前証拠開示の改善、警察・検察庁における取調べの録音・録画の試み、裁判所における保釈基準の見直し傾向など、刑事司法の運用について変革の兆しが生じてきたことも、裁判員裁判の実施に向けた当然の改革と理解される。しかし、最近においても、いわゆる志布志事件、氷見事件のような違法な取調べにより虚偽自白調書が作成された事件が、現に存在し、取調べの録音・録画の実験もなお一部の段階にとどまっており、証拠の事前全面開示は実現されていないなど、改革の流れが滞る懸念は拭いきれない。また、裁判員裁判に伴う公判前整理手続の実施によって、被告人の防御権の行使に新たな脅威が生じる懸念も憂慮される。裁判員の負担軽減という名目による連続開廷、審理時間の短縮が、弁護人の負担を加重にするとともに、証拠調べの制限などをもたらし、実体的真実と乖離した、拙速・粗雑な審理につながるのではないかという危惧がある。さらに、職業裁判官と裁判員の協同の場である評議についても、裁判官側の整理のあり方によって、裁判員の主体的な意見が反映されないおそれが否定できないし、裁判員が、素朴な応報感情や治安維持意識に基づく感情的な量刑の域を脱却して、適切な量刑評議ができるのかということも懸念される。裁判員制度は、さまざまな期待と不安をかかえながら、実施の時を迎えようとしているというべきである。裁判員裁判を制度本来の趣旨にそって実現することを目指すためにも、実施を控えた現実の中の課題を指摘し、その改善の手がかりを追求する手段を確認しておくことが是非に必要であると考え、本意見書をまとめ,公表する次第である。2公判前整理手続と公判手続
(1)連日的開廷と公判前整理手続
裁判員裁判対象事件は、公判前整理手続に付されるが,仙台地裁では,平成18年11月から,裁判員裁判対象事件を公判前整理手続に付している。刑事裁判に参加した市民が、直接主義、口頭主義のもとで心証を形成するためには連日的な開廷が必要となり、そのためには第1回公判前に審理の計画を策定するための公判準備の手続が必要となるというのがこの制度が設けられた理由である。しかしながら、公判前整理手続(2004年改正刑事訴訟法316条の2~32)には、無罪推定の原則や黙秘権との関係で重大な問題が含まれており、適切な運用が求められる。
(2)訴訟構造上の変化と、無罪推定原則、黙秘権との関係
弁護人は、公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張(予定主張)を予め明示すること、及び証拠請求を行うことが義務とされ(316条の17第1項、2項)、公判前整理手続終了後は原則として証拠調請求が制限されている(316条の32)。すなわち、弁護人には、事後の証拠請求の制限という不利益を前提とする予定主張明示義務が課せられているのである。その結果、検察官は、第1回公判前整理手続の中で、弁護側の主張・反証の全体像を把握したうえで、検察官の立証計画の弱点を予め補修する機会を得ることになる。刑事裁判は、無罪推定の原則のもとで検察官が挙証責任を負い、弁護人は、検察官の主張・立証の綻びに焦点を合わせて主張・反証を行うという訴訟構造がとられてきた。しかしながら、弁護人は、公判前整理手続において、検察官の主張・立証が尽くされていない段階で予定主張義務を課され、補修された検察官の主張・立証に対応しなければならなくなっている。すなわち、無罪推定の原則を基礎とする検察官の挙証責任という訴訟構造が、検察官に有利な方向に変容されているという側面を否定できない。また、公判前整理手続における予定主張義務は、被告人が終始沈黙したり、いかなる時期に自己に不利益な供述を行うかを選択する自由という黙秘権の保障に対する侵害のおそれもある。公判前整理手続の運用は、かかる無罪推定の原則、検察官挙証責任、黙秘権保障といった重要な刑事裁判の原則との緊張関係に配慮したものでなければならないのは当然であり,証拠調べ請求権の制限規定(法316条の32)の「やむを得ない事由」の解釈にあたっても,上記の点に配慮した運用がなされるべきである。
(3)公判前整理手続には十分な準備活動を保障する時間が確保されるべきである検察官から積極的な証拠開示がなされた場合であっても、弁護人が類型証拠開示請求や主張関連証拠開示請求によって開示された証拠の検討や、証人予定者からの事情聴取、鑑定書作成のための準備、その他の調査等に時間を要することは当然予想されることである。仮に被告人が自白しているような事件であっても、かかる検討が弁護人の不可欠の準備活動であることは、過去の冤罪事件が如実に物語っているところである。このような弁護人の準備期間が保障された公判前整理手続がなされなければ、連続的に開廷される公判が、弁護権、防御権の保障された充実したものとなることは望むべくもない。このように、弁護人に公判前整理手続についての十分な準備期間を保障することは極めて重要であり、裁判所が、予め公判前整理手続の終期を定めるなどといった運用を行うことは許されない。
(4) 公判を中心とした適正な裁判を実現すべきである
公判前整理手続きの目的は、争点及び証拠の整理と審理計画の策定にあるが、弁護権、防御権が十全に保障された公正な裁判を受ける権利が保障される運用がなされることは当然の前提とされなければならない。裁判所が「わかりやすい裁判」、「裁判員の負担軽減」のみを一面的に強調し、弁護権、防御権を制約する形で、弁護人に検察官の証明予定事実に対して詳細な認否や予定主張を要求する一方で、当事者の主張を不当に制限して争点を必要以上に絞り込んだり、必要な証拠調べを制限したりするようなことがあれば、適正な裁判を受ける権利の侵害となり、かかる訴訟指揮は許されない。さらに、公判審理における証拠調べの経過によっては、公判前整理手続による争点整理の範囲を超えて新たな争点が生じることも裁判の性質上当然に予想されることである。そのような場合には、期日間整理手続を活用して、新たな証拠調を含む審理計画が策定されるべきことも当然のことである。予め立てた審理計画に拘泥して公判審理によって発見された争点をないがしろにするようなことがあれば、公判の形骸化、ひいては公正な裁判を受ける権利の侵害の誹りを免れない。
(5) 証拠の事前全面開示の必要性
弁護人が連日的開廷による公判中心の審理のもとで充実した弁護活動を行うには、検察官から証拠の事前全面開示を受けて、それらを検討して検察官の主張・立証に対する弾劾と反証の準備をすることが不可欠である。そのような準備を通じてこそ、充実した防御活動が可能となり、公判審理が充実し、裁判員による公正・適切な判断も可能となる。現行公判前整理手続では、全面証拠開示制度はとられてはいないが、全面証拠開示に近い証拠開示が実現されるよう、弁護人は弁護実践に取り組むことが必要である。
(6) 拙速に陥らずに充実した審理を目指すべきである
仙台地方裁判所では、現在行われている実際の事件でも、公判前整理手続きを極めて短期間のうちに実施しようとしており、更に、報道によれば、裁判所はひろく裁判員裁判の審理期間については、裁判員の負担を考慮し、原則3日程度とする方針を表明している。公判前整理手続において十分な準備活動を保証する時間が確保されるべきであることはすでに述べたとおりであるが、公判でも、裁判員の負担を考慮するあまり、いたずらに迅速性を求めることは被告人の防御権の侵害につながる危険がある。また、模擬裁判の裁判員からは、「証人などに質問しようとしていたら手続きが終わってしまっていた」、「評議の時間が短かく消化不良だった」、というような感想も寄せられている。拙速な審理は、市民の社会的感覚を十分に裁判に反映させることが出来ないという意味でも、厳に避けるべきである。
3 評議について
(1) はじめに
裁判員裁判において、裁判官と裁判員との協働が十分に行われ、かつ被告人の防御をも配慮した裁判がなされるためには、裁判官によって的確な手続の説明と証拠に対する説示がなされるとともに、当事者の争点に適切に対応する評議が行われることが不可欠であり、制度及び運用において、いっそうの工夫がなされるべきである。
(2) 裁判員制度の意義を具体化するためには、適切な評議が不可欠である裁判員制度は、冒頭に述べたとおり,市民の健全な社会常識を刑事裁判の内容に反映させることにより,官僚化した職業裁判官の硬直的な判断を是正し、実質的にも適正な刑事裁判手続を実現することを志向するものであり、ひいては、被疑者・被告人の権利保障をも全うすることをも、当然にその内容としている。したがって、裁判員裁判においては、市民の健全な社会常識を十分に反映させることを目的とした準備が、周到に行われる必要がある。その準備によって、裁判員は、はじめて「無罪の推定」「合理的な疑いを容れない」厳格な証明などの刑事裁判の主要な原則や刑罰の目的を正しく理解し、自ら主体的に意見を形成し、議論に実質的に参加できるようになるといえるからである。一回限りで参加する市民が、他人の基本的人権に関わる刑事裁判の重要な責務を理解し、しかも経験豊かな職業裁判官に気後れせずに対等な立場で議論できる条件を作るために、裁判員制度の中で、説明や説示、評議整理のあり方はきわめて重要な位置を占める。
(3) 裁判員の主体性を保障する評議が必要である
前項の目的を実現するためには、まず、審理に先立って、裁判員が、自らの権限と役割を的確に理解するとともに、主体的に議論に参加できるための条件を準備する手続が必要になる。法39条、規則34条のいわゆる事前説明(以下、「説示」という。)は、この目的に基づいて、裁判長が裁判員に刑事裁判のルールを説明することを定めているが、そこでは、無罪推定の原則を含めた刑事裁判の基本原則が、明確に説示され、その後の評議で十分活かされるまでに、裁判員に理解される必要がある。したがって、説示の文案はきわめて重要であり、いわゆるモデル案に拘泥せず、繰り返し法曹3者で協議して、法および規則の趣旨をより生かしたものとするような努力が必要である。そのためにも、法39条の説示は,当事者がその内容などを検証できるように,当事者の面前で行うべきである。さらに裁判員裁判の審理においては、事件の構造全体と個別の争点との関連を分かりやすく設定し、裁判員の集中力と判断力を確保できるような分かりやすい証拠調べを実施し、結審の段階では、当事者の主張にかかる争点とそれに対応する証拠関係をも明確にするなど、裁判員が、評議において、自らの意見を形成し、合議に意見を反映できることを目指した審理がなされる必要がある。また、それと同時に、前記規則34条の説示のほかに、裁判官から自白と補強法則の関係などの証拠評価に関する諸原則に関して適切な証拠説示がなされることと、裁判員の意見を的確に引き出し、評議を充実させるための整理等がなされることが重要な課題となるといえる。
(4) 模擬裁判は、評議において、裁判員の主体性が十分に保障されない危険を示唆しているしかし、これまで全国的に行われてきた模擬裁判の事例を観察すると、裁判所においても評議の運営に工夫を重ねてきていることは理解できるが、なお、裁判長がともすれば裁判員を指導する雰囲気の評議や、自白調書を簡単に信用してしまいがちな証拠の説示なども散見され、裁判長の説示のあり方や裁判官が加わる議論の整理の如何によって、評議の進行や内容、場合によっては最終的な結論のあり方が左右され、市民の良識が反映されないのではないかという懸念を否定することはできない。評議中の裁判長あるいは裁判官の発言や行動によって、評議に参加した裁判員が、自らの意見を十分に反映できなかったという不全感を抱くケースが生じることも懸念される。仙台で行われた模擬裁判でも,裁判長が中心となって評議をリードし,裁判員の意見を制止するなどの場面があった。裁判長の意見・リードが裁判員の意見に大きな影響を与える可能性は十分にあり,上記危惧が現実のものになり得ることが懸念される。
(5) 適切な評議の運用は、被告人の防御権の見地からも重要である
密室において行われる評議は、裁判員側にも、裁判官と対等な立場で協働できる状況が確保されるかどうかという点に不安を感じさせると同様に、被告人側に対しても、評議に市民が入ることにより、的確な議論がなされ得るのかどうかについて、これまでになかった新たな不安を与えることになる。そのために、評議のあり方については、被告人側の防御を尽くす観点からも重大な関心を寄せざるを得ない。さしあたって、このような不安を解消するために、評議の進行の枠組みを事前に理解でき、また事後においても、的確な評議進行が検証できる手段について、対策を工夫する必要がある。
これまでの裁判員の参加する刑事裁判に関する法律及び規則の諸規定は訓示的なものにとどまっており、その運用如何では、密室の中で、不十分な評議が行われるまま結論が出されるのではないかという懸念を残すものとなっているからである。
(6) 規則の改正若しくは評議の適切な運用を準則化することが必要である
①公判廷において評議の枠組みを明確にすること
考えられる対策の1つとして、結審後、裁判長が、当事者の論告・弁論に基づいて、評議で取り上げる争点の構造及び証拠との関連(評議メモ)を公判廷において当事者に説明し、その意見を聴いた上で評議に移行する運用が考えられる。そのことによって、裁判員に対しては、争点とその後の議論の枠組みを法廷から付託されたという責任感と評議に臨む意欲を与える効果が期待できるし、当事者なかんずく被告人に対しても、その後の評議の進行の枠組みと検討される内容に対する理解を可能にし、無用な不信感から解放される効果を期待できるといえるからである。(なお、当事者において評議メモの構成に不服がある場合は、公判調書に異議ある旨を記載し、後の控訴理由の資料とすることが考えられよう。)
②評議の経過と内容を裁判書に明示すること
さらに、判決理由は、争点に対する評議の経過とその内容が理解できる程度に説示される必要がある。裁判員にとっても、自らの意見が正当に判決に取り入れられた充足感を与えることになるし、当事者にとっても、判決に対する不服申立ての権利を適切に行使することの手がかりを与えることになるからである。この点から、少数意見が存在した場合、その存在と排斥された経過を、裁判書の理由中で明示することが考慮されるべきである。
③運用の準則化
以上の点は、当事者に対して不利益を与えることにならないから、制度の運用を重ね、準則として確立することも可能であると思われるが、なお明確にするために、規則の改正をも視野に入れ、その他の工夫を含めて、論議される必要がある。
4 量刑について
(1) はじめに
量刑とは、法定刑ないし処断刑の範囲内において、有罪と認定された被告人に対して具体的に言渡す刑を決定することである。裁判員裁判においては、裁判員を含む裁判体において合議がなされ、多数決によって決定される。裁判員も量刑の合議に参加させる理由としては、量刑においても「一般市民の健全な社会常識」を反映させることがあげられている。
(2) 量刑判断の本質 ~専門的知識経験の蓄積に基づく価値的・政策的判断~
刑罰には、犯罪に対する応報的側面があることは否定できないが、それは単純な応報ではない。刑罰は、犯罪に対する行為者の責任を問うものであり、刑罰と犯罪との間には均衡が保たれなければならない。この「均衡」の程度については、その社会における「一般市民の健全な社会常識」が反映するであろう。しかし、刑罰には、有罪とされた者を教育し、社会に復帰させる側面があることも否定できない。この側面は、人間関係諸科学に関する様々な専門的知識や行刑に関する知識に基づく政策判断的要素が含まれよう。また、公平性・平等性も要請される。量刑は、単純な応報では割り切れない専門的知識や経験の蓄積、これらに基づく価値的判断・政策的判断の要素、さらには公平性・平等性の要請を満足させるといった複雑なものである。したがって、過度の応報感情がストレートに量刑に反映されるべきではない。
(3) 量刑判断は、一回的に関与する裁判員に適するものであるか
裁判員は、刑事事件に関しては一回的関与にとどまる。一回的関与にとどまる裁判員の量刑判断は、それ自体では経験的蓄積に乏しく、一時的応報感情に流される可能性を否定できない。さらに構成された裁判員の特性による偶然的要素が大きく反映することも考えられる。一回的関与にとどまる裁判員に量刑判断をゆだねることは、量刑に求められている前述のような様々な要請を満たせなくなる危険性がある。
(4) 裁判員の量刑判断を適切になしうるための条件
しかし、裁判員裁判においては、裁判員も量刑に関与することが予定されている。裁判員は、社会の構成員として「一般市民の健全な社会常識」の一端を担っている。これを適切に反映させながら、一時的応報感情に走らないようにすることが必要である。そのためには、刑罰の目的、刑罰の機能について多角的に説明することが必要となる。同時に、刑罰の目的・機能からみて、量刑判断の資料となる事実が、どのような意味づけを持つのかについての検討が十分になされる必要がある。そのうえで、公平性・平等性を確保するために、それまでに築きあげられてきた量刑資料を、適切に提示する必要がある。しかし、量刑判断が当事者のいない「密室」でなされる以上、この量刑資料が妥当なものであることの担保がなければならない。
5 部分判決制度
(1) 直接主義との関係
部分判決制度が直接主義との関係で問題の多い制度であることは否定できない。しかしながら,裁判員の選任が困難となるような長期間を要する併合事件について,何らかの仕組みを用意しておく必要性は否定できないところ,部分判決に替わる有効な制度は,少なくともこれまでのところ示されていない。極めて悩ましい問題であるが,部分判決制度を限定的に運用すべきである。
(2) 情報格差の問題
部分判決制度では,裁判員は,A,B,C事件でそれぞれ選任されるのに対し,裁判官は替わらないので,裁判官と裁判員の間に情報格差をもたらし,対等なコミュニケーションに影響するおそれがあるので,この点からも,部分判決制度は限定的に運用されるべきである。
6 控訴審
刑訴法の上訴に関わる部分は全く改正の対象にならず、依然として検察官も控訴できるし事実誤認も控訴理由となる。控訴審では、原則として原審における証拠を精査して原判決の当否を判断するのであり、しかもそれは職業裁判官3人のみでなされる。控訴審の運用次第では、「一般国民の健全な社会常識」を反映させるために裁判員を事実上否定することにもなりかねない。控訴審に関する刑事訴訟の改正について、早急な検討をおこなうことが必要である。
7 少年逆送事件と裁判員制度
少年の原則逆送対象事件(少年法20条2項本文)は裁判員裁判対象事件でもあるが、少年事件は、少年の情操保護・更生への配慮が必要とされており(少年法1条、50条、刑訴規則277条)、保護主義の観点から逆送事件について裁判員裁判の問題点を検討する必要がある。特に14歳、15歳の年少少年が、9名の裁判官・裁判員に囲まれて萎縮してしまう可能性、社会記録が公判で朗読されることによる種々の弊害の可能性に照らせば、少年逆送事件では、成人の場合とは別の運用等を検討する必要がある。
8 その他の課題
(1) 国選弁護人の複数選任
仙台では模擬裁判を複数弁護人で担当しているが、それでも、他の業務をこなしながらの対応は負担感が大きい。実際の裁判員裁判では、1人の弁護人が連日的開廷で短期間に集中的な審理が行われる裁判員裁判に対応することは極めて困難である。我々弁護士が全員で担っていくべき裁判員裁判は、原則として国選弁護人を複数選任するという運用が行われるべきである。
(2) 取り調べの全面可視化の実現
裁判員裁判においては、公判中心の審理が行われることになるが、取調べの可視化によって捜査を透明化し、虚偽自白調書が作成されることを阻止することが必要である。また、自白の任意性や信用性が争われる場合、法廷での審理は、直接の証拠がないままに、捜査官の証言・供述が続き、いわゆる「水掛け論」になってしまうが、それに裁判員を延々と付き合わせることは適切ではない。それゆえ、裁判員裁判となればなおのこと、取調べの全過程を録画録音することが強く求められることになる。現在、警察や検察庁では自白調書作成場面だけに限定した取調の一部録画が試行的に実施されている。しかし、任意性判断において最も重要なことは自白に至った経緯であり、それが客観的に明らかにならない一部録画は、かえって自白の証拠能力・証拠評価を誤らせ、誤判・えん罪を生む危険性があるというべきである。
(3) 保釈制度の積極的運用
公判前整理手続および連日的に改訂される公判審理において、被告人・弁護人には綿密な打ち合わせ等の十分な準備を整える必要がある。従って現行の保釈の運用を根本的に見直し、刑事訴訟法の原則に立ち返り、積極的運用が図られるべきである。
9 むすび
裁判員制度については,この他にも、裁判員の選定手続にかかわる問題,裁判員に科せられた刑罰を伴う守秘義務の問題など、少なからぬ課題が残されている。裁判員制度が、冒頭に述べたとおり、市民が刑事司法に参加することにより,公正な刑事裁判に対する信頼が回復され、冤罪防止のための刑事手続全体の改革に資する契機を持つ限りにおいて、私たち弁護士は、その意義が真に実現されるように、制度の適正な運用に向けて努力を惜しむものではない。しかし、これまで見てきたように、公判前整理及び公判手続の課題や裁判員制度の核とも言える評議のルール作りなど,実施に向けて議論すべき課題は多く、しかも重要である。刑事裁判において、無辜の救済,被告人の防御権の保障の職責を担う弁護人としての使命を自覚するにつけても、裁判員制度が、制度本来の趣旨にそった運用がなされるために、我々は、今後も引き続き、裁判員制度に関する課題を検討していく所存である。以 上

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余命三年時事日記 2265 ら特集10仙台弁護士会⑤16 [余命三年]

余命三年時事日記 2265 ら特集10仙台弁護士会⑤16
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2265-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a416/ より

平成21年03月31日 「憲法改正問題に関する意見書」について
ttp://senben.org/archives/1020

2005年10月、自由民主党の憲法改正草案と民主党の憲法提言が発表され、2006年には憲法改正手続法が成立しました。このような事態をふまえ、2005年に仙台弁護士会に設置された仙台弁護士会憲法改正問題対策本部(以下「対策本部」といいます)では憲法改正問題の調査・研究を行ってきました。これまでに発表された自由民主党の憲法改正草案、民主党の憲法提言、あるいは読売試案などに対しては、一定の論評がなされておりますが、現憲法の基本的人権の擁護や平和主義の観点からこれらの改正案を検討したものは少数でした。このような状況のまま憲法改正の発議が具体化してしまったならば、前述の憲法改正案の問題点について十分な議論のないまま、国会決議、国民投票が実施されてしまうおそれがあります。そこで、対策本部では、前述の憲法改正案の中から、主として自由民主党の憲法改正草案と民主党の憲法提言を取り上げて、その内容を検討し、具体的な問題点に関して対策本部の考え方を「憲法改正問題に関する意見書」という形でとりまとめました。本意見書の構成は、憲法改正に関するこれまでの議論を紹介した後に、自由民主党の新憲法草案と民主党の憲法提言に対して具体的評価を行っております。そして、憲法問題を論ずる場合に必ずと言っていいほど議論される憲法9条と国際貢献の問題に関して言及しております。本意見書は、あくまでも対策本部のものですが、憲法改正問題の議論にきわめて有益であり、今後の検討資料として活用して頂きたいと考えお送りする次第です。
2009年3月17日仙台弁護士会会長 荒 中
仙台弁護士会憲法改正問題対策本部
憲法改正問題に関する意見書
意 見 の 趣 旨
現在公表されている憲法改正案には,憲法前文の平和的生存権規定や憲法9条2項を削除して,「軍隊」を保持して海外での武力行使を可能とする改正案や,憲法を権力制限規範にとどめず,国民に対する行動規範の意味を持たせる改正案,さらに人権制約原理として人権調整原理とは異なる「公益」や「公の秩序」などを導入する改正案がある。しかし,これらの改正案は,立憲主義を変容させ,国民の基本的人権を大きく制約し,日本が再び海外において戦争を行うことにつながりかねない危険性を有するものである。よって,仙台弁護士会憲法改正問題対策本部は,そのような内容の憲法改正には反対である。
意 見 の 理 由
(はじめに)
1947年5月3日日本国憲法が施行されてから,60年以上が経過した。施行後間もない頃から憲法改正論議がなされてきたが,いずれも具体的な段階には至らないできた。しかしながら,2005年10月,自由民主党が憲法改正を目指して新憲法草案をまとめ,民主党も憲法提言を発表した。また新聞社や経済団体等も憲法改正に関し見解を表明するなどしている。そして,2007年5月には憲法改正手続法である憲法改正国民投票法案が成立し,2010年5月以降は,憲法改正の発議が可能な状況となっている。仙台弁護士会憲法改正問題対策本部(以下「対策本部」という)は,2005年に設置されて以来現在まで,憲法改正の内容について憲法9条とそれに関連する事項を中心に調査・研究・提言を行なってきた。現時点では,国会内に憲法審査会の設置がなされていない等,憲法改正の動向に関しては不確定な状況にあるものの,問題の重要性から,現時点で,当委員会がこの間調査・研究してきた憲法改正問題に関する成果を,対策本部の意見書という形式で発表するものである。
(本論)
1 日本国憲法の意義(立憲主義の理念と基本原理)
(1)日本は,満州事変から第二次世界大戦までのいわゆる15年戦争を遂行し,アジアを中心とした諸国民に甚大な被害を与えた。また,この戦争では,国内外においても民間人を含む多数の人命が失われ,最後には広島・長崎に人類史上初めて原爆が投下されるという悲惨な結末を迎えた。日本国憲法は,これらの言語に絶する歴史的体験の下に誕生したもので,二度とこのような惨害を起こさないよう,立憲主義を基本理念とし,国民主権・基本的人権の尊重・恒久平和主義を基本原理とした国のあり方を定めている。
(2)立憲主義とは,もともと権力者の権力濫用を抑えるために憲法を制定するという考え方のことをいい,広く「憲法による政治」のことを意味している,とされる。そして,近代以降に,国民主権・権力分立・基本的人権保障の基本原理を伴った近代憲法が成立して立憲主義が定着したため,これを近代立憲主義の意味で用いることが多い。(注1)要するに,近代立憲主義は,「法の支配」と「個人主義」が融合し,「個人」のために「法(憲法)」によって国家権力を制限するという考えを核とする思想である。(注2)日本国憲法の根本にある立憲主義は,上記の歴史的体験の下,近代立憲主義の考え方を継承し発展させ,「個人の尊重(尊厳)」原理と「法の支配」原理を中核とする理念であり,国民主権,基本的人権の尊重,恒久平和主義などの基本原理を支えている。「個人の尊重(尊厳)」とは,人間社会における価値の根源が個人にあるとし,何にも勝って個人を尊重しようとするものである。一方では利己主義を否定し,他方では全体主義を否定することで,すべての人間を自由・平等な人格として尊重しようとするものであり,個人主義とも言われる。日本国憲法も「すべて国民は,個人として尊重される」と規定している(憲法13条)。そして,憲法の基本原理である国民主権と基本的人権の尊重も,ともにこの「個人の尊重」に由来しており,さらに,個人の自由と生存は平和なくしては確保されないという意味において,平和主義も「個人の尊重」に由来するとともに国民主権及び基本的人権の尊重と密接に結びついている。(注3,4)「法の支配」とは,専断的な国家権力の支配(人による支配)を排斥し,国家権力を法(憲法)で縛ることによって,国民の基本的人権を保障することを目的とするものである。日本国憲法も,基本的人権の永久・不可侵性を確認するとともに(憲法97条),憲法の最高法規性を確認し(憲法98条),公務員に憲法尊重擁護義務を課していること(憲法99条),また,裁判所に違憲立法審査権を付与していること(憲法81条)から,日本国憲法が「法の支配」に立脚していることは明らかである。このように,日本国憲法は,「個人の尊重」と「法の支配」を中核とする立憲主義に基づくものである。(注5) (3)「個人の尊重」は,上記のとおり平和なくして確保されないものであるが,恒久平和主義に関し,憲法は,前文で「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生きる権利」(平和的生存権)を有することを明記し,平和的生存権実現の一方法として憲法9条で戦争や武力行使・威嚇の放棄,戦力の不保持,交戦権の否認を具体的に規定した。憲法の規定は,軍隊の武力や戦力をもっては恒久的な平和を構築できないという戦争の本質的現実を直視したものであり,二度と戦争はすべきでない,戦争の加害者にも被害者にもなりたくない,という当時の国民に広汎に受け入れられた(憲法制定当時の毎日新聞世論調査では全体の70%が戦争放棄の条項が必要だと回答していた)。その平和主義は,今日の国民にも深く定着している(注6)。特に戦力の不保持と交戦権の否認を定めた9条2項は,平和的生存権を認めた前文とあいまって,人類史上初めての画期的な規定であり,恒久平和への指針として世界に誇りうる先駆的かつ今日的意義を有するものである。(注7)核の時代における戦争は,究極において残酷な破壊力を持つ核兵器使用の応酬に至り,結局は勝者も敗者もない殲滅戦争として終わる可能性が大きく,「ヒロシマ」「ナガサキ」を出すまでもなく人類の滅亡の危機すら意味するものである。日本は,憲法9条を持つことによって,先の大戦で大きな被害を与えた周辺諸国を含む多くの国からも平和を志向している国として一定の信頼を得,戦後60年以上にわたり他国と軍事的な紛争を起こすことなく基本的に平穏な国際関係を維持してきた。この間日本は驚異的な経済的発展を遂げてきたが,これも憲法9条によるところが大きいと識者から指摘されているところである。(注8)(4)そして21世紀の今日,人口・食糧・水・貧困・格差・搾取・地球環境など世界が解決すべき問題は山積している。しかも,世界各地で発生している戦争や紛争も基本的には根底に貧困,格差,搾取,などの上記問題が横たわっている。これらは非軍事的・平和的手段で解決されるべき問題であり,徹底した平和主義の理念こそがこれらの解決の指針とされるべきである。(注9)
2 憲法改正問題に対する対策本部の基本的考え方
(1)弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命としており(弁護士法1条),その活動の拠り所となったのは日本国憲法に示された高邁な人権思想である。日本国憲法は,「個人の尊重(尊厳)」原理に由来する基本的人権が,人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であり,過去幾多の試練に堪え,侵すことのできない永久の権利として,現在及び将来の国民に与えられることを明らかにしており(11条,97条),憲法改正の限界を明らかにしている。弁護士・弁護士会は,日本国憲法のもと,幅広い自治権を与えられる中で,国民の基本的人権の擁護や平和の確保,あるいは民主主義の維持のために,様々な活動を展開し,これまで国民の基本的人権を脅かし,あるいは平和の維持に脅威となる事項に関しては,日弁連人権擁護大会における宣言や決議,あるいは仙台弁護士会会長声明等において様々な意見を述べてきた。(注10)憲法改正問題,とりわけ憲法9条の改正は,基本的人権尊重の基本原理を支える立憲主義の理念や,「個人の尊重(尊厳)」に由来する基本的人権の尊重原理が脅かされ,あるいは平和の維持に脅威となる危険がある。このような事柄に関して問題点や危険性を指摘し意見を述べることは,私達弁護士の社会的責務であり,国民から託された使命を果すためにも必要不可欠であると考える。
(2)また対策本部は,弁護士・弁護士会の過去の歴史と反省に照らし,現在の憲法改正,特に憲法9条(とりわけ9条2項)の改正に関して,決して無関心ではいられない。弁護士・弁護士会は,第二次大戦前の苦い経験を持っている。旧憲法下,弁護士会の自治権は不十分であったが,国家機関の種々の監督を受けつつも,人権擁護活動に果敢に取り組んでいた。しかし社会が戦時色一色に染め上げられる中で,弁護士・弁護士会の人権擁護活動は制約され衰退していき,次第に戦争に積極的に協力し,最終的には弁護士・弁護士会も戦時翼賛体制の一翼を担うにいたった。(注11)対策本部は,弁護士・弁護士会が,国内外に多数の死傷者を出した戦争遂行に加担協力し,自由にものが言えない社会の一翼を担ったという,旧憲法下の苦い経験を反省し,国民の基本的人権が軍事的な理由で侵害されたり,日本が再び海外での戦争を行うことは容認できない。
(3)憲法の改正,とりわけ9条の改正に関しては,平和の確保や基本的人権の尊重の観点から,十分な検討と論議がなされるべき事柄である。9条が改正され,日本が,軍隊を持ち,かつ海外で米軍等と軍事行動を共にすることが可能となったならば,従来政府が採用してきた「専守防衛」政策,「武器禁輸3原則」,「非核3原則」,防衛予算抑制政策等は放棄されることになる。そして,憲法上容認された軍隊が海外での軍事行動に至る可能性が著しく高くなり,国内においては,「国家」目的・利益や「軍事」目的・利益が優先され,「個人」の尊重や,これに由来する基本的人権の保障がそれらの目的や利益のためで制限される社会になる危険がある。(注12)
(4)立憲主義の理念の中核をなす「法の支配」原理も,「個人の尊重(尊厳)」原理も,立憲主義が支える国民主権や基本的人権の尊重の原理も,平和が維持され,そして平和に生きるという条件が満たされない限り実現されないことは前記のとおりである。基本的人権を擁護し,社会正義を実現するという対策本部の立場に照らせば,平和の維持や基本的人権の尊重の観点から脅威となる憲法改正,即ち立憲主義を危うくし,現在及び将来の国民に与えられた永久の権利である国民の基本的人権を大きく制約し,日本が再び海外で戦争をし,戦争に巻き込まれる危険性を持つ改正は容認できない。3 憲法改正論議をめぐるこれまでの経緯と現状
(1)近時の改憲論の背景
1990年代以降の憲法改正論の特徴としては,日本とアメリカの同盟関係の緊密化の中で,憲法9条だけでなく憲法の骨組を大きく変更しようとする全面的改憲論が唱えられている点,自衛軍を設置し,海外に自衛軍を派遣した上,米軍等とともに武力の行使を可能とするため9条2項を削除しようとしている点があげられる。日本とアメリカの関係に関しては,1978年に日米間で取り交わされた「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」は,日米の軍事的な協力の具体化を本格的に進めるものであった。その後,1996年4月日米安全保障共同宣言(安保条約再定義),1997年9月の新日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)策定,1999年5月新ガイドライン策定を受けての周辺事態法の成立という経緯の中で,国内の論議において1990年代前半期には国連決議による自衛隊の海外出動を強調するものがあったが,その後は国連決議を経ない日米同盟に基づく自衛隊の出動が目指されるようになった。(注13)そして,2001年9月のアメリカ同時多発テロの後は,同年10月テロ対策特措法が成立し,同年12月,凍結されていた平和維持軍本体業務(PKF)の解除のための改正が行われ,2003年3月イラク戦争発生後は同年6月有事関連3法(武力攻撃事態対処法,国家安全保障会議設置法一部改正,自衛隊法一部改正),同年7月イラク特措法が成立し,2003年12月以降自衛隊がイラクに派遣された後に,2004年6月有事関連7法案(国民保護法,米軍支援法,武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律,武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律,自衛隊法一部改正,国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律,武力攻撃事態における捕虜等の取り扱いに関する法律)・3条約案件(改正ACSA,1949年8月12日のジュネーブ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書,1949年8月12日のジュネーブ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書)が成立している。以上の経過に鑑みると,90年代以降の憲法9条の改正の目的は,自衛隊を単に軍隊と位置づけるだけでなく,自衛隊を海外に派遣し,アメリカ軍と共に軍事行動を行うことを可能にすることにあるといえる。
(2)最近の状況
この間,自衛隊の活動に関して,テロ対策特措法によって,周辺事態措置法にあった地理的限界が突破され,テロと認定されれば,自衛隊は世界中のどこにでも行けることになった。(注14)そして,テロ対策特措法の目的が「国際社会の平和と安全」になったため,テロ撲滅という理由があれば,自衛隊は,多国籍軍(有志連合)に対する後方支援として出動できるようになり(同年11月9日,インド洋に護衛艦,補給艦が派遣された),武器使用基準が緩和され,後方支援中に攻撃を受けた場合の反撃の方法が拡大された。イラク戦争発生後,有事関連3法が成立,そして,イラク特措法が成立し,2004年1月には陸上自衛隊がイラクに派遣(2月サマワ入り)され,重装備の自衛隊が海を渡ることになった。また,同年12月10日に閣議決定された新防衛大綱では,「専守防衛政策」からの離脱が表現され,ミサイル防衛システム(MD)とテロなど新しい脅威への対処を防衛力の柱に加え,自衛隊の国際協力に重点が置かれるものとなっている。(注15)そのような中,2005年10月28日,自民党新憲法草案が発表(11月22日に正式決定)され,また10月31日には民主党も「憲法提言」を発表した。また,前後して,読売新聞社や経済界,その他の諸団体等から,相次いで憲法改正に対し,改正案や見解が発表されている。これら憲法改正案が公表されたことは,以上のようなアメリカとの軍事同盟の緊密化という歴史的経緯と無関係ではなく,これに対する注視を忘れてはならない。そして,2007年5月には,憲法改正国民投票法案が成立しており,憲法改正は現実的な段階に入っている。
4 憲法改正案の問題点
(1)自由民主党の新憲法草案
ア 自由民主党の新憲法草案の概要
(ア) 自由民主党(以下,「自民党」という。)が2005年に正式決定した新憲法草案は,前文と99条からなる現憲法の全面改正案となっている。そしてその内容は,現憲法の立憲主義の基本理念や,国民主権主義,基本的人権の尊重,恒久平和主義といった基本原理を大きく変容しようとするものである。(イ) 草案では,前文において,「日本国民は,帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し」と規定し,国民には国家を守る責務があることを規定する。2004年11月17日,自民党から公表された(但し,同年12月4日撤回)憲法改正草案大綱(たたき台)では,「21世紀における現代憲法は,国家と国民とを対峙させた権力制限規範というにとどまらず,『国民の利益ひいては国益を護り,増進させるために公私の役割分担を決め,国家と地域社会・国民とがそれぞれに協働しながら共生する社会をつくっていくための,透明性のあるルールの束』としての側面をも有することに注目すべきである。」等とされており,その延長線上で定められた草案においても上記前文の規定等から同様の考えが根底に存すると認められ,憲法に権力制限規範の意味だけでなく,国民に対する行為規範の意味を持たせるものになっている。
(ウ) また,自民党新憲法草案では,基本的人権の制約に関して,12条,13条,29条2項で現憲法において人権相互間の調整原理とされる「公共の福祉」に変えて,「公益及び公の秩序」が人権制約原理になることを明記してある。「公益及び公の秩序」とは自民党新憲法起草委員会・要綱第1次草案(2005年7月7日)によれば,「共同体として,国家の安全と社会秩序を維持する概念」とされていたのであるから,「公益及び公の秩序」は,人権相互間の調整原理ではなく,人権規定より上位に位置づけられた国家的利益ないし社会全体の利益を意味すると考えられる。
(エ) 特に,平和主義については,現憲法前文の「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」,「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する」部分および戦力の不保持や交戦権の否認を定めた9条2項を削除し,9条の2により自衛隊を自衛軍という正式な軍隊として位置づけるものである。そして,自衛軍は,9条の2の3項で国連決議がなくても「国際的に協調して行われる活動」や「緊急事態における公の秩序を維持する活動」ができるとされており,イラク戦争の如き海外での武力行使や国民に向かっての治安維持活動を可能とするものである。(注16)
イ 自民党の新憲法草案の問題点(日本国憲法の立憲主義の理念や恒久平和の主義などの基本原理に対する危険性)自民党の新憲法草案のような憲法改正がなされた場合,以下に指摘する重大な問題点や危険性が生ずるおそれが高い。(注17)
(ア)  立憲主義の変容の危険性
草案は,憲法の位置づけについて,国家に対する権力制限規範にとどまらず,国民の責務を定める国民に対する規範の性格を与えているもので,憲法の本質である制限規範性を後退させ,立憲主義を大きく変容させる危険性を含んでいるものとなっている。立憲主義は,前記のとおり,権力者の権力濫用を抑えるために憲法を制定するという考え方で,近代にいたる歴史的な教訓のもとで確立した理念である。その立憲主義の内容たる憲法の制限規範性を後退させることは,草案における基本的人権の制約原理の変更や,憲法9条の改正による軍隊の保持と海外での武力行使が可能になるということと結び付いた場合,憲法が権力に対する制限規範としての役割を果たさず,国民の基本的人権が侵害される社会を招く危険性につながりかねないという極めて重大な危険性を持つものである。
(イ)  基本的人権の制約原理の変更の危険性
草案では,国民の基本的人権の制約に関して,12条,13条,29条2項「公益及び公の秩序」が人権制約原理になることを明記してある。「公益及び公の秩序」なる概念は,現憲法における「公共の福祉」に変わるものである。しかし,現憲法における「公共の福祉」の概念は,人権相互間の調整原理としてとらえられているところ,「公益及び公の秩序」は,人権相互間の調整原理ではなく,人権規定より上位に位置づけられた国家的利益ないし社会全体の利益を意味すると考えられる。そのため,国家的利益ないし社会全体の利益が基本的人権の制約の根拠とされることになるが,草案が平和主義に関して9条を改正して軍隊を憲法上保持し,海外での武力行使を可能とする改正となっていることに照らせば,軍事的理由や国家的な理由が,基本的人権の制約原理の上位概念とされる危険性が現実化しかねないものである。(注12)
(ウ)  9条の改正に関する問題点と危険性
a 草案では,自衛隊を軍隊として憲法上明記することになるが,軍隊が憲法に位置づけられれば,自衛軍は公の存在となり,自衛軍の活動,即ち戦時の戦闘行為,或いは戦時を予測して行う諸々の行動が憲法上公益ないし公の秩序維持活動として当然認められることになろう。
b 更に草案は,9条を改正して,軍隊が海外で武力行使を行うことが可能となるが,そのような改正は,日本の平和と安全を実現する手段を,現憲法のように「諸国民の公正と信義」の下に互いの信頼関係を築いて平和・安全を確立するという方法ではなく,武力,軍事力により実現しようとする方向へ思想転換するものであり,軍事力強化が国家として優先課題となるおそれがある。軍事優先の社会となれば,アメリカ,中国,ロシアの例を出すまでもなく,「敵に勝つ軍隊」を作るため軍産複合による軍事予算の肥大化を招き,「敵国」との関係で際限なき軍拡競争に突入する危険が大きくなる。
c 軍隊の行動が公益ないし公の秩序維持活動となり,かつ軍事力強化が優先の課題となれば,
(a) 軍隊の存在や軍事行動は,基本的人権の制約原理である「公益及び公の秩序」に該当するとされ,そうなれば,憲法13条の「個人の尊重(尊厳)」をはじめとする基本的人権は,軍事目的のため著しい制約を受ける可能性が高くなる。(注18)
(b) 軍隊の存在や軍事行動は,国家の安全や軍事機密を根拠に今以上に国会などの民主的コントロールの及ばない「ブラックボックス」とされる危険が大きくなり,国民主権の見地から大きな問題であろう。
(c) 軍隊や軍事行動に関する取材の自由は「国家的利益」に影響を与えるものとして制約され,国民の知る権利は大きく制限されるおそれが大である。
(d) また,反戦・平和・護憲など軍隊のあり方や行動に対し問題提起する表現の自由やその基礎にある思想・良心の自由という中核的な基本的人権も軍事目的・利益のため制約を受けざるをえない。(e) この結果,国民主権主義の下,国民が取材の自由・報道の自由により裏打ちされた正しい情報により,表現の自由が保障されるなか言論を戦わせ,選挙などを介して国の将来を選択していくという民主主義的統治機構は大きく変容する危険が大きい。そうなった場合,少数意見が民主的手続によって多数意見になる契機が失われ,人権を大きく制約する社会構造を民主的手続により是正することが困難となる。
d  草案76条3項では「軍事に関する裁判を行うため,法律の定めるところにより,下級裁判所として,軍事裁判所を設置する。」としている。その具体的内容は明らかではないが,「軍事裁判所」は戦前の軍法会議のように規律を厳格化し,組織を強化するために軍人の犯罪はもちろん,一般人の軍に対する犯罪も通常裁判所の管轄に属さず,その管轄とすること,また,軍属・軍用船舶員・俘虜に対しても管轄権を有するものであるとすることが想定される。しかし,そのような制度は,軍事に関する事案を司法権の特例とし,裁判を受ける権利(32条)の大きな制約になり,国民の裁判を受ける権利が変質させられるだけではなく,人権保障の最後の砦である司法においてすら軍事を特別扱いすることにつながり,基本的人権は強く脅かされる。また立法,行政も司法同様軍隊に対し特例を設けざるをえなくなる危険が高まり,自衛軍が国民に対し治安維持活動ができるとする草案第9条の2の3項ともあいまって軍隊や軍事機構が,立法権・行政権を制約・変質させ,その結果国家全体の統治が軍事中心・軍事優先になる社会が出現する危険性がある。
e  もし,自衛軍が,草案第9条の2の3項の改正により軍隊が海外に行くことになれば,日本の周辺諸国の日本に対する警戒心を呼び起こし,東アジアの安定を害するおそれがあるのみならず,イラク戦争のような戦争に参加することになれば,憲法9条という規範を持たない自衛軍は,非戦闘地域での後方支援にとどまらず,前線において,自ら軍事行動をとり,戦闘に加わり,あるいは軍事的紛争に巻き込まれる危険性がある。自衛軍が軍事目的のために他国民を殺す事態となれば,日本国憲法のもとで勝ち得た日本の平和国家としての信頼を著しく破壊してしまうことになる。そうなっては,日本に対する報復攻撃やテロ行為の危険も格段に高まり,日本の国内外の一般市民も報復攻撃やテロ行為の標的にされる事態が起こりうる。
f 軍事優先の社会では,軍事費が増大する反面,福祉,教育,医療,社会保障等の予算は削減され,憲法25条の理念を崩壊させる危険がある。その結果,現在進行している日本の貧困や格差問題の解決を著しく遠退かせることになりかねない。(注19)
(2)民主党の憲法提言
ア 民主党の憲法提言の概要
(ア) 民主党の「憲法提言」(以下「提言」という)は,条文形式をとらず,憲法改正の指針・理念を述べたものとなっている。
(イ) 提言では,平和主義に関して,「より確かな安全保障の枠組みを形成するために」という章題のもと,「日本国憲法は,国連憲章とそれに基づく集団安全保障体制を前提にしている」と述べ,これまでの「平和を享受する日本」から「平和を創り出す新しい日本」へ転換していくことが重要であるとしている。その上で,憲法の根本規範としての平和主義について,憲法の「空洞化」を許さず,「制約された自衛権」を明確にして,国際貢献の枠組みを確かなものにし,政府の恣意的な解釈に歯止めをかけるべきだとする。そのような基本的考えのもと,提言は,「国連の集団安全保障活動を明確に位置づける」などの「四原則・二条件」を提示している。
(ウ) また,提言では,立憲主義に関して,新しい憲法は,従来の憲法の本質である制限規範性のみならず,国民の意思を表明し世界に対して国のあり方を示すメッセージを発信する「宣言」としての意味をもたなければならないとする。そして,『国民の義務』に代えて『共同の責務』概念を提示して,国家と個人の対立や社会と個人の対立を前提に個人の権利を位置付けるのではなく,国家と社会と個人の協力の総和が『人間の尊厳』を保障するとしている。
イ 民主党の憲法提言の問題点
(ア) 提言は,これまでの「平和を享受する国」から「平和を創り出す新しい日本」へ「転換」することが重要であると述べている。しかし,日本は,今までも平和を作り出すために9条のもとで非軍事的な国際貢献をしてきたものであり,このことで先の大戦で被害を与えた周辺諸国を含む多くの国から信頼を得てきたことは前記したとおりである。したがって,提言が,日本は専ら平和を享受してきただけと評価しているのであれば誤りである。提言は,「平和を創り出す新しい日本」へ「転換」をするとし,その具体的内容として,国連多国籍軍や国連平和維持活動(PKO)に参加し,積極的に活動するとしており,また現憲法9条2項の戦力の不保持・交戦権の否認を維持・継続するとは述べていない。それらのことからすれば,提言の内容は,実質的には「戦後培ってきた平和主義」を大きく転換し,今までの非軍事的貢献にととまらず軍事的貢献へ転換することを志向するものといえるものであり,このような軍事的な貢献が行われれば,日本が海外で戦争に巻き込まれ,また戦争に加担していく危険が大きいと言わざるを得ない。提言は,この危険性を認識して「四原則・二条件」をあげ,これを日本が,国連多国籍軍や国連平和維持活動(PKO)に参加して活動する際の歯止めと位置づけている。しかし,現在の国連の実態は大国を始めとした参加各国の利害が厳しく衝突していて,国連に本来期待される機能が必ずしも適切に発揮されているとは言い難い。さらに,国連決議や国連安保理決議は必ずしも具体的かつ明確であるとは言えず,多様な解釈の余地を残していることから,日本の軍隊が武力行使するための要件充足も明確に判断できるとは言い難い。まして,我が国においては,9条2項の解釈が「解釈改憲」とまで評される経過をたどってきたことに照らせば,提言のように軍隊の存在や軍事活動が一旦憲法によって認められてしまえば,「四原則・二条件」が実質的な制限規範として機能するかどうかは疑わしい。むしろ,何ら歯止めにはならず,日本が海外での戦争や武力行使を行う危険性が増えていく危惧の方が大きい。
(イ) また,憲法に「宣言」としての意味をもたせるとしても,それは,当然,憲法の本質を損なわない限度でなされなければならない。しかし,提言で「共同の責務」を謳っている部分は,憲法の本質である制限規範性を後退させ,立憲主義を変容させる危険性を含んでいる。この立憲主義の変容が,上記の軍事的国際貢献と結びつけば,国民の権利自由は,軍事目的によって著しい制約を受けざるをえない。したがって,提言による憲法改正も,自民党新憲法草案と同様に,日本が再び海外において戦争を行う危険性を有し,国民の基本的人権が侵害される社会を招く危険性を払拭できない。
ウ その他の憲法改正案について
読売新聞社は,2004年5月3日読売改憲試案を発表した。同試案においては「21世紀にふさわしい憲法」を目指し,国民的議論を起こすたたき台として提言したとされているが,同試案では,憲法は国民が守るものであって,憲法が国家権力を制限して国民の人権を守るというという発想・視点が全く欠けており,立憲主義の原理を大きく変容するものとなっている。また現行憲法9条2項を削除し,同試案12条で軍隊の保有を認め,第14条で軍隊の海外派兵を認めているなど,日本の軍隊がアメリカ軍と軍事行動を共にするなど,海外で武力行使を行うことを可能にする内容になっている。このように,同社の改憲試案は,自民党の草案と同様に,日本が海外で武力行使できる途を開くとともに,基本的人権の保障を危うくする内容となっている。また,社団法人日本経済団体連合会,社団法人経済同友会,日本商工会議所の経済三団体はそれぞれの意見書や憲法提言を出している。また,同時期にPHP総合研究所および社団法人日本青年会議所等も憲法提言(改正私案)を提出している。各団体の提言内容は,団体ごとに少しずつ主張が異なり,特に国際貢献を果たすことを強調する一方で近隣諸国への配慮もせざるをえない経済団体の提言と,文字通りの私案にすぎないその他の団体の提言とではニュアンスの違いが見られるが,両者の主張をすべてあわせれば,平和主義の部分に関しては,軍隊の保持を認めたり,海外での活動を認めていくなど,ほぼ自民党の新憲法草案の主張と同様の方向をなっているというものが多く,その場面では基本的には,自民党の草案に対する問題点や危険性の指摘があてはまるものである。
5 憲法9条と「国際貢献」
(1)憲法9条の改憲論の理由の一つとして,「平和のためには,軍事的な国際貢献も必要である」「一国平和主義でいいのか」等,世界の平和のためや日米同盟の重要性から,武力行使を伴う軍事的「国際貢献」が必要であるとの主張が存する。
(2)たしかに,現憲法も国際社会との協調を掲げており,また過去の戦争の反省からも国際社会で孤立することは避けなければならない。しかし,国際社会との協調を果たし,「国際貢献」を行っていく必要があるとして,その手段方法において,軍事的な貢献が必要であるかといえばそれは間違いであるといわざるをえず,「国際貢献」は,平和的手段・非軍事的な手段によるべきである。国際紛争において,武力をもって相手を屈服させようとすることは紛争の真の解決とはならず,紛争の拡大や長期化,複雑化を招来する危険が大きい。このことは過去の戦争の歴史が証明しており,最近においてもイラク,アフガニスタン,パレスチナ,チェチェン,南北オセチア等々の現状に見られるように,武力行使は互いの憎悪を募らせ,武力・暴力の応酬を招き,紛争の根本解決に結びつかず,逆に紛争を拡大させ,混迷を深める結果となっている。また,「国際貢献」の実情に関して述べれば,「大量破壊兵器阻止」をスローガンに掲げた有志連合によるイラク戦争に大義がなかったことが既に明らかになっている。スローガンを掲げて戦争を正当化しても後にそれが虚偽や誤りであったという歴史は現在でも繰り返されており,イラクにおいては,誤りが分かっても戦闘行為は続けられ,長期間自衛隊も撤退できない状況に置かれた。このような自衛隊イラク派遣の問題はあるものの,日本は歴史の教訓に学び,第二次世界大戦後60年以上の現在まで平和外交を行ってきた。そのため,朝鮮戦争,ベトナム戦争,イラク戦争等があったにもかかわらず,日本は民間人からはもちろん自衛隊員からも1人の戦死者も出していない。また,核兵器を初めとする大量破壊大量殺戮兵器が出現した現代においては,武力をもって相手を屈服させようとすることは,これらの兵器の使用等による殲滅戦争を誘発しかねない。唯一の被爆国の日本は,武力をもって相手を屈服させようとすることに加担すべきではない。むしろ,理性に基づくねばり強い交渉等の平和的手段によって,国家間の対立や紛争が真に解決されるよう最大限の努力をすべきである。
(3)ところで,我国の衆議院では,戦後50年以降,相次いで決議をあげて,平和的手段によって国際紛争の解決を目指すことを宣言している。衆議院では,1995年6月9日「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」(「戦後50年決議」=「不戦決議」),2000年5月30日「戦争決別宣言決議」をあげ,そして2005年8月2日には「国連創設及びわが国の終戦・被爆60周年に当たり,更なる国際平和の構築への貢献を誓約する決議」として,「政府は,日本国憲法の掲げる恒久平和の理念のもと,唯一の被爆国として,世界のすべての人々と手を携え,核兵器等の廃絶,あらゆる戦争の回避,世界連邦実現への探究など,持続可能な人類共生の未来を切り開くための最大限の努力をすべきである」ことを表明した。これらは,衆議院が日本の歴史の教訓と日本の世界で果すべき役割を重く受け止め,世界の平和を真摯に希求して決議したものである。これらの決議は日本の「国際貢献」を考えるにあたり基本的な方針とされるべきものである。
(4)世界の人々も,武力によらない平和構築こそが必要であると考えはじめている。1999年5月にオランダのハーグで世界各地のNGOが結集して開催された世界市民会議で「公正な世界秩序のための基本10原則」の第1に「各国議会は,日本の憲法9条のように,自国政府が戦争をすることを禁止すること」が掲げられた。2005年7月ニューヨーク国連本部で採択されたGPPAC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)暴力紛争予防のための世界行動提言,2006年6月カナダのバンクーバーで開催された「世界平和フォーラム」宣言,2007年11月に開かれたナショナル・ロイヤーズ・ギルド(アメリカの人権救済団体)総会決議,2008年5月日本で開催された「9条世界会議」の「戦争を廃絶するための9条世界宣言」においても,武力によらない平和構築の理念や価値が評価され,これこそが21世紀の今日,世界が向うべき指標であると再確認された。
(5)現在,世界には貧困・飢餓対策や南北格差を含む格差問題,人口問題・食糧問題,水問題,感染症対策,そしてそれらの問題を今以上に悪化させる地球温暖化を含む環境問題など,数多くの課題が山積している。また,核軍縮の促進,国際紛争を予防し処理する調停機構や国際刑事司法機構の充実,民族紛争などから発生する難民救済といった解決すべき問題も多い。これらを解決するために日本は最大限の努力をすべきであるが,武力行使を伴わない手段によってこそ,日本は国際社会において適切な役割を果たせる。なぜなら,日本は平和憲法のもとで国際的に一定の信頼を得つつ戦後復興を遂げ,世界有数の技術力を獲得した国であり,その技術を平和的に活用すれば,効果的かつ説得的に国際貢献を行うことができるからである。これこそが国際社会が日本に期待していることである。日本が武力行使を伴う軍事的な「国際貢献」に踏み込んでしまうと軍事的紛争の当事国になる恐れがあり,かえって非軍事的活動を効果的・説得的に行えなくなる恐れがある。 
(6)以上を踏まえれば,日本は武力行使を伴う軍事的なものではなく,非軍事的な「国際貢献」をすべきである。世界からも武力行使を伴わない「国際貢献」こそが求められているし,それでこそ日本の力を十分に発揮できるというべきである。
6 結論
日本は,過去に悲惨な戦争を遂行し,国内外に多大な損害を被らせたという苦い歴史体験を持つ。その深刻な反省の上に立って日本国憲法が成立し,そのもとで日本が国際的信頼を得てきたことは重視されるべきである。日本国憲法のもとで戦後60年以上を経過し,この間国内はもとより,世界の状況は大きな変化を遂げている。しかし,日本の国民が,平和を守り二度と戦争をしないとした決意は,今も変わることはなく,平和が維持され,基本的人権が守られる社会を築いていくという努力が続けられるべきである。現在公表されている憲法改正案の中で,上記のとおり自民党新憲法草案は,憲法によって国家権力を縛り,基本的人権を保障するという立憲主義の理念や立憲主義が支える国民主権主義,基本的人権の尊重,恒久平和主義という基本原理を根本から変える内容となっている。また民主党「憲法提言」も,立憲主義や平和主義の変容の点に関して同様の問題を有している。憲法に「国民の人権を守るため,憲法により,国家権力を制限する」という権力制限規範としての意味合いだけでなく,国民に対する行動規範の意味を持たせるような改正がなされれば,憲法により国家権力を縛る意味は大きく減殺され,その反面として基本的人権の擁護等の観点から大きな危険性を生ずることとなる。また,軍隊が憲法上の存在として位置づけられ,海外で軍事活動を行えば,他国からの軍事攻撃の対象になる可能性が高くなり,戦争の当事国となる危険性が増大する。そして,国内的には,日本はそれに対応するためさらに軍事力を強化する必要に迫られかねないし,前記のとおり軍の活動は国家の公益活動に位置づけられ,軍事目的達成のため国民の基本的人権が制限され国民に対する統制が強化されるという軍事中心・軍事優先の国になってしまう危険がある。以上,自民党新憲法草案や民主党「憲法提言」等に掲げられた内容で憲法改正がなされた場合には,人権擁護や平和の維持の観点からみて様々な問題が発生すると思われ,強い危惧を抱かざるを得ない。従って,現在公表されている憲法改正案には,憲法前文の平和的生存権規定や憲法9条2項を削除して,「軍隊」を保持して海外での武力行使を可能とし,憲法に権力制限規範の意味合いだけでなく,国民に対する行動規範の意味を持たせ,基本的人権の制限に関して人権調整原理である「公共の福祉」に換えて,人権制約原理として「公益」や「公の秩序」などを導入するものがあるが,現時点においてこのような内容で憲法が改正された場合,立憲主義を変容させ,国民の基本的人権が大きく制約され,日本が再び海外において戦争を行うことにつながる危険性が存するものと考える。対策本部としては,基本的人権の擁護と社会正義の実現という使命に立ち返って考えた場合,そのような危険性を有する憲法改正には反対である。以上
(注1)
辻村みよ子「憲法(第3版)」P9以下
(注2)
日弁連第48回人権擁護大会第1分科会基調報告書P49~P51,P54以下
(注3)
日弁連第48回人権擁護大会第1分科会基調報告書P67,68
「平和主義が立憲主義の体系の中に取り込まれていったのは当然である。なぜなら,戦争…特に総力戦となった現代の戦争にあっては,すべての価値観が「国家が勝つこと」のみに集約され,「個人」そのものあるいはその権利の徹底的な制限・破壊をもたらし,議会制民主主義も麻痺させてしまうからである。つまり戦争こそは立憲主義の最大の敵であり,その防止は,現代にいたってもなお,立憲主義に課せられた最大の課題であるともいえる。」
(注4)
佐藤幸治「憲法(第三版)」P11は現代立憲主義に関し以下のとおり指摘する。
即ち,
「(6)平和国家への志向
元来戦争は立憲主義にとって最大の敵である筈である。とりわけ現代戦争は総力戦であって,人権(私的領域)の徹底的な制限・破壊を伴い,立憲主義体系に壊滅的な打撃となる。…」
(注5)
2005年11月日弁連第48回人権擁護大会(鳥取)「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言」(鳥取宣言)
(注6)
2008年5月2日付朝日新聞によれば,憲法9条改正反対66%,賛成23%となった。
2008年4月8日付読売新聞によれば,憲法改正賛成42.5%,反対43.1%となった。
(注7)
・2005年11月同第48回人権擁護大会(鳥取)「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言」(鳥取宣言)
(注8)
・浦田賢治「日本国憲法の平和主義」(早稲田法学56巻2号)
・長島直樹「公共投資と防衛費支出」(富士通総研。FRI Review 2000年4月)
・暉峻淑子「私たちの生活はどうなるのか」(「有事法制批判」岩波書店P164以下)
(注9)
ブッシュ政権時代,アメリカは問題の軍事的解決を最優先させてきたが,そのアメリカの現状については堤未果「ルポ貧困大国アメリカ」(岩波書店),田城明「戦争格差社会アメリカ」(岩波書店)により紹介されている。
また,予防的先制攻撃論(戦争政策)が採られたブッシュ政権時代のアメリカにおける人権状況については後記(注16)菅野昭夫レジメ参照。
(注10)
(日弁連)
・2008年10月日弁連第51回人権擁護大会(富山)「平和的生存権および日本国憲法9条の今日的意義を確認する宣言」(富山宣言)
・2005年11月同第48回人権擁護大会(鳥取)「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言」(鳥取宣言)
・2002年11月同第45回人権擁護大会(郡山)「有事法制3法案の廃案を求める決議」
・1997年10月同第40回人権擁護大会(下関)「国民主権の確立と平和のうちに生きる権利の実現を求める宣言」(下関宣言)
(仙台弁護士会,東北弁連)
・2008年7月 東北弁連「日本国憲法の恒久平和主義を堅持する宣言」
・2008年10月 仙台弁護士会「新テロ特措法延長法案に反対する会長声明」
・2008年4月 同「名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する会長声明」
・2007年12月12日 同「イラク特措法廃止法案を支持する会長声明」
・同年同月同日 同「新テロ特措法の制定に反対する会長声明」
(注11)
1934年には東京弁護士会が治安維持法改正に対する賛成決議をあげたほか,1940年には日本弁護士協会が政府の「国民精神総動員本部」の活動に協力する決議をあげ,同協会の協力のもと東亜新秩序建設をうたう「東亜法曹協会」が設立された。1941年には在野法曹時局協力連盟が設立され,1944年には「大日本弁護士報国会」が結成された。仙台弁護士会でも,1942年2月8日に当会会長以下全会員が神社に出向いて戦勝祈願を行ったほか,1943年には「仙台弁護士報国会」「勤労報国隊」を結成している(日弁連第48回人権擁護大会第1分科会基調報告書P13,P23~P24,仙台弁護士会会史P232,233)。
(注12)
日弁連第48回人権擁護大会第1分科会基調報告書P115以下,特にP120以下(「4人権制約原理としての軍事的公共性の誕生」「5 軍事目的による人権制約の展開」)
(注13)
日弁連第48回人権擁護大会第1分科会基調報告書P37以下など
(注14)
周辺事態法では,自衛隊が米軍に対して後方地域支援を行う地域は,「我が国領域」と「我が国周辺の公海及びその上空」となっていたが,テロ特措法では,自衛隊が行う協力支援活動の活動範囲は,「我が国領域」と「公海」,「外国の領域」(ただし,当該国の同意が必要)となった(小沢隆一「はじめて学ぶ日本国憲法」大月書店P195以下。日弁連第48回人権擁護大会第1分科会基調報告書P36)。
(注15)
新防衛大綱では,「今後のわが国の防衛力については,即応性,機動性,柔軟性,及び多目的性を備え,高度の技術力と情報能力に支えられた,多機能で弾力的な実効性のあるものとする」という表現を使っている。「多機能で弾力的防衛力」とは,非国家主体を含む「新たな脅威や多様な事態に向けたものとされており,「いつでも」「どこへでも」「何に対してでも」対処できる防衛力を意味するとされている。また「国際社会が協力して行う活動に主体的かつ積極的に取り組む必要がある」という表現がある。これは,国連の平和維持活動だけでなく,アメリカ中心の有志連合への意欲をにじませるものであるとされている。そして自衛隊の海外派遣方式を現在の「特措法」方式(テロ特措法,イラク特措法)から一般法に変更させることを示唆するものと受け取られている(日弁連第48回人権擁護大会第1分科会基調報告書P37以下)。
(注16)
・日弁連第51回人権擁護大会第1分科会基調報告書P131以下
(注17)
・菅野昭夫「愛国者法(上・下)」(法と民主主義2004年5月号)
・菅野昭夫「2001年9月11日事件後のアメリカ政府による人権蹂躙の数々と背景」(仙台弁護士会第14回連続市民講座レジメ)
は2001年10月成立した愛国者法制以降のアメリカの人権状況を的確に紹介している。
(注18)
・日弁連第48回人権擁護大会第1分科会基調報告書P115以下,特にP120以下(「4人権制約原理としての軍事的公共性の誕生」「5軍事目的による人権制約の展開」)
(注19)
・堤未果「ルポ貧困大国アメリカ」(岩波書店)
・田代明「戦争格差社会アメリカ」(岩波書店)

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教えて!ニュースライブ正義のミカタ 2018年01月13日 [政治]

教えて!ニュースライブ正義のミカタ 2018年01月13日

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余命三年時事日記 2264 ら特集10仙台弁護士会⑤15 [余命三年]

余命三年時事日記 2264 ら特集10仙台弁護士会⑤15
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2264-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a415/ より

平成24年04月10日 仙台地裁判決を受けて,改めて自衛隊情報保全隊による国民監視活動の中止を求めるとともに秘密保全法制の法案化に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/3421

本年3月26日,仙台地裁第2民事部(畑一郎裁判長)は,陸上自衛隊情報保全隊(当時)が自衛隊のイラク派兵に反対する活動等を監視し,市民の個人情報を収集保有していたことについて,原告らが監視活動の差止め及び国家賠償を請求した訴訟において,情報保全隊の上記情報収集活動には人格権の侵害があり違法であると判断した。本訴訟では,国は上記監視結果を記した内部文書の存在及びその真偽について認否すら拒否していたが,本判決は真の原本が存在し,かつ,情報保全隊によって作成されたものであることを認定したうえ,情報保全隊が原告らのした活動等の状況等に加え,氏名,職業,所属政党等の思想信条に直結する個人情報を収集して保有したことについて,自己の個人情報をコントロールする権利たる人格権を侵害し,違法であると指摘した。この判断は,情報保全隊が密かに前記監視活動を行っていた事実を明確に認定したものであり,国家権力の濫用をチェックし国民の権利・利益を保障するという立憲主義の理念に適うものである。また,高度情報化社会におけるプライバシー権(自己情報コントロール権)の重要性を認めて人格権侵害の違法性を厳しく指摘した点で評価できる。しかし,他方で,本判決は,情報保全隊の情報収集活動が国民の集会その他表現活動に対し強い萎縮効果をもたらし,表現の自由を侵害する点について触れておらず,監視活動の問題点を十分に指摘していない。当会は,2007(平成19)年7月18日付け「陸上自衛隊情報保全隊による国民監視活動に抗議しその中止を求める会長声明」においてこれらの問題点を指摘し,監視活動を直ちに中止することを求めたが,改めて情報保全隊による違法な情報収集活動を直ちに中止するよう求める。また,現在,政府が国会提出を目指している秘密保全法案が制定されると,今回の如き情報保全隊の国民監視活動に関する情報も「特別秘密」に指定される可能性が高く,そうなってはなお一層国民の人権侵害が隠ぺいされ続けかねない。当会は, 2011(平成23)年12月14日付け「『秘密保全の法制の在り方について(報告書)』に対する意見書」において秘密保全法制の法案化に強く反対する意見を表明したが,今回の仙台地裁判決を受けて,改めてその法案化に強く反対する。
2012(平成24)年4月6日仙 台 弁 護 士 会 会長 髙橋春男

平成24年04月10日 死刑執行に関する会長声明
2012(平成24)年4月6日仙台弁護士会 会長 髙橋春男
ttp://senben.org/archives/3418

平成24年03月19日 「社会保障・税共通番号制」法案に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/3370
「社会保障・税共通番号制」法案に反対する会長声明

本年2月14日、政府は、いわゆる「社会保障・税共通番号制」に係る法律(正式名称「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」、略称「マイナンバー法」)案を閣議決定し、国会に提出した。この法案は、全ての国民と外国人住民に対して、年金・医療・介護・労働等の社会保障と税の分野で共通に利用する識別番号(マイナンバー)を付けて、これらの分野の個人データを、情報提供ネットワークシステムを通じて確実に名寄せ・統合(データマッチング)することを可能にする制度(社会保障・税共通番号制度)を創設しようとするものであり、その主たる目的は行政運営の効率化にある(法案第1条)。しかしながら、プライバシー権(憲法第13条)保障の観点からはこの法案には重大な問題がある。すなわち、この共通番号制度により想定されている各行政分野(年金、労働保険、健康保険、生活保護、介護保険、税務等)の情報は、個人の私生活全般に及ぶものであり、その中には医療情報などのセンシティブ情報や所得・資産といった財産情報なども含まれており、共通番号制度によりこれらの情報が名寄せ・統合される結果、上記各情報が集積され番号により検索することが可能となる。そのため、このような制度が創設されると、国家による個人情報等の一元管理化の傾向が強くなり、本制度が国民監視の道具として濫用される危険性も否定できない。また、過失等により情報漏えいが起きた場合に重要な情報が広範に拡散するおそれもある。また、共通番号は行政機関だけでなく民間にも利用され、かつ、個々人に割り当てられる共通番号は公開が前提となっている。そのため、いわゆる「なりすまし」による信用取引等の深刻な被害も懸念される。このように共通番号制度はプライバシー権侵害の危険を孕むものであるところ、法案は第三者機関(個人番号情報保護委員会)による監視・監督(法案第31条以下)や罰則により、一定のプライバシー保護に対する配慮をしている。しかし、情報技術が日々発展し、サイバーテロ等の個人情報に対する脅威も増大し続ける現代において、情報漏洩の危険を完全に除去することはできないこと、及びプライバシー情報はひとたび漏えいされると取り返しのつかない被害を招くおそれがあることに鑑みると、第三者機関によるチェックや事後的な罰則による規制によってもプライバシー侵害の危険は解消されない。このように、基本的人権のうちでも人格的尊厳や国民の自己決定権に影響を与えるものとして、最も枢要なものの一つであるプライバシー権を危殆に瀕せしむる制度を拙速に法律化することは、将来に重大な禍根を残すことになる。なお、法案は、共通番号が災害救助法による救助や被災者生活再建支援金の支給に関する事務にも利用できるとしている。しかし、災害時には着の身着のままで避難する被災者も多く、その中には自己の共通番号を覚えていない者もいることが想定されるところ、そのような場合にはかえって事務を停滞させてしまうおそれもある。また、生活再建支援金の支給の遅れは自治体による建物損壊状況の確認が遅れたことも原因であり、共通番号を創設することによって解決できる問題であるかは疑問である。したがって、災害時における行政の効率化のために共通番号の必要性・合理性が認められるかは疑問があり、通常時における前記プライバシー侵害の危険との比較衡量においてもその創設の必要性・相当性は認め難い。よって、当会は、同法案に強く反対するものである。
2012年(平成24年)3月14日 仙 台 弁 護 士 会会長森山 博

平成24年02月27日 日本国籍を有しない者の調停委員任命を求める決議
ttp://senben.org/archives/3315
日本国籍を有しない者の調停委員任命を求める決議

当会は,2011年(平成23年)12月,仙台家庭裁判所からの家事調停委員推薦依頼に対して,当会の会員を候補者として推薦したが,同裁判所からは,過去3回と同様,「日本国籍を有しない者の調停委員就任は認められず,韓国籍会員については最高裁判所に任命上申しない。」との回答がなされた。当会は,この回答を不服として,2012年(平成24年)1月27日,裁判所法82条,80条1号に基づき,最高裁判所に対し,調停委員任命上申除外に対する不服申立を行った。
 従前,最高裁判所事務総局人事局任用課は,「公権力の行使に当たる行為を行い,もしくは重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とする公務員には,日本国籍を有する者が就任することが想定されていると考えられるところ,調停委員・司法委員はこれらの公務員に該当する」としているが,仙台家庭裁判所の上記回答も,同様の理由に基づくものである。
 しかしながら,調停委員の資格としては,「弁護士となる資格を有する者,民事若しくは家事の紛争の解決に有用な専門知識を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で,人格識見の高い満40歳以上70歳未満の者」(民事調停委員及び家事調停委員規則1条)であり,日本国籍を必要とする法律ないし規則の条項は存在しない。かかる資格のある者として,日本国籍を有しない大阪弁護士会所属弁護士が,14年余の間,民事調停委員に任命され,調停委員としての職務を行い,大阪地方裁判所所長より表彰を受けた事実も存する。調停制度における調停委員の役割は,当事者の互譲による合意形成を支援することにあるから,調停委員は,公権力を行使し,重要な施策に関する決定を行う公務員ではない。日本の社会制度や文化,そこに住む市民の考え方に精通し,高い人格識見のある人であれば,日本国籍の有無にかかわらず,調停委員としての役割を果たすことができるのである。多民族・多文化共生社会の実現の観点に照らしても,国籍の有無にかかわらず,調停委員への就任を認めることは当然の要請である。とりわけ,日本社会の構成員となっている旧植民地出身者等の特別永住者については,職業選択の自由および幸福追求権(自己決定権)が最大限尊重されるべきである。したがって,日本国籍を有しないとの理由のみで調停委員に任命しないことは,憲法14条の平等原則に違反するとともに,憲法13条の幸福追求権(自己決定権),憲法22条の職業選択の自由をも不当に侵害するものである。よって,当会は,前記民事調停委員及び家事調停委員規則1条の要件を満たす者であれば,日本国籍の有無にかかわらず積極的に調停委員として任命上申を仙台家庭裁判所が行い,また,最高裁判所がこれを任命するよう求める。  以上のとおり,決議する。

2012年(平成24年)2月25日仙台弁護士会会長森山博
提 案 理 由
1 当会は,仙台家庭裁判所からの家事調停委員推薦依頼に対して,2006年(平成18年)1月,2007年(平成19年)11月,及び2009年(平成21年)12月の3回にわたって,韓国籍会員を候補者として推薦しているが,仙台家庭裁判所は,「調停委員に就任するには,日本国籍が必要であり,日本国籍を有しない者を推薦されても,最高裁判所に上申することはできない。」と回答し,同会員の任命上申を拒絶している。このような取り扱いに対して,当会は,最高裁判所及び仙台家庭裁判所に対し,2006年(平成18年)3月31日付で,民事調停委員及び家事調停委員規則の定める要件を充足する限り,日本国籍の有無を問わず,調停委員に任命するべきである旨の申し入れを行った。また,当会は,2008年(平成20年)2月23日,定期総会において,「日本国籍を有しない者の調停委員任命を求める決議」を採択し,更に,2010年(平成22年)1月28日,「調停委員推薦に対する仙台家庭裁判所の対応に抗議する会長声明」を表明した。加えて,2011年(平成23年)7月8日,東北弁護士会連合会定期総会において,「日本国籍を有しない者の調停委員任命を求める決議」が採択されている。以上の経緯を経て,2011年(平成23年)12月,当会は,仙台家庭裁判所からの家事調停委員推薦依頼に対して,韓国籍会員を候補者として推薦した。しかしながら,仙台家庭裁判所は,韓国籍会員については最高裁判所に上申しない旨の回答し,同会員の任命上申を拒絶し,未だ同会員の調停就任は実現していない。なお,当会は,最高裁判所に対し,2012年(平成24年)1月27日付けで,裁判所法82条,80条1号に基づく不服申立てを行っている。
2 当会以外の弁護士会においても,日本国籍を有しない者を調停委員に推薦した事例において任命上申が拒否されており,日本弁護士連合会及び各地の弁護士会は,度々,日本国籍を有しない者の調停委員就任を求める意見を表明している。これに対し,最高裁判所は,日本弁護士連合会からの照会に対し,最高裁判所事務総局人事局任用課より,2008年(平成20年)10月14日付で,「最高裁判所として回答することは差し控えたいが,事務部門の取扱は以下の通りである。」として,法令等の明文上の根拠規定はないとしながらも,「公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とする公務員には,日本国籍を有する者が就任することが想定されていると考えられるところ,調停委員及び司法委員はこれらの公務員に該当するため,その就任のためには日本国籍が必要と考えている。」と回答している。
3 しかしながら,民事調停委員及び家事調停委員の任命資格については,民事調停法8条2項及び家事審判法22条の2の2項が,「その任免に関し(て)必要な事項は最高裁判所が定める。」と規定し,民事調停法8条2項及び家事審判法22条の2の2項を受けた民事調停委員及び家事調停委員規則1条は,「民事調停委員及び家事調停委員は,弁護士となる資格を有する者,民事若しくは家事の紛争の解決に必要な専門的知識経験を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で,人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満の者の中から,最高裁判所が任命する。ただし特に必要がある場合においては,年齢四十年以上七十年未満であることを要しない。」と規定しており,また,同規則2条が定める欠格事由の中にも国籍要件の定めはない。 法令上,日本国籍を有することは調停委員任命の要件とされていないのである。大阪弁護士会において調査したところ,1974年(昭和49年)1月から1988年(昭和63年)3月まで,日本国籍を有しない張有忠弁護士(大阪弁護士会所属)が外国籍のままで民事調停委員に任命され,14年余りにわたり何らの支障なく調停委員としての職務を行い,大阪地方裁判所所長より表彰を受けていることが判明しており,法解釈上,民事調停委員及び家事調停委員の就任につき,日本国籍の有無は要件とならないことは明らかである。
4(1)調停委員の具体的職務内容に照らしても,日本国籍を必要とすることに合理的な理由は無い。すなわち,調停制度の目的は,市民間の民事紛争につき,当事者の話し合いと合意に基づき,裁判手続きによらず解決することにあり,調停制度は,日本における裁判外紛争解決手段(ADR)の典型の一つと位置付けられる。当事者の互譲により,条理にかない実情に即した解決を目的とする制度であり,当事者の合意を本質とするものである。そして,調停委員の本質的役割は,専門的知識もしくは社会生活の上での豊富な知識経験を活かして,当事者の紛争解決を支援することにあり,日本の社会制度や文化,住民の考え方に精通した高い人格見識のある者であれば,国籍の有無にかかわらず役割を果たすことが充分に期待できるのである。このような資質は,日本国籍によってではなく,日本で長く生活して得た社会的知識経験や職業から得た専門的知識経験の豊かさによって形成されるのであるから,日本国籍を有していることは,調停委員の役割を果たすための要件としては不要であり,日本国籍を有することを就任の要件とすることは,むしろ,貴重な適任者を採用する機会を逸し,調停制度の趣旨の実現に反する。
(2)最高裁判所事務総局によれば,調停委員に日本国籍を要求する実質的な理由として,「①調停委員は裁判官と共に調停委員を構成して調停成立に向けて活動を行い,調停委員会の決議はその過半数の意見によるとされていること,②調停調書の記載が確定判決と同一の効力を有すること,③調停委員会の呼出,命令,措置には過料の制裁があること,④調停委員会は,事実調査及び必要と認める証拠調べを行う権限等を有していること」などを指摘する。しかしながら,調停委員は説得調整活動を職務とするものであり(民事調停法8条1項,家事審判法22条の2第1項),職務の性質,実態,職務遂行のために付与された権限の性質,内容等に照らして,調停委員が国家意思の形成に参画するものではなく,公権的判断を行うものとは認められない。上記①ないし④は,いずれも日本国籍を有しない者を調停委員から排除する理由とはなり得ないというべきである。すなわち,上記①については,調停委員が決議(意思決定)をする場合としては,裁判所外での調停の開催(民事調停規則9条,家事審判規則132条),代理人等の許可(民事調停規則8条2項,家事審判規則137条,5条2項,3項),傍聴の許可(民事調停規則10条但書,家事審判規則137条,6条但書),家裁調査官の期日出席及び意見陳述(家事審判規則137条,7条の4,7条の7),調停の拒否(民事調停法13条,家事審判規則138条),調停の不成立(民事調停法14条,家事審判規則138条の2)等があるところ,それらの決議に調停委員が関与したからといって,調停委員が当事者の権利を公権的に制約するものではない。また,調停に代わる決定(民事調停法17条)も,「裁判所は,調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは,当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き,当事者双方のために衡平に考慮し,一切の事情を見て,職権で当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で,事件解決のために必要な決定をできる。」と規定されており,決定をするのは,裁判所であって,調停委員ないし調停委員会ではないし,実務上も,調停に代わる決定は,当事者による合意形成に資する範囲で謙抑的に運用されていることは周知の事実である。上記②については,調停調書の記載は既判力を有しておらず(最高裁判所昭和31年3月30日第二小法廷判決・最高裁判所民事判例集10巻3号242頁,基本法コンメンタール「民事訴訟法2」第3版320頁),調停委員は当事者間の合意成立に向けて関与するが,その効力は,当事者の合意に由来する。また,調停条項の裁定の実質は仲裁であり,公権力の行使ということはできない。上記③については,過料の制裁は,裁判所が決定するものとされ,調停委員ないし調停委員会が判断するのではない。「正当な事由」の有無の判断も裁判所が行うことが予定されており,さらに,その執行は,裁判官又は家事審判官の命令によるとされていることから,過料の制裁は調停委員会の権限に含まれない。上記④については,事実の調査は強制力を有しておらず,証拠調べに関し「民事訴訟の例による」とされているだけで強制力を伴う民事訴訟法規が「適用される」ものではなく,強制的に権限行使が認められているわけでないので,対象者の意思を制圧することはない。以上により,上記①ないし④は,日本国籍を有しない調停委員を排除する合理的理由とはならない。むしろ,調停委員の職務内容及び権限は,法により,当事者の合意による紛争解決を支援する限度で認められているにすぎない。よって,調停委員は「公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員」に該当しない。調停は,当事者間の合意によって紛争を解決するものであり,公権力の行使によって紛争を解決するものではないのである。
5 多民族,多文化共生社会の実現の観点に照らしても,日本国籍を有しない者の調停委員任命は実現されるべきである。
2010年(平成22年)7月7日に入国管理局が公表した統計によれば,日本における外国人登録者数は,2009年(平成21年)時点で218万人を超え,外国人登録者の国籍は189カ国に上っている。さらに,朝鮮や台湾などの旧植民地出身者で日本国籍を取得した者,長期の在留を経て日本国籍を取得した者など,民族的少数者としての立場にある者も多数居住し,日本では多民族・多文化への傾向が急速に進展している。日本は,この20年あまりの間に,国際人権(自由権)規約,国際人権(社会権)規約,難民の地位に関する条約,女性差別撤廃条約,子どもの権利条約,人種差別撤廃条約,拷問等禁止条約などの国際人権条約を批准・加入した。したがって,憲法98条2項(条約及び国際法規遵守の必要性)に照らしていかなる差別をも禁止し,法の下の平等を定めた国際人権(自由権)規約26条,締約国の差別撤廃義務などを定めた人種差別撤廃条約2条,5条は国内的にも実現されねばならない。人種差別撤廃条約などを受けて,国連は2000年(平成12年)2月反人種差別モデル国内立法を公表し,欧米各国はそれに先立ち,1970年代から人種・国籍・民族による雇用その他の差別を禁止する法律を制定している。また,日本弁護士連合会は,2004年(平成16年)10月8日,第47回人権擁護大会(宮崎県)において,永住外国人等の地方参政権付与をはじめとする立法への参画,公務員への就任など行政への参画,司法への参画を広く保障することを求め,「多民族・多文化の共生する社会の構築と外国人・民族的少数者の人権基本法の制定を求める決議」を採択している。多様な出自や社会的経験に基づく様々な考え方,見地から,種々の紛争が適切に解決されることは,調停制度の趣旨に合致するものであり,そのことは多民族,多文化共生社会の実現を目指す上でも意義深く,より成熟した国際協調主義(憲法前文,98条2項)に適うものである。とりわけ,日本には,サンフランシスコ平和条約発効に伴う1952年(昭和27年)4月19日の法務府(現法務省)民事局長通達により,一方的に日本国籍を奪われた旧植民地出身者及びその子孫などの特別永住者が,2006年(平成18年)末日現在で約40万人という多数が存在する。これらの人々は,生涯日本で暮らすことを前提に日本社会の構成員となっており,その生活実態において日本国民と何ら異なるところがない。これらの人々の調停委員に選任されるなどの諸権利については,最大限尊重されるべきである。
6 近時,国連人種差別撤廃委員会は,第76会期(2010年2月15日-2010年3月12日)において,人種差別撤廃条約9条に基づき締約国が提出した報告書の審査を行い,人種差別撤廃委員会の日本に対する総括所見「15」において,以下の通り懸念を表明した。
「家庭裁判所の調停委員には公的な決定を行う権限がないことに留意し,委員会は,資格を有する非日本国籍者が紛争処理において調停委員として参加できないという事実に懸念を表明する。また,公的生活での非日本国籍者の参加に関してデータが提供されていないことに留意する(5条)。」そして,同委員会は,日本が調停委員の候補に推薦された資格のある非日本国籍者が家庭裁判所で仕事ができるよう見解を見直すことを勧告した。また,公的生活における非日本国籍者の参加の権利に関する情報を次回報告書にて提供するよう勧告した。前記最高裁判所の見解は,人種差別撤廃条約5条に違反し国際的な非難を受けているのであって,直ちに最高裁裁判所が見解を見直し日本国籍を有しない者の調停委員就任を実現することは,国際的な要請であるというべきである。
7 最高裁判所事務総局の見解は,以上に述べた諸点に配慮することなく,日本国籍を有しない者については,憲法上保障されるべき諸権利を法令上の規定が無くとも制限し得るとするものであるが,調停委員が「公権力の行使に当たる公務員」に該当するとして,前記に述べた調停委員の具体的な職務内容を考慮することなく,日本国籍を有しない者について調停委員に一律に任命しない取扱いとすることは,在日外国人,特に特別永住者の法の下の平等原則(憲法14条1項)や,幸福追求権(憲法13条)及び職業選択の自由(憲法22条1項)をあまりにも軽視するものであり,法治主義に反する。とりわけ,憲法第3章に規定される基本的人権は,権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き,我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶと解すべきである(最高裁判所昭和50年(行ツ)第120号,同53年10月4日大法廷判決・最高裁判所民事判例集32巻7号1223号)。人権の前国家的性格(憲法前文,11条,97条)に鑑みても,憲法上保護されるべき権利は,本来国籍を問わず等しく尊重されなければならず,また,憲法14条1項の趣旨が全ての人間の人格の価値を平等とするところにあり,同条項が保障する法の下の平等原則は我が国に在留する外国人に及ぶとした最高裁判所大法廷判決の内容(最高裁判所昭和37年(あ)第927号,同39年11月18日大法廷判決・最高裁判所刑事判例集18巻9号579頁)に悖ると言わざるを得ない。
8 よって,仙台家庭裁判所に対し,「弁護士となる資格を有する者,民事若しくは家事の紛争の解決に有用な専門知識を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で,人格識見の高い満40歳以上70歳未満の者」(民事調停委員及び家事調停委員規則1条)であれば,日本国籍の有無にかかわらず積極的に家事調停委員として任命上申を行うよう求めるとともに,最高裁判所に対し,民事調停委員及び家事調停委員規則1条の要件を充足する者であれば,日本国籍の有無にかかわらず積極的に民事調停委員及び家事調停委員に任命するよう求めるべく,本決議を提案するものである。以 上

平成22年04月08日 国家公務員法違反事件無罪判決に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/1571
平成22年4月7日会長声明2010年04月08日
国家公務員法違反事件無罪判決に関する会長声明

東京高等裁判所第5刑事部(中山隆夫裁判長)は、本年3月29日、社会保険事務所職員(当時)が休日に政党機関誌をマンションの郵便受けに配布した行為が国家公務員法違反(政治的行為の制限)にあたるとして有罪判決を下した一審判決を破棄し、無罪とする判決を言い渡した。裁判所は、国家公務員の政治的行為について、猿払事件最高裁大法廷判決(1974年11月6日)以降、公務員の職種・職務権限、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無等を区別することなく、公務員の政治的行為を広く刑罰をもって禁止することを許容してきた。しかし、今回の東京高裁判決は、国家公務員の政治的活動に対する規制をすべて違憲であるとすることは否定しつつも、当該職員の職務内容や職務権限には裁量の余地がなかったこと、当該職員が管理職でもなかったこと、休日に勤務先やその職務とかかわりなく職場から離れた自宅周辺で、公務員であることを明らかにせず無言で行った配布行為は、国民の法意識に照らせば、国の行政の中立的運営及びそれに対する国民の信頼の確保を抽象的にも侵害するものとは常識的に考えられないことから、これに罰則規定を適用することは国家公務員の政治活動の自由に必要やむを得ない限度を超えた制約を加えるものであって違憲であるとした。その上で、同判決は、わが国の国家公務員に対する政治的行為の禁止は西欧先進国に比べ非常に広範なものになっていることを指摘し、「刑事罰の対象とすることの当否、その範囲等を含め再検討され、整理されるべき時代が到来しているように思われる。」と付言している。この東京高裁判決が無罪を言い渡したことは国際水準に照らし至極当然のことであるが、前記付言は、前記最高裁判決以来一貫して公務員の政治活動の自由の保障をなおざりにしてきた国に対しその転換を迫るものであり、高く評価できる。当会は、2008年10月に国際人権(自由権)規約委員会が日本政府に対し、表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである旨の勧告をしたことなどを踏まえ、2009年10月3日に、シンポジウム「自由で民主的な社会を築くために-市民の表現の自由の危機を考える-」を開催した。その中で、表現の自由が民主主義社会にとって不可欠な人権であるとともに萎縮的効果を受けやすい性質があること、それ故、表現活動はできるだけ尊重され、それに対する規制は必要最小限度でなければならないこと(表現の自由の優越的地位)が確認された。そして、このような観点から当会は、2009年12月16日付け「葛飾ビラ配布事件に関する会長声明」において最高裁第二小法廷の考え方を批判し、2010年2月27日付け「国際人権(自由権)規約付属の第一選択議定書(個人通報制度)の早期批准を求める決議」において表現の自由を含めた人権保障を国際水準にすることを訴えた。以上を踏まえ、当会は、今回の東京高裁判決を高く評価し、最高裁判所をはじめとする各裁判所に対し、表現の自由に関する国際水準に合致する判断を示すよう求めるとともに、警察・検察に対して、今後表現の自由が民主主義社会にとって不可欠な人権であることを十分に踏まえた慎重な捜査・判断がなされることを求め、さらに政府・国会に対して、国家公務員法の政治的活動に対する不合理な制限を撤廃することを求めるものである。
2010(平成22)年4月7日仙台弁護士会会長 新里宏二

平成22年03月02日 国際人権(自由権)規約付属の第一選択議定書(個人通報制度)の早期批准を求める決議
ttp://senben.org/archives/1450
平成22年2月27日総会決議
2010年03月02日
国際人権(自由権)規約付属の第一選択議定書(個人通報制度)の早期批准を求める決議
わが国が1979年に市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「国際人権(自由権)規約」という。)を批准し、同規約は国内法的効力を有するに至った。しかしながら、批准から31年となる今日まで、国際人権(自由権)規約が法規範として、司法・行政等の場で機能しているとは言いがたく、刑事手続、被拘禁者の処遇、女性の地位、在日外国人の人権を含む様々な分野において、国際人権(自由権)規約の求める国際人権保障の水準に達しているとは言いえない状況である。国際人権(自由権)規約委員会(以下「自由権規約委員会」という)も、2008年10月の第5回定期審査における日本政府提出の定期報告書に対する総括所見において、政府に対する批判の内容を含むビラを郵便受けに配布する行為等表現の自由に対するあらゆる不合理な規制の撤廃、取調べの全過程の録画と代用監獄の廃止のほか、死刑廃止の検討並びに死刑制度のあり方の改善、戸別訪問禁止等表現の自由に対する不合理な制限の撤廃等の個別的人権課題を指摘した。しかしながら、政府・国会は、例えば、刑事手続においては、取調べの可視化については関心が高まりつつあるも着手が開始されたとはいえない状況であるし、えん罪の温床となっている「代用監獄」の廃止については前進が見られない。最高裁(第二小法廷)においては、ビラ配付を行った市民が住居侵入罪により逮捕、起訴された、いわゆる自衛隊立川官舎ビラ配付事件、葛飾ビラ配付事件において、それぞれ2008年4月11日、2009年11月30日、いずれも、憲法21条1項の違反はなく、住居侵入罪に該当するとして一審無罪判決を覆し有罪の判断をした原判決を支持した。しかし、その判断において、表現の自由の権利の優越的地位が十分に配慮されなかったことについて、当会を含む各地の弁護士会から強い批判の声が上がった。このように、日本の人権保障の状況は、国際人権(自由権)規約の求める国際人権保障の水準に遠く及ばないという深刻な状態にある。この状況を打開し、わが国の基本的人権の保障を、国際人権(自由権)規約の求める国際人権保障の水準に前進させるためには、個人通報制度を定める第一選択議定書を批准することが極めて有効である。即ち、国際人権(自由権)規約に付属する第一選択議定書は、個人通報制度を定める。個人通報制度は、国際人権(自由権)規約で保障された権利を侵害された人々が国内で司法手続等の手を尽くしても権利の回復を実現できない場合、国連の自由権規約委員会に対して直接救済の申し立てができる手続である。この個人通報を個人が行うことによって、自由権規約委員会が人権侵害を審議し、国際的に人権侵害状況が監視される。そして、人権侵害が認定されると、自由権規約委員会は、直接批准国の政府に対して、改善を促すことになる。また、個人通報制度が存在することによって、政府や裁判所が、その権力を行使する際に、常に国際人権保障の水準の観点から検証されるということを意識せざるを得なくなるという効果もある。第一選択議定書の批准は、このように様々な観点から、我が国の基本的人権保障を国際的人権保障の水準に前進させる効果が期待できる。よって、当会は、日本政府に対し、国際人権(自由権)規約に付属する第一選択議定書を早急に批准し、もって国際人権(自由権)規約の個人通報制度を速やかに実現するよう求める。
2010(平成22)年2月27日 仙台弁護士会 会長 我妻 崇

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余命三年時事日記 2263 ら特集10仙台弁護士会⑤14 [余命三年]

余命三年時事日記 2263 ら特集10仙台弁護士会⑤14
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2263-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a414/ より

平成22年06月01日 世田谷ビラ配布国家公務員法違反事件に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/1640
平成22年5月31日会長声明2010年06月01日
世田谷ビラ配布国家公務員法違反事件に関する会長声明

東京高等裁判所第6刑事部(出田孝一裁判長)は、2010年5月13日、厚生労働省課長補佐が、休暇日に、職場及び自宅から離れた場所の警視庁職員住宅の集合郵便受けに政党機関紙を投函したという国家公務員法違反被告事件について、被告人の控訴を棄却し、第一審どおり有罪判決を言い渡した。本判決は、1974年の猿払事件最高裁大法廷判決を踏襲し、国家公務員の政治的活動を包括的かつ一律に禁止する罰則規定の合憲性を認めた。さらに、その罰則規定の適用において、公務員の職種・職務権限、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無等を区別することなく、勤務時間外に職場とは無関係な場所で行われる政治的行為であっても、それが累積していく場合には、行政の中立的運営を害し、党派的な政治的介入や干渉を招くおそれが発生するなど、行政組織に弊害が生じるとして、罰則規定を適用することが憲法21条1項、31条などに反しないとした。国際人権(自由権)規約委員会は、2008年10月、日本政府に対し、政府を批判するビラを郵便受けに配布したことによって公務員が逮捕・起訴されたことに懸念を示し、表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである旨の勧告をした。当会は、このことなどを踏まえ、表現の自由が民主主義社会にとって不可欠な人権であり、それに対する規制は必要最小限度でなければならないことを訴え続けてきた。本年3月29日、本件と同種事案(いわゆる堀越事件)において、東京高等裁判所第5刑事部(中山隆夫裁判長)は、社会保険事務所職員が休日に政党機関紙を郵便受けに投函した行為が国家公務員法違反にあたるとして有罪判決を下した一審判決を破棄し、無罪判決を言い渡した。この判決は、当該職員の行為は、行政の中立的運営やそれに対する国民の信頼等を抽象的にも侵害するものとは常識的に考えられず、罰則規定を適用することは国家公務員の政治的活動の自由に必要やむをえない限度を超えた制約を加えるものであって違憲としたものである。これに対し、本判決は、表現の自由の重要性が深まりつつある時代の流れに逆行するものであり、猿払事件最高裁判決を安易に踏襲し、政治的表現活動について、行政の中立的運営に対する国民的信頼の侵害の有無を個別具体的に検討することなく、形式的かつ硬直な判断に終始するものであって、その問題性は極めて大きい。よって、当会は、改めて、最高裁判所をはじめとする各裁判所に対し、表現の自由に関する国際水準に合致する判断を示すよう求めるとともに、警察・検察に対して、今後表現の自由が民主主義社会にとって不可欠な人権であることを十分に踏まえた慎重な捜査・判断がなされることを求め、さらに政府・国会に対して、国家公務員法の政治的活動に対する不合理な制限を撤廃することを求めるものである。
2010(平成22)年5月31日仙台弁護士会 会長 新  里  宏  二

平成25年02月23日 個人保証の原則的な廃止等を求める決議
2013年(平成25年)2月23日仙台弁護士会 会 長  髙橋春男
http://senben.org/archives/4373http://senben.org/archives/4373

平成25年02月23日 法曹の質を維持するために司法試験合格者数の減員を求める決議
http://senben.org/archives/4384

司法制度改革推進計画(2002年3月19日閣議決定 以下「推進計画」という。)は,司法試験合格者数を年間3000人程度とすることを目指すとした。これにより,近年,司法試験合格者数が急増し,結果として,弁護士人口(登録者数)も,2003年の段階では約1万9500人であったところ,2012年3月現在で約3万2000人と,急増している。しかし,司法試験合格者数が年間2000人程度の現状でも,司法修習修了時点で大量の弁護士未登録者が出るなど弁護士の就職難が顕著であり,また弁護士登録した場合でも,就職難に起因する即時独立弁護士の増加などによりOJT(先輩法曹の指導を受けながらの訓練)不足の事態が生じている。従来であれば弁護士は就職後もOJTを受けることで仕事の質を高めていくところ,司法試験合格者の急増は上記の通りその機会を奪っており,今後弁護士の平均的な質が低下することが懸念される。また,就職難を初めとする様々な要因で法曹資格の魅力が低下し,法曹志願者数(適性試験受験者数)も著しい減少を見せており,さらには有為な人材が法曹界を目指さなくなっているのではないかとの懸念も生じている。これらによって,将来的に法科大学院の教育機能や司法試験の選抜機能が低下し,長期的には法曹の質がより一層低下する可能性が生じている。このまま司法試験合格者数を年間2000人程度で維持すれば,供給過剰の状況が進行し,さらなる就職難とOJT不足,法曹志願者の減少,そしてそれらの要因が相まって,より一層深刻な,法曹の質の低下をもたらすことになる。そうなれば,依頼者の権利擁護とそれを通した社会正義の実現という,弁護士の基本的使命が果たされないという結果にも繋がりかねない。需要に関しても,日弁連や各弁護士会の需要拡大の努力にもかかわらず,企業・地方自治体などの組織内弁護士の活躍分野は,上記推進計画の当時に期待されていたほどには拡大していない。裁判所の係属事件数も増えていない。弁護士人口の大幅増の論拠の一つであった司法過疎問題については,日弁連,各弁護士会の努力により弁護士ゼロ地域が消滅し,問題が解消されつつある。また,日弁連及び各弁護士会のこれまでの施策により,被疑者国選,裁判員裁判,専門訴訟等に対応する弁護士は順調に確保されており, 法曹人口を現在のペースで増加させる必要はない。就職難の解消や法曹志願者数の回復には,ほかにも取り組むべき方策がありうる。しかし,当会は,司法試験合格者数の著しい増加がこれらの問題の主たる原因であると考え,政府に対し,法曹の質を維持するために,司法試験の合格者数をまずは速やかに,現状の年間2000人程度から年間1500人程度とすることを求める。また,推進計画における司法試験合格者数を年間3000人程度とするとの目標を直ちに撤回することを求める。そして,さらなる合格者数の減員については,需要等の調査・検討を行った上で対処することを求める。以上の通り決議する。
2013年(平成25年)2月23日仙台弁護士会 会長  髙 橋 春 男

平成25年02月23日 「秘密保全法」制定に反対する決議
ttp://senben.org/archives/4379


1 2011年8月8日に秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議がとりまとめた報告書(以下「有識者会議報告書」という。)に基づき作成されている「秘密保全法」法案は,2012年3月にはほぼ完成している状況にある。
2 国民主権(憲法前文,1条)の下においては,国政に関する情報は,本来,主権者である国民が共有すべきものであり,国民の知る権利の保障は,国民主権の前提条件である。しかし,有識者会議報告書が想定している「秘密保全法」は,以下に述べるとおり,これまで以上に,国政に関する多くの重要情報を国民から隠すことを容易にする危険があり,国民主権の理念に反し,知る権利や取材・報道の自由,さらにはプライバシー権等の国民の基本的人権を侵害する危険が極めて高いものである。
(1)第一に,「特別秘密」の範囲がはなはだ不明確である。
有識者会議報告書は,保護される「特別秘密」の範囲を,「国の安全」,「外交」,「公共の安全及び秩序の維持」の3分野のうち国の存立にとって特に重要な情報としている。しかし,有識者会議報告書の考え方では,その範囲の特定方法が極めて曖昧である。特に,「公共の安全及び秩序の維持」にかかわるものを「特別秘密」に含めることは,「特別秘密」を指定するのが当該行政機関とされていることからすると,重要な国家情報に関して,恣意的な情報統制・情報隠しが,これまでよりも容易にできるようになるおそれがある。
(2)第二に,処罰範囲が広範で刑罰が重罰化している。
「特別秘密」を取り扱っている者が外部に情報漏えいをすると,有識者会議報告書によれば,懲役5年以下もしくは懲役10年以下の刑を受けることになる。しかし,「特別秘密」の範囲が極めて広範囲に及ぶことや行政機関の恣意的な秘密指定のおそれを前提にすると,実質秘とはいえないものまで「特別秘密」とされる危険がある。そのため,例えば国家の違憲違法な行為に関する情報を内部告発しようとしても,それが「特別秘密」と指定されていれば,公益通報制度で保護されるはずの内部告発者が,漏えい罪により犯罪者として処罰されるおそれすらある。また,「特別秘密」にアクセスしようとする記者や市民などが,それが「特別秘密」と指定されていることを知ることができないにもかかわらず,特定取得行為,独立教唆,共謀又は煽動により処罰されるおそれもある。
(3)第三に,適性評価制度はプライバシーを著しく侵害する危険がある。
適性評価制度は,特別秘密取扱候補者本人のプライバシー情報はもとより,当該人物の行動に影響を与え得る者のプライバシー情報までをも調査の対象としている。そして,適性評価制度では,「国家に不利益となる行動をしないこと」が評価の観点とされるが,前述の通り,「特別秘密」の範囲が恣意的に定められる危険がある中では,適性評価制度も,その特別秘密取扱候補者の考え方が,時の政権にそぐわないかどうかを判断するために利用される危険性が否定できない。
3以上のように,「秘密保全法」には看過できない重大な憲法上の問題が存する。他方,我が国では現在においても,国家公務員法や自衛隊法等で国家秘密の保護が図られており,「秘密保全法」を制定する立法事実はない。
4情報公開請求により得られた資料によれば,既に秘密保全法案はほぼ完成している状況にある。しかしながら,法案がほぼ完成している現時点においてもなお,法案の内容は国民の前に明らかにされていないばかりか,国会議員にさえほとんど知らされていない。国民の権利・自由に重大な影響を及ぼす法案が秘密裏に作成されている事態は極めて問題である。
5よって,当会は,「秘密保全法」の制定に反対し,広く市民に同法の危険性を周知するなどして,同法の国会提出を断念させるよう全力で取り組む。以上のとおり決議する。

2013年(平成25年)2月23日仙台弁護士会 会長 髙橋春男

平成25年01月10日 オスプレイの普天間基地配備に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/4273

2012年10月1日、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場に、垂直離着陸輸送機MV‐22オスプレイが配備され以来訓練飛行が続けられている。オスプレイについては、オートローテーション機能(エンジン停止時に、機体が落下する際に生じる気流を利用して安全に着陸する機能)の欠陥や、回転翼機モードから固定翼機モードへの切り替え時の不安定さ、風の影響を受けやすい操縦性等、多くの構造的欠陥のあることが専門家から指摘されている。また、オスプレイは開発段階から事故を繰り返しており、2006年量産体制に入った後も事故が絶えない(2006年から2011年まで大小58件の事故発生が報道されている)。2012年4月にはモロッコで訓練中に墜落して2名が死亡し、同年6月にもフロリダ州で訓練中に墜落して5名が負傷し、同年7月には米ノースカロライナ州で民間空港に、同年9月には同州で市街地に各々緊急着陸するなど、その安全性には大きな疑念がある。これらの墜落事故等について、米海兵隊は人為的ミスが原因だと強調し、日本政府もこれを追認し、同年9月「安全宣言」を出している。しかし、そもそも、人為的ミスだから安全であるとの論理が成り立たない。現実にこれだけの事故が起きている以上、オスプレイの危険性は明らかである。加えて、オスプレイが配備された普天間基地は、宜野湾市の市街地のただ中に位置し、「世界一危険な飛行場」と言われ(2010年7月29日福岡高裁那覇支部判決参照)、ひとたび墜落事故が起きれば大惨事に至ることは明白である。また、オスプレイは今後、沖縄県内だけでなく、宮城県上空を含む東北六県を通過する2ルートを始め、20県にまたがる6ルート(山陰地方を飛行する第7のルートもあるとされる)など、全国各地で低空飛行訓練を行うことが予定されている。オスプレイの飛行による墜落や騒音、回転翼による強い下降気流等による環境破壊の危険は、沖縄県にとどまらず全国に広がっている。このように、オスプレイを配備したこと及び今後低空飛行訓練が予定されていることは国民の生命・身体の安全に対する重大な脅威である。また、沖縄県をはじめとする多くの地方自治体がオスプレイ配備に反対する意見書や決議案を可決する等、オスプレイ配備に反対する国民の意思が多数示されている。全国各地における不安の高まりを受け、日米両政府は9月、オスプレイの飛行ルールを合意したものの、①学校を含む人口密集地の上空を極力避け飛行する、②運用上必要な場合を除き、ヘリモード飛行は米軍基地内に限る、などの合意は早々に破られている。又、1996年には午後10時から午前7時までの離着陸を必要最小限度にするとの騒音協定を結んでいるが、その実効性はなく、米海兵隊の環境審査報告書によれば、オスプレイが配備されることによって普天間基地における夜間、早朝の離着陸の回数が著しく増大し、基地周辺の住民の生活を圧迫している。オスプレイ配備の強行と飛行訓練の実施は、日本国民の生命、身体、財産に対する重大な侵害のおそれを生じさせるものであり、人格権(13条)、財産権(29条)、平和のうちに生存する権利(前文、9条、13条など)等を保障する日本国憲法の精神に反し、到底看過できない。よって、当会は、アメリカ政府に対し、オスプレイの普天間基地への配備を撤回し、全ルートでの低空飛行訓練を中止するよう求めるとともに、日本政府に対し、オスプレイの普天間基地配備と全ルートにおける低空飛行訓練の計画を撤回するよう米国政府と交渉するよう求める。
2013(平成25)年1月10日仙台弁護士会会長 髙 橋 春 男

平成24年12月13日 生活保護基準引下げに反対する会長声明
2012(平成24)年12月13日仙台弁護士会会 長  髙 橋 春 男
ttp://senben.org/archives/4157

平成24年10月26日 防災集団移転促進事業における被災宅地の買取に関する要望書
http://senben.org/archives/3999
平成24年10月26日
仙台弁護士会会長 髙 橋 春 男

要  望  書
第1 要望の趣旨
防災集団移転促進事業において、被災者から被災宅地を買い取るにあたっては、関係規則及び運用を改正・改善するなどして、抵当権抹消の先履行を条件としない手続によって進めるよう、要望する。第2 要望の理由
東日本大震災の被災地の集団移転の促進のため、金融機関が対象地の宅地に設定された抵当権抹消の特例措置を検討していることが、平成24年10月12日、13日に報道各社より報じられた。防災集団移転促進事業の多くは、自治体が被災者から土地を買い取って、移転先に宅地を整備する方針であるが、抵当権の抹消を買取条件としていることから、抵当権の存在が障壁となっている。この点、住宅金融支援機構が抵当権放棄の方針を既に打ち出していたにもかかわらず、民間の金融機関は抵当権の抹消に消極的であったところ、今般、大きく方向転換をしたものであり、被災者の生活再建及び被災地の復興促進に資するものとして、歓迎すべき動きと評価される。ところで、被災自治体の多くは、公有財産規則や財務規則上、公有財産を取得する場合は、所有者に抵当権を消滅させ、取得に支障のないようにすることと定め、また、一部の被災自治体では、公有財産規則上、市長が特にやむを得ないと認める場合のほか、予めこれを消滅させた後でなければ、これを取得してはならないと定めている。他方、金融機関は、被災者である債務者からの債権回収の必要上、代金支払いに先立っての抵当権抹消に応じられないという状況にある。その結果、金融機関が対象地の宅地に設定された抵当権抹消の方針を打ち出しているにもかかわらず、自治体の要請する抵当権抹消の先履行に応じられないため、現状においてもなお、抵当権の存在が自治体による宅地買取りの重大な障害となっている。よって、当会は、被災自治体に対し、防災集団移転促進事業において被災者からの被災宅地の買取りが円滑に進められるように、被災宅地の買取りにあたり、抵当権抹消の先履行を条件としない手続で進められるよう、規則・運用を改正・改善するよう、要望する。なお、上記問題を解決する上で、弁護士による法的な支援等が必要な場合は、当会としてはこれに全面的に協力する所存である。以 上


平成24年10月09日 死刑執行に対する会長声明
2012(平成24)年10月9日 仙台弁護士会会長 髙 橋 春 男
http://senben.org/archives/3930http://senben.org/archives/3930

平成24年08月22日 発達障害のある被告人による実姉刺殺事件判決に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/3770
発達障害のある被告人による実姉刺殺事件判決に関する会長声明

大阪地方裁判所は、本年7月30日、発達障害がある男性が実姉を刺殺した殺人被告事件において、被告人に対し、検察官の求刑(懲役16年)を上回る懲役20年の判決を言い渡した。同判決は、アスペルガー症候群という精神障害が認められる被告人に対し、動機の形成過程にその障害が影響しており、被告人が未だ十分な反省に至っていないことには同症候群の影響があると認定した上で、「いかに精神障害の影響があるとはいえ、十分な反省のないまま被告人が社会に復帰すれば・・・被告人が本件と同様の犯行に及ぶことが心配される」ことや「社会内で被告人のアスペルガー症候群という精神障害に対応できる受け皿が何ら用意されていないし、その見込みもない」こと等を理由として、「被告人に対しては、許される限り長期間刑務所に収容することで内省を深めさせる必要があり、そうすることが、社会秩序の維持にも資する」として、有期懲役刑の上限にあたる量刑での判決を言い渡した。 脳機能障害が原因とされるアスペルガー症候群の特性は、他人の心情をくんだり、自分の内面を表現したりするのが苦手で、対人関係の構築が難しい場合が多いとされるが、この障害があることが反社会的行動に直接結びつくわけではない。それにも関わらず上記判決は、アスペルガー症候群について十分な医学的検討を加えることなく、障害の存在を社会的に危険視した認定を行っており、発達障害に対する正しい理解を欠いているばかりか、障害に対する社会的偏見を助長させかねない危険性を有している。また、刑事施設における発達障害に対する治療・改善体制や矯正プログラムの現状は十分なものとはいえないことから、長期収容によって被告人の発達障害が改善され、内省を深めることはほとんど期待できない。むしろ、発達障害者に対する受け皿については、発達障害者支援法に基づく支援策等により社会的な整備が進んでいるのであり、上記判決はこのような現状の正確な理解を欠いている。 以上のような現状認識の誤りに止まらず、上記判決は、社会的な受け皿が十分ではないという障害者本人の責に帰すことができない事情や障害による再犯のおそれ等を理由として、被告人の刑を加重するという判断を行っている。このような判決の考え方は、刑法の大原則である責任主義を真っ向から否定し、障害者を社会から隔離する社会防衛的な発想であり、到底許されるものではない。さらに、本件においては、審理や評議にあたり、裁判員が当該障害の特性を正しく理解できるように、十分な対応がとられたのかという疑問を禁じ得ない。裁判員裁判において、本件のような障害を有する者の審理を行うにあたっては鑑定手続等により量刑判断に必要な医学的・社会福祉的情報が提供され、評議では裁判長から刑法上の理念や原則の説明が適切に行われなければならない。上記判決においては「被告人は未だ十分な反省に至っていない」と断じているが、深く反省していても、それをうまく表現できないアスペルガー症候群の特性を慎重に検討した上で、責任主義の原則を踏まえた審理がなされたのか大いに疑問が残る。 当会は、本判決が発達障害者に対する理解を欠いて行った不当な判断に対し問題点を指摘するとともに、このような判決により、発達障害者に対する社会的偏見や、社会防衛のための不当な収容が助長されかねないことに重大な懸念を表明する。2012年(平成24年)8月22日仙台弁護士会 会長 髙 橋 春 男

平成24年08月10日 死刑執行に対する会長声明
2012(平成24)年8月10日 仙台弁護士会会長 髙 橋 春 男
ttp://senben.org/archives/3723

平成24年04月10日 大阪市職員に対するアンケート調査に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/3426
大阪市職員に対するアンケート調査に関する会長声明

大阪市(橋下徹市長)は,本年2月9日,同市職員に対して,氏名,職員番号,所属部署を明記させた上で,組合活動や政治活動に関する回答を求めるアンケート調査を実施し,その際市長メッセージとして,「市長の業務命令として,全職員に,真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます。」と告知している。しかしながら,地方公務員も地位利用による選挙運動(公職選挙法136条の2)や政党その他の政治団体の結成関与・役員就任(地方公務員法36条1項),その属する自治体の区域内における選挙運動(同条2項)などが限定的に禁止されているほかは,一般国民と同様,プライバシー権(憲法13条),思想・良心の自由(憲法19条),政治活動の自由(憲法21条),及び団結権(憲法28条)を有するところ,本アンケート調査は,以下に述べるように,市職員の基本的人権を著しく侵害するものであって,憲法上許容されない。第一に,本アンケート調査は,労働組合への加入の有無や組合活動・政治活動(特定の政治家を応援する活動で,求めに応じて知り合いの住所等を知らせたり,街頭演説を聞いたりする活動も含む。)への参加の有無,組合活動及び選挙運動に関する見解といった市職員の思想信条又はこれと密接に関連する事実についての回答を強制している。これは,思想・良心の自由として絶対的に保障されるべき沈黙の自由(思想の告白を強制されない又は思想を推知されない自由)を侵害するものである。また,厳密には思想信条に関わるとはいえない事実に関する情報であっても,市職員にとっては私的事項に関するものと思料されるところ,そういった情報を強制的に収集することは,市職員のプライバシー権(自己情報コントロール権)の侵害にもなる。そして,このような思想・良心の自由やプライバシー権を侵害する調査は,市職員の政治活動に対する萎縮効果を発生させ,政治活動の自由も侵害する。第二に,本アンケート調査は,違法ないし不適切と思われる組合活動の調査という名目の下,労働組合への加入や組合活動への参加の有無などについて回答を強制し,また任意としているものの組合活動の内容や誘った人の氏名,組合に加入することのメリットや加入しないことによる不利益についての見解,組合に待遇等の改善について相談したことの有無などの回答を求めている。これは,正当な組合活動も対象にしてその参加人員や活動内容を調査しようというものであり,本来使用者からの独立が保障されている労働組合に対する監視行為に等しく,組合活動を妨害する支配介入として,団結権を侵害するものである。また,本アンケート調査は,市職員が労働組合に加入し又はとどまって組合活動を行うような労働基本権の行使に心理的圧迫を与えることで,その行使を抑止させる効果を有するものである。当会は,本アンケート調査による人権侵害の重大性に鑑み,このような憲法に違反するアンケート調査を行ったことに強く抗議し,今後,再び行うことのないように求める。
2012(平成24)年4月6日 仙 台 弁 護 士 会会 長  髙 橋 春 男

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余命三年時事日記 2262 ら特集10仙台弁護士会⑤13 [余命三年]

余命三年時事日記 2262 ら特集10仙台弁護士会⑤13
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2262-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a413/ より

平成23年12月09日 生活保護における義援金等の収入認定に関する再度の申し入れ
ttp://senben.org/archives/3218
平成23年12月2日「生活保護における義援金等の収入認定に関する再度の申し入れ」
2011年12月09日
生活保護における義援金等の収入認定に関する再度の申し入れ
宮城県            御中
仙台市            御中
宮城県各福祉事務所      御中
宮城県各市福祉事務所     御中
仙台市各区保健福祉センター 御中

1 当会は、平成23年9月7日付けで、宮城県及び仙台市並びに宮城県内の各福祉事務所、県内各市福祉事務所及び仙台市各区保健福祉センターに対して、平成23年5月2日付厚生労働省社会・援護局保護課長「東日本大震災による被災者の生活保護の取扱いについて(その3)」(以下「厚労省5月2日通知」という。)の趣旨を十分に尊重し、これに反する運用が認められる場合には迅速に是正すべきである旨の「生活保護における義援金等の収入認定に関する申し入れ」を行った。
2 ところで、今般、日本弁護士連合会が平成23年8月19日付けで、東日本大震災の被災5県及び各県内に設置された全福祉事務所131カ所に対し、義援金、仮払補償金(以下「義援金等」という。)と生活保護制度の運用に関する照会を行った結果、96カ所から回答がなされ、義援金等の受領を理由として生活保護を停廃止された世帯が458世帯に及ぶことが明らかとなった。そのうち、宮城県では、県内27カ所の福祉事務所のうち19カ所から回答がなされ、回答した福祉事務所における停廃止世帯は80世帯に上る。その内訳は、多賀城市福祉事務所18件を筆頭に、岩沼市福祉事務所11件、仙台市宮城野福祉事務所10件、気仙沼保健福祉事務所9件、仙台市太白福祉事務所8件、仙台市若林福祉事務所8件、大崎市6件、東部保健福祉事務所5件、栗原市福祉事務所3件、仙台保健福祉事務所2件である。
3 厚労省5月2日通知においては、震災後、緊急的に配分される義援金等について、収入認定除外を求めるための自立更生計画に包括的に一定額を計上して、その使途確認をしないという運用が認められているところ、照会の結果、県各福祉事務所、仙台市各区福祉事務所、大崎市、白石市、多賀城市、岩沼市、栗原市等、宮城県内の多くの福祉事務所において、そのような取り扱いを実施していないことが明らかになった。また、同通知では、将来の自立更生に充てられる生業費、教育費、介護費等、将来の自立に役立つ費用であれば、当座に費消するものではなくても自立更生計画へ計上することが認めてられているにもかかわらず、回答した福祉事務所において、これを説明していない例もみられるうえに、説明したと回答した福祉事務所のうち、実際にこれらの費目を計上しているのは一部の福祉事務所にとどまっており、その説明の実効性に疑問の余地なしとしない。
4 そもそも、義援金等は、被災世帯の生活基盤回復の補助、あるいは被災したことに対する慰藉等を目的として支給されるものであるから、本来、収入認定にはなじまないものである。また、今般の震災に際して私財を寄付した市民・団体等としても、通常の生活費(最低生活費)とは区別された、被災者の生活基盤の回復等のために充てられることを願って寄付をしたと考えられるところ、義援金等により当面の最低生活費が充足されたとして生活保護が停廃止に至るとすれば、寄付の趣旨に沿わないおそれもある。したがって、本来は義援金等を一律に収入認定しないことが望ましいが、少なくとも、上記の義援金等支給の目的及び市民・団体等による寄付の趣旨に鑑みて、保護受給世帯において広く義援金等を生活基盤の回復等に充てられるよう、以下の運用を徹底することを求める。
①厚労省5月2日付通知が認めている、包括的に一定額を自立更生計画に計上してその使途確認をしないという運用及び将来の自立に向けた費用の自立更生計画への計上については、県下の全福祉事務所においてこれを認めること。
①特に、将来の自立に向けた費用については、保護受給世帯に対して実効性ある説明を行うことにより、自立更生計画に計上する機会を十分に保障するとともに、各世帯の状況に配慮して、広くかつ柔軟な範囲での計上を認めること。 以 上
2011年(平成23年)12月2日仙 台 弁 護 士 会 会 長  森 山  博


平成23年11月11日 貸与制施行に反対し、今国会での裁判所法改正による給費制存続を求める会長声明
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貸与制施行に反対し、今国会での裁判所法改正による給費制存続を求める会長声明

今月1日、司法修習生に対する給費制が廃止され、貸与制に移行する裁判所法が施行された。一貫して給費制の存続を訴えてきた当会としては、同日までに法改正がなされなかったことについて強い遺憾の意を表明する。4日には貸与制を基本として、困窮者に返済猶予措置を講じることを盛り込んだ裁判所法改正案が国会に提出された。しかし、当会は給費制存続の道を決して諦めてはいない。国会での与野党の協議により給費制存続の修正がなされる可能性は十分にある。与野党の協議により、法曹養成制度全体の早期見直しと給費制継続の2点が明記され、給費制が継続される修正が図られるよう強く求める。10月27日に開催された日弁連等主催の「司法修習生に対する給費制の存続を求める1000人決起集会・パレード」には1500名の参加者があり、当会からも多数が参加した。復興財源を理由に給費制廃止を主張する声もある。しかし、弁護士を含む司法制度は憲法に基礎を置く人権保障のための社会インフラであり、そうであるからこそ戦後まだ貧しい復興期の1947(昭和22)年から法曹の養成を国費で行ってきたのである。その理念は震災復興が始まろうとしている現在においても変わることはない。むしろ、東日本大震災における被災者への法的支援やADRでの活動など、弁護士等法曹が市民のために果たすべき社会的役割がますます重要になっている今こそ、給費制の理念が再認識されるべきである。したがって、復興財源を理由に給費制を廃止することは給費制の理念を看過するものであって到底容認できない。当会は給費制の継続を求め続けている議員が大勢いることに確信を持って、内閣提出の法案について、法曹養成制度全体の早期見直しと給費制継続の2点が盛り込まれる協議がなされるように、宮城県選出の国会議員にさらに強力な働きかけを行うなど、日弁連や全国の単位会とともに、今後の活動をより一層強化し、給費制存続を実現する決意である。
2011(平成23)年11月11日仙 台 弁 護 士 会 会 長  森 山  博

平成23年09月09日 生活保護世帯が受給する義援金等の収入認定に関する申し入れ
2011(平成23)年9月7日仙台弁護士会 会長 森山 博
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平成23年07月27日 各種人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及びパリ原則に合致した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議
ttp://senben.org/archives/2872

当会は,日本における人権保障を推進し,国際人権基準の実施を確保するため,次のことを政府及び国会に対して強く求める。
1 国際人権(自由権)規約,女性差別撤廃条約,拷問等禁止条約,人種差別撤廃条約などにおける個人通報制度を速やかに導入すること
2 国連の「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」に合致した,真に政府から独立した国内人権機関を設置すること
以上の通り,決議する。
2011(平成23)年7月22日
仙台弁護士会 会長  森 山  博
提 案 理 由
1 個人通報制度について
個人通報制度とは,人権条約の人権保障条項に規定された人権が侵害され,国内で手段を尽くしても救済されない場合,被害者個人などがその人権条約上の委員会に通報しその委員会の意見を得て,締約国政府や国会がこれを受けて国内での立法,行政措置などを実施することにより,個人の権利の救済を図ろうとする制度である。 日本の裁判所は,これまで人権保障条項の適用について積極的とはいえず,人権水準の低下をもたらしていた。また,民事訴訟法の定める上告の理由には国際条約違反が含まれず,国際人権基準の国内実施が極めて不十分となっている現状がある。個人通報制度が導入された場合,国内の裁判で救済されなかったケースについて個別の救済が可能となる。さらに,裁判所は国内での裁判の後に条約機関での意見があり得ることを前提として判決を下すこととなるため,条約機関の見解を念頭において裁判せざるを得ないこととなり,結果的に日本の人権水準を国際標準に近づけることが可能である。この個人通報制度を実現するためには,各条約の人権保障条項について個人通報制度を定めている選択議定書等を批准するなどの手続が必要である。しかし,日本は,国際人権(自由権)規約,女性差別撤廃条約,拷問等禁止条約,人種差別撤廃条約等の人権条約を批准しているものの,これらが有する個人通報制度をこれまで導入してこなかった。世界では既に多くの国が個人通報制度を採用しており,OECD加盟30カ国やG8の8カ国など先進国とされる諸国の中で何らの個人通報制度も有していないのはわが国のみである。こうした状況をふまえ,当会は,2010年2月27日開催の定期総会において,個人通報制度を定める国際人権(自由権)規約に付属する第一選択議定書を早急に批准し,もって個人通報制度を速やかに実現するよう求める決議をあげた。また,民主党は,2009年の衆議院総選挙において個人通報制度の導入をマニフェストに掲げ,政権与党となり,その後,法務大臣は幾度となくその実現に意欲を示す発言を繰り返しているが,現時点においても実現に至っていない。そこで,当会は,政府及び国会に対し,改めて個人通報制度を速やかに導入するよう強く求めるとともにその実現に向けた運動を展開することを表明するものである。
2 国内人権機関の設置について
国連決議及び人権諸条約機関は,国際人権条約及び憲法などで保障される人権が侵害され,その回復が求められる場合には,司法手続よりも簡便で迅速な救済を図ることができる国内人権機関を設置するよう求めており,多数の国が既にこれを設けている。 国内人権機関を設置する場合,1993年12月の国連総会決議「国内人権機関の地位に関する原則」(いわゆる「パリ原則」)に合致したものである必要がある。具体的には,法律に基づいて設置されること,権限行使の独立性が保障されていること,委員及び職員の人事並びに財政等においても独立性を保障されていること,調査権限及び政策提言機能を持つことが必要とされている。日本に対しては,国連人権理事会,人権高等弁務官等の国連人権諸機関や人権諸条約機関の各政府報告書審査の際に,早期にパリ原則に合致した国内人権機関を設置すべきとの勧告がなされており,また,国内の人権NGOからも国内人権機関設置の要望が高まっている。現在,わが国には法務省人権擁護局の人権擁護委員制度があるが,独立性等の点からも極めて不十分な制度である。このような状況の中で,日本弁護士連合会は,2008年11月18日,パリ原則に則った「日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱」を発表した。さらに,2010年6月22日には,法務省政務三役が「新たな人権救済機関の設置に関する中間報告」において,パリ原則に適合する国内人権機関の設置に向けた検討を発表するなど,国内人権機関設置に向けた機運は高まってきている。
3 結 語
当会は,わが国における人権保障を推進し,また国際人権基準を日本において完全実施するための人権保障システムを確立するため,国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度を一日も早く採用し,パリ原則に合致した真に政府から独立した国内人権機関をすみやかに設置することを政府及び国会に対して強く求めるべく,本決議に及ぶものである。

平成23年01月28日 宮城県の性犯罪者等監視条例試案に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/2117

村井嘉浩宮城県知事は、2011(平成23)年1月22日、①宮城県在住の性犯罪前歴者、ドメスティックバイオレンス(DV)加害者に位置確認のための電子装置(GPS)の常時携帯を義務づけ、違反者には罰金等を科す、②再犯防止に必要と認められる場合、性犯罪の逮捕者にDNAの提出を義務づける、③弁護士らによる「地域行動支援委員会」を設置し、性犯罪前歴者に定期的に行動記録を報告させる、という内容の条例試案(以下「条例試案」という。)の検討の経緯を発表した。性犯罪被害、DV被害の深刻さに鑑みれば、これらを抑止する必要があることは当然である。しかし、性犯罪前歴者、DV加害者であっても基本的人権の享有主体であることに変わりはなく、人権の制限は必要最小限度のものでなければならない。条例試案は、すでに刑の執行を受け終わり、又は、裁判所からDV保護命令を受けた者に対して、さらに行動の自由及びプライバシー権を常時制約する規制を加えるものであり、これは実質的に見て新たな刑罰を科すに等しいとも言い得るものである。条例試案は、性犯罪等の再犯率が高いとされていることやGPS監視による再犯抑止効果があることを制度導入の根拠としているようである。しかし、1犯目が性犯罪であった者のうち再犯の中に性犯罪を含んでいる者は5%程度との指摘もあり(平成19年版犯罪白書)、窃盗、薬物事犯等に比して著しく高いとは言い難い上、宮城県内における性犯罪の再犯率についても県知事は具体的に何ら示していない。また、DV保護命令違反検挙数も宮城県内ではこの3年間は0~1名にとどまり、保護命令そのものによる抑止効果が相当程度認められる。さらに、他国での導入例があるとしても、GPS監視の抑止効果についても実証的な結果が出ているとは言えない。また、国は、平成18年以降、性犯罪の再犯防止を目指して「矯正施設における性犯罪者処遇プログラム」等の運用を始めているが、その実績の検証が十分に行われていない段階で、監視等による対策を採用することは拙速である。加えて、条例試案は、再犯防止を目的としてDNAの提出を義務づける内容を含んでいるが、裁判所の令状によらない証拠収集につながるおそれが高く、この点からも憲法に抵触する重大な問題を含むと考えられる。このように条例試案は人権保障上看過できない重大な問題を有するものであるが、そもそもこのような重大な人権規制を法律ではなく条例で行えるのかという問題も指摘せざるを得ない。性犯罪やDV被害は深刻な問題であり、根絶していかなければならない。しかし、それは個人の尊厳を基軸とする日本国憲法の下においては、監視ではなく、性犯罪前歴者が更生していけるプログラムの作成・実践等によって実現されるべきであり、宮城県もその方向で尽力すべきである。条例試案は、性犯罪等の抑止について、上記のような人権上の問題点を十分に検討しないまま発表されたと受け止めざるを得ない。よって、当会は条例試案に反対する。以 上
2011(平成23)年1月27日仙台弁護士会 会長  新  里  宏  二

平成22年12月16日 少年の裁判員裁判事件における死刑判決を受けての会長声明
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少年の裁判員裁判事件における死刑判決を受けての会長声明 2010(平成22)年11月25日、仙台地方裁判所において、殺人罪等に問われた19歳(犯行時18歳)の少年に対して、少年の裁判員裁判事件で初めての死刑判決が言い渡された。子どもの権利条約は18歳未満の子どもに対する死刑を禁止しており、少年法も第51条で「罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。」として、罪を犯した当時18歳未満の少年に対しては死刑を科さないとしている。これは、18歳未満で重大な事件を起こした少年の場合、成育過程においていくつものハンディを抱えていることが多く、精神的に未成熟であることから、あらためて成長と更生の機会を与え、自らの行為の重大性に向き合わせようとする趣旨である。  これらの法の趣旨は、犯行時18歳・19歳のいわゆる年長少年の事件についても尊重されるべきで、その更生可能性の評価・判断は成人の場合以上に慎重を期して行われる必要がある。当会は、裁判員制度実施に先立ち、2008(平成20)年10月7日付けで「裁判員制度の課題に関する意見書」を発表し、その中で、少年逆送事件と裁判員制度のあり方について、「少年の原則逆送対象事件(少年法20条2項本文)は裁判員裁判対象事件でもあるが、少年事件は、少年の情操保護・更生への配慮が必要とされており(少年法1条、50条、刑訴規則277条)、保護主義の観点から逆送事件について裁判員裁判の問題点を検討する必要がある。」との意見を表明した。
少年逆送事件、とりわけ死刑選択が争点となる少年逆送事件の裁判員裁判については、被告人となっている少年の更生可能性の評価・判断を成人の場合以上に慎重を期して行われる必要があることとの関係で、その審理のあり方や裁判員への説示等についてなお検討すべき課題があり、この点は裁判員裁判における最重要課題の一つとして早急に検討されなければならない。当会は、国に対して、少年逆送事件、特に死刑選択が争点となる事件の審理のあり方について、それらの事件を裁判員裁判の対象とすることの是非を含めて検討するように強く求める。
2010(平成22)年12月15日仙台弁護 士 会会 長 新 里 宏 二

平成22年08月26日 映画「ザ・コーヴ」上映妨害に抗議する会長声明
ttp://senben.org/archives/1830
平成22年8月25日会長声明2010年08月26日

映画「ザ・コーヴ」上映妨害に抗議する会長声明
和歌山県におけるイルカ漁を批判的に描いたドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」について、上映を予定していた映画館が相次いで上映を中止するという事態が発生した。上映中止の理由については、映画を「反日的」と糾弾する団体が上映中止を求める抗議活動を予告したため、観客や近隣に迷惑がかかることを懸念した映画館が上映を自粛したものと報じられている。実際、上映した映画館に対して上映中止を求める大音量の街宣活動が繰り返され、映画館周辺における街宣行為を禁じる仮処分命令が発せられるという事態も起こった。その後、不当な抗議行動に対する世論の批判が高まったこともあり、抗議活動に屈することなく上映を実施する映画館が多数存在するに至ってはいるが、実力をもって表現行為を封じようとする不当な抗議行動が行われたことは、到底看過することはできない。 映画「ザ・コーヴ」の製作の手法や内容を巡って様々な批判や意見が出されていることは事実である。しかし、自分と異なる考えや意見にも耳を傾け、その表現の機会を保障するのが民主主義の基本的考え方である。今回のように、一部の団体の不当な圧力によって映画の上映が中止されることになれば、多様な意見や価値観に触れる機会を妨げられ、個人の自己実現が困難になるとともに、政治的意思形成の根本的基盤が失われ、ひいては民主主義が危殆に瀕することにもなる。よって、当会は、実力をもって表現行為を封じようとする不当な圧力に対して抗議し、また、映画館や公共施設に対し、表現の自由の重要な担い手として、今後とも、不当な圧力に屈することなく、上映の機会を提供するよう努力されることを期待する。
2010(平成22)年8月25日仙台弁護士会会長新里宏二

平成22年08月26日 死刑執行に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/1782

本年7月28日、東京拘置所において、2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。我が国における死刑の執行は、昨年7月以来1年ぶりのことであり、民主党政権に政権交代し、千葉景子法務大臣が就任してから初めての死刑執行である。死刑制度に関しては、1989年12月、国連総会で自由権規約第二選択議定書(死刑廃止条約)が採択され、また、2007年12月、国連総会において、日本を含む死刑存置国に対し、死刑制度の廃止を視野に入れた死刑執行の停止などを求める決議が採択されている。我が国の死刑制度に対しては、2008年10月、国際人権(自由権)規約委員会の日本の人権状況に関する第5回審査総括所見において、政府は、世論調査の結果に拘わらず死刑廃止を前向きに検討し、必要に応じて国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきであること、必要的上訴制度を導入し、再審・恩赦の請求に執行停止効を持たせること、再審弁護人との秘密接見を保障すること、死刑の執行を事前に告知することなどが勧告されている。我が国の刑事裁判においては、4つの死刑確定事件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)の再審無罪判決が確定し、死刑確定事件における誤判の存在が明らかとなっているが、近年においても、死刑が執行された飯塚事件で有力証拠とされたDNA鑑定に誤りがあったとして再審請求がなされており、誤判が生じるに至る制度上、運用上の問題点は抜本的な改善が図られていない。日本弁護士連合会は、2002年11月、「死刑制度に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また、死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を求め、2004年第47回人権擁護大会においては、「死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議」を採択し、死刑の執行停止を求めた。当会もまた、2009年には、二度の会長声明において、死刑執行に遺憾の意を表し、死刑の執行停止を強く要請してきた。このような状況において、今般、国際的要請を無視し、死刑の制度上、運用上の問題に関する国民的議論のないまま、再び死刑が執行されたことは、甚だ遺憾である。千葉法務大臣は、死刑執行後の記者会見において、今後、刑場を公開し、死刑制度の存廃を含めた死刑制度の在り方についての勉強会を立ち上げる意向を示した。これらの提案は、今回の死刑執行に先立って行われるべきだったものではあるが、上記提案が速やかに実行に移され、それを契機として、死刑制度の問題点について幅広い議論がなされることを期待する。当会は、政府に対し、死刑制度が最も基本的な人権に関わる重大な問題であることに鑑み、死刑の執行を停止したうえで、死刑制度の存廃も含む抜本的な検討を行うことを重ねて強く要請するものである。
2010(平成22)年8月25日仙台弁護会会長  新里 宏二

平成22年06月17日 横浜弁護士会所属弁護士の殺害事件に関する会長声明
ttp://senben.org/archives/1675

2010(平成22)年6月2日,横浜弁護士会所属の弁護士が,その勤務する法律事務所において執務中に,同事務所を訪れた男に襲われ,刃物で胸部等を刺され,搬送先の病院で死亡するという事件が発生した。この事件は,犯人の素性や事件の原因・背景等はいまだ明確に特定されてはいないものの,弁護士業務に関連し,弁護士業務を妨害しようとしたものである可能性が極めて高い。
 そもそもこのような犯罪は断じて許されるものではなく,社会正義の実現と基本的人権の擁護を使命とする我々弁護士の業務に対する重大な挑戦であり,自らの要求を暴力によって実現しようとする手法は絶対に許すことができないものである。当会は,このような犯行を行った者を強く非難するとともに,捜査機関に対して厳正かつ迅速な捜査と真相の究明を強く求める。また,このような暴力的手段による弁護士業務の妨害に対し,一致団結して毅然と対処し,弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現のために全力を尽くす決意である。
2010(平成22)年6月16日仙台弁護士会会長新里宏二

2010年06月17日高校無償化制度の平等な実施を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/1681
高校無償化制度の平等な実施を求める会長声明

政府は,本年4月1日,「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下「高校無償化法」という。)を施行し,公立高等学校の授業料を原則無償とするとともに(法3条1項),私立高等学校等についても,在学生のための就学支援金を支給することとした。ところが,文部科学省は,本年4月30日付け告示「高等学校等就学支援金制度における外国人学校の決定について」において,朝鮮高級学校について,他の外国人学校と取扱いを異にし,就学支援金支給制度の対象である「高等学校の課程に類する課程を置くもの」(法2条1項5号)に指定しなかった。その上で,指定するか否かについて,本年5月26日に設置した省内の専門家会議で検討することとした。しかし,高校無償化法は,全ての意志ある高校生達が安心して教育を受けられるよう,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって教育の機会均等に寄与することを趣旨とするもので,この趣旨は国籍や使用言語を問わず当てはまるものである。そして,朝鮮高級学校は,各都道府県知事から各種学校としての認可を受け,その際必要に応じて教育課程についての情報も提供されており,確立したカリキュラムにより安定した教育を長年にわたって実施している。また,日本全国のほぼ全ての大学が,朝鮮高級学校の卒業生に対し,「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」として大学受験資格を認定している。これらの社会的事実に照らせば,朝鮮高級学校も,日本の私立学校や他の外国人学校と同じく,「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として,就学支援金支給制度の対象に指定されるのが相当である。にもかかわらず,朝鮮高級学校のみを就学支援金の支給対象から除外することは,高校無償化法の立法目的に適合しない上,憲法26条1項,子どもの権利条約,人種差別撤廃条約及び国際人権規約に照らし,朝鮮高級学校に在学する子どもたちに保障される学習権について,他と合理的な理由なく差別するものにほかならず,憲法14条に反するものである。よって,当会は,内閣総理大臣及び文部科学大臣に対し,朝鮮高級学校について,就学支援金の支給対象から除外することなく,速やかに法2条1項5号の各種学校に指定するよう求めるものである。
2010(平成22)年6月16日仙台弁護士会会長 新里 宏二

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余命三年時事日記 2261 ら特集10仙台弁護士会⑤12 [余命三年]

余命三年時事日記 2261 ら特集10仙台弁護士会⑤12
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2261-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a412/ より

平成25年05月22日 生存権保障を後退させる生活保護法改正案の廃案を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/4586

1 政府は、平成25年5月17日に生活保護法の一部を改正する法律案(以下「改正案」という。)を閣議決定した。しかし、この改正案には、生活保護申請をしにくくするとともに、受け付けられるべき生活保護申請を福祉事務所が受け付けないという違法行為(いわゆる「水際作戦」)が横行して生活保護制度の利用が抑制され、生存権(憲法25条)保障が揺らぐ事態を招きかねないという重大な問題点がある。
2 改正案における生活保護法24条1項は、保護開始の申請について「要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む)」や「その他要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な事項として厚生労働省令で定める事項」を記載した申請書を提出して行わなければならないとし、また、同条2項は、前記申請書に、保護の要否等を決定するために必要なものとして「厚生労働省令で定める書類」を添付しなければならないとしている。このような改正案の内容について、厚生労働省は、これまでの生活保護行政の運用を変更するものではないと説明している。しかし、現行生活保護法24条は、保護の申請を、書面によって行わなければならない要式行為とはしていない。かえって、生活保護申請の事実の有無が争われた事案において、口頭での申請も有効な申請として認められるということが裁判例上も確立している。このような改正案が可決・成立すれば、生活困窮者が生活保護申請の意思を、口頭又は任意の書面で福祉事務所に伝えたとしても、法律上の申請要件を充たさないものとして受け付けられなくなるおそれがあるのであって、生活困窮者による申請権の行使を著しく制限するものに他ならない。
3 また、保護の申請書に何らかの書類を添付することも、現行の生活保護法は求めていない。そもそも、ホームレス状態であったりあるいはDV被害などから逃げ出したりして困窮している者ほど、改正案による生活保護法24条2項が想定するような預金通帳や過去の給与明細などの収入や資産等に関する資料を用意することが困難である。それにもかかわらず、改正案による生活保護法24条2項が、申請書への書類の添付がなければ有効な申請として扱わないことを認めるのであれば、そういった困窮者を生活保護制度から閉め出すことになりかねない。
4 さらに、このような生活保護申請の要式行為化や申請書への資料添付の義務化が実現すれば、それを悪用した形での「水際作戦」が横行するおそれがある。このような危惧は、福祉事務所の窓口において、「水際作戦」によって生活保護の申請権が侵害されたという事例の報告が、現在でも少なくないことからすれば決して杞憂ではない。また、例えば、保護開始決定時に扶養義務者への通知を行うことを義務化する改正案24条8項には、親族への通知がなされることを恐れる生活困窮者への萎縮的効果が懸念されるなど、改正案にはその他にも問題となる部分がある。
5 これまでも、生活保護制度の利用から排除されたことにより、生活困窮者が餓死するなどの事態が発生していたが、以上のような改正案の規定は、生活困窮者が生活保護を申請する権利の行使を著しく制限するものであって、そのような事態を数多く発生させるおそれがある。よって、当会は、生存権(憲法25条)保障という生活保護制度の役割を大きく後退させる改正案の廃案を強く求めるものである。2013年(平成25年)5月22日仙台弁護士会会長 内  田  正  之

平成25年10月18日 憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に強く反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/4760

政府は,本年8月13日の持ち回り閣議で,集団的自衛権に関する政府の憲法解釈について,「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」における議論を踏まえて対応を改めて検討していくとの答弁書を決定し,憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認を示唆した。集団的自衛権とは,政府見解によれば,自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず,実力をもって阻止する権利とされる。しかし,日本国憲法は,前文で平和的生存権を確認し,第9条で戦争放棄,戦力不保持及び交戦権否認を定めるなど,徹底した恒久平和主義を採用した。このような日本国憲法の下,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず,外国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する権利である集団的自衛権を行使することは許されない。政府も,個別的自衛権については,自国に対して武力攻撃が加えられた場合に,これを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することは憲法に違反しないと説明してきたが,集団的自衛権については,その行使は憲法上許されないとの立場を堅持してきた。すなわち,1981年(昭和56年)5月29日の政府答弁書で表明された「憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は,我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており,集団的自衛権を行使することは,その範囲を超えるものであつて,憲法上許されない」との見解は,現在に至るまで30年以上にわたって歴代内閣によって維持されてきたのである。日本国憲法の下で集団的自衛権の行使は許されないという政府解釈は,長年にわたる議論によって確立され,堅持されてきたものである。恒久平和主義は日本国憲法の基本原理の一つであり,これに係わる憲法解釈を根本的に変更し,集団的自衛権の行使を容認しようとすることは,国民の権利・自由を保障するために政府や立法府を憲法の制約の下に置くという立憲主義の観点からも,到底許されないものである。当会は,日本国憲法によって否定されている集団的自衛権の行使を,政府による憲法解釈の変更によって容認することに対し,強く反対する。
2013年(平成25年)10月18日仙台弁護士会会長内田正之

平成25年09月19日 死刑執行に強く抗議し、死刑執行を停止するとともに、死刑に関する情報を広く公開し、死刑制度の存廃に関する国民的議論を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/4729

本年9月12日,東京拘置所において1名の死刑確定者に対する死刑の執行が行われた。谷垣禎一法務大臣による3度目の死刑執行である。当会は,これまでも,死刑が罪を犯した人の更生と社会復帰の観点から見たとき,その可能性を完全に奪うという問題点が内在されていること,誤判・えん罪による生命侵害という取り返しのつかない危険を内包するものであることから,政府に対し,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行い,その間死刑の執行を停止するよう求めてきた。さらに,当会は,本年5月22日付けの会長声明において,政府が死刑制度を廃止することが適当ではない理由として挙げている点に関し,第1に,死刑制度に関する情報が国民に周知されていない状況における世論調査は死刑制度を正当化するものとしては説得力に乏しいと言わざるを得ないこと,第2に,我々国民が死刑制度の存廃について十分に議論を尽くし意見を形成するためには死刑制度に関する情報が広く公開されることが必要であること,第3に,死刑の犯罪抑止効果は科学的・統計的に証明されているとは言い難いことを指摘した。そのうえで,死刑の執行を停止し,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の存廃に関する国民的議論を開始することを要請していた。今回の死刑執行は,このような国民への情報公開,国民的議論を尽くさない中で行われたものであり,当会は,死刑を執行した政府に対し,改めて強く抗議する。また,死刑制度が最も基本的な人権に関わる重大な問題であることに鑑み,死刑廃止が国際的潮流となっている事実を真摯に受け止め,死刑の執行を停止した上で,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の存廃に関する国民的議論を開始することを改めて強く要請する。
2013年(平成25年)9月19日仙台弁護士会会長内田正之

平成25年07月17日 法曹養成制度関係閣僚会議が貸与制を前提とした「取りまとめ」を是認したことに抗議する会長声明
ttp://senben.org/archives/4657

平成25年7月16日、政府は法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)の意見等を踏まえ、「法曹養成制度改革の推進について」と題する法曹養成制度関係閣僚会議決定(以下「関係閣僚会議決定」という。)を公表した。司法修習生に対する経済的支援の在り方について、関係閣僚会議決定では、「はじめに」において貸与制を前提としている検討会議の「取りまとめ」の内容を是認している。しかし、本年4月、5月に実施されたパブリックコメント(以下、「パブコメ」という。)には1か月の間に3119通もの意見が寄せられ、うち法曹養成課程における経済的支援に関する意見数は2421通にのぼり、その大多数が「司法修習生に対する給費制を復活させるべきである」との内容であった。また、検討会議では複数の委員から給費制を復活すべきという意見が出された。パブコメが実施されたということは、当然その後の議論において、パブコメに寄せられた声を踏まえることが予定されているところ、検討会議は、給費制復活が妥当であるとの大多数の声に反する座長試案をもとに議論を進め、ほとんど訂正を加えることなく、取りまとめに至った。これはパブコメという手続の趣旨を没却し、実質的には国民の声を無視するものである。また、取りまとめ及び関係閣僚会議決定では経済的支援策の一つとして兼業許可基準の緩和を挙げているが、これはフルタイムで密度の濃い修習に励む司法修習生にとって何ら支援策とならない。そればかりか、修習の実を上げるために必要不可欠な修習専念義務を骨抜きにするおそれがある。これまでも当会は、経済的困窮を理由に法曹志願者がその道を閉ざされることがないよう、また、市民の権利擁護を担う人材を国が責任を持って育てるため、給費制の復活を強く求めてきた。また、学生の法学部離れ、極端な入学者の減少による法科大学院の募集停止の続出、司法修習辞退者の増加、著しい就職難など法曹養成をめぐる負の連鎖がますます深刻化する中で、給費制の復活は、これ以上の法曹志願者の減少を食い止めるために直ちに執るべき対策である。当会は、貸与制を前提とした「取りまとめ」及び「取りまとめ」の内容を是認した関係閣僚会議決定に抗議するとともに、政府が新たな検討体制においてパブコメの結果を反映させて司法修習生に対する給費制を復活し、現在の法曹養成制度の問題の抜本的解決に向けた具体的な施策を速やかに検討し実現するよう強く求める。
2013年(平成25年)7月17日仙台弁護士会 会長 内 田 正 之


平成25年06月14日 憲法第96条の改正発議要件の緩和に反対する会長声明2013年(平成25年)6月14日仙台弁護士会会長 内田 正之
ttp://senben.org/archives/4616

平成25年05月22日 死刑執行に強く抗議し,死刑執行を停止するとともに,死刑に関する情報を広く公開し,死刑制度の存廃に関する国民的議論を求める会長声明2013年(平成25年)5月22日仙台弁護士会会長 内 田 正 之
ttp://senben.org/archives/4588

平成23年12月27日 「秘密保全の法制の在り方について(報告書)」に対する意見書
ttp://senben.org/archives/3230
「秘密保全の法制の在り方について(報告書)」に対する意見書
仙台弁護士会会長  森 山  博

【意見の趣旨】
「秘密保全の法制の在り方について(報告書)」が想定する秘密保全法制は、情報公開制度・国民主権の理念に反し、国民の知る権利等を侵すものであるから、その法案化作業に強く反対する。
【意見の理由】
第1 はじめに
2011年(平成23年)10月7日、政府における情報保全に関する検討委員会(以下「検討委員会」という。)は、次期通常国会への提出に向けて、秘密保全に関する法制(以下「本法制」という。)の整備のための法案化作業を進めることを決定した。この法案化作業に当たっては、国民の知る権利や取材の自由等を十分に尊重し、①高度の秘匿の必要性が認められる情報のみを対象とし、その範囲を法律上可能な限り明確化すること、②高度の秘匿の必要性が認められなくなった情報が秘密として指定されたままになることがないよう、指定の解除等の措置について制度化すること、③適性評価に関し、その対象者のプライバシーに十分配慮すること、④罰則に関し、漏えい罪における漏えいの主体を業務により秘密を取り扱う者に限定するなど、処罰の範囲を必要最小限に抑えることの各事項に留意することとされている。しかし、法案化作業に当たって十分に尊重すべきとされる、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議が取りまとめた報告書「秘密保全のための法制の在り方について」(以下「報告書」という。)をみる限り、本法制はその根本において情報公開制度・国民主権の理念に反し、国民の知る権利等を侵害するおそれが極めて大きいと言わざるを得ず、上記諸点が考慮されるとしても法案化作業は進められるべきでない。以下では、報告書の記載に沿って、報告書に現れた本法制の問題点を指摘する。
第2 秘密保全法制の必要性・目的(報告書2頁以下)について
 1 情報公開制度・国民主権の理念に反する
報告書は、「我が国では、外国情報機関等の情報収集活動により、情報が漏えいし、又はそのおそれが生じた事案が従来から発生している。加えて、IT技術やネットワーク社会の進展に伴い、政府の保有する情報がネットワーク上に流出し、極めて短期間に世界規模で広がる事案が発生している」との認識を示した上で、「我が国の利益を守り、国民の安全を確保するためには、政府が保有する重要な情報の漏えいを防止する制度を整備する必要がある」と述べる。しかし、そのような事案が発生しているとして、それが直ちに国民の利益に反するものだったかどうかについては改めて検討を要する。例えば、古くは沖縄返還密約に係る外務省秘密漏洩事件、記憶に新しいところでは尖閣諸島沖での漁船衝突に係る映像流出事件など、これらによって国民の利益がどのように害されたと言えるのか不明であり、立法事実としては認めがたい。そもそも、国民主権(日本国憲法前文、第1条)の下においては、国政に関する情報は一部の者の独占によるのではなく、国民が共有すべきものであり、それ故に情報の公開による国民の知る権利の保障は国民主権の必要不可欠の前提条件とされている。しかるに、情報公開法・条例が制定された今日においても、沖縄返還密約やイラクに派遣された航空自衛隊による米兵輸送、警察の捜査報償費などといった違憲違法の疑いのある事実に関する情報が不開示情報として扱われており(但し、航空自衛隊による米兵輸送については航空自衛隊がイラク復興支援派遣輸送航空隊として活動を始めてから5年半を経過した2009年9月になってようやく開示された)、国民が行政をチェックし判断するための情報共有の仕組みが十分に整っていない。したがって、まず行うべきは国や自治体による恣意的な情報隠しを阻止する情報公開制度の充実であり、それを棚上げしたまま本法制を制定することは情報公開制度の趣旨を損ない、ひいては国民主権の理念に反するものである。
2 罰則強化による抑止力も立法事実が不十分である
また、報告書は、「防衛の分野では、自衛隊法上の防衛秘密や、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法…上の特別防衛秘密に関する保全制度があるが、必ずしも包括的なものではない上、防衛以外の分野ではそのような法律上の制度がない。また、国家公務員法等において一般的な守秘義務が定められているが、秘密の漏えいを防止するための管理に関する規定がない上、守秘義務規定に係る罰則の懲役刑が1年以下とされており、その抑止力も十分とはいえない」とする。しかし、刑罰法規の補充性・断片性に鑑みれば、違反が必然的に罰則に結びつけられている自衛隊法上の防衛秘密等について、対象等が包括的でないからといって、制度が不十分であるとは言えない。また、国家公務員法等について、秘密の管理に関する規定がないことと懲役刑が1年以下とされていることが本法制を整備すべき理由として記載されている。しかし、秘密保全を考えるのであれば、まず情報公開の原則を徹底させた上で、何が秘密として保護されるべきなのかを明確にしつつ秘密情報の物理的管理を充実させるべきであり、それをしないまま罰則を強化しても情報隠しを助長するだけの結果となりかねない。報告書33頁で紹介されている「主要な情報漏えい事件等の概要」においても、刑事処分は法定刑の中でも軽い量刑にとどまっており、また起訴猶予処分の例もある。したがって、現行法の法定刑が抑止力として不十分とは評価できず、重罰化する立法事実は認められないというべきである。これらの点からすれば、報告書が秘密保全の対象拡大と厳罰化という結論ありきで作成されたものであるとの疑いを持たざるを得ない。以下にみるとおり国民の知る権利等を侵害するおそれが極めて大きい制度である以上、まずは秘密の管理に関する規定を設けるだけでは不十分であることや犯罪行為の拡大や重罰化が必要不可欠であることについて、十分な検討がなされるべきであり、それらがなされないまま法案化作業が進められるべきではない。
第3 秘密の範囲(報告書3頁以下)について
1 秘密とすべき事項の範囲(報告書3頁)について
報告書は、「国の存立にとって重要なもののみを厳格な保全措置の対象とすることが適当である」としながら、特別秘密として取り扱うべき事項を、①国の安全、②外交、③公共の安全及び秩序の維持の3分野とし、その理由としては、「防衛秘密の制度を参考としつつ、関係省庁の意見を基に検討」したと述べるのみである。国家秘密とは、通常、軍事又は外交上の情報で、その公開が国家の安全を傷つけるものとされており、上記③の「公共の安全及び秩序の維持」は、秘密の範囲を大幅に拡大するものと言える。それにもかかわらず、報告書は「関係省庁の意見を基に検討」したと述べるのみであり、これでは上記の3分野を対象とした理由を何ら明らかにしていないに等しいと言うべきである。秘密とすべき事項の範囲をどのように定めるかは、国民の知る権利等に重大な影響を及ぼすものであるから、上記の3分野を対象とする場合には、とりわけ③について、立法事実を含めてその理由が明らかにされるべきである。
2 事項の限定列挙・秘匿の必要性による絞り込み(報告書3頁以下)について
 報告書は、「特別秘密として厳格な保全措置の対象とする情報は特に秘匿の必要性が高いものに限られるべきであるから、これらの分野のいずれかに属する事項の中から特別秘密に該当し得る事項を更に限定する必要がある」としている。しかし、報告書はその具体的な方法として、「本法制を整備する際には、自衛隊法の防衛秘密の仕組みと同様に、特別秘密に該当し得る事項を別表等であらかじめ具体的に列挙した上で、高度の秘匿の必要性が認められる情報に限定する趣旨が法律上読み取れるように規定しておくことが適当であり、例えば『我が国の防衛上、外交上又は公共の安全及び秩序の維持上特に秘匿することが必要である場合』(自衛隊法第96条の2第1項参照)、『その漏えいにより国の重大な利益を害するおそれがある場合』などを要件とすることが考えられる」と述べているが、これらは限定として全く不十分である。すなわち、自衛隊法の防衛秘密に関して同法が掲げる別表第4は、「自衛隊の運用」、「防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報」などというように極めて広範な事項にわたる網羅的なもので、秘密を限定する意義に乏しいと言わざるを得ない。また、報告書が例示する上記の文言は曖昧であり、自衛隊法等に倣ってよしとされるとすれば、「特別秘密」の指定が行政機関に委ねられていることを併せ考慮すると、前述した沖縄密約やイラクにおける米兵輸送、警察の捜査報償費といった情報はもとより、人権侵害とも言える自衛隊情報保全隊による国民監視に関する情報などまでもが「特別秘密」として指定される危険性は十分にある。
3 秘密の作成又は取得の主体(報告書4頁以下)について
報告書は、国の行政機関に加え、独立行政法人等及び地方公共団体についても本法制の適用対象にすることが適当であるとし、民間事業者・大学についても、行政機関等から事業委託を受ける場合には、本法制の適用対象とすることが適当であるとする。しかし、本法制の立法事実に関して報告書33頁の「主要な情報漏えい事件等の概要」に挙げられた事案は、国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案を除き、自衛官など国の行政機関(元公務員も含む)が関わるものである。また、警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれていたとされる国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案は、捜査中とのことで、未だ警察職員が関与していたとの判断は示されていない。報告書自体が挙げる上記事例からも、国の行政機関以外に適用対象を広げるべき理由は見出せない。国の行政機関のほか地方公共団体等まで適用対象とされ、しかも秘密の範囲に公共の安全及び秩序の維持まで含まれるとすれば、「特別秘密」とされ得る事項は膨大なものとなる。また、民間事業者や大学といったいわば私人をも本法制の適用対象とすることは、学問・研究活動の自由等を侵害するおそれが大きく、行き過ぎた規制と言わざるを得ない。
第4 秘密の管理(報告書5頁以下)について
1 秘密の指定(報告書5頁以下)について
報告書は、秘密指定の権限は、原則として、特別秘密の作成・取得の主体である各行政機関に付与することとするのが適当であるとするのみで、当該秘密指定が法の趣旨に則った適法なものであるかどうかについて検証する仕組み等については全く触れていない。このように、各行政機関に秘密指定の権限があり、その指定の適否を監視する仕組みがない制度では、「特別秘密」の対象が広範かつ曖昧であることなどと相まって、行政機関がときの政府や自らに都合の悪い情報を隠すため、恣意的な秘密指定がなされるおそれが極めて大きい。本法制では「特別秘密」と刑罰とが直結されており、秘密の指定は、知る権利等の行使に対して重大な萎縮的効果を及ぼす。秘密の指定が行政機関の恣意によってなされないよう、第三者がその適否を監視する仕組みは不可欠というべきである。
2 人的管理(報告書7頁以下)について
報告書は、「特別秘密を保全するためには、特別秘密を取り扱う者自体の管理を徹底することが重要である」とし、適性評価制度を本法制の中で明確に位置づけるべきとする。そして、適性評価における調査事項の例として、①人定事項(氏名、生年月日、住所歴、国籍(帰化情報を含む。)、本籍、親族等)、②学歴・職歴、③我が国の利益を害する活動(暴力的な政府転覆活動、外国情報機関による情報収集活動、テロリズム等)への関与、④外国への渡航歴、⑤犯罪歴、⑥懲戒処分歴、⑦信用状態、⑧薬物・アルコールの影響、⑨精神の問題に係る通院歴、⑩秘密情報の取扱いに係る非違歴などを挙げる。これらの調査について、報告書は、「対象者のプライバシーに深く関わる調査となることから、調査については、対象者の同意を得て、調査票の任意の提出を待って手続を開始、進めることが肝要である」とする。しかし、上記の調査事項は、まさにプライバシーの核心に関わる事項であり、思想・信条や出身による差別につながるおそれも大きい。そもそも、ここでいう「我が国の利益」とは何であるのか、例えば沖縄密約を隠すのがそれに該当するのかが不明である。そのため、その不明確性・曖昧性故に個人の思想・信条を含めたプライバシー情報が広く調査・把握され、かつ集積されてしまう危険性が有る。また、雇用されている立場の対象者にとって、これらの調査に同意しないことは困難であり、対象者の同意を要件としたとしても、国家が個人のこのような情報を包括的に調査し把握することは許されないというべきである。また、報告書は、特別秘密を取り扱う者のほか、その者の配偶者等、対象者の身近にあって対象者の行動に影響を与え得る者についても、一定の調査をすることを想定しており(11頁)、それらの者に対するプライバシー侵害の危険を孕むものであるところ、その点に対する手当が何ら検討された形跡がない。
第5 罰則(報告書14頁以下)について
1 罰則に関する基本的な考え方(報告書14頁)について
報告書は、「特別秘密の漏えいを防止するためには、前述のとおり厳格な人的管理及び物的管理を行うのみならず、漏えい行為など本来特別秘密を知る立場にない者が特別秘密を知ることにつながる行為について、刑罰をもって臨むことが必要である」と述べた上で、「法定刑については、上記行為を抑止するとともに、特別秘密の漏えい等という重い罪責に応じた処罰を可能にするような刑を定めることが適当である」とする。しかし、秘密保全のために、なぜ報告書のいう「厳格な人的管理及び物的管理」を制度化するだけでは足りず、大幅な厳罰化が必要なのかが不明である。前記第2-2で述べたように、現行法の法定刑が抑止力として不十分とは評価できず、重罰化する立法事実は認められないというべきである。報告書は、「罰則を設けることにより、特別秘密を取り扱う者に緊張感を与え、その保全意識をより高める効果が期待できる」とも述べるが、他方で、独立教唆行為等のように取扱業務者以外の第三者をも罰則の対象としており、上記目的を超えている。第三者をも罰則の対象とする報告書の考え方は、刑罰が知る権利等の行使に及ぼす萎縮効果について十分に配慮しているとは言い難い。
2 禁止行為(報告書14頁以下)について
(1)報告書は、自衛隊法と同様に、特別秘密の漏えい、過失の漏えい、漏えいの未遂、共謀、独立教唆及び煽動の各行為を刑事処罰すべきものとしている。しかし、そもそも「特別秘密」という構成要件自体が過度に広範かつ不明確であるところに加えて、実行行為を待たずに共謀行為や教唆行為を罰するとすれば、その処罰範囲は大きく広がり、かつ構成要件に該当するか否かについての予見可能性は極めて低くなり、取材の自由や国民の知る権利が大きく損なわれる可能性が高い。
(2)また、報告書は、一般人をも対象にする特定取得行為(管理侵害行為又は詐欺等行為による特別行為の取得)を処罰対象に加えている。この点につき、報告書は、「特定取得行為は、犯罪行為や犯罪に至らないまでも社会通念上是認できない行為を手段とするもので、適法な行為との区別は明確であるから、特定取得行為を処罰対象に加えても、正当な取材活動など本来許容されるべき行為が捜査や処罰の対象とされるおそれはないと考えられれる。」としている。しかし、「社会通念上是認できない行為」の範囲は不明確である。また、報告書は、外務省機密漏えい事件最高裁判決(最高裁昭和53年5月31日第一小法廷判決)が「社会通念上是認することができない」行為について「取材対象者個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らし社会通念上是認することができない態様のものである場合」と限定を付している部分を省略しているため、処罰範囲は最高裁判決が認めるよりも広範に及び、かつ不明確になっており、取材の自由や知る権利を侵害する可能性が高い。
3 法定刑(報告書19頁以下)について
報告書は、本法制における刑の上限を懲役5年又は同10年とし、罰金刑を任意的併科とすることが適当であると述べ、その理由として、十分な抑止力の確保と罪責に応じた十分な刑罰を科す必要性を挙げる。しかし、重罰の「抑止力」は取材の自由に対して大きな萎縮効果を与え、国民の知る権利の実現を危うくするおそれがある。前記1のとおり、なぜ、秘密保全のために「厳格な人的管理及び物的管理」を制度化するだけでは足りず大幅な重罰化が必要なのか、仮に一方で重罰化の要請があるとして、知る権利等との観点から重罰化が許されるのかなどについて、十分な検討がなされたとは思われない。
第6 国民の知る権利等との関係(報告書21頁以下)について
報告書は、「本法制は、国民の知る権利や取材の自由との関係で一定の緊張関係に立ち得ることから、本法制と両者との関係について慎重な検討が求められる」としながら、①「本法制により保全される特別秘密は、そもそも情報公開法の下で開示対象とされる情報に該当しないことから、同法により具体化されている国民の知る権利を害するものではない」、②「取材の手段・方法が刑罰法令に触れる場合や社会観念上是認できない態様のものである場合には…このような手段・方法による取材行為が取材の自由を前提としても保護されない反面、正当な取材活動は処罰対象とならないことが判例上確立して」おり、「特定取得罪は、…当該行為自体が現行法上の犯罪に該当するか、該当しないまでも社会通念上是認できない行為に限って処罰対象とするものであるから、上記の最高裁の立場に照らすと、取材の自由の下で保護されるべき取材活動を刑罰の対象とするものではない」から、「漏えいの教唆や特定取得行為を処罰することとしても、取材の自由を不当に制限することにはならない」と簡潔に述べる。しかし、①国民は、記者の取材等によって得られたマスメディアの報道など、様々な手段によって情報を得ているのであり、情報公開法の下で開示対象とされる情報に該当しないからといって、国民の知る権利の対象外であるとは言えない。そもそも、第三者による監視の仕組みがない本法制の下では、特別秘密とされる情報が真に秘密とされるべきものに限られる保障は全くないのである。また、②取材活動が正当なものとされるか否かは、具体的な事情に基づく個別的な判断であるから、漏えいの教唆等に重罰が科されることとなれば、本来正当な取材活動をも萎縮させ、取材の自由が制約されることは明らかである。本法制が知る権利等を脅かすものであることはこれまで述べてきたとおりであり、報告書の議論は、上記各点を看過するものである。
第7 裁判を受ける権利との関係について
本法制の禁止行為に違反したとして起訴された場合、当該特別秘密が秘匿されたまま刑事裁判が審理されることが予想される。しかし、その場合、当該特別秘密の実質秘性を争うことは極めて困難となり、被告人の防御権に重大な支障を来すおそれがある。また、弁護人にとっても、関係者からの事情聴取などの調査活動や証拠・資料の収集活動も独立教唆や煽動として規制されるおそれがある。このような制限を受けながらでは十分な弁護活動を行うことは極めて困難であり、そのような状態では公正な裁判は実現できない。しかるに、報告書ではこのような裁判を受ける権利との関係について何ら言及されていない。これは、国民の基本的人権保障を軽視するものである。
第8 結語
前述した情報不開示の例や、福島原発事故発生後の情報公開の不徹底、国民生活に重大な影響をもたらす環太平洋連携協定(TPP)について国民に十分な情報が提供されないまま交渉への参加が表明されている現状に照らすと、我が国において情報公開・国民主権の理念はいまだ十分に浸透しているとは言えない。このような現状の下において、本法制の法案化を行うことは情報隠しを拡大することになり、情報公開制度・国民主権の理念に逆行し、国民の知る権利等を侵すものである。よって、当会は本法制の法案化作業に強く反対する。 以 上

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余命三年時事日記 2260 ら特集10仙台弁護士会⑤11 [余命三年]

余命三年時事日記 2260 ら特集10仙台弁護士会⑤11
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/13/2260-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a411/ より

平成25年03月13日 裁判員制度の見直しに関する意見書
ttp://senben.org/wp-content/uploads/2013/03/saibaninseidoikensho_2503.13.pdf
2013(平成25年)3月13日
裁判員制度の見直しに関する意見書
仙台弁護士会 会長 髙橋春男

-目次-
第1 はじめに2頁
第2 裁判員裁判の選択制について3頁
第3 裁判員の量刑への関与について5頁
第4 裁判員の死刑判断への関与について8頁
第5 公判前整理手続について11頁
第6 評議・説示について12頁
第7 区分審理制度について15頁
第8 少年逆送事件について16頁
第9 その他刑事訴訟法運用適正化について17頁
– 2 –
第1 はじめに
裁判員法附則第9条は,裁判員制度実施「3年後」に必要に応じて見直しを行うべきことを規定している。当会は,現行制度には見直されるべき問題点があると考え,その概要を本意見書に取りまとめた。当会は,2008年(平成20年)10月7日に,裁判員制度の実施を迎えるに当たって裁判員制度の課題に対する意見書(以下「2008年意見書」という)を作成し,公表した。同意見書では,裁判員制度が抱えている問題点と課題を指摘し,その克服を志向しながら制度の運用に当たることが制度の趣旨に則し,また,誤判・冤罪防止のための刑事手続全体の改革のために必要であると考え,以下の7つの問題点について指摘し意見を述べた。
(1)公判前整理手続および公判手続における十分な弁護権・防御権の保障
(2)評議における裁判官の適切な手続の説明等の重要性
(3)量刑判断の課題
(4)部分判決制度の限定的適用
(5)控訴審に関する刑事訴訟法の改正についての検討
(6)少年逆送事件と裁判員制度の問題点
(7)その他取調べの全面可視化の実現等
上記の意見書作成の際の観点,すなわち,被告人の権利保障が十全になされているか否か,誤判・冤罪防止のための制度としての制度的保障がなされているか否かという観点は,本意見書を取りまとめるにあたっても重視した。このような観点にたって,3年間の裁判員裁判実施状況等を踏まえて検討を行い,改めて次のような点を確認した。すなわち,刑事裁判制度においてもっとも重視されなければならないのは,被告人の権利保障の観点であり(憲法第31条,憲法第37条,刑事訴訟法第1条),それは裁判員制度のもとであっても些かも揺らぐものではない。裁判員制度が,国民の司法参加によって,司法に対する国民の理解の増進とその信頼を向上させようとする目的を有しているとしても,その目的が被告人の人権保障に上回る利益であるはずがない。換言するならば,現行裁判員制度の仕組みないし運用が被告人の権利保障を脅かす虞があるのであれば,それは,制度自体の問題として大胆に改変すべきである。被告人の権利保障を全うするためにこそ,国民参加の意味があると言えるのであり,また,そのような制度であって初めて,国民の理解の増進とその信頼の向上に資するというべきである。もとより,当会でこれまでに検証ができた裁判員裁判の数が十分とは言えず,また,裁判員の守秘義務に阻まれ評議が適正に行われているか否かの検討を十分に行うことが出来なかった側面があるし,理論的に困難な課題を含む控訴審の在り方については意見の取り纏めには至らなかったこと等,本意見書には不十分な点があるが,本意見書は,上記のような観点から,被告人の権利保障のために早急に見直されるべきものを中心に,取りまとめ公表に至ったものである。
第2 裁判員裁判の選択制について
1 意見
現行制度の裁判員裁判対象事件について,被告人が裁判員裁判(裁判官と裁判員の合議体による裁判)と裁判官裁判(裁判官のみによる裁判)とを選択できる(被告人が裁判員裁判を拒否できる)制度に改正すべきである。
2 理由
(1)裁判員裁判導入の功罪
裁判員制度が導入され,裁判員法第2条所定の事件が裁判員裁判の対象とされた。裁判員裁判の実施により,直接主義・口頭主義の実質化により刑事裁判が活性化している,無罪推定の原則を徹底した判断により無罪判決が言い渡される例が多い等,裁判員裁判の有意性を指摘する意見がある一方で,被告人の身柄拘束期間の長期化,刑事裁判の滞留,分かりやすい審理の強調による主張・証拠の過度の絞り込み,刑事訴訟の基本原則に対する理解を欠いていると指摘される判決の例(責任主義の視点を欠いて量刑判断がなされた大阪地方裁判所が平成24年7月30日言渡しのいわゆるアスペルガー症候群判決【大阪高等裁判所平成25年2月26日言渡し判決で破棄】等)といった,人権上見過ごせない様々な問題点も指摘されている。
(2)被告人の基本的人権の保障という刑事裁判の基本原則との関係
刑事裁判においては,無罪推定の原則のもとで,国家刑罰権の行使に対する被告人の防御権・弁護権が保障されなければならない。刑事訴訟法第1条にも被告人の基本的人権の保障が明記されている。裁判員裁判も刑事裁判である以上,この被告人の基本的人権の保障という基本原則が当然に適用されるのであり,国民の司法に対する理解の向上という裁判員法の主たる目的との比較においても,この基本原則が優先されるべきことは明らかである。現行裁判員裁判に上記(1)のような問題があることに鑑みれば,被告人に一律に裁判員裁判による審理を強制するのではなく,どのような裁判手続による方が人権擁護に資するかという見地から,被告人に手続の選択、すなわち裁判員裁判の拒否権を認める制度が,被告人の権利の保障に最も適うと考えられる。
(3)裁判員裁判の実情からみた制度の在り方について
実際の刑事裁判の運用状況においても,冒頭で述べたように,裁判員制度が実施されたことによって,直接主義・口頭主義の実質化による刑事裁判の活性化等,裁判員裁判の有意性が指摘されている反面,被告人の身柄拘束期間の長期化,刑事裁判の滞留,主張立証の過度の絞り込み等,人権上見過ごせない様々な問題点も指摘されている。このように裁判員裁判の運用において,上記のような有意性や欠陥が現実化していることに鑑みても,被告人自身がいずれかの手続を選択できるようにすることが,被告人の権利擁護に資することは明らかである。
(4)憲法上の「裁判を受ける権利」と被告人の選択権(拒否権)憲法第32条は,何人に対しても裁判所の裁判を受ける権利を保障し,憲法第37条1項は,被告人に対して公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を保障している。この憲法第32条及び第37条1項は,被告人に対して裁判官による裁判を受ける権利を保障するものと解されてきたが,裁判員制度が導入されたことにより,刑事裁判には,裁判官裁判(裁判官のみによる裁判)と裁判員裁判(裁判官と裁判員の合議体による裁判)が存在することとなったことから,裁判員裁判対象事件において,被告人が,裁判官(のみによる裁判)ではなく,裁判員による裁判を受けることを強制されることは(拒否できないことは「), 憲法が定める被告人の裁判を受ける権利の侵害であり,裁判員裁判は憲法違反である」との意見も唱えられている。以上のような,裁判員裁判に対する憲法上の問題提起や批判は,被告人に選択権が認められることにより解消できるのであり(被告人自身が,自らの意思で裁判官のみによる裁判を希望しなかったことになり,裁判員による裁判を強制されたことにはならないので,違憲の問題は解消できる),このような観点からも,被告人に選択権(拒否権)が認められるべきである。
(5)裁判員法が被告人の拒否権を認めない理由とこれに対する批判
裁判員法が裁判員裁判対象事件について,被告人の選択権(拒否権)を認めていない理由の一つとして,「新たな参加制度(裁判員制度)は,個々の被告人のためというよりは,国民一般にとって,あるいは裁判制度として重要な意義を有するが故に導入するものである以上,訴訟の一方当事者である被告人が,裁判員の参加した裁判体による裁判を受けることを辞退して裁判官のみによる裁判を選択することは認めない」というものがあげられている(司法制度改革審議会最終意見書 106 頁等)。この理由は,刑事訴訟制度の本来の目的である国家刑罰権からの被告人の人権擁護よりも,国民の司法に対する理解の向上という裁判員裁判法の目的を優先させるものであり,被告人の選択権を否定する理由とはなりえないはずのものである。また,選択権を否定する根拠として,「選択権を認めると,裁判員制度が利用されなくなるおそれがあること」が指摘されている。しかし,裁判員制度が被告人の権利保障に資する制度であれば自然に相当数の被告人・弁護人が裁判員の加わった裁判を選ぶはずであり,裁判員制度が利用されなくなるとすれば,制度自体が被告人の権利・利益の観点から問題が多い制度であることを意味するに過ぎない。その場合は,被告人・弁護人が指摘する問題点に耳を傾けて制度の改善・改正に踏みきればよいのであり,そうすることによって,裁判員裁判と裁判官のみの裁判の両方の手続の改善が進むことも期待される。
(6)選択制の前提(選択権行使の仕方と時期)
現行制度においては,裁判員裁判対象事件は,起訴後公判までの間に,公判前整理手続が予定されている。選択制を採用する場合,いずれの手続を選択するかを決めることは,公判における審理スケジュールを確定する上で不可欠であることから,選択権の最終行使時期は,公判前整理手続の最後の段階までとするのが相当と考えられる(但し,現行の公判前整理手続は,問題が多い制度なので,第5項のような改正を求めるべきである)。もっとも,裁判員裁判対象事件の中には,全面的自白事件で,殊更争点となる点がないもの等,必ずしも公判前整理手続に付さなくてもよいような事件もあることから,まずは全面証拠開示(意見内容は第5項参照)後相当期間内に,公判前整理に付するかどうかを弁護人が判断し(裁判員裁判を選択する可能性がある場合には,公判前整理手続を選択する),同手続において公判の進行を整理する中で,最終的の整理期日までに,裁判員裁判を選択するかどうかを決定する制度設計が相当と考えられる。
第3 裁判員の量刑への関与について
1 意見
当会は,2008年意見書において,裁判員が量刑の本質を踏まえた適切な判断をなしうるために,量刑資料の提供,評議のあり方が工夫されるべきとの意見を述べているが,これまでの裁判員裁判の実績に鑑みると,前掲したアスペルガー症候群の被告人に対する大阪地方裁判所判決等,刑事裁判に初めて関与する裁判員に刑罰や量刑判断の本質の理解を求めることが極めて困難であることを示す事例が相次いでいることから,裁判員に量刑を判断させる現行制度を見直し,裁判員は事実認定にのみ関与し量刑審理には関与しないとの改正がなされるべきである。
2 理由
(1)はじめに
被告人の量刑を裁判員に判断させるということは,量刑にも市民感覚が反映されることを是とするということである。しかし,それまで刑事裁判に携わったことのない裁判員の大半は,刑罰や量刑の本質をほとんど理解しないままで裁判に参加しているはずである。そのため,ともすれば,裁判体によって量刑因子の評価が異なり,同種事案でも量刑に大きな差が生じる可能性は否定できない。
(2)刑罰制度の本質について
刑罰制度の本質(何のために罪を犯した者に刑罰を科すのか)については,①応報(自分がしたことに相応した報いを受ける),②教育(罪を犯した者を教育して再社会化する),③抑止(刑罰を科すことで将来の犯罪発生を抑止する)の,大きく分けて3つの要素がある。そして,これら3つの要素については,いずれかひとつのみを重視するのではなく,これらの要素がいずれも刑罰制度の本質に含まれていると考えるべきである。刑罰の本質に関する説示を十分な時間をとり丁寧に行わなければ,裁判員によっては,被害者の意見陳述に強く影響され,応報の観点からのみ量刑を判断するというような事態が生じかねない。しかし,裁判員の負担も考慮して組み上げられたタイトな審理スケジュールの中で,刑罰や量刑の本質の説明に当てることのできる時間はそう多くないはずであり,また,説示を幾ら丁寧かつ適切に行ったとしても,裁判員の理解の程度には個人差があるため,全員がその専門的な説明を全て理解しうるかは,極めて疑問である。前掲したアスペルガー症候群の被告人に対する大阪地方裁判所判決は,その量刑の理由において「社会内で被告人のアスペルガー症候群という精神障害に対応できる受け皿が何ら用意されていないし,またその見込みもない」から「被告人に対しては許される限り長期間刑務所に収容することで内省を深めさせる必要があり,そうすることが,社会秩序の維持にも資する」と,本人の責任に帰することのできない事情を理由として刑を重くするという,刑法の立脚する責任主義に真っ向から反する判断を示している。このような,責任主義に明らかに抵触した内容の判決がなされたことは,裁判官が裁判員に対し,刑法の理念や刑罰の本質を十分に説明しきれなかったか,裁判員が裁判官の与える専門的・理論的な説明を根本的なところで理解していないのではないかとの疑念を禁じ得ない。
(3)量刑判断の困難性について
本来,量刑は,被告人の犯行に関する情状及びその他の情状(一般情状)を総合的・多角的に検討した上でなされなければならない。裁判員制度開始前は,裁判官が他の事件との比較検討や,同種事件の量刑傾向も十分に踏まえながら量刑判断を行ってきた。それなのに,当該裁判に関与するまで,裁判経験的や知識を有しない裁判員に,このような専門的判断を担わせようというのは,本来的に困難な作業を裁判員に行わせようとしている,と言っても過言ではない。近時は,裁判員裁判における量刑因子を絞り込む方向性も検討されているようである。しかし,量刑は個別具体的な事件との関連の中でいずれが重要でいずれが重要でないかが検討されるべきものであるから,量刑因子を限定的に扱うことにより適切な量刑判断が妨げられるおそれが生じることは否定できない。また,判例検索システム等により,過去の同一罪名の罪に関する量刑をグラフ等でデータ化した量刑資料を用いたとしても,その運用は刑の事実上の上限と下限を把握したり,おおよその量刑の分布を知る上で意味を持つに止まり,個別具体的な事情を踏まえて適切な量刑判断を行うことを可能にするものではない。
裁判官に,刑罰や量刑に関する詳細な説示を義務づけ,各量刑因子の持つ意味を十分に検討させて,事件ごとに重要な情状とそうでないものを抽出させるということは,裁判官及び裁判員に大きな負担となると思われる。しかし,本来量刑は,このような慎重な検討を経なければならない性質のものであり,裁判員の負担軽減という理由のもとに軽々しく判断がされるべきではない。刑事裁判に初めて関与する裁判員に刑罰や量刑判断の本質の理解を求めることは極めて困難であり,裁判員裁判の限られた審理の中で,それを実現することは不可能であることから,裁判員に量刑を判断させる現行制度を見直し,裁判員は事実認定にのみ関与し量刑審理には関与しないとの改正がなされるべきである。なお,司法研究報告書第63輯第3号「裁判員裁判における量刑評議の在り方について」は,裁判官に対し量刑に関して裁判員と評議をする際の指針を提供するという意味で,評議のための実質的な手引きとなる論稿であるが,その序文において既に「裁判員に量刑相場に依拠するなどして量刑についての意見を述べてもらうことは,裁判官と同様の体験的感覚を有していない裁判員には困難」であるということが記載されている。また,その内容としても,「裁判員が刑を決めるにあたって,『何が分からないのか』,『何を疑問に思っているのか』を裁判官が理解しないまま,基本的な考え方を型どおり説明すれば適切な評議が行われるというものでもない」「そのようなときに,裁判官が基本的な考え方に則っていかに適切に説明できるのかが大事なことである」と言いつつ(同報告書10頁),難解な概念に関する説明例や,事例ごとに予想される裁判員の疑問や無理解等(例:前科がないことがなぜ被告人に有利な事情になるのか)を解消するための説明例については具体的な言及が全くされていない。これは,この報告書自体が,既に裁判員裁判において,量刑に関し適切な評議をし,
ひいては適切な量刑を導くことが制度上困難であることと認めていることの現れである。
第4 裁判員の死刑判断への関与について
1 意見
仮に,従前通り裁判員裁判において裁判員が量刑を判断するとしても,
①死刑求刑が想定される場合は,公判前整理手続において,検察官が死刑を求刑する可能性があることを明示し,死刑を科すことの可否を争点として組み入れるよう,検察官に義務づける
②死刑判断が慎重になされるよう,過去の量刑傾向と比較検討ができる制度の採用,各種鑑定資料の証拠採用,審理期間の確保等の運用等,が実施されるべきである
③死刑判決を言い渡すに当たっては,裁判官と裁判員の全員の一致が必要であるという要件を設けるべきである。
2 理由
(1)死刑求刑がなされうる場合の争点化
死刑が求刑される事件の場合,弁護人の防御のあり方も懲役刑が求刑される場合とは大きく異なる。死刑求刑事件では、被告人に対して死刑を科すことがやむを得ないと言えるかどうかを,被告人の生育歴・被告人の精神及び心理に関する分析,そして従来の量刑傾向との関係等から主張立証していくことになる。また裁判員の判断しなければならない事項も通常の懲役刑求刑の場合とは異なることになるから,公判前整理の段階で,死刑求刑の可能性がある場合はそれを検察官に明示させ,争点化することを義務づける必要がある。なお,死刑を争点化した場合でも,検察官に対して最終的に死刑を求刑することを強制するものではない(検察官のほうで死刑が相当でないと判断すれば死刑求刑しなくてもよい)とすれば,検察官の訴訟活動を何ら制限することにはならないから,この点で上記のような義務づけをしたとしても検察官の訴訟活動を不当に害することにはならないはずである。
(2) 死刑求刑のなされうる事件の審理
ア過去の量刑傾向と比較検討
裁判員制度が刑事裁判に市民感覚を採り入れようとする法制度であるところ,その「市民感覚」の名の下に,責任主義とは異なる社会防衛の感覚が入り込みかねない。死刑が求刑されうるような重大事件では,その社会防衛の感覚はより一層量刑に入り込むことになるであろう。当然,裁判官も裁判員に対する説示を行っていると思われるが,説示の内容が公表されない上に,最終的に裁判員が社会防衛の観点から死刑の意見を述べたとしてもこれを無理に説得して変えさせる権限までも裁判官が有しているわけではない。そのため,過去の量刑傾向では懲役刑が相当と思われる事案についても,社会防衛の感覚に基づいて死刑が言い渡されてしまうおそれは十分に存在する。勿論,現行制度のもとでは行為に応じた責任として死刑を選択すること自体を違法・不当とは言えないものの,判断者の思考過程において責任を逸脱した考慮要素が混じり込んだ結果として死刑判決が下されてしまうとすれば,それは疑いもなく違法・不当である。この問題点に対応するために,まず,最低限,死刑事件に関する従来の量刑傾向を主張立証の対象とし,過去の死刑事件と無期懲役事件の判決及び内容(被害者数その他の事情)を,検察官と弁護人に主張立証させる制度枠組みを設けるべきである。過去の量刑傾向が絶対の基準ではないものの,死刑に関する判断の重大性・困難性をよく裁判員に理解させるべきである。また,現在,裁判所にて作成している量刑資料で事足りるとすべきではなく,死刑
の選択については,あらゆる情状を踏まえた,最大限に慎重な判断が求められるということを裁判員にも理解させるべきである。
イ各種鑑定の証拠採用
死刑求刑がなされうる事件においては,責任能力に問題がある場合の精神鑑定を実施することを厭うべきでないことは勿論のこと,発達障害や人格障害が見られる場合の心理鑑定・情状鑑定を積極的に行うべきである。また,当事者による精神鑑定・心理鑑定・情状鑑定が提出された場合には,必要性の判断を緩やかに解し,これらの鑑定が証拠として採用されやすい法制度を設けるべきである。
裁判員が被告人自身の話に直接に接するのは,法廷における長くても数時間の被告人質問だけであり,本来それだけで被告人の命を奪ってよいかどうかを判断することはできないはずである。懲役刑はその後の被告人の反省と更生に期待するものであるが,死刑を言い渡すということは,被告人を更生の余地なきものとして全否定するということである。しかし,わずか数日間の審理と評議だけで被告人のそれまでの人生もこれからの人生も含めて全部否定して構わないと言えるかは大いに疑問である。そのため,死刑求刑のあり得る事件の場合は,専門家による各種鑑定の結果を柔軟に証拠採用するよう,法制度を改正すべきである。
ウ審理期間の確保と死刑求刑事件からの裁判員の排除
従前の量刑傾向との対比による最大限慎重な検討や各種鑑定による緻密な分析を行うため,死刑求刑があり得る事件については,審理期間を十分に設けることとし,裁判員にも各種記録を入念に検討させることを義務づける制度枠組みを設けるべきである。裁判員の負担軽減や審理の迅速化といった大義名分のもとに,被告人の生命を奪ってしまうことがやむを得ないかどうかという判断が,拙速かつ不用意になされることは許されない。なお,死刑求刑のあり得る事件について,そのような過度な負担を裁判員に負わせることが妥当でないというのであれば,死刑求刑のあり得る事件の量刑を裁判員裁判の対象から外すことも検討されるべきである。
(3)裁判員制度における死刑判決についての全員一致制の導入
仮に,裁判員を量刑判断に関与させる制度が維持されたとしても,死刑判決を言い渡す場合には裁判官と裁判員の全員一致を要件とすべきである。現行制度においては,基本的には裁判官・裁判員の多数決(但し,最低 1 名の裁判官が賛成することが必要)で死刑判決を言い渡すことが可能である。死刑求刑事件は,死刑に相当する犯罪事実の存否の認定や被告人に社会復帰することを許すか否かを判断することが本質であり,その判断は時に取り返しがつかない結果(誤判)を招くおそれがある。これまでに松川事件,松山事件等の死刑冤罪事件が多く存在することは周知の通りである。そうだとすれば,裁判員裁判において,死刑判決を言い渡す場合には,各自が細心の注意を払って事件を精査して事実を認定し,また量刑に関する諸事情を極めて慎重に検討したとしてもなお死刑に処すべきとされる場合でなければこれを許すべきではない。また,被告人の更生可能性の有無を僅差での可決もあり得る多数決で決することは,人権保障の最後の砦とされるの裁判所の本質とも相容れないものである。裁判所は,被害者等の処罰感情が激しく,また世論が強く死刑を求める事案であっても,他の同種事件との公平さを保って判断を行わねばならない。「更生可能性が有るか無いか」という判断を,多数決によって行うことは,裁判員の個人的見解によって同種事例における死刑の判断に差異を生ずる可能性が非常に高く,ひいては裁判所の公平さを害する結果を招きかねない。永山事件に関する昭和56年8月21日東京高裁判決(最高裁判所刑事判例集37巻6号733頁)は,死刑判断の規範定立にあたって「ある被告事件について死刑を選択する可能性があるとすれば,その事件については如何なる裁判所がその衝にあっても死刑を選択したであろう程度の情状がある場合に限定せらるべきものと考える。立法論として,死刑の宣告には裁判官全員一致の意見によるべきものとすべき意見が あるけれども,その精神は現行法の運用にあっても考慮に値するものと考える」と判示している。このような見解は死刑判決の要件を考える上で尊重されるべきであり,死刑求刑事件において死刑判決を言い渡すに当たっては,裁判官及び裁判員の全員一致を要件とし,一人でも死刑に賛成しない意見があれば死刑判決を言い渡すことはできないとの改正がなされるべきである。
第5 公判前整理手続について
1 意見
公判前整理手続における被告人の予定主張義務,証拠請求義務及び証拠制限の規定を撤廃し,公判前整理手続を検察官の主張・立証の整理及び証拠開示等に絞る手続に再構成すべきである。
2 理由
(1)公判前整理手続において,弁護人は,公判期日における予定主張をあらかじめ明示すること及び証拠請求を行うことが義務とされ(刑事訴訟法第316条の17第1,2項),公判前整理手続終了後は,原則として,新たな証拠調べの請求が制限されている(同法第316条の32)。この規定は,公判前整理手続に付された事件について,争点及び証拠の整理の実効性を担保するため,公判段階における当事者からの証拠調べ請求を制限する趣旨とされているが,以下に述べるような訴訟構造上の問題が存在し,被告人の黙秘権に抵触するおそれがあり,極めて問題のある規定である。
(2)刑事裁判は,無罪推定の原則の下で検察官が挙証責任を負い,弁護人は検察官の主張・立証の綻びに合わせて主張を展開するという構造がとられており,被告人側の証拠調べ請求は同法第298条1項に明らかなように時期的な制限は規定されていない。しかし,公判前整理手続においては,弁護人は,検察官の主張・立証が尽くされていない段階で予定主張明示義務を課され,反対に検察官は,公判前整理手続の中で弁護側の主張・反証の全体像を把握して,その立証計画の弱点をあらかじめ補修することが可能になる。被告人側の証拠収集能力と,国家権力たる検察官の捜査能力とでは大きな差異があることが明白であるにもかかわらず,このような規定が存在することによって,両当事者の対等性は一層損なわれることとなる。以上のように,予定主張明示義務と対になる証拠調べ請求の制限は,刑事裁判手続を検察官にとって有利に変容させるものであり,検察官が全面的挙証責任を負う刑事裁判の原則や無罪推定の原則と抵触しかねない。また,本条における証拠調べ請求の制限を被告人側に対して広く認めることになると,事実上公判前整理手続において被告人が主張すべきことを強制されることになりかねず,被告人の黙秘権に抵触するおそれがある。
(3)現行の公判前整理手続には以上のような問題が存在する以上,その抜本的改正が必要であり,同手続は,検察官の主張・立証についての整理及び証拠開示に絞り,弁護人の予定主張明示義務と証拠調べ請求の制限を廃止した手続きに再構成されるべきである。このような改正を行ったことにより公判前には厳密な公判計画が立てられなくとも,事前の進行協議等で進行計画の見通しを立てたり,追加の証拠請求に備え予備の審理期日を設けることで,計画的・集中的な審理は十分可能なはずである。
(4)全面証拠開示の必要性については,当会は,2012年(平成24年)2月25日付定期総会決議において既に明らかにしたところであるが,これは言うまでもなく裁判員裁判においても妥当するところであることから,本意見書においても改めてその実現を求める。具体的な証拠開示制度については,以下のようなものとするべきである。
①証拠標目の一覧表の開示
検察官は,請求証拠の開示と同時に捜査機関が作成した証拠標目の一覧表を弁護人に開示するべきである。
②開示請求
開示された標目に基づき弁護人から証拠開示の請求があった場合には,検察官は,速やかにその証拠の開示を行う。
③不開示の申立
検察官は,弁護人から証拠開示の請求があった場合にその証拠について不開示とし,また開示の時期ないし方法を制限し,開示に条件を付すべきであると考えるときは,裁判所に裁定を申し立てることとする。
④裁定の基準
③の請求が検察官からなされた際は,裁判所は,証拠を開示する必要性を著しく上回る弊害があり,必要と認めるときは,検察官の開示義務を免除することができる。裁判所は,被告人の防御における開示の必要性や開示による弊害の内容・程度などの事情を考慮して裁定を行うべきである。裁判所は,証拠開示が権利として原則として認められことを前提とし,検察官が不開示による弊害を具体的に説明できる場合に限定して不開示の裁定を行うようにするべきである。
第6 評議・説示について
1 意見
裁判員裁判における評議や裁判官の説示について,以下のような法ないし規則の改正が なされるべきである。
①裁判員法第70条の「評議の秘密」の範囲は広範に過ぎ,文言も不明確であるから,秘密の範囲を,自己以外の裁判員の意見について,当該裁判員を特定する形で漏らす行為のみに限定し,守秘義務違反の範囲を明確化すべきである。
②評議の運用を透明化し,少なくとも訴訟当事者に対しては,一般的説明内容の開示等により,評議の運用を知ることを可能とすべきである。
③刑法の基本原則に関する裁判官の説示については,公判廷において裁判官から行われるべきであり,評議の機会においても適宜適切に行われるべきである。
2 理由
(1)はじめに
評議において,裁判官と裁判員との協働が十分に行われ,かつ被告人の防御にも十分に配慮した評議がなされるためには,裁判官によって適切な運営がなされることが不可欠である。しかし,裁判員裁判が開始して3年が経過しても,守秘義務が存在しているため,外部の者はその肝心の評議の内容を知る機会がほとんどないため,我々は現在の制度とその運用が適切なものなのかどうかを踏み込んで検証することができない。また,現在の法律上,評議の適正を担保するための規定が極めて少なく,評議をどう運営していくかという点について裁判官の裁量が非常に大きいことから,裁判官によっ て裁判員に不適切な誘導がなされることや,適切な説明がなされないことにより,評決の結果が歪められてしまっている場合があるのではないかとの懸念も指摘されている。
(2)評議の秘密の限定及び明確化
現行制度の下では、裁判体の構成員以外には,評議が適切に運用されているかどうかを直接検証できる機会は存在しない。裁判員や傍聴経験のある者に質問したとしても,裁判員法第70条は全体的な感想を述べる程度しか許していないことから,国民が評議の運営内容を具体的に検証することは不可能である。刑事裁判の重要な一翼を担う弁護人及び検察官ですら現在の評議の様子を知る術がほとんどないことは,今回のように制度全体に対して提言を行っていく場合のみならず,今後我々が裁判員裁判における弁護活動を改善していく上でも障害となっており,ひいては国民全体にとっても著しい不利益となっている。評議の秘密は,自由な評議を制度として保障するためのものであるが,裁判員の番号により評議の場における当該意見の表明が誰によってなされたかの特定がなされない限りは,当該意見の表明が評議の場でなされたことが公にされたとしても,自由な評議を行うための支障とはなり得ない。また,個人の特定が出来ない範囲で評議の経過が明らかにされたことから,評議に対して生じる支障は,現実的にはほとんど考えられない。したがって,当該意見の表明を行った個人を特定できない範囲で評議の経過並びに裁判官及び裁判員の意見を漏らしたとしても,評議の秘密を侵したことには当たらず,これらについては当該評議に参加した裁判官,裁判員及び評議を傍聴した司法修習生等は守秘義務を負わないこととすべきである。また現行法上の「経過「意見」という」 文言は抽象的・不明確であり,評議の秘密に該当するかどうかの判断が困難で,評議経験について外部に発信することの萎縮効果が懸念されるところであるから,文言を具体的かつ明確にすべきである。運用においても,具体的にどういったケースが評議の秘密を侵したことになり,どういったケースはそうならないのか等を裁判所が裁判員に対し分かりやすく教示することが望ましい。
(3)一般的説明内容の開示
裁判員の関与する判断事項である事実の認定や刑の量定の判断も,裁判官の合議による法令の解釈の判断,訴訟手続に関する判断等が前提となっているのであるが,これらの判断について裁判官が裁判員にどう説明するかは,刑事裁判の経験がほとんどない裁判員に重大な影響を与えることになる。それにもかかわらず,現在は,これらの判断は,弁護人に不明なまま裁判員に提示され,その内容ばかりか説明がなされたかどうかさえ,基本的に弁護人は知ることが出来ない。このような運用は,被告人に対する適正手続の保障という観点から望ましいものとはいえない。無論,裁判官が裁判員に対し法令の解釈及び訴訟手続のどのような事項の説明を要するかは,審理が進まなければ詳らかにはならないが,公判前整理手続の段階で争点がある程度確定すれば,裁判官が裁判員に説示すべき内容もある程度確定するものと考えられる。例えば,殺意の有無について争点となることが公判前整理手続で明らかとなれば,評議の場において「殺意」の意義についてどのように説明するかについても,公判開始前にある程度決まってくるものと思われる。こういった説示の内容を予め両当事者に開示してその意見を聴取し,あるいは論告,弁論の場においてそれぞれの意見を述べさせることは,適正手続という観点からも,あるいは説明内容の適切性を担保する観点からも望ましいといえる。裁判員に対し資料を示して説明することが予定される場合は,その資料の開示も予めなされるべきである。
(4)裁判員の参加する刑事裁判に関する規則(以下「規則」という。)第36条の説明
規則第36条は,「被告事件について犯罪の証明すべき者及び事実の認定に必要な証明の程度について説明する」と規定する。しかし,特に「疑わしきは被告人の利益に」という原則(無罪推定の原則)は,刑事裁判の鉄則であるにもかかわらず,一般市民にとって馴染みが薄い。漠然と立証責任の所在と有罪認定のために要求される証明度についての説明がなされたとしても,裁判員の多くはその意義を深く理解することは出来ず,「疑わしきは被告人の利益に」の原則に則った意見を述べることは困難である。「疑わしきは被告人の利益に」の原則については,裁判官から,一般人にも容易に理解可能な平易な言葉によって繰り返し説明がされるべきであるが,その説明の仕方については,法曹三者の間でも必ずしも共通理解があるわけではなく,その説明は,評議室という密室でなされていることから,その説明内容の妥当性を一般国民が検証することが不可能となっている。裁判官が裁判員に対してどのように「疑わしきは被告人の利益に」の原則を説明しているかを,弁護人及び検察官,そして一般国民が検証するために,その説明は,公判廷においてなされる必要がある。また,規則第36条が置かれている節が「第二節選任」であることから,多くの裁判長は裁判員選任の際にこの説明を行い,その他の機会には必ずしも行っていないということも考えられる。刑事裁判の鉄則である「疑わしきは被告人の利益に」という最も重要な原則についての裁判員に対する説明は,まず上記のように証拠調べを始める直前の公判廷においてなされるべきであり,その後も,被告事件の事実認定についての評議を開始する時その他適切な場面において随時なされるべきであって,規則第36条はそのように改正されるべきである。
第7 区分審理制度について1 意見
区分審理は口頭弁論主義の徹底という裁判員制度の理念と相容れない上,実質的に防御上深刻な問題を発生させるなど,見直しにより是正可能なものではないと考えられるので,区分審理に関する規定は削除されるべきである。
2 理由
(1)当会の2008年意見書は,部分判決制度の意義を一定程度認めつつ限定的な運用を求めるものであった。これは裁判員裁判における裁判の長期化による裁判員の負担を考慮したものである。しかし,裁判員裁判制度開始後の運用状況についてみると,否認事件などにおいて審理が長期間にわたる裁判員裁判も少なくなく,これにより裁判員の負担が増したことによる弊害は報告されていない。一方で,区分審理により部分判決を下した場合の公判の更新手続きには看過し得ない問題点が指摘されており,裁判が長期化した場合の裁判員の負担について殊更に重く考慮し,被告人の防御権や口頭主義,直接主義の原則を軽視することは許されないものというべきである。
(2)裁判員法第87条は,区分事件審判に係る職務を行う裁判員の任務が終了し,新たに併合事件に係る職務を行う裁判員が加わった場合には,併合事件を審判するのに必要な範囲で,区分事件の公判手続を更新しなければならないと規定し,区分事件の公判手続の更新は,裁判員規則第60条の例によるとされている。これは,刑事訴訟規則第213条の2の更新の手続にならいつつ,裁判員裁判において,全ての証拠等を取調べることは困難との考えから「併合事件審判, をするのに必要な範囲」においてと規定したものと思われる。
(3)しかし,録取書面や公判で取調べた書面等の全部ではなく一部のみを取調べるのでは,偏った心証を裁判員に与えかねず,極めて問題である。他方,録取書面や公判で取調べた書面等の全てについて,再度取調べることは現実的とは言えず,また,それではわざわざ区分して審理をした意味がない。さらに,区分審理における具体的な取調べの方式としては,朗読となろうが(刑事訴訟法第305条2項),それは口頭弁論主義の徹底がその理念と考えられる裁判員制度とは相容れないものと言わざるを得ない。
(4)裁判員法第86条2項は,裁判所は,併合事件の全体についての裁判をする場合においては,部分判決がされた被告事件に係る当該部分判決で示された事項については,これによるものすると規定する。すなわち,併合事件の全体の終局判決にあたり,部分判決で示された事項(証拠も含む)には,併合事件の裁判員は拘束される,というものである。そして,これに加え,併合事件では,前記のとおり区分事件の公判手続の更新手続がとられ,証拠の取調べが行われることとなる。これは,実質的に防御上の深刻な問題を発生させる。なぜなら,区分事件と併合事件では,証拠が共通あるいは密接に関連している場合も想定されるからである。例えば,同一の共犯者がいるとされる場合,区分事件で有罪判決が出された後,併合事件の審理において,共犯者が証人尋問の際に突然,区分事件も含めて,被告人の関与を否定し,それが信用できると考えられた場合,裁判員に正当な判断が可能とは言い難い。また,区分事件で有罪判決が出され,併合事件で証拠等の取調べがされた場合,併合事件の審理において「共犯者の自白は被告人に責任を転嫁する引っ張り込みの自白である」との主張をしたところで,裁判員は区分事件の判断に引き込まれる危険性が高く,やはり正当な判断が可能とは言い難い。
(5)以上のとおり,区分審理事件は口頭弁論主義の徹底という裁判員制度の理念と相容れない上,実質的に防御上深刻な問題を発生させるなど,見直しにより是正可能なものではないと考えられるので,区分審理に関する規定は裁判員法から削除されるべきである。
第8 少年逆送事件について
1 意見
少年逆送事件を裁判員裁判制度で扱うことは,少年法の理念に反することから,少年逆送事件は裁判員裁判の対象から除外されるべきである。
2 理由
(1)少年法は,少年の健全育成を理念とし(少年法第1条),少年の保護・教育を優先するという保護主義を採用するとともに,かかる理念・主義を保障するため少年審判の調査及び審理は科学的・専門的に行うこととした科学主義(同法第9条)を規定している。少年法が,事案の真相解明や刑罰適用の実現という刑事訴訟法の目的とは異なり,少年の健全育成を理念としているのは,少年の非行を防止するために必要な教育を行い,社会に復帰させることを第一の目的としたためである。そして,健全育成・保護主義という理念は刑事事件手続にも及ぶため,法は,少年刑事事件の審理にも科学主義を適用することを定め(同法第50条),保護手続きへの事件移送も認めているほか(同法第55条),処遇上の配慮も規定している(同法第51~54,56~60条)。かかる少年法の理念や主義は,少年逆送事件の裁判員裁判において,何よりも尊重されなければならない。
(2)当会は2008年意見書において,少年法の保護主義の観点から,裁判員裁判の問題点及び,少年逆送事件は成人とは別の運用をするという点について検討する必要を指摘していた。
(3)これまでの裁判員裁判の実際の運用を検証してみると,多くの裁判員裁判は審理日数が数日ほどしかなく,連日開廷,集中審理の方法が取られており,少年逆送事件であっても,これらの審理日数,連日開廷,審理については,成人の事件と違った運用をするという配慮が見られた例はない。こうした裁判員裁判の運用では,心理学,教育学,精神医学等の専門知識に基づいた資料及び少年や保護者の性格,環境等といった要素を的確に把握して作成された資料を基にして,少年の健全育成をはかり,少年の保護・教育を優先するという,少年法の理念に則った審理を実現することは不可能である。少年逆送事件を裁判員裁判で審理する場合には,少年法の理念を全うすべく,成人の刑事事件とは異なり,審理時間を十分に確保し,裁判員が少年法の理念を十分に理解し,その実現が可能になるような方法で事件を審理するための手続が必要であるが,現在までそうした手続をするための法整備等は何らなされていない。
(4)以上からすれば,少年逆送事件を,現行の裁判員裁判制度で扱うことは少年法の理念に反していると言わざるを得ず,少年逆送事件は裁判員裁判の対象から除外されるべきである。第9 その他刑事訴訟法運用適正化について1 意見国選弁護人の複数選任に関する規定,取調べの全面可視化,保釈の積極的運用など,裁判員裁判に密接に関連する分野の刑事訴訟法の規定の改正ないし運用の適正化が図られるべきである。
2 理由
(1)国選弁護人の複数選任に関する規定の改正
裁判員裁判では,連日的開廷で短期間に集中的な審理が行われることから1人の弁護人で対応することは極めて困難である。そのため,裁判員裁判対象事件においては,起訴後,多くの場合において,弁護人が複数選任の必要な理由を明らかにして請求すれば,2人以上の国選弁護人の選任が認められる運用が行われている。被疑者段階においても,刑事訴訟法第37条の5の要件のある事件(法定刑が死刑又は無期の懲役もしくは禁錮に当たる事件)では,多くの場合裁判所の裁量により2人の国選弁護人選任が認められている。しかし,複数選任が認められた事案の中で特に重大な案件であっても3名以上の国選弁護人が選任される例はほとんど見られない。また,法第37条の5の対象外の事件については,国選弁護人の複数選任が認めらる例は極めてまれである。そこで,同条を改正して,対象事件の限定と複数選任の弁護人数の制限を撤廃し,複数選任の必要性の高い事件については3名以上の弁護人選任ができるよう改めるべきである。
(2)取調べの全面可視化の実現
取調べの全面可視化の必要性については,当会は,2008年(平成20年)7月16日付「取調べの可視化(取調べの全過程の録画・録音)を求める会長声明」などで意見表明を行っているが,この必要性が裁判員裁判においても妥当することは論を待たないことから,本意見書において改めて全面可視化を求める。
(3)保釈制度の積極的運用
公判前整理手続および連日開廷される裁判員裁判の審理においては,被告人・弁護人は綿密な打ち合わせをし,十分な準備を整える必要がある。したがって,現行の保釈の運用を抜本的に見直し,保釈制度の積極的な運用が図られる必要がある。裁判員裁判制度実施後,保釈率はわずかながら上昇しているとの統計が出されているが,特に否認事件では依然としてほとんど保釈が認められない状況にあり,また,保釈保証金が高額であることから,これを準備できず,保釈請求を断念する例が相当数見受けられる。そもそも,被告人には無罪推定の原則が妥当するのであるから,出来る限り身柄を拘束することは避けなければならない。また,裁判所は,権利保釈の場合,請求があったときには法定の除外事由が無い限り保釈を許可しなければならないはずである。しかるに,現在の刑事司法においては,起訴後における被告人の身体拘束率は高く,保釈の運用は原則と例外は完全に逆転され,保釈されて自由の身で公判審理に臨むケースは例外的となっている。このような「人質司法」を打破するためには,無罪推定の原則に立って,被疑者・被告人の身体拘束を正当化する要件を見直して,その適正化が図られなければならない。

平成25年03月13日 自衛隊情報保全隊内部資料の発覚を受け,自衛隊情報保全隊による国民監視活動の中止を求めるとともに,「秘密保全法」の制定に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/4441

1 2007年6月に陸上自衛隊情報保全隊(現在は自衛隊情報保全隊,以下「情報保全隊」という。)が個人・団体の動向を監視し,その情報を系統的に収集・分析していた資料の存在が明らかになった際,当会は同年7月18日付け「陸上自衛隊情報保全隊による国民監視活動に抗議しその中止を求める会長声明」を発した。しかし,その後も情報保全隊が引き続き国民の種々の活動を監視していた実態が新たな内部資料(2010年12月1日付け,同年12月15日付け,同年12月22日付けの各週報)の発覚により明らかになった。これらの新たな内部資料(各週報)は現在仙台高等裁判所に係属中の自衛隊情報保全隊監視差止等訴訟において提出されたものであるが,これらの内部資料から認められる情報保全隊の活動実態の概要は以下のとおりである。
①情報保全課は,当該週に報告された主要な事項及び翌週の主要な予定を整理し,今後の注目点を示す目的で毎週「週報」を作成している。
②「週報」には,「王城寺原演習場近傍地域(色麻町内)において『11.22米軍実弾砲撃演習やめよ!宮城県(現地抗議)集会」における大和町議の発言(12月1日付け週報)や「自衛隊の国民監視訴訟を支援するみやぎの会」が約60名を集め,仙台市内において「裁判の勝利をめざす総決起集会」を行ったこと(同週報),「12.8開戦記念日関連動向」(12月15日付け週報)などといった市民集会のほか,「地方自治体等の動向」として自治体の首長や自治体幹部の言動(各週報),2010(平成22)年11月28日投開票が行われた沖縄知事選の候補者の動向・結果分析(12月1日付け週報)などが記録されている。
③また,12月1日付け「週報」は,「横田基地の撤去を求める西多摩の会」の座り込み行動について,通算回数を明記しているほか,「今回の行動での動員数,主張内容に,過去の取り組みとの変化は認められない。」と継続的に監視していなければ記載できない内容も記録されている。
④さらに,各「週報」には,「イスラム勢力・国際テロ組織関連動向」という項目において,全国のモスク(イスラム寺院)へ礼拝に訪れたイスラム教徒を分類し,特異動向の有無や人数も下一桁まで記録されている。 2当会が前記2007年7月18日付け会長声明及び2012年4月6日付け「仙台地裁判決を受けて,改めて自衛隊情報保全隊による国民監視活動の中止を求めるとともに秘密保全法制の法案化に反対する会長声明」において指摘したように,情報保全隊による国民監視は立憲主義に反し,プライバシー権(自己情報コントロール権)を侵害するものである。また,情報保全隊は,上記のような集会やデモ行進の監視のみならず,「イスラム勢力・国際テロ組織関連動向」という項目のもと,全国のモスク(イスラム寺院)へ礼拝に訪れたイスラム教徒を監視している。このような監視活動は,表現行為及び宗教行為に対する強い萎縮効果をもたらし,ひいては表現の自由及び信教の自由に対し重大な脅威を与えるものである。そもそも,情報保全隊の任務は,自衛隊の保有する内部情報の流出や漏洩の防止にあり,情報収集活動はその任務に必要な範囲内でしか許されない。しかるに,上記情報保全隊の監視活動は自衛隊の内部情報の流出や漏洩防止とは無関係であって,その範囲を逸脱していることは明らかであり,法的根拠を有しない違法な活動である。
3にもかかわらず,2010年12月時点においても情報保全隊が人権保障の理念を顧みず国民監視を継続していたことは由々しき事態である。そして,現在も同様のことが継続して行われている疑いを払拭させるような情報もない。
4よって,当会は,このような憲法や人権保障を無視する情報保全隊による国民監視を即刻中止するよう改めて強く求める。また,このような憲法違反の監視活動も,法案提出が企図されている「秘密保全法」が制定されてしまうと「特別秘密」として「保護」され,これを明らかにして追及しようという国民の行為や監視活動を内部告発することが「犯罪」として処罰されかねない。当会は,このような事態を生じさせる「秘密保全法」の制定に断固反対する。2013(平成25)年3月13日仙台弁護士会会長 髙 橋 春 男


平成25年03月13日 死刑執行に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/4436

2013(平成25)年2月21日,大阪拘置所、東京拘置所及び名古屋拘置所において,各1名合計3名の死刑確定者に対する死刑の執行が行われた。死刑は,罪を犯した人の更生と社会復帰の観点から見たとき,その可能性を完全に奪うという問題点を内包している。また,わが国の刑事裁判においては,4つの死刑確定事件(免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)の再審無罪判決が確定し,死刑確定事件における誤判の存在が明らかとなっているが,誤判が生じるに至る刑事裁判の制度上・運用上の問題点は抜本的な改善がなされていない。国際的にみても死刑廃止国は着実に増加し、現在の死刑廃止国(事実上の廃止国を含む)は141か国、死刑存置国は57か国であり、国際社会において死刑廃止が潮流となっていることは明らかである。1989(平成元)年12月の国連総会で死刑廃止条約が採択されて以来、国連の各種委員会からは、わが国に対して死刑廃止を求める決議や勧告が度々なされてきた。フランスやドイツの政府からも,今回の死刑執行に対し,死刑廃止に向かう世界的な流れに逆行するものであり,死刑執行を一時停止し,死刑制度について国民的議論を行うことを要請する声明が出されている。当会は,これまで,政府に対して,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間,死刑執行を停止するよう繰り返し要請してきた。また,日弁連は,本年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。その直後に死刑執行が行われたものであり,当会はかような事態に対して深い憂慮の念を示すとともに,強く抗議するものである。当会は,政府に対し,死刑制度が最も基本的な人権に関わる重大な問題であることに鑑み,死刑の執行を停止したうえで,死刑制度の存廃も含む抜本的な検討を行うことを重ねて強く要請するものである。2013(平成25)年3月13日仙台弁護士会会長 髙 橋 春 男
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余命三年時事日記 2259 ら特集10仙台弁護士会⑤10 [余命三年]

余命三年時事日記 2259 ら特集10仙台弁護士会⑤10
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/12/2259-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a410/ より

平成25年11月14日 法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会に対する意見書
ttp://senben.org/archives/4796
法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会に対する意見書
2013年(平成25年)11月14日
仙台弁護士会会長 内 田 正 之

【意見の趣旨】
法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会に対し
第1に,冤罪防止策,とりわけ黙秘権を中核とする被疑者・被告人の権利の保障を実質化するために,取調べ受忍義務否定と取調べへの弁護人立会権を明文化し,取調べの全過程の例外なき録画録音制度を法制化すること。
第2に,冤罪防止に資することがなく,人権侵害の危険がある捜査権限拡大策等は特別部会の検討対象としないこと。を求める。
【意見の理由】
第1 「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」の問題点(総論)
1 法制審議会特別部会設置の経緯
近年,足利事件(2010年に再審無罪),布川事件(2011年に再審無罪),氷見事件(無実の人が服役後に冤罪が判明),志布志事件(「踏み字」などの精神的拷問による取調べ)等の数々の自白強要等による冤罪事件や,村木事件(大阪地検特捜部による証拠改ざん,犯人隠避等の,捜査機関の一連の不祥事)を契機として,捜査の在り方等に対する大幅な見直しの必要性に注目が集まるようになった。そのような事態を受けて,法務省に設置された「検察の在り方検討会議」は,平成23年3月31日,「検察の再生に向けて」と題する提言を発表した。同提言は,「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方を抜本的に見直し,制度としての取調べの可視化を含む新たな刑事司法制度を構築するため,直ちに,国民の声と関係機関を含む専門家の知見とを反映しつつ十分な検討を行う場を設け,検討を開始するべきである」と結論づけた。法務大臣は,同提言を受け,平成23年5月18日,法制審議会に対して「近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑み,時代に即した新たな刑事司法制度を構築するため,取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しや,被疑者の取調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入など,刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について,御意見を承りたい。」とする諮問第92号を発した。同諮問を受け,法制審議会は,平成23年6月6日に開催された法制審議会第165回会議において,同諮問について調査・審議するための「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「特別部会」という。)の設置を決定した。
2 諮問第92号の趣旨
特別部会の設置に至る経緯が以上のとおりであることから,諮問第92号にいう「近年の刑事手続をめぐる諸事情」とは,捜査機関の自白強要を防止し,また捜査機関の暴走を抑止するための制度枠組みが存在しないこと,そのため冤罪・誤判が後を絶たなかったという状況を意味することは明らかである。したがって,諮問第92号の趣旨は,憲法及び刑事訴訟法上の適正手続の保障の趣旨を徹底させ,具体的には,取調べの全面可視化を中心として,密室における取調べなど,捜査機関の構造的な問題を抜本的に改善する方策を検討して,冤罪の根絶に資する方向での提言を行う役割を特別部会に求めたことにあり,これが,同部会が立脚すべき原点であったというべきである。
3 特別部会による「基本構想」の内容等
特別部会は,設置以来,約1年半の審議期間を経た平成25年1月29日の第19回会議において,「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」と題する取りまとめ(以下,「基本構想」という。)を発表した。「基本構想」は,その冒頭で「これまでの刑事司法制度において,捜査機関は,被疑者及び事件関係者の取調べを通じて,事案を綿密に解明することを目指し,詳細な供述を収集してこれを供述調書に録取し,それが公判における有力な証拠として活用されてきた。」「取調べによる徹底的な事案の解明と綿密な証拠収集及び立証を追求する姿勢は,事案の真相解明と真犯人の適正な処罰を求める国民に支持され,その信頼を得るとともに,我が国の良好な治安を保つことに大きく貢献してきたとも評される」と述べ,その上で,従来の取調べ依存型捜査には「ひずみ」が生じているので,捜査の適正確保という観点で「ひずみ」を修正する必要があるとした。また,同時に,「我が国の社会情勢及び国民意識の変化等に伴い,捜査段階での供述証拠の収集が困難化していることは,捜査機関における共通の認識となっている。」「公判廷で事実が明らかにされる刑事司法とするためには,その前提として,捜査段階で適正な手続きにより十分な証拠が収集される必要があり,捜査段階における証拠収集の困難化にも対応して,捜査機関が十分にその責務を果たせるようにする手法を整備することが必要となる一方で,公判段階も,必要な証拠ができる限り直接的に公判に顕出され,それについて当事者間で攻撃防御を尽くすことができるものであるべきであり,こうした観点から,捜査段階及び公判段階の双方について適切な配意がなされた制度とする必要がある。」として,次のような各方策を導いている。
(1)「取調べへの過度の依存からの脱却と証拠収集の適正化・多様化」(捜査段階)
ア 取調べの録音・録画制度の導入
イ 刑の減免制度,協議・合意制度及び刑事免責制度
ウ 通信傍受の対象の拡大・会話傍受
エ 被疑者・被告人の身柄拘束の在り方
オ 弁護人による援助の充実化
(2)「供述調書への過度の依存からの脱却と公判審理の更なる充実化」(公判段階)
ア 証拠開示制度
イ 犯罪被害者等及び証人を支援・保護するための方策の拡充
ウ 公判廷に顕出される証拠が真正なものであることを担保するための方策
(司法の機能を妨害する行為への対処)
エ 自白事件を簡易迅速に処理するための手続きの在り方
4 「基本構想」の問題点
最初に述べたとおり,そもそも特別部会は,憲法及び刑事訴訟法上の適正手続保障の趣旨を徹底し,冤罪の発生を根絶するため,密室における取調べなど,捜査機関の構造的な問題を抜本的に改善する方策の検討を行うために設置されたものである。ところが,「基本構想」は,従来の取調べ依存型捜査を抜本的に見直すことなく,取調べによって得られた「供述」に「過度」に依存しないようにすべきというだけで,むしろ,取調べによる自白を獲得することを捜査の主眼に置くこと自体については従前通りのあり方を肯定しているのである。また,供述の採取過程の形式的な「適正化」のみに目を向け,従前の取調べ制度に内在していた根本的な人権侵害の危険について検討することを回避しており,冤罪の温床となる自白の強要を根絶しようとする視点は全くない。さらには供述が獲得しにくくなったことを理由に,人権侵害の危険が増大することを考慮しないままに証拠収集をより容易にすることのみを目指すかのような姿勢までをも示している。この「基本構想」のとおりに法改正がなされるとすれば,黙秘権の保障を中核とする被疑者・被告人の権利の保障を実質化し,憲法及び刑事訴訟法上の適正手続保障の趣旨を徹底して冤罪・誤判等の発生を根絶することは極めて困難となるばかりでなく,かえって捜査機関の権限が不当に拡大され,より多くの冤罪・誤判及び人権侵害が発生することが懸念されるものである。よって,当会は,特別部会が年内にも意見を取りまとめるという状況にあることに鑑み,「基本構想」には多数問題が含まれているが,そのなかでも緊急に「意見の趣旨」記載の2点について要望する。
第2 黙秘権を中核とする被疑者・被告人の権利の保障を実質化し,捜査の適正を担保するための制度の法制化
1 全過程の例外なき録画録音制度の法制化
前記の経緯の中で設置された特別部会においては,全ての刑事事件について取調べ全過程の録画録音を法制化することが喫緊の課題であったはずである。しかしながら,「基本構想」の内容,及びその後の特別部会における議論においては,全事件の取調べ全過程の録画録音制度は検討対象としては消え去っており,以下に述べるとおり,録画録音対象犯罪の限定,録画録音の義務を免除する例外を広範に認める方向での議論が進められている。
第1に,録画録音の対象事件は,全刑事事件の3パーセントにも満たない裁判員裁判事件に限定され,かつ,身体拘束前の任意の取調べは録画録音対象とされていない。これでは,捜査の適正化の契機の一つとなった村木事件は録画録音対象とならず,志布志事件のように任意捜査の段階において被疑者を屈服させるような違法な捜査を防止することもできず,捜査の適正化という録画録音の目的は大きく後退することになる。
第2に,特別部会においては,録画録音義務を免除する広範な「例外」を設ける方向で論議されており,録音・録画により「弊害が生じるおそれがあると認めるとき」という一般条項さえ検討の対象に上っている。このような広範な例外規定の検討に対して,村木委員からは「原則と例外が逆転している」という批判的意見が述べられている。かかる広範な例外を認めるならば,結果的には捜査官の恣意によって都合の良い場面だけを録画録音するのに限りなく近い制度となり,録画録音は,かえって虚偽の自白を覆い隠す危険な制度と化してしまう恐れがある。捜査官が被疑者を誘導したり威迫・偽計によって困惑させたりする場面について恣意的に録画録音を免除できるような制度では,捜査の適正化を事後的に検証する制度としては機能しない。事後的検証のためには,一切の例外を認めることなく,任意捜査の段階も含めた取調の全過程の録画録音制度が法制化されなければならないのである。
2 黙秘権保障のための取調べ受忍義務否定と弁護人立会権の法制化
(1)黙秘権の保障を担保する取調べ受忍義務の否定法制化
憲法38条1項は,何人に対しても黙秘権を保障している。黙秘権は,違法の取調べの防止にとどまらず,自己に不利益な告白を強いられないという人間の尊厳に根ざした権利である。被疑者・被告人は無罪を推定され,訴追側の立証に協力したり,積極的に弾劾したり,無罪を立証することを強いられないことが権利として保障されているのである。黙秘権はこうした憲法上の人権として保障されている以上,被疑者・被告人がそれを行使すると決定した以上は,完全に尊重されなければならない。すなわち,黙秘権を行使した被疑者・被告人については,取調べを拒絶する権利の保障が必然的に導かれるのであり,黙秘権は取調拒絶権を必然的に内包しているというべきである。しかしながら,わが国においては,刑事訴訟法198条1項の反対解釈として,身体拘束中の被疑者には取調べ受忍義務があることを前提とした捜査が行われている。被疑者が供述を拒み黙秘権を行使することを決定した場合でも,取調室からの退去が認められないことにより,黙秘しようとする被疑者は,「代用監獄」の取調室という密室の中で,取調官による絶え間ない詰問と利益誘導,精神的なプレッシャーに晒されることになり,これが虚偽自白と冤罪の温床となってきた。密室を利用した捜査官によるプレッシャーによって,無実の人が虚偽自白が原因で冤罪となった事件は,初めに述べた足利事件等の著名な冤罪事件や,遠隔操作ウイルス事件(大学生を含む無実の人が自白を強要され刑事・少年法上の処分を受けた)等,枚挙にいとまがない。特別部会は,憲法が黙秘権を保障している趣旨に立ち返り,取調べ受忍義務を否定する規定を明文で確認する制度を法制化すべきである。自白獲得に依存した捜査構造を改め適正化することを任務とする特別部会において,取調べ受忍義務否定の問題が検討の対象にすら上がっていないこと自体が極めて遺憾と言わざるを得ない。
(2)取調べへの弁護人立会権を認めるべきこと
黙秘権保障を担保するためには,取調べへの弁護人立会権を法制化すべきである。黙秘権が真に保障されているか否かについて,法律専門家の視点からチェックし,供述するか否かについての利益不利益の検討,供述する範囲の検討等について,被疑者が主体性を発揮するためには弁護人の立会権保障が不可欠であり,既に欧米諸国,韓国,台湾など諸外国では当然の制度として位置づけられている。弁護人の立会いのない密室において自白獲得のための取調べに依存した我が国の捜査の構造については,今年の国連拷問禁止委員会において「中世のようだ」と批判されていることを特別部会は銘記すべきである。特別部会では,取調べ受忍義務をめぐって「取調べ受忍義務があるかどうかといった神々の争いとも言うべき議論を正面からしなければならない話になってくるので,そういうところまで踏み込んで議論するつもりですか」との発言,弁護人立会権を認めるべきであるという意見に対して「かつてどこかで読んだ教科書の理想型を全部並べておられる観がありましたけれども」,「このように,教科書的なメニューを羅列するより,もっと現実に必要でインパクトのあるところに絞って議論した方がよいのではないのかと思います」との発言があり,その後,上記の問題は特別部会の議論の対象から除かれてしまっている。こうした議論の仕方は,「抜本的な」見直しを行うとした特別部会の本来の任務を踏み外したものというべきであり,極めて大きな問題がある。特別部会においては,弁護人立会権を認めることは,取調べの自白獲得という有用な機能が果たせなくなるという意見があるが,こうした意見は,自白こそが最も重要な証拠であるとする,自白依存主義とでも言うべき考え方の表れである。しかし,こうした自白獲得に依存した捜査の構造を維持しようとする我が国の捜査実務を改革することこそが特別部会に課せられた任務であり,国際的に求められている水準であることを,特別部会は銘記すべきである。
3 結論
以上述べたとおり,仮に取調べの録画録音が実現したとしても,それだけで冤罪の原因となった密室における自白獲得依存の取調の在り方が根本的に改革されるわけではない。取調べ全過程の例外なき録画録音は,捜査の適正化のための最低限の必要条件であって十分条件ではないのである。捜査を適正化するためには,被疑者には取調べ受忍義務がないことの明文での確認,及び取調べへの弁護人立会権を明文化しなければならない。取調べ受忍義務の否定,取調べへの弁護人立会権の保障,捜査の適正を事後的に検証する制度としての取調べ全過程の例外なき録画録音制度が一体となってこそ,真に黙秘権を中核とする被疑者・被告人の権利は保障され,捜査の適正化が図られるのである。特別部会は,本来の任務に立ち戻って,上記のような制度の検討を行うべきである。
第3 捜査権限拡大策等を検討対象から除外すべきであること
1 捜査権限拡大策等が検討されていることについての批判
特別部会は,取調べの可視化については上記の通り不十分な検討しかしていない反面,捜査機関の権限を拡大させる方向等での検討には不必要なまでに重点を置いている。以下,重要なものに絞って指摘する。 2 通信傍受法の合理化・効率化及び会話傍受の導入の危険性
(1)特別部会は,犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(以下,「通信傍受法という)に定める通信傍受が組織犯罪等に対して持つ捜査上の有用性を強調し,これを「取調べを通じた事後的な供述証拠の収集に代替するもの」としてより効果的・効率的に活用する方向で検討を始めた。「基本構想」は,対象犯罪を拡大し,一定の場合に通信事業者による立会いを不要とすることなどを検討課題として掲げており,さらに,特別部会第1作業分科会が検討結果を中間的に取りまとめた「作業分科会における検討(1)」においては,通信傍受法の対象犯罪を窃盗,強盗,詐欺,恐喝,殺人,逮捕・監禁,略取・誘拐まで拡大することとして,重大犯罪とは言い難い類型の犯罪についてまで通信傍受の対象犯罪を拡大する方向での検討がなされている。
(2)しかし,そもそも通信傍受はその性質上,憲法の定める捜索・差押えにあたって場所及び対象物の特定を要求している令状主義(憲法35条),適正手続の保障(憲法31条)をはじめとする憲法上の要請を満たすことが困難な捜査手法である。また,かかる捜査手法はプライバシーの侵害等深刻な人権侵害をひろく生じさせる危険性をも内在するものである。現行の通信傍受法は平成11年に成立しているが,同法の検討段階から既にこのような批判はなされていたところであり,それゆえに従来の通信傍受法においては,対象犯罪はごく重大なものに絞られ,また,人権侵害を完全に防ぐにはなお不十分なものではあるにせよ,通信事業者の立会いなど厳格な手続的要件が設けられていたものである。それにも関わらず,特別部会においては,同法を「使い勝手が悪い」とする意見も出されており,特別部会全体としても対象犯罪を拡大し,通信事業者の立会いを不要とするなど,通信傍受をより広く認める方向での改正が検討されているのである。しかし,特別部会の議論は通信傍受という捜査手法に内在する危険を無視するものであり,同法の成立過程に照らしてみても到底許容できないものである。
(3)最大の問題は,一定の場所を対象とした会話傍受の制度化をも検討の対象としていることである。会話傍受は,傍受機器を用いて室内等で行われる会話そのものの傍受を可能とするものであるから,通信傍受以上に,令状主義,適正手続保障違反,個人のプライバシーに対する甚大な侵害となる。特別部会が会話傍受に関する議論を始めたこと自体,問題と言わざるを得ない。ところが,特別部会は,十分な議論を尽くすことさえしないまま,既に制度の採用を前提とするかのような技術的課題に関する議論を進めているのである。
(4)特別部会は,そもそも,今般の刑事司法制度改革をめぐる議論の始まりが,取調官による自白の強要に基づく冤罪事件の相次ぐ発覚と検察による証拠の改ざん問題にあったことを想起すべきである。捜査機関の構造的な問題を,捜査の適正を監視することによってではなく,捜査権限を拡大することによって解決するというのでは明らかに議論の方向性を誤っている。通信傍受法の対象犯罪の拡大や会話傍受の制度化といった捜査権限の拡大と強化は,自白の強要による冤罪の発生を抑止する効果を持つものではない。むしろ,このような改正を認めるならば,自白しなければ関係者・関係機関に対する会話傍受を行うことを示唆して捜査対象者を無理矢理自白に追い込むなど,かえって自白への不当な圧力を強める結果となるおそれさえある。通信・会話傍受の検討は,冤罪の根絶と適正な捜査の実現とは無関係であるだけでなく,令状主義等の憲法上の要請に反することにつながるものであり,特別部会において議論すべきものではない。
3 刑事免責制度(司法取引)の危険性
(1)特別部会においては,捜査への協力と引き換えに刑罰を減免する刑事免責制度,いわゆる司法取引の制度を設けようとしている。
(2)しかし,従前の司法取引に関する議論においては,刑罰の減免を条件に供述をさせることは,黙秘を貫けば相対的には不利な処分になり得ることから,被疑者の虚偽の自白を生み出す危険性が非常に高い,違法な「利益誘導」とされてきたところである。また,共犯者の自白についても,従前は引っ張り込みの危険があるとされ,その証拠能力・信用性が,通常の証言・供述よりも厳密に検討されるべきとされてきたところ,司法取引を認めるとすれば,かえって引っ張り込みの危険は増大する。
(3)また,従前は,量刑は裁判所が判断し,捜査機関の取調べの結果は量刑の判断においては検討の一つの材料に過ぎなかったところ,司法取引が導入された場合には,捜査機関が量刑の判断に直接の影響を及ぼすことになり,捜査機関の取調べの刑事司法制度への影響力をむしろ強めることになる。これは,密室での取調べによって自白を得ることを中心に据える従前の捜査のあり方を抜本的に見直すとした,そもそもの諮問の趣旨に反する結果となる。
(4)結局,司法取引を導入したとしても,虚偽の自白が強要・誘発される危険性が今までよりも増大し,結果的には黙秘権が侵害される危険が生じるのみならず,捜査機関が量刑の帰趨までも実質的に掌握する結果が招来されるだけであり,極めて問題が大きい。
4 被告人の証人化の危険性
(1)「基本構想」では,証人の不出頭,宣誓・証言拒絶の各罪の法定刑の引き上げ,証人の勾引要件の緩和,証拠隠滅等の法定刑の引き上げの他に,公判廷に提出される証拠が真正であることを担保するための方策として,被告人を証人として扱うという法改正が検討されている。具体的には,現在の被告人質問制度を廃止し,被告人が事件について事実を述べるためには,証人とならなければならず,被告人が証人となれば包括的黙秘権を放棄したものとし,一般の証人と同様の証言拒絶権の行使以外は黙秘や供述拒否を認めないこと,被告人の虚偽供述に対する制裁(偽証罪)を設けることが検討されている。
(2)しかし,被告人を証人として扱い,偽証罪の適用を認めることになれば,被告人の公判廷での供述に萎縮効果を与えることは明らかである。刑事訴訟法322条により,被告人の不利益供述は任意性さえ認められれば公判廷に提出されうる扱いとなっているのであるから,もし捜査段階では取調べの圧力に負けて虚偽の自白をした被告人が,公判廷において調書の内容と異なる供述をした場合には,「偽証罪」の圧力を背景に,検察から調書を元にした反対尋問がなされ,かえって被告人が真実を語ることができないことになりかねない。刑事訴訟法322条を改正せずに単に被告人を証人として偽証罪の制裁を科すことが可能になれば,裁判が,被告人の言い分に対して充分に耳を傾ける手続ではなくなってしまうことになり,適正手続の保障に反する結果となる。また,無実の被告人が証言のうえ有罪となった場合,公判廷で証言したことが偽証罪で処罰される事態も生じかねず,二重に冤罪を生み出す危険もある。
5 結論
特別部会は,取調べの可視化によって捜査機関の自白採取機能が低下することを懸念し,その交換条件としてこのように捜査機関の権限を拡大させる方向での改正を盛り込む方針であるとみられる。
しかし本意見書の意見の理由第1の通り,そもそも可視化について不十分な検討しかなされていない現状で捜査機関の権限拡大策等を検討するとすれば,特別部会の設置の趣旨は没却され,かえって違法捜査及びそれによる人権侵害を一層助長する結果になりかねない。
したがって,上記のような冤罪防止に資することがなく,人権侵害の危険がある捜査権限拡大策等は検討の対象から外されるべきである。

平成25年10月18日 特定秘密保護法案の制定に強く反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/4763

政府は,本年10月15日に開会した臨時国会における特定秘密の保護に関する法律案(以下,「本法案」という。)の提出及びその成立を目指している。従来,当会は秘密保護法制の問題点を指摘してきたが,本法案にも,看過できない重大な問題が存する。本来,国政に関する情報は主権者である国民に提供されるのが原則であるところ,現状,情報公開は不十分である。また,秘密の保護については既に国家公務員法や自衛隊法,MDA秘密保護法(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法)等によって秘密漏えい行為に対する罰則が設けられており,過去の秘密漏えい事案にしても情報管理システムの適正化や情報保全教育により防止できたものである。かかる状況に加え,以下に述べる具体的問題点からは,本法案は,弊害のみ多く,特定秘密保護の名の下に国民が知るべき情報を秘匿し,ひいては国民主権を後退させかねない危険をはらむものであることから,当会はその提出及び制定に強く反対するものである。
第一に,「特定秘密」の範囲が,「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」,「テロリズムの防止」と広範かつ不明確であり,本来秘密として保護すべき必要性のない情報までもが「特定秘密」として保護される危険性がある。この点,本法案は,「特定秘密」の指定等の統一的な運用基準について有識者の意見を聴かなければならない旨規定するが(法案第18条2項),これは,「特定秘密」指定の統一基準について意見を述べるにとどまり,個々の秘密の内容をチェックする権能を有さない。また,本法案は,「特定秘密」の指定を30年を超えて延長する場合には内閣の承認を必要とする旨規定するが(法案第4条3項),行政権力の恣意により秘密を維持する危険性があることに変わりはなく,また事実上30年間は「特定秘密」の指定を維持できることを認めることにほかならないのであって,問題点はなんら解消されていない。
第二に,「特定秘密」の範囲が広範かつ不明確であるとともに,故意の漏えい行為にとどまらず,過失による漏えい行為のほか,漏えい行為の未遂,共謀,教唆及び扇動,並びに「特定秘密」の取得行為(特定秘密の管理侵害行為)とその行為の未遂,共謀,教唆及び扇動についても処罰しようとしている(法案第22条ないし第26条)。これは,犯罪と刑罰を法律により具体的かつ明確に規定しなければならないという罪刑法定主義(憲法第31条)の観点から重大な疑義が存し,取材活動の萎縮や知る権利に対する制約をもたらす。この点,本法案は,「知る権利の保障に資する報道の自由又は取材の自由に十分に配慮」する旨規定する(法案第21条1項)。しかし,判例上,報道の自由が憲法第21条の保障のもとにあることは確立されており,また,取材の自由も憲法第21条の趣旨に照らし十分尊重に値するものとされているのであるから,改めてその文言を規定する実益は乏しい。また,本法案は,取材行為について「専ら公益を図る目的を有し,かつ,法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは,これを正当な業務による行為とする」と規定するが(法案第21条2項),「著しく不当」の意味内容が漠然不明確であり,濫用防止効果には疑義がある。このように,知る権利や報道の自由,取材の自由について配慮規定が置かれたとしても,取材活動などの国民の自由に対して深刻な萎縮効果を与える懸念は全くぬぐい去れない。
第三に,本法案では,国会議員への特定秘密の提供は行政機関の長等の裁量に委ねられており,提供するための条件も政令で定めるとされている(法案第10条)。加えて,特定秘密を漏えいした国会議員も処罰(過失も含む)の対象としており(法案第22条2項,3項,5項,第10条1項1号イ),国会議員が秘密の委員会や調査会で知得した「特定秘密」に係る情報を他の議員等に知らせることができなくなってしまう。これは,国会や国会議員が行政機関のコントロール下にあるに等しく,議会制民主主義の否定ともいうべき大問題である。
第四に,特定秘密を取扱う者を選別する適性評価制度は,特定有害活動及びテロリズムとの関係,犯罪・懲戒歴や薬物の乱用又は影響に関する事項,精神疾患に関する事項,飲酒についての節度に関する事項,信用状態等といった機微にわたるプライバシー情報を調査するとともに(法案第12条2項),本人の友人等についてまで調査するおそれがあり,プライバシーを侵害する危険がある。
上記問題点に加え,政府が本法案の提出に先だって実施したパブリックコメントにおいては,わずか2週間の間に9万件を超える意見が寄せられ,そのうちの実に4分の3以上となる約77%が法案に反対している点も重く捉えられるべきである。以上の理由から,本法案は国会に提出されるべきではなく,当会は本法案の制定に強く反対する。
2013年(平成25年)10月18日仙台弁護士会会長内田正之

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余命三年時事日記 2258 ら特集10仙台弁護士会⑤9 [余命三年]

余命三年時事日記 2258 ら特集10仙台弁護士会⑤9
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/12/2258-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a4%ef%bc%99/ より

成26年08月19日 「特定秘密の指定及びその解除並び適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」に対する意見書
ttp://senben.org/archives/5496
「特定秘密の指定及びその解除並び適性評価の実施に関し
統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」に対する意見書
2014年(平成26年)8月19日
内閣官房特定秘密保護法施行準備室「意見募集」係 御中
仙 台 弁 護 士 会
会長 齋 藤 拓 生
仙台市青葉区一番町2丁目9番18号
電話 022-223-1001

第1 はじめに
特定秘密保護法は,国民の知る権利やプライバシー権等の人権を侵害し,国民主権にも抵触する重大な問題を孕んでいる。したがって,同法は廃止されるべきであり,少なくとも抜本的な見直しがないままの施行は許されない。そして,法律自体に憲法上の問題がある以上,それに基づく運用基準も制定されるべきではない。
また,この点を置くとしても,2014年7月24日付けで公表され意見募集がなされている「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」(以下「運用基準案」という。)にも看過し難い問題があるため,以下のとおり意見を述べる。
第2 意見
1 総論
(1)法形式について
そもそも法律で定めるべき重要事項を政令及び運用基準において定めているという法形式自体に問題がある。 政令及び運用基準は,法律の委任を受けて政府が定めるとされているが,白紙委任に等しい項目もあり,国民の権利義務に直結する重要事項は法律で定めるべきとの原則に照らしても問題がある。また,政令や運用基準が,法律と異なり,国会の議論を経ることなく改廃できる点においても大きな不安が残る。
(2)意見の観点
前記第1で述べたとおり,当会は,特定秘密保護法は廃止されるべきと考えるが,本意見書では運用基準案について,①特定秘密保護法の濫用的な運用を抑制できないこと,②特定秘密保護法の委任の範囲外の事項を定めていること,③特定秘密保護法の問題点がより一層明らかになったこと,の観点から意見を述べる。
2 運用基準案「Ⅰ 基本的な考え方」の「1 策定の趣旨」について
(1)意見
特定秘密の指定の範囲を極力限定すること,指定の恣意性の排除を担保することを「策定の趣旨」に明記していないのは不適切である。
(2)理由
「策定の趣旨」では,「特定秘密の漏えいの防止を図るとともに,その適正を確保する」ことを掲げているが,全体として特定秘密指定された情報の漏えいを防止することに力点が置かれ,特定秘密の指定範囲の限定や恣意的な指定の排除といった国民の知る権利への配慮や秘密指定の適正さの担保の観点が欠落している。
3 運用基準案「Ⅰ 基本的な考え方」の「2 特定秘密保護法の運用に当たって留意すべき事項」の「(1)拡張解釈の禁止並びに基本的人権及び報道・取材の自由の尊重」について
(1)意見
国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)を踏まえておらず不適切である。
また,ツワネ原則で示されている諸原則が特定秘密保護法に明記されていないこと自体が不適切である。
(2)理由
国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)で定められている以下の諸原則が特定秘密保護法や運用基準案では定められておらず,恣意的な秘密指定を抑制することができず,不適切である。
①国民の情報アクセス権を制限する正当性の証明が政府の責務であることの明示(原則1,4)
②政府が秘密にしてはならない情報の明示(原則10)
③秘密指定が許される最長期間の明示(原則16)
(特定秘密保護法第4条は秘密指定の有効期間を定めているが,同条ただし書では永久秘密を認めており,最長期間の明示が不徹底である。)
④国民が秘密解除を請求するための明確な手続規定(原則17)
⑤全ての情報にアクセスできる独立した監視機関の設置(原則6,31~33)
⑥内部告発者の保護規定(原則37~46)
⑦一般国民は秘密情報を求めたり入手したりしたという事実を理由にした刑事訴追をされない(原則47)
4 運用基準案「Ⅰ 基本的な考え方」の「2 特定秘密保護法の運用に当たって留意すべき事項」の「(2)公文書管理法と情報公開法の適正な運用」について
(1)意見
① 特定秘密指定の有効期間の長短にかかわらず,恣意的な文書廃棄を防止するための具体的措置が明記されていないのは不適切である。
② 特定秘密指定についての政府の説明責任が不明確である。
(2)理由
① 特定秘密に指定される情報は,国家の安全保障に関するものであるから,基本的に歴史資料として重要なものであると認められる。したがって,事後の検証を確保するために,特定秘密に指定された情報を記録する公文書については恣意的に廃棄されない仕組みが必要不可欠である。しかし,特定秘密保護法や運用基準案ではその仕組みが無く,恣意的な文書廃棄を許容するかたちになっている。② ツワネ原則(原則1,4)にも示されている点であり,国民主権の下では国政に関する情報は国民に開示されるのが大原則であり,政府は特定秘密指定する場合には,当該情報を特定秘密にした具体的根拠について説明する責任がある。しかし,特定秘密保護法や運用基準案ではこの点が明記されておらず,恣意的な特定秘密指定をしても抽象的な説明のみに終始し,国民がそれを追及する可能性を閉ざしている。
5 運用基準案「Ⅰ 基本的な考え方」の「2 特定秘密保護法の運用に当たって留意すべき事項」の「(3)特定秘密を取り扱う者等の責務」について
(1)意見
特定秘密取扱者等が違法秘密や疑似秘密(時の政府の政治的利益のために特定の情報を秘匿する目的で指定される秘密)に接したときには通報の措置をとる責務が無いのは不適切である。
(2)理由
恣意的な特定秘密指定を排除するためには特定秘密取扱者等からの通報も重要な意義を有するところ,特定秘密取扱者等の責務として違法秘密や疑似秘密に接したときの措置を定めていないのは不適切である。
6 運用基準案「Ⅱ 特定秘密の指定等」の「1 指定の要件」の「(1)別表該当性」について
(1)意見
違法な行為に関する情報が除外されていないのは不適切である。
また,特定秘密保護法で定められていない米軍に関する情報までをも運用基準案に盛り込むことは法律の委任の範囲を逸脱しており不適切である。運用基準案に示されている事項は抽象的・広範であり,具体的な対象が示されていない。そのため,限定機能を果たしておらず,特定秘密の範囲が広範であるという特定秘密保護法の問題点は何ら解消されていない。
(2)理由
例えば,運用基準案の別表第1号のイa(b)では「自衛隊の情報収集・警戒監視活動」が定められているが,ここには仙台地裁平成24円3月26日判決(判例時報2149号99頁)において,「各原告がした活動等の状況にとどまらず,これら各原告の氏名,職業に加え,所属政党等の思想信条に直結する個人情報を収集」しており,「人格権を侵害」し違法であるとされた自衛隊情報保全隊による国民監視活動も含まれることになる。自衛隊情報保全隊国民監視訴訟における自衛隊情報保全隊長等の証人尋問申請に対して,防衛大臣は民事訴訟法第191条第2項に規定する「公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合」に該当するとして証言することの承認を行わない旨回答しているが,特定秘密保護法施行後は特定秘密に指定されているという理由のみで証言の承認を拒否するおそれがあり,違法行為が国民に知らされないことが「保障」されてしまう。運用基準案の別表第1号のイbには「アメリカ合衆国の軍隊(以下「米軍」という。)の運用」が明記されている。しかし,これは特定秘密保護法には明記されていない事項であり,明らかに法律の委任の範囲を逸脱している。運用基準案によっても特定秘密の範囲は限定されておらず,広範な情報を特定秘密にし,刑事罰の威嚇をもって国民から遠ざけるという特定秘密保護法の問題点は何ら解消されていない。
7 運用基準案「Ⅱ 特定秘密の指定等」の「1 指定の要件」の「(2)非公知性」について
(1)意見
非公知性の判断は,客観的になされるべきであり,少なくとも外国の政府により公表・開示されたり,報道機関により公表された情報は一律に非公知性の要件を欠くとすべきである。
(2)理由
国民の知る権利保障の観点からは,当該情報が国民が知り得べき状態に至った場合には一律に非公知性を欠くとするのが適切である。
8 運用基準案「Ⅱ 特定秘密の指定等」の「1 指定の要件」の「(3)特段の秘匿の必要性」について
(1)意見
運用基準案で示されている例示は抽象的であり,不適切である。
(2)理由
当該情報の漏えいにより「我が国の安全保障に著しい支障を与える事態が生ずるおそれ」の有無は具体的になされるべきであり,運用基準案に例示されている程度の抽象的判断では限定機能を果たさない。
9 運用基準案「Ⅱ 特定秘密の指定等」の「1 指定の要件」の「(4)特に遵守すべき事項」について
(1)意見
「イ 公益通報の通報対象事実その他の行政機関による法令違反の隠蔽を目的として,指定してはならないこと」の「隠蔽を目的」は不要である。また,公益通報の対象事実その他の行政機関による法令違反は特定秘密指定してはならないことは,特定秘密保護法に明記すべき事項である(前記第2-3参照)。
(2)理由
「隠蔽目的」という主観的要素が加えてしまうと,法令違反を特定秘密に指定する際に隠蔽目的は無いという口実を与えることになる。
10 運用基準案「Ⅱ 特定秘密の指定等」の「3 指定手続」の「(2)」について
(1)意見
① 「行政機関の長は,指定する際には書面又は電磁的記録により,当該指定に係る情報を他の情報と区別することができ」は「区別しなければならず」となっておらず,不適切である。
② 「指定の要件を満たしていると判断する理由」は,具体的に記述されるべきであり,特に,別表該当性については,単に別表に該当するだけでなく,その具体的事情が明記されるべきところ,運用基準案ではそこまで言及しておらず不適切である。
(2)理由
① 特定秘密を明確にするためには,当該指定に係る情報と特定秘密として取り扱うことを要しない他の情報とは,常に区別することが求められるというべきである。
② 「指定の要件を満たしていると判断する理由」が形式的・定型的な記述で良いとすれば,特定秘密の要件を定めた趣旨が失われるおそれが大きいので,「指定の要件を満たしていると判断する理由」は具体的に記述されるべきである。特に,別表該当性については,単に別表に該当するというだけでは実質的には理由が全く記述されていないのとを同じであるから,具体的事情まで記述されるべきである。
11 運用基準案「Ⅱ 特定秘密の指定等」の「3 指定手続」の「(4)」について
(1)意見
災害時の住民の避難等国民の生命及び身体を保護する観点から,特定秘密の指定を解除すべきとされる情報は,そもそも特定秘密指定の対象とすべきではない。
(2)理由
上記情報は,本来,被災時に国民が適確に判断して避難できるように広く公開されるべきであり,特定秘密指定にはなじまない。
12 運用基準案「Ⅱ 特定秘密の指定等」の「4 指定の有効期間の設定」について
(1)意見
情報通信技術の動向に密接に関係する情報については,指定に理由を見直すに当たって適切な最も短い期間を「3年等」としているのは不適切である。
(2)理由
情報通信技術の発展速度に鑑みれば,3年等は長すぎる。
13 運用基準案「Ⅱ 特定秘密の指定等」の「6 指定した特定秘密を適切に保護するための規程」について
(1)意見
特定秘密の保護措置は,政令や運用基準に委ねるのではなく特定秘密保護法で明記すべきである。 また,施行令案第12条第1項第10号は特定秘密の漏えいのおそれがある緊急事態に際して特定秘密文書等の廃棄を定めているが,これは法律の委任の範囲を逸脱するものであるから削除すべきであり,運用基準案からも削除すべきである。
(2)理由
特定秘密の保護措置は,特定秘密の保護を目的とする法律の中心的な事項であるから,本来法律で明記すべき事項である。にもかかわらず,政令や運用基準に委ねることは,国会によるチェックを無にしてしまうものであって適切ではない。また,施行令案第12条は特定秘密保護法第5条第1項に基づくものであるところ,同項では政令への委任の範囲として特定秘密文書等の廃棄にまでは言及していない。にもかかわらず,政令や運用基準案で廃棄を規定することは法律による委任の範囲を逸脱するものである。
14 運用基準案「Ⅲ 特定秘密の指定の有効期間の満了,延長,解除等」の「1 指定の有効期間の満了及び延長」の「(1)指定時又は延長時に定めた有効期間が満了する場合」について
(1)意見
アないしオに掲げられた情報について,特定秘密指定の有効期間を延長する前提での記述となっており不適切である。
(2)理由
アないしオに掲げられた情報は役割を終えた情報であるから,特定秘密として保護する必要性は認められない。
15 運用基準案「Ⅲ 特定秘密の指定の有効期間の満了,延長,解除等」の「3 指定が解除され,又は指定の有効期間が満了した当該指定に係る情報を記録する行政文書で保存期間が満了したものの扱い」の「(2)指定の有効期間が通じて30年以下の特定秘密」について
(1)意見
指定の有効期間が通じて30年以下の特定秘密も,すべて国立公文書館等に移管すべきであり,法律で明記すべきである。
(2)理由
特定秘密に指定される情報は,国家の安全保障に関するものであるから,基本的に歴史資料として重要なものであると認められる。したがって,事後の検証を確保するために,特定秘密に指定された情報を記録する公文書については恣意的に廃棄されない仕組みが必要不可欠である。
16 運用基準案「Ⅳ 適性評価の実施」の「1 適性評価の実施に当たっての基本的な考え方」の「(1)プライバシーの保護」について
(1)意見
同意を得る対象に評価対象者の家族同居人も加えていないのは不適切である。また,この点が特定秘密保護法に明記されていないことも不適切である。
(2)理由
適性評価の実施においては,評価対象者のみならず家族同居人のプライバシーも関わる以上,彼らのプライバシー情報を同意無く取得することは不適切である。
17 運用基準案「Ⅳ 適性評価の実施」の「1 適性評価の実施に当たっての基本的な考え方」の「(2)調査事項以外の調査の禁止」について
(1)意見
「適法な」政治活動及び労働組合の活動の内容が曖昧であり,不適切である。信教の自由への配慮がないのも不適切である。禁止事項に違反した調査を行った職員に対する懲戒処分その他適切な措置を講ずることの明記がないことも不適切である。 以上の点が特定秘密保護法に明記されていないことも不適切である。
(2)理由
政治活動や労働組合活動に「適法な」と限定を付すことにより,その内容の曖昧性,第一次判断者が政府や行政機関となることに鑑みると,恣意的判断のおそれや萎縮効果の危険がある。また,警察庁や自衛隊情報保全隊はイスラム教徒やその団体を「国際テロ容疑」で調査していたことが明らかになっており,このような調査が信教の自由を侵害していることは明らかである。このような違法な調査を禁止する措置が特定秘密保護法や運用基準案で明記されていないのは不適切である。プライバシーや思想信条の自由,信教の自由等の保護の観点からは,禁止事項に違反した職員に対して懲戒処分その他適切な措置を講じる必要があるところ,その記述がないのも不適切である。
18 運用基準案「Ⅳ 適性評価の実施」の「1 適性評価の実施に当たっての基本的な考え方」の「(3)適性評価の目的外利用の禁止」について
(1)意見
目的外利用の禁止の範囲を「人事評価のために」に限定するのは不適切である。また,禁止事項に違反した調査を行った職員に対する懲戒処分その他適切な措置を講ずることの明記がないことも不適切である。この点が特定秘密保護法に明記されていないことも不適切である。
(2)理由
特定秘密保護法第16条は,特定秘密の保護以外の目的で適性評価の結果やその実施に当たって取得した個人情報の利用・提供を禁止している以上,運用基準案で「人事評価のために」に限定するのは不適切である。プライバシー保護の観点からは,禁止事項に違反した職員に対して懲戒処分その他適切な措置を講じる必要があるところ,その記述がないのも不適切である。
19 運用基準案「Ⅳ 適性評価の実施」の「4 適性評価の実施についての告知と同意」の「(1)評価対象者に対する告知」について
(1)意見
① 別添1の「告知書」の「2 適性評価で調査する事項」のうち,特定有害活動及びテロリズムの防止に関する事項が具体的でなく,不適切である。
② 別添1の「告知書」の「3 調査の方法」において,個別的に同意書をとることを前提にしていないのは不適切である。
(2)理由
① 特定有害活動及びテロリズムの防止に関する事項が具体的でないため,どのようなことが調査されるのかが不明であり,同意不同意についての正確な判断を阻害しかねない。
② 調査開始前に同意書を提出するため,評価対象者は,どのような事項について,どのような調査(調査のためにどこに照会するのか,どのような内容の調査をするのか等)が具体的に分からないまま同意書の提出を余儀なくされる。このような同意書をあらゆる調査についての包括的同意を与えたものとすることは,白紙委任を認めたに等しくプライバシー保護の観点からは不適切である。
20 運用基準案「Ⅳ 適性評価の実施」の「4 適性評価の実施についての告知と同意」の「(2)同意の手続」について
(1)意見
① 包括的な同意は不適切である。
② 評価対象者の家族・同居人を調査する際に彼らから同意書を取得しないことは不適切である。
(2)理由
① 別添2-1の「同意書」では,「私の知人その他の関係者に」質問させ,資料の提出を求めさせることに同意する旨の記載がある。しかし,これではどの範囲の知人その他の関係者なのかが不明であり,白紙委任的な内容である。このような同意取得の手続では,真の同意を取得したことにならない。
② 特定秘密保護法第12条第2項第1号は,評価対象者の家族・同居人の氏名,生年月日,国籍(過去に有していた国籍を含む。)及び住所を調査事項と定め,同条第4項ではさらに調査することも認めている。これらは個人情報に該当するところ,家族・同居人の同意を取得せずに調査することはプライバシー保護の観点からみて不適切である。
21 運用基準案「Ⅳ 適性評価の実施」の「4 適性評価の実施についての告知と同意」の「(3)不同意の場合の措置」について
(1)意見
不同意書面を要求するのは不適切である。
(2)理由
添付3の「不同意書」には,不同意の結果「特定秘密の取り扱いの業務が予定されていないポストに配置換となること等」があることが予告されている。「配置換となること等」という不明確な取扱いの予告は,評価対象者に強い不安感を与えるものであり,事実上同意を強制することにつながるおそれがある。
22 運用基準案「Ⅳ 適性評価の実施」の「8 苦情の申出とその処理」の「(1)苦情の処理のための体制」及び「(3)苦情の処理の手続」について
(1)意見
苦情処理担当者には,当該苦情申立をした評価対象者の適性評価の実施に直接従事した職員のみならず,調査の過程で質問や資料提供に応じた職員も指定されるべきではない。
(2)理由
適正に苦情処理を行うためには,当該適性評価の実施に関与していない者が行うのが適切である。
23 運用基準案「Ⅴ 特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の適正を確保するための措置等」の「3 特定秘密の指定及びその解除並びに特定行政文書ファイル等の管理の検証・監察・是正」の「(1)内閣府独立公文書管理監(仮称)による検証・監察・是正」について
(1)意見
内閣府独立公文書管理監(仮称)及び内閣府情報保全監察室の独立性を確保するためには,構成員に弁護士,研究者その他外部の有識者を入れ,行政機関から就任する構成員についてはいわゆるノーリターン・ルールを導入すべきである。
(2)理由
内閣府独立公文書管理監及び内閣府情報保全監察室も内閣府に設置される組織であり,独立性・中立性には問題がある。そこで,少なくとも構成員については独立性・中立性が確保できる措置を講じるべきである。
24 運用基準案「Ⅴ 特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の適正を確保するための措置等」の「3 特定秘密の指定及びその解除並びに特定行政文書ファイル等の管理の検証・監察・是正」の「(2)行政機関の長による特定秘密指定管理簿の写しの提出等」について
(1)意見
内閣府独立公文書管理監に特定秘密に対するアクセス権限が認められていないのは不適切である。
(2)理由
運用基準案では,行政機関の長は内閣府独立公文書管理監からの特定秘密の提供の求めに対して拒否できることになっている。しかし,これでは特定秘密の指定の適正を検証・監察・是正することは不可能であり,ツワネ原則31~33にも反している。
25 運用基準案「Ⅴ 特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の適正を確保するための措置等」の「4 特定秘密の指定及びその解除並びに特定行政文書ファイル等の管理の適正に関する通報」の「(1)通報の処理の枠組み」,「(2)通報の処理」について
(1)意見
通報窓口が行政機関と内閣府独立公文書管理監に限定されており,いずれの対応も不十分だった場合における通報の手段が無いのは不適切である。また原則として最初に行政機関の通報窓口に通報する仕組みとしていることは,不適切である。
(2)理由
行政機関及び内閣府独立公文書管理監の通報処理が不十分な場合の仕組みがなければ,特定秘密指定の適正確保は実現できない。
また,行政機関の通報窓口に通報しても適正に処理されるか疑わしい面もあり,通報者も心情的に躊躇してしまうおそれがあるため,少なくとも独立公文書管理監への通報も自由に選択できるような仕組みにすべきである。
26 運用基準案「Ⅴ 特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の適正を確保するための措置等」の「5 特定秘密保護法第18条第2項に規定する者及び国会への報告」について
(1)意見
報告事項が基本的に件数のみであり,適切な監督が期待できない。
(2)理由
件数のみの報告では,概要すら知ることができず,報告に基づいた適切な監督を行うことは不可能である。
以 上

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余命三年時事日記 2257 ら特集10仙台弁護士会⑤8 [余命三年]

余命三年時事日記 2257 ら特集10仙台弁護士会⑤8
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/12/2257-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a4%ef%bc%98/ より

平成26年07月23日 東日本大震災後の宮城県沿岸で行われている海岸堤防建設事業の見直し等を求める意見書
ttp://senben.org/archives/5278
東日本大震災後の宮城県沿岸で行われている海岸堤防建設事業の見直し等を求める意見書(PDF版)
東日本大震災後の宮城県沿岸で行われている海岸堤防建設事業の見直し等を求める意見書
宮城県知事   村井 嘉浩 殿
仙台市長    奥山恵美子 殿
宮城県議会議長 安藤 俊威 殿
仙台市議会議長 西澤 啓文 殿
2014年(平成26年)7月23日
仙 台 弁 護 士 会
会長 齋 藤 拓 生

意見の趣旨
1 宮城県及び仙台市は、一定規模を超える海岸堤防事業を行うにあたっては、少なくとも東日本大震災復興特別区域法第72条に規定される特定環境影響評価程度の環境影響評価を義務づけるなど環境影響評価条例を改正すべきである。
2 宮城県は、
(1) 特に景観上保護すべき地域を景観計画区域に指定したうえで、海岸堤防の復旧、建設にあたっても景観協議会の設置など必要な措置をとったうえで建設を進めること。
(2) 宮城県は、同県の沿岸地域における海岸堤防を建設するにあたっては、セットバックなどの海岸堤防の建設位置の変更や規模や工法の変更など生物多様性や景観など周辺環境に配慮した計画の再検討を行なうこと。
(3) 必要性に疑問が呈されている海岸堤防建設については、復興予算の適正な利用・財政の健全性の観点からその必要性を十分に精査し、その計画の撤回も含めた柔軟な対応を行うこと。
(4) 同県沿岸地方における海岸堤防建設が沿岸住民の利益に重要な影響があることに鑑み、海岸堤防建設についての対立がみられる地域については、関係自治体、周辺住民、漁業者、学識経験者等からなる協議会を設置するなど住民合意に向けた適切な措置をとること。
意見の理由
第1 海岸堤防計画の概要
1 設計津波の水位の設定方法の通知
東日本大震災による大規模な津波被災を踏まえ、東日本復興構想会議は、「防波堤・防潮堤については、比較的頻度の高い津波、台風時の高潮・高波などから陸地を守る性能を持ったものとして再建する」との見解を示し、2011年(平成23年)6月25日の中央防災会議専門委員会のとりまとめでは、「海岸保全施設等の整備の対象とする津波高を大幅に高くすることは、施設整備に必要な費用、海岸の環境や利用に及ぼす影響などの観点から現実的ではない。」「しかしながら、人命保護に加え、住民財産の保護、地域の経済活動の安定化、効率的な生産拠点の確保の観点から、引き続き、比較的頻度の高い一定程度の津波高に対して海岸保全施設等の整備を進めていくことが求められる。」との見解が示された。かかるとりまとめを踏まえ、同年7月8日、国土交通省及び農林水産省は、海岸管理部局に対し、「設計津波の水位の設定方法等」と題する通知を発し、復興計画策定の基礎となる海岸堤防の高さ決定の基準を示した。かかる基準をもとに、各被災地においても、設計津波の水位を設定することとなった。
2 宮城県における海岸堤防高の設定
宮城県でも、上記基準をもとに、次のような設計津波の水位を設定することとなった。
すなわち、東日本大震災の際に発生した1000年に一度と言われる最大クラスの津波(いわゆるL2津波)は発生頻度が低いうえに、施設整備に必要な費用や海岸の環境・利用に及ぼす影響等の観点から、整備の対象とする津波の高さを大幅に高くすることは非現実的であるとして、住民の生命を守ることを最優先として、住民の避難を軸に、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせる津波対策をとる。一方、数十年から百数十年単位で発生する津波(いわゆるL1津波)は、L2津波に比べて発生頻度が高いことから、L1津波に対しては、住民の生命を守ることに加え、住民財産の保護、地域経済の安定化などの観点から引き続き海岸堤防の整備を進めることが必要であるとし、海外堤防の整備によって、確実に津波から街を防御するとの考え方をとる。かかる考え方に基づき、宮城県では、明治三陸津波や昭和三陸津波、チリ地震津波などの過去の津波を対象にせり上がりを考慮して、設計津波の水位を設定し、かかる水位を前提に海岸堤防の高さを決定している。宮城県では概ね設計水位から1メートル高く海岸堤防の高さが設定されており、例えば、気仙沼市の本吉海岸では9.8メートル、同市の中島海岸では14.7メートルの堤防高が設定されている。そして、計画による堤防高は、東日本大震災前の既存堤防の高さより大幅に高く設定されており、例えば、本吉海岸の既存堤防高が2.5メートルから5.5メートルであることと比較しても、2倍から4倍近くの高さの規模の堤防が計画されているなど、既存堤防高と比較しても大規模な復旧・建設事業となるだけでなく、岩手・宮城・福島の被災三県で総延長300kmにも及ぶ海岸堤防を復旧する大規模事業となっている。
第2 問題点
海岸堤防は以上のとおり人命保護・住民財産の保護・地域の経済活動の安定化・効率的な生産拠点の確保という点で極めて重要であるが、海岸堤防の設置のあり方によっては、建設地域の生物多様性や景観等への影響や住民の意思との乖離といった問題もあることから、その設置あたっては以下のように配慮すべきである。
1 生物多様性・景観への配慮
(1) 生物多様性についての問題点
ア 生物多様性の保全が重要な人権課題となっていること
2010年(平成22年)10月、名古屋で生物多様性条約の第10回締約国会議が開催された。同会議において、海洋生物多様性に関しても、重要課題に挙げられ、戦略目標も定められた。同時に、地球上で40億年かけて3000万種にもなった多様な生物の種が、急速に減少しつつあり、このため、地球生態系の一員として他の生物と共存し、食料、医療、科学等に生物を幅広く利用し、その生存と文化を生物の多様性に深く依存してきた人類の存続が危うい状況であるという認識が共有された。このように、生物多様性が失われると、現在及び将来の世代の基本的人権の基礎となる生存の基盤そのものが脅かされるのであるから、生物多様性を守ることは全世界共通の根源的な人権課題である。
イ 計画予定地域の生物多様性
海岸堤防の建設地域もしくは建設予定地は、岩手県から宮城県北部にかけてはリアス式海岸、宮城県南部から福島県にかけては、蒲生干潟や鳥の海、松川浦など多くの汽水域を含む地域として生物多様性の富んだ豊かな沿岸域となっている。そして同地域には、レッドリスト掲載種を多数育むなど生物多様性の見地から保全上の配慮をすべき地域として2001年(平成13年)に環境省により「日本の重要湿地500選」に選定された湿地が多数存在している(№80ないし№86)。宮城県内だけでも、藻場の豊富な広田湾をはじめ、浅海域としてコクガンの飛来地である南三陸海岸沿岸、アマモが豊富な志津川湾のほか、仙台湾周辺でも蒲生干潟をはじめとした仙台海浜潟湖郡が上記重要湿地に選定されている。震災後に発表された農林水産省の生物多様性戦略(2012年(平成24年)2月2日改訂)でも、「三陸地方は、リアス式海岸に見られる数多くの細い入り江とその奥の狭隘な平地、そこに流れ込む川など、森・川・海のつながりが濃密な地域である。これら地域においては、生物多様性の早期の復活、そして生態系サービスの増進のためには、森から川や海に至る結びつきを考慮して復興に取り組むことが重要である」と復興にあたっての生物多様性に対する配慮が指摘されているところである。特に、岩手県から宮城県北部にかけての三陸海岸沖は、世界三大漁場の1つとして優良な漁場であるほか、リアス式海岸が養殖の好適地であることから、沿岸部の住民は、生物多様性からの恩恵を受けながら生活をしている。
ウ 生物多様性の観点からの懸念
このような生物多様性に富む地域において、原状復旧を超える巨大な海岸堤防を建設することになれば、内陸と沿岸の間での生物や土砂の移動を妨げ、干潟、砂丘、後背湿地といった、海岸付近に固有な生態系やその連続性(エコトーン)の破壊を招きかねない。特に海岸堤防の設置が波打ち際になされると、陸側の砂の移動が抑制され、海岸特有の砂浜などの陸地と海域の境界域を失うこととなる。境界域の消失によってその領域の生態系そのものが破壊されることはもちろん、堤防高が高くなる分沖合いに長く張り出した海岸堤防の土台などにより、底生生物や海中の生態系への悪影響も懸念される。国土交通省策定の「河川・海岸構造物の復旧における景観配慮の手引き(平成23年11月)」においても、堤防設置位置による生態系への影響について同趣旨の指摘を行なっている。
エ 環境影響評価がなされていないこと
このような影響が懸念される以上、海岸堤防の環境に対する影響を事前に評価することが必要である。にもかかわらず、海岸堤防事業は、環境影響評価法及び宮城県と仙台市の環境影響評価条例の対象事業となっていないため、海岸堤防建設は、その規模にかかわらず環境影響評価の対象外となっている。また、今回の海岸堤防の大部分が復旧事業に該当し、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法上、効用を含めた広義の原型復旧が基本にあるため、その事業規模にかかわらず上記法律及び条例の適用除外とされている問題もある。しかし、今般の海岸堤防が、大幅な高さ増加と規模の拡大をもたらすものであり、沿岸域の生物の生息環境や植生環境といった自然環境のみならず、自然環境に依存する養殖業を中心とした沿岸漁業など水産業等への影響も懸念される以上、環境影響評価を行なうべきである。もっとも、海岸堤防の建設が周辺地域の復興事業と密接に関連していることから、環境影響評価条例で通常想定している環境影響評価を行なうこととなれば、その手続に多大な時間を要することともなり、被災地域の復興遅延を招来するという問題も存する。そこで、今般の海岸堤防建設事業の環境影響評価としては、現在東日本大震災復興特別区域法第72条によって、一定規模の土地区画整理事業や鉄道事業等いわゆる特定復興整備事業で実施されている特定環境影響評価の方法と同様の迅速な方法での環境影響評価を行なうべきである。すなわち、特定環境影響評価は、迅速な復興事業への着手という観点から通年または四季の現地調査等、特定環境影響評価の実施に当たって時間を要する規定をおかず、特定環境影響評価の項目の選定又は調査、予測及び評価の手法の選定に当たっては専門家等から助言を受けることが必須とするなどの制度であり、迅速な事業の遂行と環境保全の調和を図るものである。したがって、環境影響評価条例を制定している宮城県及び仙台市は、少なくとも、特定環境影響評価制度のような簡易迅速な環境影響評価制度を導入するなどして、一定規模の海岸堤防事業を環境影響評価の対象とするよう条例を改正すべきである。そして、その対象となるべき規模は、鉄道事業のルート移設においては、事業規模が7.5㎞以上にわたる場合には特定環境影響評価の対象となることから、海岸堤防事業における簡易迅速な環境影響評価制度についても、参考とされるべきである。
(1) 景観からの問題点
ア 計画予定地が重要な自然景観を有すること
震災前から三陸沿岸は、岩手県側は陸中海岸国立公園、宮城県側は南三陸金華山国定公園として指定され、2013年(平成25年)には、青森県南部から宮城県北部にわたるリアス式の三陸海岸一帯が三陸復興国立公園に制定された。同地域の北部は「海のアルプス」とも賞される豪壮な大断崖、南部は入り組んだ地形が優美なリアス海岸が続いているほか、海岸にはウミネコやオオミズナギドリなどの海鳥の繁殖地があり、野生生物を間近に観察することもできる景勝地となっている。宮城県気仙沼市にある小泉海岸及び大谷海岸はいずれも、海岸堤防の建設予定地となっているところ、震災前は利用者数が多いことや水質が良い水辺を基準として選定される環境省選定の「快水浴場百選」にも指定されている。これらの地域の自然景観は、地域住民共有の無形財産であるだけでなく、同地域の観光振興にも重要な役割と果たしている。
イ 景観保護の見地から必要な措置をとるべきこと
しかし、同地域における海岸堤防建設を行なうこととなれば、巨大なコンクリート構造物で海岸を覆うことともなりかねず、砂浜の消失など同地域の誇る美しい景観を害することとなり、ひいては地域の観光業への影響も懸念されている。そもそも、三陸海岸にみられるような良好な景観は、美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠なものであることにかんがみ、国民共通の資産として、現在及び将来の国民がその恵沢を享受できるよう、その整備及び保全が図られなければならない(景観法2条1項)。そして、国は、同法が定める基本理念に基づき、良好な景観の形成に関する施策を総合的に策定し、実施する責務を有し、地方公共団体も、良好な景観の形成の促進に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その区域の自然的社会的諸条件に応じた施策を策定し、実施する責務を有する。このような同法の趣旨からすれば、宮城県は、三陸沿岸地域のうち、特に景観上保護すべき地域を景観計画区域に指定したうえで、海岸堤防の復旧、建設にあたっても景観協議会の設置など必要な措置をとったうえで建設を進めるべきである。
(3) 海岸堤防の位置や規模や工法の再検討
国土交通省策定の前記景観配慮の手引きにおいては、海岸堤防の設置にあたっては、景観や生態系への配慮が求められるとの視座に立ち、砂浜に堤防を設置した場合、背後の砂の移動が抑制され、海岸特有のエコトーンの形成が困難となることが指摘され、生態系の保全及び景観保全の観点からは砂浜や後背湿地よりさらに陸側に海岸堤防を設置すること(セットバック)が推奨されている。
また、同手引きでは、海岸堤防の規模、延長、構造等によっては視覚的な圧迫感や周辺環境のなかでの違和感を与える可能性があるため、堤防の長大な印象の軽減等、視覚的インパクトを極力低減するとともに、周辺空間との調和を求めている。したがって、宮城県は、同県の沿岸地域における海岸堤防を建設するにあたっては、セットバックなどの海岸堤防の建設位置の変更や規模や工法の検討など生物多様性や景観など周辺環境に配慮した計画の再検討を行なうべきである。
2 必要性に疑問のある海岸堤防の問題
(1) 復興予算の適正な利用・財政の健全性の観点
今般建設予定の海岸堤防の中には、その必要性について疑問を呈されているものも存在する。たとえば、宮城県気仙沼市小泉地区(中島海岸)については、宮城県内で最も高い最大14.7メートル、幅91メートルの海岸堤防が約2キロメートルにわたって計画されている。しかし、背後地に存在した住宅は高台に移転し、今後住宅の建築は認められていない。農地としての利用の可能性はあるものの、農地を守るためにこのような巨大な海岸堤防が必要なのか、住民からは大きな疑問の声が上げられている。このようなそもそも必要性に乏しいと考えられる海岸堤防については、復興予算の適正な利用の観点から問題があるだけでなく、今後維持管理費を負担することになる将来の宮城県の財政の健全性の観点からも大いに問題があると言わざるを得ない。実際に、宮城県では、必要性に乏しいと考えられる宮城県塩竈市の浦戸諸島にある無人島についての海岸堤防について見直しを検討するに至っている。
(2) このように、復興予算の適正な利用・財政の健全性の観点からは、現在の海岸堤防の計画に必ずしも必要性が認められないと考えられるものも存在する。このような海岸堤防については、その必要性や費用対効果を十分に精査し、計画の撤回も含めた柔軟な対応を行うべきである。
3 合意形成上の問題点
(1) 合意形成の必要性
今般の海岸堤防建設が海岸事業として実施する場合のみならず、災害復旧事業として実施する場合であっても、既存の海岸堤防の原形復旧の程度を超える巨大事業となり、今後の維持費等の面での地元自治体での将来世代への多大な費用負担の問題を抱えるだけでなく、上記のとおり生物多様性からの懸念や、漁業などの沿岸資源を利用した産業、景観や観光資源への影響等、防災・減災の観点を踏まえれば、海岸堤防の建設が地域住民の利益に多大な影響があることは明らかである。したがって、地域住民への十分な説明と合意は極めて重要である。
(2) 現在の法制度
海岸事業として新たな海岸堤防を建設する場合は、海岸保全基本計画の策定にあたり、海岸法2条の3に基づき、「あらかじめ公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない」とされていることからも、海岸堤防に関する海岸保全基本計画策定において、住民の意見を反映させることが重要である。一方、海岸堤防建設事業が復旧事業として行なわれる場合は、海岸復旧方針(案)の作成にあたって、住民合意や住民参加の法的担保がない。もっとも、宮城県では、復旧事業としての海岸堤防建設が周辺住民へ多大な影響のあることに鑑み、海岸復旧方針(案)の作成後ではあるが住民説明会を実施してきた。
(3) 住民説明会の実態
今般の海岸堤防の建設に際しては、災害復旧事業としての実施であるにせよ、海岸事業として実施であるにせよ、多くの地区において震災から2年も経過しないうちに住民説明会が実施されている。しかし、東日本大震災直後から2年程度は、震災からの復旧すらままならない状態であったことや、余震が頻繁に発生するなどして津波に対する極度の恐怖心があったことなどから、将来の津波防災に関して冷静な考えや議論ができない時期だったと考えられる。また、環境影響評価もなされていないため、海岸堤防の建設が周辺の自然環境にいかなる影響を与えるか、という今般計画されている海岸堤防の影響についての判断の材料が十分に提供されてこなかった。住民説明会では、海岸堤防に関する複数の提案を示して合意を図っているプロセスが存せず、行政側が設定した海岸堤防の高さや位置等について住民から了解をもらうという内容であった。また、多くの説明会では海岸堤防建設以外の議題とともに住民に提示された説明会であることに加え、海岸堤防建設について、地域住民との合意書の取り交しはもちろん挙手制による意思決定なども実施されているわけでもなく、地域によっては住民の総意があったとは評価できない場合も存する。例えば、2012年(平成24年)10月の住民説明会で海岸堤防について合意が得られたとみられていた気仙沼市本吉町小泉地区では、海岸堤防に対する住民の反発もあり、2013年(平成25年)11月下旬に、再度住民説明会が開催された。同説明会では、海岸堤防建設に関する賛成派と慎重派の間で意見が割れた状況であったところ、終了間際の自治体幹部職員の一言で、賛成派が大きく拍手を行なったことで、「合意形成」とみなされた事例が報告されている。
(4) 海岸堤防の建設は、後世にわたって地域住民と海とのつき合い方を決定づけるものである。したがって、海岸堤防建設における地域住民との合意は必要不可欠であり、住民合意の手続も慎重に行なう必要がある。したがって、現在の計画による海岸堤防の建設が問題となっている地域については、県や市、学識経験者、周辺住民の有志からなる協議会を設置し、協議会による議論に基づき複数の案を提示するなどして合意形成を行っていくべきである。この点、宮城県は、2014年(平成26年)5月22日、気仙沼市小泉地区において、住民ワーキンググループと有識者検討会を設ける方針を示した。このような住民との協議の場を設置する方針を示したことは一定の評価に値する。しかし、協議会の設置は、1地区にとどまるべきではなく、また協議会自体がアリバイ作りに終始する懸念もある。したがって、協議の場は、これまでの「住民合意」が疑わしい地域においても設置すべきであるし、協議会の構成員やその手続等についても、実質的な合意形成の場となるよう配慮すべきである。したがって、同県沿岸地方における海岸堤防建設が沿岸住民の利益に重要な影響があることに鑑み、海岸堤防建設についての対立がみられる地域については、関係自治体、周辺住民、学識経験者からなる協議会を設置するなどして、住民合意に向けた適切な措置をとることを求める。
第3 結論
よって、当会は宮城県及び仙台市に対し意見の趣旨記載の対応を求める。以上

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余命三年時事日記 2256 ら特集10仙台弁護士会⑤7 [余命三年]

余命三年時事日記 2256 ら特集10仙台弁護士会⑤7
http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/12/2256-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%8610%e4%bb%99%e5%8f%b0%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a4%ef%bc%97/ より

平成27年02月21日 通信傍受の対象拡大及び手続簡略化並びに捜査・公判協力型協議・合意制度の法制化に反対する決議
ttp://senben.org/wp-content/uploads/2015/02/tuusinboujuketugi_270221.pdf

法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会は,2014年(平成26年)7月9日,「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果【案】」を決定した。この答申案は,同年9月18日開催の法制審議会第173回会議において全会一致で採択された上,法務大臣に答申された(以下,「本答申」という。)。本答申は,法案化され,2015年(平成27年)通常国会に上程される可能性が高い。本答申に示された通信傍受(盗聴)の対象拡大及び手続簡略化並びに捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる司法取引)の法制化については重大な問題がある。通信傍受(盗聴)は,捜査対象物が特定されず事前の通知もされない点で憲法の定める令状主義に違反するおそれが強い上,通信の秘密やプライバシー権を侵害する捜査手法であることから,現行法においては極めて厳格な要件のもとでのみ認められてきたものである。具体的には,組織的な重大犯罪のみを対象とし,かつ捜査機関の違法または濫用的な捜査を防止するために通信事業者の立会が要件とされていたのである。ところが,本答申は,通信傍受の対象を,傷害・窃盗・詐欺・恐喝等の一般的な犯罪にまで拡大することとし,さらに通信傍受を行う際の通信事業者による立会を不要とする手続簡略化を行うこととしている。これは,憲法に違反する疑いが極めて強い法改正であり許されない。また,本答申には,一定の犯罪(経済犯罪など)について他人の犯罪事実を申告した者に対して不起訴処分等の利益を与える捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる司法取引)の導入が示されている。しかし,この制度は「引っ張り込み(自己に有利な結果を得るために他人の罪をねつ造し,無実の他人を陥れること)」の危険を大幅に高め,それによる誤判・えん罪を増加させるものである。本答申の案を作成した法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会は,元々は足利事件や村木事件(厚生労働省郵便不正事件)など近年明らかになった誤判・えん罪事件を受けて,捜査機関の自白強要や証拠ねつ造など違法な捜査を防止し,取調べの適正化等を目指すべく設置された部会であったはずである。にもかかわらず,取調べの可視化や証拠開示がごく限定的にしか行われず,かえって上記のような,憲法違反の通信傍受法改正,誤判・えん罪の危険をかえって高める捜査・公判協力型協議・合意制度の導入が示された答申がなされたことは誠に遺憾である。当会は,通信傍受の対象犯罪拡大及び手続簡略化並びに捜査・公判協力型協議・合意制度の法制化について断固反対し,被疑者・被告人の権利保障を実質化するような刑事司法の実現に向けて邁進する所存である。以上のとおり決議する。
2015年(平成27年)2月21日 仙台弁護士会 会長 齋藤拓生
提案理由
第1 法制化への流れ
1 法制審議会特別部会設置の経緯
志布志事件,氷見事件,足利事件,村木事件(厚生労働省郵便不正事件),布川事件等の,えん罪事件や捜査機関の一連の不祥事を契機として,捜査の在り方等に対する大幅な見直しの必要性に注目が集まるようになった。2010年(平成22年)法務省に設置された「検察の在り方検討会議」は,2011年(平成23年)3月31日,「検察の再生に向けて」と題する提言を発表した。同提言は,「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方を抜本的に見直し,制度としての取調べの可視化を含む新たな刑事司法制度を構築するため,直ちに,国民の声と関係機関を含む専門家の知見とを反映しつつ十分な検討を行う場を設け,検討を開始するべきである」と結論づけた。法務大臣は,同提言を受け,2011年(平成23年)5月18日,法制審議会に対して「近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑み,時代に即した新たな刑事司法制度を構築するため,取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しや,被疑者の取調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入など,刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について,御意見を承りたい。」とする諮問第92号を発した。同諮問を受け,法制審議会は,2011年(平成23年)6月6日に開催された法制審議会第165回会議において,同諮問について調査・審議するための「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「特別部会」という。)の設置を決定した。
2 特別部会による基本構想の内容
特別部会は,設置以来約1年半の審議期間を経て,2013年(平成25年)1月29日の第19回会議において,「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」を発表した。それは,従来の取調べ依存型捜査には「ひずみ」が生じているので,捜査の適正確保という観点で「ひずみ」を修正する必要があるとする趣旨のものであり,言い換えれば,取調べ依存型捜査の抜本的な見直しについては消極的な内容のものであった。また,取調べの可視化等のほかに「通信傍受の拡大・会話傍受」「刑の減免制度・協議・合意制度及び刑事免責制度」を盛り込んだ。取調べの可視化により供述を獲得することが困難となることを理由に,人権侵害の危険の増大を考慮せずに,捜査機関の証拠収集をより容易にするかのような姿勢までをも示していた点で,きわめて問題の多い内容であった。
3 特別部会の事務当局試案
特別部会の審議において前記基本構想の問題点は殆ど修正されることはなく,2014年(平成26年)4月30日に事務当局試案が取りまとめられた。「基本構想」の段階から改善されたことは,会話傍受制度及び被告人を証人とする制度の導入が示されなかったことである。もっとも,被告人の虚偽供述禁止規定を新設することは示されていた。
4 法制審議会の答申
2014年(平成26年)7月19日,特別部会において「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果【案】」(答申案)が取りまとめられた。前記の事務当局試案から改善されたことは,被告人の虚偽供述禁止規定の導入が見送られたということくらいであった。答申案は2014年(平成26年)9月18日開催の法制審議会第173回会議において全会一致で採択された上,法務大臣に答申された(以下,「本答申」という。)。
5 法制化の危険
本答申に至る経緯は上記のとおりである。「基本構想」の段階で指摘されていた問題点,すなわち,かえって捜査機関の権限が不当に拡大され,より多くの誤判・えん罪事件及び人権侵害が発生しうるという問題点については,何ら改善されていない。本答申は法案化され,早ければ2015年(平成27年)の通常国会に上程される可能性が高い。
第2 通信傍受の対象拡大及び手続簡略化について
1 通信傍受の対象拡大及び手続簡略化の内容
本答申には,「通信傍受の合理化・効率化」として,犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(以下,「通信傍受法」という)の適用対象を,現住建造物放火,殺人,傷害,逮捕・監禁,略取・誘拐,窃盗,強盗,詐欺,恐喝等にまで拡大し,さらに現行の通信傍受法が通信傍受時における通信事業者の立会いを要件として規定している点を簡略化し,捜査機関が通信事業者の立会いなくして通信を傍受できる制度が示されている。
2 通信傍受それ自体に憲法違反の問題があること
現行の通信傍受法が定める通信傍受それ自体が,憲法が国民に保障する通信の自由,思想の自由,言論の自由,結社の自由,プライバシー権等の基本的人権を侵害する「盗聴」であり,かつ,通常の捜査とは異なり,事前に捜査の対象者・対象物を特定した令状が呈示されない点で憲法第35条が定める令状主義に違反している疑いが強いものである。
3 対象犯罪の拡大の問題点
通信傍受については前記の問題があるため,通信傍受法制定前の最高裁判所1999年(平成11年)12月16日判決は,通信傍受について「重大犯罪に限り」例外的に許される捜査手法であると位置づけている。2000年(平成12年)の通信傍受法制定の際にも,通信傍受自体に問題があるという反対意見が多く,そのために一部の組織的重大犯罪に限定して,補充的に,通信事業者の監視の下で行われる捜査手法にとなったのである。そのような通信傍受について,対象犯罪を現行法よりも広く拡大することは憲法違反となる疑いが強く,許されるものではない。通信傍受捜査が物証(メモ等)よりも直接的に情報そのものを取得する捜査手法であることに鑑みれば,現行通信傍受法第3条の「他の方法によっては,犯人を特定し,又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であるとき」との要件(補充性の要件)も今後緩やかに解釈される可能性は否定できず,補充性の要件があるとしても,通信傍受について,不当な人権侵害の危険はないとすることはできない。また,本答申に示された組織性要件(「当該犯罪があらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われたと疑うに足りる状況があるときに限る」)であるが,その文言は,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の「団体」の定義における「組織」要件(「指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体」)の文言とは異なっており,抽象的な要件であって,広範な解釈の余地を残す。事前共謀が存在することが疑われる事例のほぼ全てにおいて通信傍受が可能となる結果すら招来しかねないものであり,違法不当な人権侵害を防ぐための要件としては極めて不十分である。
4 手続簡略化の問題点
通信傍受時の通信事業者の立会は,違憲の疑いが強い通信傍受について,不十分ながらも捜査機関による通信傍受の濫用を防止し,捜査の適正さを担保するための制度である。傍受時の通信事業者の立会を不要とするならば,通信傍受制度が憲法違反となる疑いがきわめて強い。本答申は通信事業者の代替として,対象となる通信を,裁判所職員が発行する電子鍵により暗号化する制度を示しているが,これは単なるデータ開封用のパスワードに類するものであり,通信事業者の代替として捜査機関に対する監視・抑制の機能を果たし得るものではない。通信事業者の立会を不要とする法改正もまた許されない。
5 通信傍受制度の存在自体が各種人権に対する萎縮効果を与え得ること
通信傍受の対象を拡大し,手続を簡略化すれば,刑事訴訟手続の領域外にも深刻な結果を招来しうる。国民は,自分の知らないところで捜査機関による通信傍受を受け,通信の秘密やプライバシー権を侵されるかもしれないという状況下に常に置かれることになるので,少しでも捜査機関からの監視対象となりそうな個人や団体とは通信をしない,或いは,捜査機関に目を付けられそうな言動や表現はしないという行動を選択する,すなわち,憲法で保障されている各種人権の行使に対して抑制的になることを強いられる可能性が高い。このように,通信傍受の拡大及び手続簡略化は,刑事被疑者・被告人の人権擁護との関係でのみ問題となるのではなく,表現の自由,知る権利,結社の自由等の各種人権の行使に対して萎縮効果をもたらしかねないものであり,憲法上の大きな問題がある。
6 小括
通信傍受の対象拡大及び手続簡略化は,憲法で保障された通信の秘密,プライバシー権を侵害し,さらに国民の各種人権に対する萎縮効果をもたらしかねないものであり,決して許されるものではない。
第3 捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる司法取引)
1 捜査・公判協力型協議・合意制度の内容
本答申が示す捜査・公判協力型協議・合意制度(以下,「協議・合意制度」という)は,検察官が,特定犯罪について,必要と認めるとき,被疑者又は被告人との間で,被疑者又は被告人が他人の犯罪事実を明らかにするため「真実の供述」その他の行為をすることと引き換えに,当該被疑者・被告人の被疑事件又は被告事件について不起訴処分,特定の求刑その他の行為をする旨を合意できるものとする制度である。自己の犯罪事実の申告を有利に取り扱うものではないが,捜査機関の捜査に協力する見返りとして自己の刑事事件について便宜を受けることを可能とするものであり,司法取引制度の一種である。
2 新たな虚偽自白とそれによるえん罪が生まれる危険が非常に高い協議・合意制度の法制化は,虚偽の供述を誘引するおそれがあり,かえって新たなえん罪を生み出す危険性が高い。そもそも共犯者供述については,「引っ張り込み(自己に有利な結果を得るために他人の罪をねつ造し,無実の他人を陥れること)」の危険があり,虚偽供述が生み出されるおそれの大きいことが,以前から指摘されてきた。協議・合意制度は,不起訴など誘引力の強い約束によって,共犯者による「引っ張り込み」を助長するものであり,本質的に,虚偽の供述を生み出す危険性を内在するものである。しかるに,同制度においては,被疑者又は被告人によって虚偽の供述がなされる危険を防止するための対策は十分に検討されていない。協議・合意制度に賛成する立場からは,協議・合意の過程に弁護人が関与するので供述の真実性が担保されるかのような意見が述べられている。しかし,関与が想定されているのは,協議・合意を利用しようとする側の被疑者・被告人の弁護人であり,引っ張り込みの危険にさらされる側の弁護人ではない。また,協議・合意を利用しようとする側の弁護人においても,被疑者・被告人が他人の犯罪事実を申告しようとしたときに,被疑者・被告人の利益と,引っ張り込みの危険,ひいては誤判・えん罪を生み出す危険とをどのように判断するのか,困難な問題が生じる。このように,弁護人が関与したからといって制度に内在する問題点が解消されるわけではない。本答申は,合意の当事者である被疑者又は被告人が虚偽供述等をした場合,当該行為を処罰の対象とすることで真実性の担保となると考えているようであるが,問題は虚偽の供述により誤判・えん罪その他不当逮捕等の人権侵害が生まれることであり,供述者に事後的な不利益を課すことによっては,虚偽供述の発生を未然に防ぐことは困難である。処罰では真実性の担保たり得ない。そればかりか,かかる制度設計のもとでは,合意により一旦虚偽の供述をした被疑者または被告人が,良心の呵責により翻意して真実の供述をしたいと考えても,処罰をおそれて,もはや後戻りをすることができなくなるといった事態が生じ得るので,この点でも問題が大きい。
3 小括
協議・合意制度の法制化には,重大な問題がある。その法制化は捜査機関の捜査権限をいたずらに拡大するものでしかない。協議・合意制度は,誤判・えん罪の防止にとって有益でないばかりか,有害である。
第4 結論
当会は,本答申の答申案を取りまとめた法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の審議が,取調べの適正化という本来の目的から外れて,かえって捜査権限を強化する内容となりつつあることを問題視し,2013年(平成25年)11月14日に「法制審議会新時代の刑事司法特別部会に対する意見書」を,2014年(平成26年)5月16日に「法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会『事務当局試案』に関する会長声明」を,同年7月23日に「法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会における答申案についての会長声明」を発し,特別部会の各段階における基本構想,事務当局試案,答申案の問題点を指摘してきた。東北弁護士会連合会も,2014年(平成26年)5月10日に「『通信傍受の合理化・効率化』に反対する会長声明」を,同年6月7日には「法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会『事務当局試案』に関する会長声明」を発し,通信傍受の対象拡大・手続簡略化等に反対の意思を表明している。同様の指摘は,各地の弁護士会や有識者等からも数多くなされている。しかし,本答申の内容は,本来の目指したはずの取調べの可視化については,裁判員裁判対象事件の取調べに加えて検察独自捜査事件における検察官取調べという極めて狭い範囲の可視化に限定されている。そして,証拠開示も証拠の詳細が示されない一覧表の交付に留まり,被告人の権利保障の実質化という見地からは不十分と言わざるを得ないものになっている。他方,通信傍受の対象拡大及び手続簡略化や捜査・公判協力型協議・合意制度の導入など捜査権限を強化するものとなっており,基本的人権の擁護という見地から許されない内容となっている。当会は,通信傍受の対象犯罪拡大及び手続簡略化,並びに,捜査・公判協力型協議・合意制度の法制化について断固反対し,取調べの全過程の全面可視化,全面的証拠開示制度の導入など,被告人の権利保障を実質化するための刑事司法の実現に向けて邁進する所存である。以上

平成26年08月19日 「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」に対する意見書
ttp://senben.org/archives/5493
2014年(平成26年)8月19日
内閣官房特定秘密保護法施行準備室「意見募集」係 御中
仙 台 弁 護 士 会
会長 齋 藤 拓 生
仙台市青葉区一番町2丁目9番18号
電話 022-223-1001

第1 はじめに
特定秘密保護法は,国民の知る権利やプライバシー権等の人権を侵害し,国民主権にも抵触する重大な問題をはらんでいる。したがって,同法は廃止されるべきであり,少なくとも抜本的な見直しがないままの施行は許されない。そして,法律自体に憲法上の問題がある以上,それに基づく施行令も制定されるべきではない。また,この点を置くとしても,2014年7月24日付けで,内閣官房特定秘密保護法施行準備室において公表され,意見募集がなされている「特定秘密保護法に関する法律施行令(案)」(以下「施行令案」という。)にも看過し難い問題があるため,以下のとおり意見を述べる。
第2 意見
1 総論
そもそも法律で定めるべき重要事項を政令及び運用基準において定めているという法形式自体に問題がある。政令及び運用基準は,法律の委任を受けて政府が定めるとされているが,白紙委任に等しい項目もあり,国民の権利義務に直結する重要事項は法律で定めるべきとの原則に照らしても問題がある。また,政令や運用基準が,法律と異なり,国会の議論を経ることなく改廃できる点においても大きな不安が残る。
2 施行令案第3条第1号(法第3条第1項ただし書の政令で定める行政機関の長)について
(1)意見
法務省及び金融庁を施行令案第3条第1号に加えるべきである。
(2)理由
2012年12月31日時点で法務省が保有していた特別管理秘密文書等の件数は,0件であった(平成25年3月12日衆議院議員赤嶺政賢君提出 特別管理秘密及び秘密取扱者適格性確認制度に関する質問に対する答弁書)。したがって,法務省については特定秘密の指定機関に加える必要性がない。同様に,2012年12月31日時点で金融庁が保有していた特別管理秘密文書等の件数は,49件に過ぎず(同上),特定秘密の指定機関に加える必要性は乏しい。また,同庁が国家の安全保障に関する情報を取り扱っているとも考えがたい。
3 施行令案第3条第2号(法第3条第1項ただし書の政令で定める行政機関の長)について
(1)意見
原子力規制委員会を施行令案第3条第2号に加えるべきである。
(2)理由
原子力規制委員会は,国民の生命・健康の安全に重大な影響を及ぼす原子力発電に関する情報を扱っている。同委員会が特定秘密の指定機関となり,これらの情報を特定秘密に指定できるようになると,これらの情報にアクセスしようとする取材活動までもが刑事罰の対象になりかねず,国民が知るべき情報を入手できなくなってしまうおそれがある。公開するのが好ましくない情報については情報公開法の不開示情報該当性の問題として扱うことで十分であり,情報漏えい策としては公文書管理システムの適正化を徹底することで対応できる(日弁連2013年10月23日付け「秘密保護法制定に反対し,情報管理システムの適正化及び更なる情報公開に向けた法改正を求める意見書」参照)。
4 特定秘密保護法第4条第4項第7号について
(1)意見
施行令案には,特定秘密保護法第4条第4項第7号の政令で定める情報が規定されていないが,今後も規定すべきではない。また,法第4条第4項第7号は削除すべきである。
(2)理由
特定秘密保護法第4条第4項第7号は,同項第1号ないし第6号以外の情報でも政令で定めることができるとしている。しかし,これでは60年を超えて秘密指定できる情報の範囲が無限定に広がりかねない。したがって,今後も同号に基づき政令で定める情報を規定すべきではない。
また,そもそも同号のように政令に白紙委任するような規定は国会によるチェックを無にしてしまうものであって適切ではないから,このような規定は削除すべきである。
5 施行令案第12条(行政機関の長による特定秘密の保護措置)について
(1)意見
特定秘密の保護措置は,政令や運用基準に委ねるのではなく特定秘密保護法で明記すべきである。また,施行令案第12条第1項第10号は特定秘密の漏えいのおそれがある緊急事態に際して特定秘密文書等の廃棄を定めているが,これは法律の委任の範囲を逸脱するものであるから削除すべきである。
(2)理由
特定秘密の保護措置は,特定秘密の保護を目的とする法律の中心的な事項であるから,本来法律で明記すべき事項である。にもかかわらず,政令や運用基準に委ねることは,国会によるチェックを無にしてしまうものであって適切ではない。また,施行令案第12条は特定秘密保護法第5条第1項に基づくものであるところ,同項では政令への委任の範囲として特定秘密文書等の廃棄にまでは言及していない。にもかかわらず,政令で廃棄を規定することは法律による委任の範囲を逸脱するものである。
6 施行令案第21条(評価対象者に対する告知等)について
(1)意見
書面による告知及び同意は,包括的なものになるおそれがあり適切ではない。
(2)理由
施行令案第21条は,評価対象者に対する告知及び同意は「書面により行う」としている。しかし,同意書は適性評価の調査実施前に取り付けることとされているところ,運用基準案で示されている同意書の内容は包括的なものであり,具体性に欠ける。これではどのような事項について,どのような調査(調査のためにどこに照会するのか,どのような内容の調査をするのか等)が具体的に分からないまま同意書提出を余儀なくされてしまいかねず,プライバシー保護としては不適切である。以 上

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